ファンタジー官能小説『セクスカリバー』

Shyrock 作



<第32章「青碧の洞窟」目次>

第32章「青碧の洞窟」 第1話
第32章「青碧の洞窟」 第2話
第32章「青碧の洞窟」 第3話
第32章「青碧の洞窟」 第4話
第32章「青碧の洞窟」 第5話
第32章「青碧の洞窟」 第6話
第32章「青碧の洞窟」 第7話
第32章「青碧の洞窟」 第8話
第32章「青碧の洞窟」 第9話

セクスカリバー世界地図




<登場人物の現在の体力・魔力>

シャム 勇者 HP 830/830 MP 0/0
イヴ 神官 HP 680/680 MP 700/700
アリサ 猫耳 HP 690/690 MP 0/0
キュー ワルキューレ HP760/760 MP410/410
エンポリオ アーチャー HP 650/650 MP 0/0
マリア 聖女 HP 570/570 MP 790/790
ユマ 姫剣士 730/730 MP 0/0

シャルル 漁師・レジスタンス運動指導者 HP 880/880 MP 0/0
エリカ ウンディーネ女王 HP 580/580 MP 770/770
チルチル 街少女 HP 520/520 MP 0/0

ウチャギーナ 魔導師 HP 610/610 MP 730/730
リョマ 木こり (ウチャギーナと同行)

サチェル 祈祷師 (囚われの身) 



⚔⚔⚔



第32章「青碧の洞窟」 第1話

 ある箇所を誤って踏むと天井から岩が落下するという恐ろしい仕掛け『メガロック』は5か所存在したが、アリサが事前に察知したことで事なきを得た。
 その後は同様の仕掛けは途切れたためシャムたちはホッと安堵の息を漏らせた。

シャム「ふ~、やっと罠が終わったか……。ん……なんだろう? あの壁に彫ったレリーフは……?」

 シャムが男の顔を形どったレリーフに近づこうとすると、鋭い声でアリサが制止した。

アリサ「シャム、近づいてはだめええええ!」
シャム「ええっ? あれも罠なのか?」
アリサ「分からないけど、たぶん罠だと思うの。ちょっと待ってて、試してみるからああああ」

 アリサは地面に転がっている小石を拾うと、すぐにレリーフが彫られている壁面に向かって投げつけた。
 アリサが投げた小石は見事にレリーフを捉えた。
 次の瞬間、レリーフの口の部分から勢いよく矢が放たれた。

 ビシュッ!

シャム「うわっ!」
アリサ「きゃああああ!」

 矢はシャムたちの前を通過し、向かい側の壁面に当たって床に落ちた。
 レリーフから一定の距離に近づくと矢が自動的に飛び出す仕組みのようだ。
 怪我人が発生しなかったのは不幸中の幸いだ。

シャム「ぞぉ~」
アリサ「危なかったよおおおお」
キュー「不用意に進むと危険だよ。アリサちゃんが叫んでいなかったらシャムは今頃あの世に行ってたよ」
シャム「アリサに感謝しなければ」
アリサ「にゃんってことないよおおおお」
ユマ「『なんてこと』の間違いじゃないの?」
イヴ「アリサちゃんは『な』の発音が苦手で『にゃ』と発音することが多いんだけど、その辺は大目に見てあげてね」
ユマ「『なすび』が『にゃすび』、『ナゲット』が『にゃげっと』ということね。分かった」

 話題はレリーフの矢の件に戻った。

マリア「あのレリーフはおそらく『アロースリット』という罠だと思います」
エンポリオ「矢を使用した罠『アロースリット』は聞いたことがあるよ。卑怯な戦法だと思うよ」
シャム「よし、みんな気を引き締めて進もう」

 シャムたちが次々と罠を見破り打破して進んだことが、後に洞窟に登場するウチャギーナたちにとって幸いとなるのだが、シャムたちがのちにウチャギーナたちの危機を救うことになろうとは、むろん知る由もなかった。

アリサ「ねえ、みんな、この洞窟って奥に行けば行くほど青くなっていくような気がするんだけど……気のせいかなああああ?」
シャム「青というか青緑のような……壁や天井の色が変わってきた気がする……」
イヴ「水晶かサファイアが含まれてるのかしら……?」
キュー「分からないけど、とにかく奥に行くしかないないわ」

⚔⚔⚔

 シャムたちより1時間ほど遅れて、ウチャギーナとリョマがボヘミアン洞窟の入口に到着した。

ウチャギーナ「あらあら……見張り番が縛られているわ。すでにシャムたちは洞窟に入ったみたいね」
番人A「うぐぐぐ……」
リョマ「縄を解いてほしいのか? それは無理な注文だな。しばらくの間おとなしくしていろ」
ウチャギーナ「シャムたちが先に来てお膳立てをしてくれてるから無理なく中に入れそうね」
リョマ「シャムさんは相当な腕前のようだね」
ウチャギーナ「戦うたびにどんどんと強くなって行くみたい」
リョマ「なるほど、それが勇者というものなんだね」
ウチャギーナ「うわあ、中はかなり薄暗いわ」
リョマ「布袋に松明が何本か入っているので、明かりを灯そう」

 リョマは布袋から松明を取り出し火を灯した。
 薄暗かった洞窟内を明るく照らす。

リョマ「準備よし。私が先に行くのでウチャギーナは着いてきてくれ」
ウチャギーナ「分かったわ」

 しばらく進むと大きな岩がウチャギーナたちの行く手に立ちはだかっていた。

リョマ「ん? この岩は……!?」
ウチャギーナ「どうして通路の真ん中に大きな岩があるの?」
リョマ「この洞窟にはメガロックという罠が仕掛けられていたようだ」
ウチャギーナ「シャムたちに怪我はなかったかしら……」
リョマ「すでに罠を破壊して先に進んだようだね。シャムさんは罠を見破る能力を持っているようだ。すごいね」
ウチャギーナ「仲間の1人にアリサって子がいてね、その子は危険回避能力にすぐれているの、きっと彼女が見破ったんだと思うわ」
リョマ「仲間にすごい子がいるんだね。そんな子がいると助かるね」
ウチャギーナ「そうなの、すごく助かるの」
リョマ「ウチャギーナから色々と聞いてきたけど、仲間は多彩なようだね」
ウチャギーナ「そうなの、みんな個性豊かですごい人がいっぱいいるの」
リョマ「早くウチャギーナの仲間に会いたいね」
ウチャギーナ「きっと会えるわ」
リョマ「よし、じゃあがんばって追いつこう!」

⚔⚔⚔

 周囲は青い壁に囲まれていた。もっと正確にいうなら緑がかった青色と言うべきだろう。

サチェル「「あくうっ……い、痛い……も、もう、無理……あぁん……壊れる~……くひぃい……や……ややや……やや……や~~~~!」

 青碧の洞窟の奥から聞こえる……衣を引き裂くような女の悲鳴。
 その声の主は一糸まとわぬ哀れな姿で泣き叫ぶ祈祷師サチェルであった。
 サチェルはうつ伏せに寝かされ、真上には馬面の男がせわしく腰を動かしている。
 両手に鎖の輪っかが填められ男に乗られているため逃れるすべがない。
 男は半馬人で名前をバリキンソンという。自称男爵と名乗っているが素性は明らかではない。
 まるで馬並みの巨根に桃割れの狭間を抉られて、サチェルの表情は苦痛に歪んでいる。



第32章「青碧の洞窟」 第2話

バリキンソン「狭い割れ目ですねえ。私の自慢の魔羅で拡張してあげるので楽しみにしていてください。ひょっひょっひょっ」
サチェル「い、痛いっ! やめてっ……!」
バリキンソン「あなたのお兄様がやって来たら、やめてあげますよ」
サチェル「えっ!? 兄が来るの!?」
バリキンソン「置手紙を見れば、大切な妹を放ってはおけないはずです。だから必ず来ます」
サチェル「何と卑劣な……」
バリキンソン「卑劣とは人聞きが悪いですね。作戦と言ってください」
サチェル「兄が来たら、あなたたちなんか簡単に倒すわ」
バリキンソン「さあ、それはどうでしょうか? 確かにお兄様は優秀な竜騎士として名を馳せていますが、はたして無事にここまで辿りつくことができるでしょうかね? 洞窟の随所にあまたの罠を仕掛けておきましたからね。すべての罠を無事に逃れられたら辿りつくでしょうが。すべての罠を見破ることはたぶん難しいと思いますよ、よほど特別な危機察知能力を持っていれば別ですがね。ひょっひょっひょっ」
サチェル「そんなひどい……ひどすぎるわ……悪党!」
バリキンソン「ほほう、悪党ですか。その減らず口が叩けるのも今のうちですよ。お兄様が生きている間だけと言う方が分かりやすいですね。ひょっひょっひょっ」
サチェル「……」

 兄リョマを倒すために、バリキンソンが恐ろしい罠を仕掛けていると聞きサチェルは愕然とした。
 恐怖に震えるサチェルは抵抗する気力も弱まり、バリキンソンのなすがままになっていた。

⚔⚔⚔

 邪悪な罠を次々に打破したシャムたちは、洞窟のかなり奥、行き止まりになった場所に辿りついていた。
 部屋が2つある。

アリサ「にゃあ、ここまでの罠は全部壊したよおおおお」
シャム「アリサ、よくやった。ここが一番奥のようだが……」
ユマ「部屋が2つあるわ。2つとも怪しいけど、サチェルさんはどちらにいるのかしら?」
シャム「それは分からないけど、左の部屋のドアノッカーを見て」
イヴ「あれ? 右側の部屋の扉には平凡な鉄輪のドアノッカーが付いているけど、左側の部屋の扉には蹄鉄の形をしたドアノッカーが付いているわ」

 蹄鉄は馬の象徴であり、バリキンソンの居所と考えて間違いないだろう。

シャム「鍵はかかっているかな?」
エンポリオ「鍵開けには自信があるがやってみようか」
イヴ「待って! 取っ手をガチャガチャすると敵に気付かれてサチェルさんが危ないわ」
キュー「ここは私に任せて。ゴーレムを召喚して扉を一撃で壊すわ。敵が泡を食ってる間に突入するの。どう?」
シャム「よし、ここはキューとゴーレムに任そう」

 キューが召喚の呪文を唱える。
 チャンドラーの剣が稲光を放つ。
 まもなく1体のゴーレムが現れた。

キュー「ゴーレム! あの扉を壊して!」

 うつむけのサチェルに乗って息を荒げていたバリキンソンの腰の動きがはたと止まった。

バリキンソン「おや? 表に人の気配がしますね」
手下「もしかしてリョマが来たのでしょうか?」
バリキンソン「それはないと思いますよ。リョマ殿は今頃、岩石の下で眠っているか、矢の餌食になっていると思いますよ。表の様子を見てきてください」
手下「はい、男爵、承知しました!」

 手下が扉に向かうと、突然、扉が叩き壊されゴーレム拳が現れた。

手下「うわっ、なんだっ!」

 何が起きたのか訳が分からず手下は腰を抜かしてしまった。
 驚いたバリキンソンと5人の手下たちが一斉に扉の方を注視した。
 ゴーレムに続いて突入してきたのはシャムであった。
 ユマ、キュー、アリサ、イヴが次々になだれ込む。

バリキンソン「な、何者ですか……!?」

 予期せぬ乱入者たちにまごついているその隙に、ユマが走り出して手下Aと接敵。
 ユマが不敵な表情を浮かべたその刹那……
 手下Aは呻きを上げながら床に倒れ込んだ。

バリキンソン「何をもたついているのですか!? この者どもを倒しなさい!」

 バリキンソンの命令で手下Bが奇声をあげてシャムに切りかかっていったが、所詮はシャムの敵ではなかった。
 地面を這うように振り上げられたシャムの剣は手下Bを一撃で葬り去った。
 怖気づく手下たち。
 そして戸惑うバリキンソン……
 サチェル救出のため兄のリョマが現れることは予測していたが、よもやあの時のシャムたちが現れようとは……
 バリキンソンの脳裏には悪夢が蘇っていた。
 忘れもしないあの苦い記憶。それはクレスピンの泉で、ウンディーネの女王エリカを捕らえた際にシャムたちに邪魔をされたこと。

バリキンソン「むむむ……またしても、あなたたちですか……」
シャム「おい、ウマヅラ男爵! 相変らず悪事ばかり働いているようだが、もう逃がさないぞ!」
イヴ「バリキンソン、あの時はエリカさんを酷い目にあわせてくれたわね。今日はたっぷりとあの時のお礼をさせてもらうからね」
バリキンソン「ふん、そううまく行きますかね?」

 バリキンソンは腰の短刀を抜くとサチェルの首にあてがった。



第32章「青碧の洞窟」 第3話

バリキンソン「サチェル様がどうなっても良いのですか? サチェル様を助けたければ武器を捨てなさい」
シャム「むむっ、卑怯なヤツめ……」
バリキンソン「でもおかしいですね。リョマ様に宛てた手紙を置いてきたのに、どうして関係のないあなたたちがここにやって来たのですか? もしかしたら、リョマ様が怖気づいて、あなたたちにサチェル様救出を頼んだのでしょうかね?」
イヴ「私たちは頼まれて来たわけではないわ。たまたまサチェルさんの家を訪問したところ、彼女が誘拐されたことを知って私たちの意思で助けに来たのよ」
バリキンソン「それは実に立派な心がけですね。しかし残念ですが、リョマ様がここに来ない限りはサチェル様をお返しするわけにはいきません」
ユマ「つべこべ言わないで早く彼女を放して!」
バリキンソン「それは無理な注文です。さあ、早く武器を捨てなさい。脅かしではありませんよ。捨てないとどうなるか……」

 バリキンソンは再度サチェルの首に短刀を突き刺す素振りを見せた。

シャム「やめろっ! 分かった。みんな……武器を捨てよう……」

 シャムが自ら剣を床に捨て両手を頭の上で組んだ。
 イヴ、キュー、ユマもシャムにならって剣を捨てる。
 ゴーレムは呆然と立ち尽くしている。彼は命令がない限り動くことがない。

バリキンソン「ん? そこの猫耳さん、あなたも武器を捨ててください」
アリサ「私は武器は持ってないのおおおお」
バリキンソン「そうですかね? 金属製の付け爪も立派な武器だと思いますがね」
アリサ「にゃん、分かった、外すよおおおお」

 心ならずアリサも漆黒の爪を地面に捨てた。

 シャムたち4人が武器を捨てるさなか、少し離れた岩陰から弓を射ろうとしている者がいた。
 エンポリオである。
 バリンキンソンはシャムたち4人とサチェルに気を取られ、岩陰に隠れているエンポリオとマリアには気づいていない様子だ。

 鋭い矢が放たれ、見事バリキンソンの右の二の腕をに命中した。

バリキンソン「ぎゃぁ~~~!」

 もがき苦しむバリキンソン。
 持っていた短刀を地面に落としてしまった。

シャム「エンポリオ、でかしたぞ!」
バリキンソン「うぐぐっ……」

 一気に手下たちがシャムたちに襲いかかるが、すぐさま剣を拾って応戦する。
 バリキンソンは隙を見て後方の扉から脱出を試みる。

アリサ「逃がさないにゃああああ!」

 すんでのところで背後からアリサが飛びかかりバリキンソンの背中を引っ掻く。

バリキンソン「ぐわぁ~~~!」

 馬乗りになりバリキンソンを打つアリサ。

アリサ「この~!、この~!」
バリキンソン「痛いです! 乱暴はやめてください!」
アリサ「漆黒の爪を外しているから怪我は軽いよ、ありがたく思ってええええ」
バリキンソン「痛いです! やめてください!」

 援護に駆けつけたシャムがバリキンソンを押さえつける。
 バリンキンソンが捕らわれたことで戦意を喪失した手下たちは剣を投げ捨て投降した。

サチェル「皆さん、助けてくれて、ありがとうございました」
マリア「危ないところでしたね。風邪を引きますよ、早く服を着てくださいね」

 マリアは身につけているガウンを脱ぎ、裸のサチェルの肩に羽織ってやった。

サチェル「私は助けてもらったけど、兄がどうしているか心配です……」

 サチェルは顔を曇らせた。

シャム「だいじょうぶ、お兄さんは生きているよ」
サチェル「よかったぁ……」

 安堵の色を浮かべるサチェル。

シャム「おいらたちがサチェルさんを助けると手紙に書いておいたから心配いらないよ。もしお兄さんがおいらたちの後から追いかけてきたとしても、洞窟の罠はおいらたちが潰しておいたからだいじょうぶ」
サチェル「それなら安心です。何とお礼を申し上げればいいのやら……」

 ようやくサチェルの表情に笑みが浮かんだ。

イヴ「それはそうと、サチェルさん、顔に疲労の色が出ているわ。バリキンソン男爵に酷いことやいやらしいことをされて、心身ともに傷ついたことでしょう」
サチェル「顔に出てますか? でも、大丈夫です……少し休めばよくなると思います」
イヴ「でもこの洞窟でずっと休んでるというわけにはいかないものね。私からの提案なんだけど、ここにいるシャムがすぐに治してくれるので彼に任せるといいわ」
サチェル「シャムさんはお医者さんですか?」
イヴ「そうじゃないんだけど、彼は女性の怪我や疲労を100%治す特殊能力を持っているの。初めての時は少し恥ずかしい治療方法なんだけど、絶対に元気になるからおすすめよ」
サチェル「どうすればいいのですか?」
イヴ「シャムと1回だけ交わればいいだけなの。10分後には元気モリモリになってるわ」
サチェル「えっ……交わるって、もしかしたら……!? 男のアレを女のアソコに入れるってことですか?」
イヴ「アハハ、簡単にいえばそういうことかしら」
サチェル「そんな恥ずかしいこと、できるかなあ……」
キュー「大丈夫よ。私たちも怪我をしたら同じようにして治してもらってるから。薬草やキノコよりもよく効くのよ」

 サチェルはイヴやキューがすすめる驚きの治療法に目を丸くしている。



第32章「青碧の洞窟」 第4話

 救出された喜びで笑顔がこぼれるサチェルだが、長時間バリキンソンに責め続けられ体力はかなり衰え疲労困憊していた。
 説明を聞くと何やら怪しげな治療法だが、ここは彼らを提案にすがってみようとサチェルは思った。

シャム「おいらのチンヒールですぐに元気にしてやるからな、おいらに任せて」
サチェル「体力と魔力が回復するのですか?」
シャム「体力、魔力、気力、握力、膣力、全部回復したり上昇するぞ~」
サチェル「膣力とはなんですか?」
シャム「簡単にいうなら男のアレを締めつける力だな~」
サチェル「へえ、よく分からないけど上昇するのは嬉しいことです。よろしくお願いしますね」

 シャムがチンヒールの準備を始めると、周囲から仲間たちをはじめ、捕らわれたバリキンソンたちまでが興味深げに覗いている。

サチェル「あのぉ……顔が近いんですけど……しばらくの間、皆さんはどこかに行っててくれませんか?」
イヴ「これはセックスではなく治療だから周囲に人がいても気にしないでね。いいですね?」
サチェル「はい、分かりました……」

 イヴに諭されても、サチェルとしては交尾と同様の行為を、簡単に治療と割り切ることができなかった。
 救出時すでに全裸だったサチェルの上半身に布がかけられた。
 全裸のままだとあまりにも気の毒だという女性たちの心遣いからであった。
 布の中に手を忍ばせ乳房を愛撫する。チンヒールの前戯は胸から開始された。

サチェル「あっ……」

 最前列で熱視線を注ぐ女性たち。
 中でもアリサは身を乗り出しかじり付いて見ている。

アリサ「アリサもチンヒールしてほしくなってきたよおおおお」
イヴ「最近私もかすり傷程度しかしていないので、少しごぶさただわ。こんなの見せつけられると身体が疼いてきた……」
エンポリオ「よかったら俺とどうですか?」
エリカ「でもあなたとしても治癒効果がないもの」
エンポリオ「それな……そこを突かれたらどうしようもないな~」

 シャムはサチェルのデルタ地帯を愛撫しながらつぶさに調べた。

シャム「ふむ……サチェルさんクリトリスは光っていないなあ」
サチェル「……?」

 シャムの一言で、仲間の視線が一点に集中した。

サチェル「な、なんですか……? 恥ずかしいよ、見ないでくださいよ」

 サチェルは羞恥に顔を赤く染めている。

 過去、シャムと交わった女性たちのクリトリスには2種類あった。
 宝石のように光り輝くクリトリスを持つ女性たちと、薄紅色の肉芽を持つ女性たち。
 その相違はいったい何を意味しているのか……
 謎は深まるばかりであった。

 シャムは手慣れた手つきでサチを愛撫し、サチが昂ぶってきた頃、怒張した肉柱を一気に挿入した。

サチェル「あぁ~っ……」

 ズッコンズッコン! ズッコンズッコン!

 早くも結合部から粘着質の卑猥な音が響く。
 周囲からは2人の様子を食い入るように見つめている。

 ズッコンズッコン! ズッコンズッコン!

シャム「はぁはぁはぁ~」
サチェル「あんあんあん! あんあんあん!」

 白蝋のように青ざめた顔が次第に血色が増してきた頃、シャムたちがやって来た方向から騒々しい足音が聞こえてきた。

リョマ「サチェル~~~~~! 大丈夫か~~~~~!? ぬぬっ!? 私の妹に何をしている~~~~~!!」
ウチャギーナ「ま、待って! あれは違うの……!」

 リョマはウチャギーナの制止も聞かず、斧を振り上げると猛烈な勢いでシャムに襲いかかった。

リョマ「おのれ~~~~~~~!!」
ウチャギーナ「きゃ~~~~~! シャム、逃げて~~~~~!」

 サチャルの上で腰を振っているシャムは肝をつぶした。
 剣をとっている暇がない。
 リョマの鬼気迫る勢いを誰一人として止めることができない。
 幸いシャムは間一髪でその一撃をかわすことができた。

サチェル「お兄さん、やめて~~~! 私は治療を受けているだけなの~~~!」

 妹サチェルの声さえも、リョマの耳には届かない。
 ようやく届いても……

リョマ「そんな治療があるものか~~~!」

 冷静さを失っているリョマには誰の言葉も耳に入らないようだ。
 リョマが二撃目をシャムに向けた時、キューが剣でさえぎった。

 カキ~ン!

キュー「この分らず屋が~! 私が相手になってあげるわ!」
リョマ「ん? その羽根はワルキューレか!? 何人も私の邪魔をさせない!」

 剣と斧のぶつかり合いは一瞬しのぎを削ったが、腕力の差でリョマがキューを押し倒してしまった。

キュー「きゃあ~~~~~!」

 次の刹那、ユマとイヴが挑む。

リョマ「邪魔をするな! 妹を犯そうとする者を討ち果たすだけだ!」

 キ~ン!
 カッ!

 イヴとユマの攻撃を斧で受け止めたリョマは軽々と押し返してしまった。
 尻もちをつく2人。

イヴ「キャ~~~~~!」
ユマ「きゃっ!」

サチェル「お兄さん、もうやめて~~~っ!」

 あられもない姿のサチェルが両手を広げ、リョマの前に立ちはだかった。
 その迫力は優美な外見とは程遠く、アシュラ神が降臨したかのごとく凄まじいものであった。



第32章「青碧の洞窟」 第5話

リョマ「サチェル、そこを退くんだ! おまえを犯す者を何人たりとも許してはおけない!」
サチェル「私は犯されてなんかいないわ!」
リョマ「しかし、おまえはそのスケベそうな顔の男にいやらしいことをされているではないか!?」
シャム「スケベそうって……おいらマジで切れたぞ~~~!」
アリサ「まあまあシャムあんまり怒らないで。スケベーというのは当たってないわけでもないのでええええ」
シャム「アリサまでがそんなことを……」

 アリサにまで言われて落胆するシャム。

サチェル「お兄さん、よく聞いて。これはチンヒールという体力と魔力回復の治療なの。薬草やキノコよりも断然効果があるらしいの。ほら見て、私はこのとおり元気になったわ!」

 サチェルはそのなまめかしい姿態をリョマに見せつけた。
 妹の全裸を見せつけられて目のやり場に困るリョマ。

リョマ「とにかく早く服を着ろ……」
サチェル「あら、すっかり忘れてたわ。や~だ、恥ずかしい……」

 ウチャギーナがチンヒールについてリョマに詳しく話す。
 リョマはようやく理解したようで、斧を地面に置き深々とこうべを垂れた。

リョマ「シャム様、皆様、この度は危険を顧みずサチェルを助けってくださったのに、私がとんだ勘違いをしてしまい、常軌を逸した行動をとってしまったことを深く陳謝します。どうかお許しください」

 リョマは冷静さを欠いていた自身の行動を恥じ、シャムたちに陳謝するとともにサチェル救出の感謝を述べた。

シャム「分かればいいんだよ。分かれば~。あはははは~~~」
マリア「シャムさん、その尊大な態度はいかがなものかと思いますが」
シャム「ん? あぁ、そうだな。あははは、いずれにしてもサチェルさんが無事でよかったな~」
リョマ「シャムさんや皆さんの勇気のお陰で助かりました。本当にありがとうございました」

 リョマの横にはウチャギーナが笑顔で立っている。

シャム「それはさておき、ウチャギーナ、てっきり死んだと思っていたぞ……生きていてよかった、クスン……」
イヴ「ウチャギーナちゃん、助かったのね、よかったわ。でも、どうしてリョマさんといっしょにいるの?」
ウチャギーナ「実はリョマに助けてもらったの」
イヴ「そうだったの? リョマさん、ウチャギーナちゃんを助けてくれて感謝します!」
アリサ「リョマさん、ありがとおおおお!」
リョマ「助けたというより偶然だったんですよ。私の馬車が塔の下を通りかかった時彼女が落ちてきて……。少しでもずれていたらと思うとゾッとしますよ」

 塔の上から落下し偶然通りかかった馬車が拾うとは、何という幸運であろうか。
 まさに奇跡的な生還といえる。
 ウチャギーナは稀に見る幸運の持ち主なのかも知れない。

キュー「ウチャギーナが塔の上から真っ逆さまに落ちた時は正直もうダメだと思ったよ」
ウチャギーナ「私も落ちていく途中『もう死ぬんだ』と思ったわ。いつのまにか気絶してしまって……でも、落ちたところがたまたまリョマの馬車の上だった。馬車に乗せていた藁が緩衝材になったのね。本当にツイていたわ」
イヴ「本当に良かったわ。ところで先程からリョマさんを呼び捨てしているけど、もしかしたらもう親密な関係なのかな? あは」
ウチャギーナ「えっ!? 呼び捨てにしてた? 親密な関係だなんて嫌だわ……」

 ウチャギーナは顔を赤らめた。

イヴ「あは、まあ、その辺はあまり詮索しないでおくわ。とにかく助かってよかった」
ユマ「それはそうとリョマさん、どうしてあなたはバリキンソン男爵に狙われているのですか? 妹さんをおとりにしてまで狙うとはよほどわけがありそうですね」
リョマ「はい、それには深い事情があるのです。話は天界に住む竜王ナーガと魔界に住む魔竜王ヴァースキーとの100年戦争にさかのぼります。我々竜騎士たちは竜王ナーガを支援するため、騎士団を結成し魔竜王ヴァースキーのしもべである魔物たちと激しい戦いを繰り広げてきました。ヴァースキーは相当な野心家で初めは魔界を支配することを目論んでいましたが、魔界には魔王ルシファーが君臨していて思うように行かなかったようです。
 そこで目をつけたのが地上でした。彼らは早速地上への侵攻を企て次々城を占領していきましたが、彼の悪行を知り激怒したのが天界の竜王ナーガでした。ところがナーガ率いる天使軍団や妖精軍団は、魔物たちに次々打ち破られ、ナーガは窮地に立たされてしまいました。ナーガの苦境を見るに見かねた我々の祖先たちはナーガを支援すべく騎士団を結成しました。それが『竜騎士団』の始まりです。竜騎士は竜を自由に操ることができるため、魔物たちと互角に戦うことができました。しかしなかなか決着がつかず、戦いは100年に及んでしまったのです。
 そして苦難のすえ、ついに、ナーガと我々竜騎士団は魔竜王ヴァースキーを打ち破ることができました。捕らえられたヴァースキーはある孤島に閉じ込められ、その魔力は神の力により封印されてしまったのです。ところが、彼の力を利用するため彼を助けようとした怪物が現れました」
シャム「怪物とは……?」



第32章「青碧の洞窟」 第6話

リョマ「メドゥーサの娘『メドゥサオール』です」
シャム「げげっ……! メドゥサオールだと!?」
リョマ「お嫌いなようで」
シャム「あんなバケモノ好きな者はいないだろう」
イヴ「石化魔法をあやつる厄介な怪物だものね」
リョマ「よくご存知ですね。彼女に見つめられただけで、全ての者が石になってしまいます」
シャム「おいらは可愛い子を見つめるだけで、股間が石になってしまうけどな~」
イヴ「このエロ勇者が!」

 シャムの尻をギュッとつねるイヴ。

シャム「いててっ、おい、乱暴はやめろ」
リョマ「美形に似合わない手荒なことを……」
イヴ「美形? それは光栄です、リョマさん! で、話は戻るけど、メドゥサオールはヴァースキーを助けるために宿敵である竜騎士のあなたを消そうとしたわけね?」
リョマ「はい、そのとおりです。100年戦争が終結した後、竜騎士団は解散し、それぞれの故郷に帰っていきました。分散してしまって結束のなくなった私たちの仲間を消すことは、メドゥサオールにとってはさほど難しいことではなかったのです。すでに仲間の何人かが殺害されてしまいました」
マリア「まあ、そんな酷いことを……」
アリサ「でもサチェルさんをさらってリョマさんを陥れようとしたのはバリキンソン男爵だったのはどうしてええええ?」
リョマ「おそらく彼はメドゥサオールの手下か、もしくは何らかの取引をしていたのでしょう」
アリサ「アリサ聞いてくるうううう」

 バリキンソンとその手下たちは捕らえられ洞窟の隅に繋がれている。
 アリサは近づくと、

アリサ「ねえ、ウマズラおじさああああん」
バリキンソン「ふん、そんな人物はここにはいませんね。私にはバリキンソン男爵と言う、歴とした名前と身分があります」
アリサ「捕らえられているくせに、そんな威張ってもダメええええ」

 アリサはバリキンソンの頬を軽く引っ掻いた。

バリキンソン「いたいっ! 何をするのですか! この猫女が~!」
アリサ「アリサ、猫女と違うも~~~ん! ネコミミだよおおおお!」
バリキンソン「さほど変わらないと思いますが」
アリサ「すごく変わるの~! というか、そんな話はどうでもいいの。それより、おじさんはメデゥサオールの手下なんでしょおおおお?」

 『手下』と呼称されて自尊心が傷ついたようでバリキンソンは顔をしかめて不快感を表した。

バリキンソン「むっ……手下ではありません。メデゥサオール様の協力者です」
アリサ「この際どちらでもいいけど、どうしてあんなバケモノの味方をしているおおおお?」
バリキンソン「ひょっひょっひょっ、なかなか鋭いところを突いてきますね。メデゥサオール様が地上を征服すれば、私は一国一城の王になることを約束されているのですよ。いつまでも男爵止まりではつまらないですからね」
アリサ「そんなに国が欲しいのおおおお?」
バリキンソン「当然ではないですか」
アリサ「ねえ~シャム聞こえたあ~? このウマズラおじさん、国が欲しいんだってててて」
シャム「むむむ、何と欲深いやつだ! おのれの欲望のために多くの人々を不幸に巻き込むとは……絶対に許さんぞ!」

 シャムは怒りを剥き出しにし剣を抜くとバリキンソンの首筋に当てた。
 バリキンソンは血相を変え謝罪の言葉を並べ立てる。

バリキンソン「どうかお許しください……命だけは助けてください……お願いします!」
シャム「や~めた。おまえの首を叩き切っても何の得にもならないからなあ。その代わりロマンチーノ城の牢にぶち込んでメデゥサオールの情報を聞き出してやるからな。楽しみにしていろ」

 何とか一命を取りとめたことで安堵の表情を浮かべるバリキンソン。

バリキンソン「私の命を助けてくれるのですか!? ううう……感謝します……」
シャム「ん? 鬼の目にも涙……じゃなくて、馬の目にも涙か?」
イヴ「いいえ、シャム、この男は信用ならないわ。嘘の涙だって流せるヤツだから」
バリキンソン「そのようなことは決してございません……」

 シャムは顎に手を当て思索を巡らせている。

シャム「バリキンソンたちをどうするかだなあ……やつらを連れて旅をするわけにはいかないからなあ……とはいっても皆でロマンチーノ城に戻っていると、道草を食ってしまうしなあ……困ったなあ……」

 その時、ユマが声をあげた。

ユマ「じゃあ、私が彼らをロマンチーノ城まで連行するわ」
シャム「ユマが行ってくれるのか?」
ユマ「久しぶりにロマンチーノ国王に会ってご挨拶したいし。それにシャムに助けてもらったこともちゃんと報告しなくては」
シャム「でもバリキンソンと手下が2人いるから大変だぞ」
エンポリオ「じゃあ、俺が護衛するよ」
シャム「エンポリオも行ってくれるのか? それは安心だ。それじゃこうしよう、一旦みんなでベガ村に戻って、シャルルたちと合流して、先の旅に進むメンバーと、ロマンチーノ城に向かうメンバーを決めることにしよう」
イヴ「それがいいわ」

 リョマがシャムたちの会話を聞き驚きの表情を浮かべている。

リョマ「ウチャギーナからシャムさんたちと旅をしていることは聞いていますが、まさかロマンチーノ国の王子様だったとは知りませんでした……いやあ、びっくりしましたよ」
シャム「いや、それは以前のこと。今は違うんだ。おいらは地上に現れた魔物たちを退治するために旅をする1人の男だ」
リョマ「皆さんの旅の目的はウチャギーナから聞き大変感服し共感しております。もしお邪魔でなければ、私をお仲間に加えていただけないでしょうか?」
シャム「うそ~~~っ! マジで~~~!? 本当に~~~!? リョマさんが仲間になってくれるの? 嬉し過ぎる~~~!」
リョマ「微力ながらお役に立てるようがんばります!」
シャム「じゃあ、リョマさん……呼び捨てでもいいな?」
リョマ「お好きなように呼んでください」
シャム「よし、じゃあ、リョマは今日からおいらたちの仲間だ~!」
アリサ「わ~~~いいいい!」
イヴ「よろしくね、リョマさん」
キュー「頼もしい仲間が増えたわ。前衛も厚くなるし~」
マリア「どうぞよろしく頼みます」

 リョマが仲間に加わった!



第32章「青碧の洞窟」 第7話

 竜騎士リョマの仲間入りをシャムたちは大いに喜んだが、中でもウチャギーナの歓迎ぶりは相当なものであった。

ウチャギーナ「リョマ、仲間になってくれてありがとう!」
リョマ「礼を言うのは私の方だよ。皆さんは危険を顧みずサチェルの命を救ってくださった。今度は私が皆さんにお返しする番だよ。皆さんといっしょにメデゥサオールを倒したい。ウチャギーナ、これからもよろしく頼むね」
ウチャギーナ「リョマが仲間になってくれたら、皆もきっと心強いはずよ」
リョマ「期待に応えられるようがんばるよ。ところで、シャム王子様……?」

 リョマは神妙な面持ちでシャムに語りかけた。

シャム「仲間なら呼び捨てでいいよ。おいらをシャムと呼んでくれ」
リョマ「しかしロマンチーノ国の王子様を呼び捨てにするのは、騎士としての礼儀に欠けます」
シャム「ここでは堅苦しい礼儀は一切なしだ。リョマは今日からおいらたちといっしょに旅をする仲間だ。よろしくな~」
リョマ「ではシャムと呼ばせていただきます」
シャム「ははははは、まだ硬いけどまあいいか。リョマの思うようにやればいいさ」
リョマ「では早速お聞きします」
シャム「なんだ?」
リョマ「今後の予定を教えてください」
シャム「このペルセ島から出て魔物の親玉を退治に行く」
リョマ「大雑把ですね。もう少し詳しく教えてくれませんか。親玉とは、先ほどバリキンソンが言っていたメデゥサオールのことですか?」
シャム「半分は当たってる」
リョマ「残りの半分はなんですか?」
シャム「ルシファー」
リョマ「なんと……! 魔界の帝王ルシファーを倒すつもりですか……!?」

 とてつもないシャムの大望にリョマは唖然とした。

シャム「そう」
リョマ「本当に本当ですか?」
シャム「こんなこと冗談で言えるか」
リョマ「よく分かりました……それでこそ真の勇者です。地の果てでも地獄の果てでもどこまでもお供させてもらいます」
シャム「うわ~、すごい意気込み! 頼もしい漢だな~!」
リョマ「ロマンチーノ城でバリキンソンに尋問してもどこまで白状するか疑問ですね。しゃべると命が危ないと分かっていると思いますからね。できるだけここで白状させる方が得策かと思います」

 リョマの助言にうなづいたシャムは、再びバリキンソンのところに歩み寄り彼の胸倉をつかみ拳を振り上げた。

シャム「おい、バリキンソン! おまえ、メデゥサオールと会ったことがあるんだろう? どこで会った!?」
バリキンソン「ふん、人にものをたずねるときはもっと紳士的にたずねるものですよ。あなたのような野蛮な人は好きになれませんね」
シャム「なんだと! おまえのような悪党を紳士的に扱うお人好しがどこにいる! つべこべ言ってないで早く答えろ! それともこの拳が欲しいのか!?」
バリキンソン「わ、分かりましたよ……話しますよ、話しますから乱暴はやめてください!」
シャム「殴られるのが嫌なら早くしゃべれ」
バリキンソン「実は会ったことは一度もないんです」
シャム「嘘を言うな!」
バリキンソン「いいえ本当なんです。だって考えてみてください。あの方とは顔を合わすだけで石に変えられてしまうわけですから、当然会いたくないですよ。私に話を持ちかけてきたのは参謀のセルペンテ公爵なんです。『メデゥサオール様が地上征服を企てているので、ぜひ力を貸してほしい』と頼んできたのです。協力して成功を収めれば 地上の国を1つ与えると……」
シャム「それで魔界の応援をしているわけだな?」
バリキンソン「まあ、そう言うことです」
シャム「バカヤロ~~~! 半馬人も地上人の端くれだろう~~~!?」

 シャムはバリキンソンの頬を平手打ちをくらわせた。

バリキンソン「ひぃ~~~っ! 乱暴はやめてください!」
マリア「シャムさん、捕虜に乱暴はいけませんわ。あなたらしくありませんよ」
シャム「おいら、まじで頭にきた……」
アリサ「シャム、私も先程ウマズラの顔を掻きむしったので人のことは言えないけど、捕らえられた者に乱暴はよくないと思うううう」

 マリアが微笑みを浮かべてやさしくバリキンソンにたずねた。

マリア「バリキンソンさん、セルペンテ公爵のことで教えてくださいな」
バリキンソン「……なんでしょうか?」
マリア「先程セルペンテ公爵はメデゥサオールの参謀だと言いましたね。ではメデゥサオールのそばにいる彼はどうして石化しないのでしょうか?」
バリキンソン「セルペンテ公爵は自分は石化しない体質を持っていると言ってました。詳しいことは分かりませんが」
マリア「分かりました。ではもう一つ教えてください。セルペンテ公爵はどこに住んでいるのですか?」
バリキンソン「それは言えません。言えば私は殺されます」
マリア「分かりました。これ以上は問いません。あなたが暗殺されたなんて聞きたくないですからね」
バリキンソン「敵である私に何とやさしいお言葉を……」
マリア「味方でも敵でも無駄に命は落としてほしくはありませんからね。私からは以上です」
バリキンソン「ちょっと待ってください」
マリア「何ですか?」
バリキンソン「セルペンテ公爵の居住地は言えませんが、会った場所を話すことはできます」
マリア「それはどこですか?」
バリキンソン「ポリュラスです」
マリア「よくぞ話してくれました。あなたの罪は軽いものではありませんが、私たちは決してあなたをメデゥサオールに殺させません」
バリキンソン「ううう……ありがとうございます」
キュー「母親のメデューサはかつて北のオデッセイ大陸に住んでいたという伝説があるの。ポリュラスはオデッセイ大陸の最南端の街。この地に何かヒントがあるかも知れないわ」
イヴ「北のオデッセイ大陸に渡って調べてみようよ」
リョマ「まずはこの島から近いポリュラスに行くのがよいと思います。大きな街なので人口も多く賑やかで情報集めには最適だと思います。砦の波止場から船に乗って数時間あれば着くでしょう」
シャム「よし、決まった! ポリュラスに行こう~!」



第32章「青碧の洞窟」 第8話

アリサ「オデッセイ大陸はどんな所かなああああ?」
マリア「訪れたことはありませんが、何でもロマンチーノ大陸よりも寒い所だと聞いています」
リョマ「私はかなり前になるが行ったことがありますよ。大陸の北部は万年雪で覆われていて行軍が大変だった記憶がありますね」
イヴ「それならたやすく野宿ができないね。宿屋は今まで以上に大切な場所になるね」
リョマ「ところが広大な大陸の割りに街が少なく宿屋も少ないので宿泊には苦労するかも知れませんね」
シャム「心配ばかりしてても始まらないぞ! さあ、行こう~!」

 シャムたちはボヘミアン洞窟を出て、一度ベガ村に戻りシャルルたちと合流し旅支度を整えることにした。

バリキンソン「ちょっと待ってください。旅立つ前に、皆さんにお渡ししたいものがあります」
シャム「なんだ? 『破滅の剣』のような使うと災いが降りかかるような物なら要らないぞ」
バリキンソン「違います。皆さんに危害を加えるつもりはもうありません。私の命を助けてくださったお礼にささやかながら進呈したいアイテムがあるのです」
シャム「へ~、何をくれるんだ?」

 縛られて両手が使えないバリキンソンは洞窟内の宝箱のありかをシャムたちに伝えた。
 宝箱を開けると、ハガネの鎧3領、ハガネの盾3枚、ハガネの短剣1本、ハガネの爪1枚が入っていた。

バリキンソン「実は私の蹄鉄はハガネでできておりまして、それと同じ材質で造らせた大変丈夫な防具なんです。どうぞお使いください」
シャム「そうか、じゃあ遠慮なくもらっとくぞ~!」

 シャムはハガネの鎧とハガネの盾を装備した!
 リョマはハガネの鎧とハガネの盾を装備した!
 シャルル用としてハガネの鎧とハガネの盾を手に入れた!
 エンポリオはハガネの短剣を装備した!
 アリサはハガネの爪を装備した!

⚔⚔⚔

 ここはベガの村、例の1軒しかない食堂。
 店内ではウチャギーナの無事を手放しで喜び合うシャムたちの明るい声が轟いていた。

シャルル「ウチャギーナ、生きていて良かったよ~。俺、嬉しくて涙が止まらないぞ~」
エリカ「それにしても通りがかったリョマさんの荷馬車の中に落ちるとは、ウチャギーナさんは何という幸運の持ち主でしょうか」
チルチル「ウチャギーナちゃんとリョマさん、二人はきっと前世から出会う運命だったでピョン♫」
ウチャギーナ「みんなありがとう。これはきっと生きて悪を滅ぼしなさい、という神の思し召しかも知れないわ」
マリア「私も神様のご意思だと思います」

 新しく仲間に加わったリョマが挨拶をした。

リョマ「リョマ・ジーグフリードです。訳あってしばらく山にこもっておりましたが、このたび悪魔たちと戦う決意をしました。少しでも皆様のお役に立てるようがんばりますのでよろしくお願いします」
シャム「硬いって~。挨拶が硬いから~」
アリサ「硬いのはナニだけでよい……だよねええええ」
シャム「おいらの言いたいことを先回りして言うなって」
リョマ「ははははは~、本当に愉快な人たちですね」
シャム「まあ、気楽に行こうぜ~」

 捕縛したバリキンソン男爵に改心の様子は見られるが、これまでの悪行から考えて罪を許すわけにはいかない。
 ロマンチーノ城まで連行し裁判のうえそれ相応の刑に服さなければならないだろう。

ユマ「シャム、じゃあロマンチーノ城までバリキンソンを送り届けるのでシャルルとエンポリオを借りるわ。国王にお会いしてシャムたちに助けてもらったことを報告しておくわ。シャムの活躍もきちんと報告しておくからね。ついでにシャムにチンヒールをしてもらったことも言っておくね」
シャム「ゴホン、それは言わなくてよろしい」
ユマ「用事が済んだらまた皆と合流するからね」
シャム「おう、頼むぞ。親父には、みやげにメデゥサオールの首を持って帰るから楽しみにしていろと伝えておいてくれ」
ユマ「ゲゲッ、さすがにそれは……」
シャム「ははははは~、冗談冗談~」
ユマ「それとねシャム、改心したとはいっても、曲者のバリキンソンとその手下たちなので、連れが欲しいの」
シャム「もう用意してるぞ。供としてシャルルとエンポリオの2人を連れて行ってくれ。2人にはすでに伝えている」
シャルル「ユマ、よろしくな~!」
エンポリオ「ユマ姫、よろしく頼みます!」
ユマ「よろしくね。2人とも途中で変なことしないでね」
シャルル「俺はシャムのようなエロいことはしないから安心してくれ」
シャム「ムッ……」
エンポリオ「心配ご無用。旅に出る前に腰が抜けるほど楽しんできたので」
ユマ「なに、それ?」
エンポリオ「余計なことを言ってしまった……いやいや、今の話は聞かなかったことに」
シャム「シャルル、エンポリオ、ユマを頼むぞ~」
シャルル「ユマ姫、このシャルルがいる限り心配ないぞ」
エンポリオ「護衛は俺に任せてください!」



第32章「青碧の洞窟」 第9話

 ユマ、シャルル、エンポリオがバリキンソンの護送について打ち合わせていた頃、リョマと妹のサチェルは今後の道筋を話し合っていた。
 リョマはシャムたちの旅に同行することになったが、サチェルは引き続き村でやりたいことがあるらしい。
 サチェルは祈祷師という職業のかたわら村の子供たちに勉強を教えているのだ。

サチェル「皆様、危険をかえりみず私を救出してくださりいくら感謝をしてもしきれません。このご恩は生涯忘れません。本当は私も皆様といっしょに旅に出たいのですが、どうしても村に残らなければならない事情があるのです。そのため兄には私の分までがんばってほしいと思っています。皆様のご活躍を心よりお祈りいたします。もしも祈祷の力が必要になったらいつでもお声をかけてください」
シャム「そのときは伝書鳩を飛ばすからな」
サチェル「承知しました」
シャム「どんなときに祈祷をするのかよく分からないけど、そのときは頼むぞ」
エリカ「祈祷は勝利を祈ったり豊作を願ったりする場合にも行ないますが 呪いを解く場合にも祈祷の力を使います」
シャム「ぞ~っ……」
エリカ「呪いと聞いて恐怖や悪寒を感じるのは シャムさんがかつて女性に恨まれるようなことをしたからではありませんか?」
シャム「いやいや、女の子に呪われるようなことはしていない……はずだけどなあ。なあイヴ?」
イヴ「どうして私に聞くの。王子様だった頃のシャムは雲の上の人だったので私が知ってるわけないじゃないの」
エリカ「ここで言ってるのは男女間の私怨ではありません。男女間の呪いはシャムさんに任せるとして」
シャム「任せられたくない」

 エリカはふっと息を吐くと、呪いについて語りはじめた。

エリカ「ここでお話しているのは敵方の祈祷師の呪詛や、『破滅の剣』や『呪いの指輪』などで呪われてしまったときの対処法です。呪いは薬や魔法で除去できません。必ずサチェルさんのような霊力のある祈祷師さんや霊媒師さんの力が必要となります」
シャム「なるほど、では旅がうまく行くよう祈祷してくれないか」
サチェル「今、道具がないので祈祷はできませんが、ポリュラスのことをざっと占うことはできますよ」
アリサ「それなら美味しいパスタのお店を占ってええええ」
イヴ「レストランを占ってどうするの、全くもう、食いしん坊なんだから」
リョマ「サチェル、ポリュラスやその他行く先のことでヒントになりそうなことがあったら教えてくれないか」
サチェル「はい、分かりました」

 サチェルは瞳を閉じ瞑想を始めた。

サチェル「ポリュラス市内の東側に小さなレストランが見えます……その店で重要な情報が得られるでしょう……先ずはその店に行くことです……店の名前は頭文字の『D』だけ見えます……後が分からなくて申し訳ありません……」
イヴ「いいえ、それだけでもすごく助かるわ。行く場所がはっきりとしたわ」
キュー「ポリュラスで頭文字に『D』が付くレストランね。ありがとう、サチェルさん」
リョマ「ところでウチャギーナ、おばあさんの所に寄らなくていいの? おばあさんに連絡しないでこの島を出るのは拙いだろう?」
ウチャギーナ「おばあちゃんには目的を果たすまでは帰らないと伝えてあるから。皆とはぐれてしまうと、追いつくのが大変なので、皆といっしょに行くわ」
リョマ「よし分かった。いっしょに行こう」
サチェル「リョマお兄さんの笑顔を久しぶりに見た気がするわ。ウチャギーナさんという素敵な人と出会えてよかったね」
リョマ「そんなことを言われると照れるなあ。ははははは~」

⚔⚔⚔

 一晩ぐっすりと休んだシャムたちは、翌朝旅の準備を整え2グループに分かれて出発するときが来た。
 北のオデッセイ大陸を目指すのはシャム、イヴ、アリサ、キュー、ウチャギーナ、マリア、エリカ、チルチル、そして新加入のリョマ。
 一方、南のロマンチーノ城に向かうのは、ユマ、シャルル、エンポリオ……さらにはバリキンソンと3人の手下たち。
 いずれも砦の港から出航する船に乗らなければならない。
 ユマたちが先に乗船し、シャムたちは彼らを見送ることにした。

ユマ「必ず皆に追いつくからね~! 皆、がんばってね~!」
シャム「バリキンソンたちを頼んだぞ~! 気をつけてな~!」

 ユマたちは船でジャノバまで行き、ジャノバの外れにある『トリップドア』を使って一気にマロンクリーム神殿の大木にジャンプする。マロンクリーム神殿大木からロマンチーノ城までは徒歩3時間ほどあれば到着する。

 ユマたちの乗った船が小さくなると、シャムたちも乗船を始めた。
 港から北の大陸までは4時間ほど掛かるので、午後には到着するだろう。
 デッキに佇むシャムたちは、広い海原を眺める。
 空が曇っていることもあってオデッセイ大陸はまったく見えない。
 冷たい潮風がシャムたちの頬を撫でた。



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勇者シャム&街少女チルチル(画:ワルキューレキュー作)


祈祷師サチェル


竜騎士リョマ











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