第31話  極太ディルドを跨いで


篠塚美里の視点


「おい、アレを挿れるのか?」
「いや、いくら美里ちゃんがスキモノでも、ちょっと厳しくないか?」
「ああ、あんなのを挿入したら、きっとガバガバになっちまうぞ」

それって、心配してくれているの?
でもみんな、口の端をだらしなく下げているから、本音では期待しているんでしょ?

「わあ、こんな大きなディルド……美里の……オ、オマ○コに入るかなぁ。うふふ、ちょっと……怖いなぁ」

ホントはとっても怖いのに、ウルウルした目でそれを見つめた。
ホントはアソコの別名なんて口にしたくないのに、美里はスキモノだから、全然気にしていないって舌を滑らかに動かしてあげた。

「皆様、ご安心ください。このディルドは直径6センチ、長さが25センチと、彼女の腕ほどありますが何の問題もありません。普段から美里は、このディルドでオナニーするのが習慣になっておりますので」

そんな美里の声と表情を肯定するように、河添が意地の悪い説明をする。
そのついでに、また耳元で囁いた。

「どうだ、よく見ろ。怖いだろう? ふふっ、こんなディルドをぶち込んだら、さすがに美里のオマ○コも壊れちまうだろうな。そうなったらもう、セックスもお手上げだ。彼氏が泣くぜきっと。美里の大切な彼氏がな」

河添の『彼氏』って単語に、美里の心が揺らいだ。
畳から生えてきたようなおぞましい姿に、美里のアソコが悲鳴を上げる。

それでも、入れないといけないのよね。
男の人が見ている前でしゃがみ込んで、ディルドをアソコに挿入して抜き差ししないといけないのよね。

わたしは夢を見ているような気分で、お化けディルドに近付いていった。
50センチ角の薄板に装着されたディルドを、跨ぐようにして両足を乗せた。

「皆様、これは余談ではありますが、彼女は陸上部に所属しておりまして、インターハイでも上位の成績が期待できるアスリートとか。ご覧ください。この引き締まった太腿の筋肉を。さぞや、力強いオナニーを披露してくれることでしょう。ご期待ください」

『陸上部』『インターハイ』
わざとしか思えない河添の言葉に、眉毛がピクピクって反応した。
とっくの昔に封印したはずの夢が、胸に突き立てられた刃物で切り裂かれていく。

「はははっ、さっさと腰を下ろすんだ。典子お姉ちゃんの代わりをするんだろう?」

「わ、わかっているわよ。ちょっと股を拡げてサービスしているだけ」

跨いだまま躊躇するわたしを、河添が卑劣な言葉で脅迫する。
営業マンの笑みを浮かべたまま目だけを冷たく光らせて、巻き付けた首輪を締め上げた。

この人って、よっぽど美里が憎いんだ。
お父さんへの恨みを、わたしにぶつけているんだ。

……だけど、その気持ち。美里にも分かるわよ。
人って、他人の心を踏みにじっても鈍感なのに、自分がその立場になると敏感に反応するから。
殴る痛みよりも殴られる痛みは、忘れたくたって身体が覚えているから。

「どうしたんだい? まさか美里ちゃん、怖いの?」
「そんなことないよね。美里ちゃんは毎晩そのディルドでオナニーする変態さんだろう」
「そうそう。だって見ろよ、美里ちゃんのオマ○コ。モノ欲しそうに舌を覗かせてるぜ」

そうよ。人ってそうして、傷つけ合いながら生きていく……弱い生き物だから。
河添だって。この人たちだって。
それに、美里だって……

わたしは腰を落としていった。
両膝に手を押し当てたまま、和式トイレのスタイルでお尻を畳に近付けていく。

目線がズルズル下がって、それに追い掛けるように、ギラついた視線の群れも降りていった。
美里の前で半円を描くように座った人たちの喉が一斉に鳴った。

ちゅぷぅっ……!

「んんっ……はあぁぁ~」

下のお口がディルドに喰いついて、苦痛の悲鳴が漏れる。
それを大きく溜息を吐いてごまかした。

まだ先端だけだから。
ディルドの先っぽが、膣口に触れただけだから。

ズズッ……ズリュ、ズリュ、ズリュ……!

「す~っ、は~っ……あ、あぁ……み、みてぇ、美里の……お、オマ○コ……」

わたしは、大きく息を吸って大きく息を吐き出した。
こんなところを見て欲しくなんかないのに、エッチな単語を口にして、引きつった笑みを作った。

ミシミシとアソコお肉が軋んで、潤ってない粘膜が硬質な異物に引き伸ばされているのに。
美里の心が、真黒な恐怖に支配されかかっているのに。

だけど、この辛さは美里以外、誰にもわかってもらえないから。
人は、そういう生き物だから。

「はあ、はぁ……ふうんんっ……一気に……挿れますね……んっ」

呼吸を止めた。
愛する人のシルエットが頭をかすめて、美里の膣に半分埋まった異物に体温を感じた。

後悔なんかしていないよ。全然……
こうして見ると可愛いわね。ディルドくん。
美里のアソコと仲良くしてね。

そして、腰の力を抜きかけた……その時?!

パタン! って、荒々しく障子が開かれて時間が止まった。

「待ちなさいっ! 美里!」


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