第4話:逃亡の果てに ~続・針山の一夜~

その2


 イヤァッ!、ヤメテエェェッッ!!
 ユルシテエェェッッッ!!!

 スタッフがエリ子を連れ込んだのは・・・黒船館の医務室だった。
 マキの指示で、昨日の手当を受けさせ、体力を回復させて、今日の体罰をより完全に味あわせることになったのだ。

 しかしこのことは、エリ子には教えないこと、よ。いいわね・・・

 マキの指示は 細部にまで及んでいる。
 あらゆる機会をとらえ、黒船館の案内係に必要な礼儀作 法を教育し、浸透させること・・・
 キャプテンの定めた基本方針が、ここにも忠実に実践されている。

 医務室の中央に、診察用の椅子がポツンと置いてある。
 診察用の椅子??・・・一応、歯科医の椅子には似ている。
 しかし必要以上に頑丈に見える肘掛けや脚台に、幾つものベルトが取り付けられている。
 頭を乗せる部分にも、胸や腹が当たる部分にも・・・

 この椅子は、そこに座る者の自由を拘束し、診察者の思い通りの姿勢を強要できる、磔台でもあるのだ。
 これも開発部長・九兵衛の作品だ。

 スタッフはエリ子を、医務室の中央まで引きずって来ると、この診察用の椅子に押さえ付けた。素早く手錠を外し、両側の肘掛けに革のベルトで、肘と手首を固定する。
 椅子の脚台に、足首も固定された。

 白衣を着た医師が静かに現れ、エリ子の前に座る。
 涙にかすむエリ子の目には、 いよいよマキが昨夜の続きを行うために、姿を現したかのように映っている。

 マ、マ、マキサマッ!
 オネガイッ!、オネガイデスッッ!!
 オ、オ、オユルシクダサイッッ!!!

 エリ子の前に座った医師を、マキと思い込んだエリ子が、必死の哀願を続けている。
 その姿を、壁際に控えるスタッフが、面白そうに見やっている。
 医師も、微かに苦笑している。

 医師は何も言わずに手を伸ばし、エリ子の乳房に埋め込まれていたまち針の1本を摘むと、ツッと引き抜いた。
 ピリッ、微かな音を立て、針の周りの瘡蓋が剥が れる。

 ヒッ!!・・・エリ子が呻いた。
 針の抜けた跡から、また僅かに出血し、赤く細い筋を描いた。
 医師は、止血にガーゼを当てながら、次々に針を抜いて行く。

 ヒッ!!・・ヒッ!!・・ヒイィィッッ!!・・・・
 その度に、エリ子が苦しげな悲鳴をあげている。


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 その頃、開発部長室。

 久しぶりに姿を現した、開発部長・彦坂九兵衛は不機嫌だった。
 この頃、雑用がたて混んでいる。
 そのために、好きな研究も、新しい器具の開発にも、思い通りに時間を割くことができないのだ。

 開発部の部長室の机には、雑然と未決書類が積まれている。
 彼自身いいかげんな事もあり、忙しいとつい決済を忘れ、何日も未決のまま書類が放置される事がある。

 そうすると仕事が滞ったり、他部署から文句が来るので、秘書は常に急を要する書類を上の方へと置き直したり、どうしても急ぐ時は直接決済を迫る事もある。

 そんな未決書類の中に、手紙を見つけた九兵衛は秘書を呼び出した。

「何かね、これは。このようなものに一々返事を出せというのかね。」
「はい、特殊外交長官からも今朝、至急返事を出して欲しいとの催促もありました。」

「いいかね。こちらが開発したものを諜報部長が何に使用しようが、どうでもいい事だ。データさえ出してくれれば文句は無い。」
「そもそも、私の仕事は拷問器具の開発だ。中には、徳川政権初期に駿河問いを考えた人物と同じ名前であることをいい事に、それをネタに楽しむものもいるがね。」
「ま、そんな事はどうでもいい事だ。それでも何だかの返答が必要と言うなら、今、言ったことを適当にまとめて報告しておいてくれ。」

 そう言うと、別の書類に目を通し出す。
 これ以上は何を言って無駄なので秘書は部屋を後にした。

 開発部長が言った事は、普段言っている事なのでまとめるのは簡単だ。ただ、開発部としては、新規に開発した器具のデータを取れる機会は逃すべきで無いような気もする。

 また、彼女自身の気持ちとしてエリ子に同情する気持ちもある。
 さて、どうしよう、と思案しながら、開発部長付きの秘書嬢はワープロソフトを起動した。

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