第十話「悲愁の夜明け」
 
「いやぁ~~~~~~~~~~!」

 ありさの身体が前後に揺れる度に、まだ小ぶりだが美しい乳房と、ほっそりとした腰付きには少し不似合いなふくよかな双臀が大きく揺れ動いた。

「ええケツしとるなあ!こらたまらんわ~!」
「いやぁ……いやですっ……抜いてぇ……抜いてください!」
 
 九左衛門が腰を打ち付け、吊るされて支えのない肉体が前後に大きく揺れる様は、邪淫でなまめかしい光景を醸し出していた。

(ズンズンズンズン!ズンズンズンズン!)

「いたい!ひぃ~~~!」
「うんうんうん!ふんふんふん!ええ締まりしとるで~~~!」
「やっ、やめてっ!お願いです!」
「うおおおおおおお!」 

 ありさの訴えには耳を貸さず、凄まじい破瓜の感覚に溺れる九左衛門は思わず雄たけびをあげた。
 しかし、射精だけは懸命に堪えている。
 ありさの処女を味わい尽くそうとしていた。
 射精など二の次なのだ。
 九左衛門がありさの身体から肉棒を引き抜き、もう一度、背後から貫いていく。

(ズズズッ!ズブズブズブ……!)

「い、いやぁ~~~!やめてぇ~~~!」
「おっ!締まる!ええぞ!その調子や!」

 九左衛門は締まる快感に酔いしれた。
 あまりの気持ちよさにブルブルと身震いをした。

「締めよる!締めよる!もっと締め~~~!」
「いやぁ~~~~~!」

 九左衛門を拒絶したい気持ちから、いっそう花弁が締まってしまうのだ。
 それが皮肉なことに九左衛門に激しい快感を与える結果となった。
 九左衛門はありさの花弁を繰り返し繰り返し貫き、子宮の入口を何度も突き上げた。
 彼の我慢も限界に来ていた。
 魚が跳ねるように先端がビクンと脈を打った。
 同時に堰を切ったように歓喜の精をありさの胎内に注ぎ込まれた。
 歓喜の精はドクドクと狂ったように放ち続けられた。
 ありさの悲痛な叫びは土蔵の中でいつまでも響き渡っていた。

 その夜、ありさは言い知れぬ悲しみに枕を濡らした。
 十六年間守り抜いてきた操を思いもよらぬ人物に奪われてしまうとは……
 悲しくて悲しくてなかなか寝付けなかった。
 しかしいつまでもめそめそしていても始まらない。
 刻々と時は経ち夜が更けていく。

「早く眠らなくては……」

 ありさはいつしか涙も涸れはて深い眠りに落ちていった。

◇◇◇

 ありさはいつもと同じように夜明け前に目が覚めた。
 目は覚めたがまだ瞼は重く、まどろみの中を漂っている。
 ふと下半身にピリリと痛みが走った。

「うっ……」

 痛みと同時に昨日の悪夢がよみがえってきた。
 股間にはまだ何か入っているような違和感が抜けず、自分の身に降りかかった不幸な出来事の一部始終がありありと思い出された。
 悔しさと悲しさで、後から後から涙が溢れてきた。

(でも……家へは帰れない……がんばらなければ……ねぇ、お母さん……)

 もうじき他の女中たちも目を覚ますが涙は見られたくない。
 ありさは寝床の中で涙を拭うと急いで布団を畳みはじめた。

 朝一番の仕事は奉公人たちの食事を作る台所の下働きだ。
 夜明け前に起きそそくさと着替え、井戸で水を汲み上げ台所にある水瓶を満たし、米を研ぐことから一日が始まる。
 三つある大釜で飯を炊き、味噌汁を作る。段取りよくやらないと他のおかずが遅れてしまう。
 奉公人たちは一斉に朝食をとり、開店の準備をするために朝食が済むと慌ただしく座を立っていく。
 その片付けと、おびただしい洗い物を急いで済ませる。
 それらが終わると台所の隅で、ようやくありさたち下女中は残り物のご飯と漬物にありつける。

 ありさがご飯を食べていると、丁稚の音松と利松がやってきた。
 開店の準備が終わって一息ついたのだろう。
 音松は十九才で、利松は一つ下の十八才だが、二人とも奉公して四年目になる。
 音松は可愛くて気立てがよいありさのことが気になって仕方がない。
 利松もありさに好感を抱いている。
 ふと音松がありさに聞いてきた。

「ありさ。昨日だんさんと土蔵に入ったとこ見掛けたんやけど、中で何してたんや?」
 
 ありさは驚きのあまり食べていた食事が喉に詰まりそうになった。

「………………!? ゲホッゲホッ!」
「だいじょうぶかっ?急に声かけたからやな。すまんすまん」

 心配した利松がありさの背中を懸命に擦ってくれた。

「おい!だいじょうぶか!?」
「だ、だいじょうぶです……ごめんなさい……。もうすぐお茶会があるとかで、だんさんとお茶碗を運んでたんです……」

 音松は言葉を続けた。

「へ~、お茶会があるんや。あのな、ありさ……」
「はい……?」

 音松は声をひそめて尋ねた。

「だんさんに変なことされへんかったか?」

 音松の質問にありさは虚を衝かれたように慌てた。

「変なこと?……変なことなんかされてません!」
「されてなかったらええねん。あくまで噂やけど、だんさん、以前からたまにおなごっさん(下女のこと)土蔵に連れ込んで助平なことしたはるちゅう話があってな」

 音松が噂話をしゃべり出すと、利松が慌ててそれを制した。

「音松どん、そないなこと、言うたらあきまへん!」
「せやなあ。ありさ、今の話聞かんかったことにしといてんか」
「はい……」

 朝食が済むと一息つく暇もなく数人の女中といっしょに掃除を行う。
 ありさの持ち場は廊下の雑巾がけだ。
 腰を屈めて行なう作業なので意外と重労働であり、若い下女中が受け持つことになっていた。
 それでもありさは嫌な顔ひとつせずに長い廊下と向かい合い、雑巾を広げ、その上に両手をついて尻を上げて一気に駆け抜ける。
 そんな元気に働くありさの後姿を、廊下の端でじっと見つめる一人の男がいた。
 九左衛門である。
 ありさの屈んで丸くなった尻を見ていると、昨日無垢な娘を蹂躙した残忍な喜びがこみ上げてくるのであった。

「見れば見るほどええケツしとるなあ。また縛り上げてヒィヒィ言わしたらなあかん……ぐふふふふ……」



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