第22話  成熟ボディ狂騒曲


岡本典子の視点


すーっと息を吸い込んだ。
肺の中にタバコとアルコールの匂いを沁み込ませて、唇を開かせた。

「どうでしょうか? 典子の身体は♪、気に入ってもらえまして? うふっ♪ これでも私、人妻なんですよ。正確には、元人妻ですけど……」

「典子ちゃ~ん。年はいくつ?」
「身長は? 体重は? ついでにスリーサイズも教えてよ~」
「そんなことよりさぁ、典子ちゃん、子供いるのぉ? 出産経験は~?」

私の挨拶を遮るように、居並ぶ男たちが声を上げた。
身体を前のめりにして、食い入るよう目付きで私を見ている。

「え~っと、年令はぁ、7年前に高校を卒業した25才ですぅ。身長は160センチ後半でぇ、体重は……う~ん、45キロとぉ……プラス2キロくらいかな。
スリーサイズは……上から88ー56ー87……やだぁ、なんか恥ずかしい。それとぉ、あ、赤ちゃんは……産んで……いません。経験ないです」

岡島典子なのに、岡本典子のプロフィールを紹介して、私はバスト88センチの胸を突き出した。
ウエスト56センチのくびれをベリーダンスのように揺らせた。
そして、そのまま回転してヒップ87センチのお尻を晒すと、そのまま腰をグラインドさせて円を描いてみせる。
紐になった水着をお尻のお肉に喰い込ませて、男を誘うように揺すった。

恥ずかしくなんかない。典子はまだまだ全然平気。
この10日間、今夜に備えて拓也と特訓してきたから。
恥ずかしくて死にたくなるようなエッチな練習を毎日してきたから。
本当に死んだ方がマシっていう恥ずかしい行為にも耐えてきたから。

「いいぞぉ、姉ちゃん!」
「ついでだぁ! そのエロ水着も脱いじまえよぉっ!」
「典子ちゃ~ん。おっぱい、おっぱい、おっぱい♪」
「典子ちゃ~ん。オマ○コ、オマ○コ、オマ○コ♪」

男たちの下品な掛け声に、ちょっぴり背中が震えてる。
ちょっぴり俯いて、ちょっぴり鼻の奥がツーンとなって、ちょっぴり目の奥が熱くなって。

そんな典子に、拓也が目で合図する。
お客様の機嫌を損ねるなって。

「あ、あぁぁ……」

私は男たちに背中を晒したまま、両手を後ろに這わせた。
指が震えているだけなのに焦らしていると勘違いさせて、水着のブラジャーを取り去った。
外し終えたそれを、拓也に手渡した。

「皆様、典子嬢からブラジャーのプレゼントでございます」

ショッキングピンクのブラジャーが、拓也の声と共に飛ぶ。
私を越えて飛び去って、背中から聞こえてくるのは、畳を這いまわる音と男たちの荒い鼻息。

「ふふっ、いい眺めだ。盛り上がっているうちにパンティーも頼むぜ」

すれ違うように立つ私の耳元で、いつもの拓也がささやいた。

わかっているわよ。いちいち指図しないで!
口の中で声にして、わざと自分を苛立たせる。
その勢いで、両手の指をショーツのサイドに潜らせた。
腰骨に引っ掛けた水着のショーツを、クルクルと丸めるようにしながら足から引き抜いていく。

「ううっ……恥ずかしい……」

耐えきれない唇が、掠れた声を吐き出した。
背中で「はあ~」って溜息が聞こえて、ざわついた気配がシンと静まりかえる。

全裸の身体に男たちの視線を一斉に浴びて、あんなエッチな水着でも、ないよりマシだって改めて感じた。
あんな紐みたいなショーツでも、典子のお尻の穴だけは守ってくれていたのに。
典子の恥ずかしい処だけは、ガードしてくれていたのに。

「おい、早くよこさないか」

静寂を破るように拓也がささやいた。
ささやいて私の右手からショーツを奪い取ると、にこやかな笑顔を作った。

「皆様、典子嬢から脱ぎたてパンティーのプレゼントでございます」

わざわざ拡げなくたっていいのに。
丸まった布切れを逆三角形に引っ張ると、小旗を振るようにそれを振り回している。
そして、エサを求めるおサルさんのように、男たちが寄って来るタイミングでポンと投げ捨てた。
ざわついた気配が帰ってきた。

「はあ、はぁ……おい、手を伸ばすな」
「なに言ってる? 初めに触れたのは、俺の方だぞ!」
「ええい、うるさい! このパンティーは、反対派総代の俺のモノだ!」

両耳だけじゃない。鳥肌の立った背中もあさましい争奪戦を感じ取っている。
典子の着けていた水着に我を失ったような人たちに、私は恐怖を感じた。

それなのに、どうして?
どうして拓也は平然としていられるの?
どうして、白い歯を見せて笑って眺めているの?

私は生まれたままの姿で立ち尽くしていた。
背中を向けているのに、典子の女が胸とアソコをそっと隠していた。


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河添拓也の視点


ふふっ、ここまでは順調のようだな。

俺は典子のパンティーに頬ずりしている男の姿に手応えを感じた。
それを物欲しそうに取り巻く、残りの男たちの表情にも。

「皆様、典子嬢の脱ぎたて水着はいかかでしたか? 幸運にも手に入れられた方には、後ほど彼女のお好きな部分に生タッチの特典もございますのでお愉しみに」

言葉を切った瞬間、ブラジャーとパンティーを握り締めた男ふたりが、だらしないほど顔の筋肉を緩めた。
獲物に有りつけなかった男たちの目に、不満の種火が灯る。

「典子、こっを向くんだ」

俺は、華奢な背中をポンと叩いてやった。
まるでスイッチが入ったように、ピンク色に染まった裸体が回転を始める。

「おおぉっ! 素晴らしい……!」

宴会の席に感嘆の声が拡がる。
無数の脂ぎった視線が、典子の身体を自由に舐めまわし、それが当然のように上か下。2か所の部分に固定化されていく。

「見ろよ、典子。あいつらの目を。瞬きをするのも忘れているぜ」

「あ、あぁ……そんな……みないで……」

俺と典子はふたりだけの会話をした。
もちろん、我を忘れているサルどもには聞こえやしない。

それにしてもだ、いい身体をしてるぜ。
こんな奴らに晒してやるのが惜しいくらいだ。

典子は両腕を腰に押し当てたまま、男の視線に耐え続けている。
羞恥色の肌から霧のような汗を滲ませて、蝋人形のように身体を固めていた。

だが、接待の目的は理解しているようだな。
間近で見れば引きつっているが、確かに典子は笑みを浮かべている。
口角を上げ気味に、リップの効いた唇から白い歯を覗かせてやれば、それだけで大抵の男はイチコロだろう。
かくいう俺も、ズボンを突き上げる下腹のモノを実感しているが。

「では皆様、次の余興に移りたいと思いますが、そろそろ彼女の成熟した肢体に男のアレが反応しているものかと……?
そこででございますが、皆様のジュニアを典子嬢が直接に鎮めたいそうです。ですが、時間の限りもございますので、誠に申し訳ございません。今夜お見えになった10人全員といいたいところですが、5人までとさせていただきます。是非に思われる方は、どうぞこちらへ。手コキ、フェラチオ、お好みの方法を申して下さい」


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