第6話:反省室の少女

その2


「うわ~、キッレイ!! これ、頂いちゃって、ホントにいいんですかぁ?」

 ワタシが贈った大きなバラの花束を抱えながら、梨香が華やかなはしゃぎ声をあげている。
 そんな彼女を見ていて、ワタシも嬉しくてしかたなかった。

 ・・・そうか、この子の歳じゃ、少々気取った高価な小物よりも、やっぱり人目につくような、豪華な雰囲気のプレゼントの方がよかったのか。

 ニコニコと笑いながら回りを見回すと、妬ましそうな顔をしたエスコーター達が何人か目についた。
 これなら梨香も、みんなに自慢できるだろう・・・

「お客様ぁ、ワタシ、お礼しますから・・・チョット目を瞑って、屈んでください。」

 舌足らずな、そんな言い方がワタシを擽る。

 梨香の言う通りに腰を屈めると、いきなり梨香はワタシの頬にチョンと唇を押し当てて、チュッと音をさせた。
 びっくりして目を開くと、悪戯っぽい笑顔に行き当たった。

「じゃ、今度お越しになったときも、また指名してくださいね。ゲンマン!」
 子供っぽく言うと、梨香はまるで跳ねるようにして、控え室に消えていった。

 ワタシも計画が一歩進んだのを確信した。この調子なら・・・この次は・・・

 と、その時・・・
「お客様」・・・と、不意に声をかけられて、ワタシはギョッとした。

 振り返ると、そこにはミツホが厳しい顔をして立っていた。

「困りますわ、あのようなことをなさっては。当館のスタッフは、お客様からの頂き物は、禁止されておりますの。・・・お蔭様であの子も、もう一度教育しなきゃなりませんわ。」

 ワタシは、どうしていいか分からずに、少し項垂れていた。
 追い討ちをかけるように、ミツホが続けた。

「それに、お客様も反省して頂かなくては・・・ここではお客様だって、必要ならお仕置きさせて頂いてますのよ。」


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 客から贈られた花束を抱えて、私室に戻った梨香を追いかけるようにして、エリ子を従えたミツホが姿を現した。

「梨香。いつも言ってるでしょ。お客様から頂き物をしちゃいけないって。これまでは大目に見てあげてたけれど、今日は許しませんからね。これから1日、反省室でゆっくり考えなさい。・・・エリ子、案内して、ちゃんと教えておやり! それとも、あんたを教育してやろうか。」

 ミツホの言葉に、蒼白な顔をしてエリ子が頷く。

「梨香、ついて来なさい。・・・でも、反省室でよかったのよ。これが懲罰室だったら、もっと大変なんだから。さ、こっちよ。」
「でもぉ・・・」
「でも、じゃあないの。痛い目に遭わないだけマシよ。早く。」


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「えぇーっ!! な~に、この部屋!!」

 不満そうな顔つきの梨香を反省室まで連れて来た時、梨香が驚いて頓狂な声をあげた。
 梨香が見回す反省室は・・・

 入り口の近くに、トイレと洗面台がセットになったユニットバスがあり、その奥にソファーベッドが置かれている。
 部屋の大きさは、ソファーベッドで一杯になる位の狭い空間だが、普段使っている私室も似たような大きさだ。

 このソファーベッドは折り畳むと壁に収容でき、その分だけやっと何もない空間が生まれる。
 ベッドの反対側の壁に埋め込まれたテレビ、そのすぐ下にあるやはり折り畳み式の机・・・どこから見ても清潔で機能的な、ビジネスホテルの一室である。

「反省室」という響きから想像していたイメージ・・・いつも客を案内している陵辱部屋や遊戯部屋などと同じような部屋だと思っていた・・・と、あまりな雰囲気の違いに驚きながらも、内心ホッとした梨香だった。

 エリ子が、そんな安心感を打ち砕くような説明を始めた。



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