第3話:針山の一夜
その3
スタッフが忙しそうに、準備を進めている。
豪奢な革張りの椅子が運ばれてきた。
マキがゆっくりと腰を降ろす。
その横に、小さな机が置かれる。
黒いレザーの張られた机の上に、色とりどりの頭をつけたまち針が、丁寧に並べられている。
何本あるのだろうか、とても数え切れないが、100本以上はあるのだろう。
乳房を擽られているエリ子は、早くも刺される場所を察したように、まち針を魅入られたように見つめている。
目に、恐怖が宿っている。
そう、お前の望み通りに、ここに刺してやるからね・・・・
自分の失敗を、思い出すまで、よ。何本位で思い出すか、楽しみね・・
全部刺しても、まだ思い出さなかったら・・ま、その時は覚悟するんだね。
マキがす~っと手を伸ばして、まち針を1本、摘み上げた。
その手の動きを見守っていたエリ子が、ヒッ、と小さく呻く。
恐怖に歯がカチカチと鳴っている。
乳房の真ん中に、針先を当てたマキが、僅かに力を加える。
針を中心にして、乳房が窪みを造っている。
少しずつ、少しずつ、窪みが深まる。
イ、イ、イヤッ・・イヤッ・・・・ア、ツウウゥゥッッ!!!
プスッ・・微かな音、と言うより手応えを残し、針先が乳房に埋まる。
小さな血の玉が、針の処にできている。
そのまま針は、頭を残して乳房に埋め込まれた。
エリ子の額に、汗が浮いている。
どう、感じはいかがかしら・・・ことさら優しい声音で、マキが聞く。
エリ子の息が荒い。
目を瞑り、首を僅かに振っている。
次の針を摘み上げたマキが、反対の乳房に押し当てた。
イタイ・・・ヤメテ、オネガイです。
エリ子の喘ぎを嗤うように、その針も根本まで押し込まれた。
さて、と・・その顔つきだと、まだまだ自分の失敗を、思い出せないようね。
どうやら、この針、全部必要みたいね・・・・
マキの囁くような問いに、エリ子が必死に許しを請うている。
あっ、いや、も、申し訳、アリマセンッ!!
オネガイですから、エリ子の失敗・・お、教えて下さいっ!!
は、反省しますから!!・・・・もう、しませんから、教えて下さいっ!!!
エリ子の悲鳴のような返答に構うことなく、再びマキは手を伸ばす。
一晩、ゆっくり時間があるのだから・・・マキの呟きに、エリ子は一層の絶望に沈む。
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アツゥウゥゥッッ・・・・アツゥウゥゥッッ・・・・
エリ子が喘いでいる。
既に両の乳房は、それぞれ50本も針が埋められているのであろうか。
赤・青・黄・・・・色とりどりのまち針の頭が、小さな花畑にも見える。
所々、血の筋が走っているのが、より凄惨な彩りを添えている。
いつまでも、甘えてるんじゃないよ・・・・
まだ思い出さないのかい・・それじゃ、次の段階に進めて欲しいんだね。
マキが、スッと立ち上がる。
エリ子が必死に叫んだ。
オ、オネガイ、ですっ!!・・・お、思い出しますから・・・
エリ子は・・エリ子は・・あぁぁっっ!・・
お、教えて下さいマシィィッッ!!
マキは報告書を読んで、知っているのだ。
エリ子が全く自分の失敗に気付いていないことを・・・。
開発部長・九兵衛はまだ若い、天才的な技術者なのだ。
しかし、その落ち着いた容貌からは、よほど年上に見える。
楽しいゲームね、これは・・・マキは内心、思っている。
エリ子に、自分の知らないことを、白状させるのだ。
そのためには、じっくり追いつめて、少しずつ誘導しながら、思い通りの台詞を囀らせてやる・・・
腕の見せ所ね、マキの顔に、期待の微笑みが浮かぶ。
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