ファンタジー官能小説『セクスカリバー』

Shyrock 作



<第31章「戦士の影」目次>

第31章「戦士の影」 第1話
第31章「戦士の影」 第2話
第31章「戦士の影」 第3話
第31章「戦士の影」 第4話
第31章「戦士の影」 第5話
第31章「戦士の影」 第6話
第31章「戦士の影」 第7話
第31章「戦士の影」 第8話
第31章「戦士の影」 第9話
第31章「戦士の影」 第10話
第31章「戦士の影」 第11話

セクスカリバー世界地図




<登場人物の現在の体力・魔力>

シャム 勇者 HP 790/790 MP 0/0
イヴ 神官 HP 650/650 MP 700/700
アリサ 猫耳 HP 660/660 MP 0/0
キュー ワルキューレ HP730/730 MP390/390
ウチャギーナ 魔導師 HP 300/590 MP 690/690
エリカ ウンディーネ女王 HP 560/560 MP 730/730
マリア 聖女 HP 550/550 MP 750/750
チルチル 街少女 HP 500/500 MP 0/0
シャルル 漁師・レジスタンス運動指導者 HP 840/840 MP 0/0
エンポリオ アーチャー HP 620/620 MP 0/0
ユマ 姫剣士 700/700 MP 0/0

祈祷師 サチェル Satchel

⚔⚔⚔



第31章「戦士の影」 第1話

 チチチチ……
 鳥たちのさえずる声でウチャギーナが目を覚ます。

ウチャギーナ「……」

 ぼんやりとした頭で薄目を開けると、古びた家の天井があった。
 そして自分を見つめている視線を感じた。

ウチャギーナ「……!?」
男「目が覚めたか?」
ウチャギーナ「えっ……? ここはどこ? あなたは……?」
男「ここは私の棲家だ。棲家と言っても見てのとおり何もないあばら家だがな」
ウチャギーナ「私、どうしてここにいるの?」

 男は顔いっぱいに髭を蓄えてはいるが、よく見ると彫の深い精悍な顔立ちをしている。

男「昨日、君は空から降ってきたんだ」
ウチャギーナ「えっ……空から!?」
男「私がクリトビスの塔のそばを馬車で通っていたら、突然君が荷台の中に落ちてきたんだ。荷台にたっぷりと藁を積んでいたので軽い怪我だけで済んで本当によかったよ。ちょっとでもタイミングがずれていたら大変なことになっていたよ」
ウチャギーナ「そうだったのですか。運が良かったのですね……何とお礼を言えばいいのやら……」
男「ははははは~。礼なんていらないよ。偶然通っただけだから」
ウチャギーナ「偶然かもしれないけど、あなたは私の命の恩人です。このご恩は一生忘れません」
男「そんなの大袈裟だよ」

 感謝を伝えるウチャギーナに男は手を小さく横に振った。

男「ああ、そうだ、君の名前を聞いておこう。私はリョマ・ジーグフリードだ」
ウチャギーナ「リョマさん? 私はウチャギーナです」

 その時打った個所が急に痛んだようでウチャギーナは顔をしかめた。

リョマ「まだ無理は禁物だよ。もう少し寝ていた方がいい」
ウチャギーナ「私、背中を打ったのかな?」
リョマ「背中から落ちてきたので、きっと打撲が残っているんだろう。さきほどよく効く薬草を塗っておいたから数日すれば治ると思うよ」
ウチャギーナ「そうでしたか……すみません、怪我の治療までしていただいて」
リョマ「じゃあ、私は仕事に出掛けるのでゆっくりと寝てるんだよ」
ウチャギーナ「仕事は何をされてるのですか?」
リョマ「一応農家なんだけど、今年は作物があまり取れないので、副業で木こりもやってるんだよ。力だけは自信があるのでね。はははははは~」
ウチャギーナ「そうなのですか。雰囲気から軍人さんかと思いましたが……」
リョマ「えっ……? ははははは~、まさか、ははははは~~~、では行ってくるね」
ウチャギーナ「行ってらっしゃい……」

 髭を生やしているので分かりにくいが、年齢はおそらく30才過ぎだろう。
 背が高くがっちりとした体格で、非常に誠実な印象の男性だ。

 ウチャギーナは枕元に置いてあった水差しからコップに水を注ぎゴクゴクと飲む。

ウチャギーナ「おいしい……水ってこんなにおいしかったんだ」

 水差しの横にはウチャギーナが装備していた武器や防具が整然と並べられている。

(まあ、きっちりと整えてくれている。おまけに水や果物まで用意してくれて……。なんて優しい人なんだろう……)

 ウチャギーナはリョマの心遣いに涙がこぼれそうになった。

(見ず知らずの私を助けてくれただけでなく、これほどまでに親切にしてくれるなんて……)

 ウチャギーナは喉を潤すと、ふとシャムや皆のことを思い浮かべていた。

(シャムたちは幻術師アボガドを倒したかな……そして無事にユマ姫様を救出できただろうか……。早く怪我を治してシャムたちの元に戻らなければ……)

 窓から見える空は遠くまで澄み渡り、その深い紺碧に吸い込まれるような錯覚を覚えるほどであった。

(あの空の下のどこかでシャムたちは元気に過ごしているはずだわ……きっと)

⚔⚔⚔

シャム「ウチャギーナ~~~!! どこにいるんだ~~~!?」
イヴ「ウチャギーナちゃん~!」
アリサ「ウチャギーナちゃああああん!」

 ウチャギーナが落下した周辺ををシャムたちは懸命に捜索していた。

エリカ「妙ですね。この辺に落ちたはずなんですが」

 エンポリオは塔を頂上を仰ぎ見た。

エンポリオ「あの高さから落ちたのならたぶん厳しいだろうなあ」
チルチル「不吉なことを言っちゃダメ! ウチャギーナちゃんは絶対に生きているでピョン♫」
エンポリオ「ごめん」
キュー「でもどこに消えてしまったのかな?」
シャム「近くの村を訪ねてみないか?」
イヴ「そうね。それがいいと思う」
エリカ「ここから北東に少し行けば村があると思います」
シャム「うん、行ってみよう。ウチャギーナの情報が得られるかも知れないし」
アリサ「ウチャギーナちゃんが村にいるかもしれないよおおおお」
マリア「期待しましょう」
ユマ「ウチャギーナさんってどんな子なの?」
イヴ「はい、風の魔導師で魔女ネイロさんのお孫さんなんです。この島で出会って私たちの仲間に加わりました」
ユマ「そうなんだ。大切な仲間なのね。きっと生きているわ、そう信じましょう」
イヴ「はい、私も生きていると信じています」
ユマ「それとね、イヴさん、それと皆さん。私はすでに皆さんの仲間です。なので今日限り私がムーンサルト城の姫であることは忘れてくれませんか。私を特別扱いしないでほしいのです。言葉遣いも丁寧じゃなく普通に話してほしいのです。お願いします」
シャム「そういうユマが丁寧じゃないか。もっと肩の力を抜けよ」
ユマ「はい! みんな、よろしくね~!」
一同「は~い!」

 シャムたちは北東にある小さな村『ベガ』を目指して歩き始めた。



第31章「戦士の影」 第2話

 ベガ村に到着したのは、その日の夕暮れ時であった。
 お世辞にも活気のある村とはいいがたく人々の姿もまばらであった。
 しかし村にはどこかほのぼのとした空気が漂っていて、日々戦いに明け暮れるシャムたちにとってはかっこうの格好のやすらぎの場といえるだろう。
 村訪問の目的はウチャギーナを探すことだが、まずは旅の疲れをとるため宿屋を見つけなければならない。

イヴ「小さいけどいい雰囲気の村ね。ウチャギーナちゃん早く見つけたいね」
シャルル「きっと見つかるさ。だけど焦りは禁物。先ずは腹ごしらえと宿屋探しだ」
エリカ「相変わらず食欲旺盛ですね」
アリサ「こんな小さな村に宿屋があるか心配だにゃああああ」
エンポリオ「どうだろうな?」

 一行が村に入ると農具を持った村人が通りかかった。
 1日の作業を終えて帰るところなのだろう。

キュー「すみません。私たちは旅の者ですがこの村に宿屋はありますか?」
村人「ほほう、この村に旅の人がくるなんて珍しいな。小さいけど1軒あるよ」
キュー「小さくても泊まれたらいいんです」
村人「それならこの道を少し行くと右側に宿屋が見えてくるよ」
エリカ「ご親切にどうもありがとうございます。ところで一つお聞きしたいのですが、18ぐらいの導師服を着た女性を見かけませんでしたか?」
村人「ふむ、導師服の女性? 見てないな……。この村に来るのは行商人と木こりぐらいだよ。この地域で伐採される木は材質が良いので、木こりがよく来るんだ。休憩に宿屋と酒場はよく利用しているよ」
エリカ「そうですか……」
村人「宿屋でゆっくりと疲れをとってくれよ」
エリカ「ありがとうございます」

 村人に礼を述べるとシャムたちは宿屋に向かった。
 3分ほど行くと古びた小さな宿屋が見えてきた。

宿屋のあるじ「これはこれは! たくさんのお客様でびっくりしたな~もう~! 皆様おつかれさまです~! 何名様ですかね?」

 突然大勢の客が押しかけてきたもので、宿屋のあるじはえびす顔でシャムたちを歓迎した。

シャム「10人だけど部屋は空いてる?」
宿屋のあるじ「だいじょうぶですよ! 部屋は空いてます。実は今日お泊りのお客様は1組だけなので」
マリア「まあ、これは幸運です。ご主人よろしくお願いします」
宿屋のあるじ「なんと! 皆様、美人揃いですね~。ではお部屋にご案内しますので」

 あるじはなにやらウキウキしているように見える。

シャム「部屋に入る前にちょっと聞きたいことがあるんだけど」
宿屋のあるじ「はい、どのようなことでしょうか?」
シャム「この辺で導師服を着た若い女性を見かけなかったかな?]
宿屋のあるじ「う~ん、残念ですが、最近そのような女性は見かけないですね。ここに宿泊されるお客様は男性がほとんどなんですよ」
シャム「そうなんだ、ありがとう。じゃあ、部屋に案内して」

⚔⚔⚔

リョマ「ただいま。どうだね、体調は? 少しは回復したかね?」
ウチャギーナ「はい、お陰様で痛みもかなり和らいできました」

 ウチャギーナは仕事から帰ってきたリョマに礼を述べた。

リョマ「ところで、もしよかったら君に一つ聞きたいんだけどね。あの時どうして塔に登っていたのかを教えてくれないか」

 この頃、ウチャギーナは彼の実直な人柄から信用できる人物であると確信していた。

ウチャギーナ「はい、お話します。あの塔には悪い妖術師が住んでいて、とあるお姫様が捕らえられていました。そのお姫様を助けるためにシャムという勇者が旅立ちました。途中多くの仲間が加わり、私も縁あってその仲間となりました。そしてついにあの塔に登り、お姫様を助けようとしたのですが、私は敵の計略に填まってしまい塔の上から転落してしまいました。そして……」
リョマ「なるほど。そして偶然塔の下を通り掛った私の荷馬車に、君が落下してきたというわけだったんだね」
ウチャギーナ「そのとおりです。本当にありがとうございました!」
リョマ「そういう事情なら、一刻も早く仲間のところに戻りたいだろう?」
ウチャギーナ「はい、戻りたいです」
リョマ「私としては、君のような美しい女性にはいつまでもここに居て欲しいけど、そういうわけにはいかないものね。ははははは」
ウチャギーナ「美しいだなんて……」

 ウチャギーナの頬がほんのりと赤く染まった。

リョマ「今まで出会った女性の中で、ウチャギーナ、君は最高に美しい人だ」
ウチャギーナ「そんなぁ……それは褒め過ぎです。でもすごく嬉しいです。リョマさんにそのように言ってもらって」
リョマ「褒め過ぎではないよ。本心で言ってる」
ウチャギーナ「ありがとうございます。でも私の仲間ってきれいな子ばかりなんですよ~。イヴさんとか、エリカさんとか、マリアさんとか、アリサちゃんとか、キューちゃんとか、チルチルちゃんとか……とにかく粒揃いなんだから」
リョマ「仲間は女性が多いんだね」
ウチャギーナ「はい、勇者シャムを中心にかわいいな子がいっぱいいるんですよ」
リョマ「勇者シャムさんって幸せな人だね。ははははは」
ウチャギーナ「リョマさんもそう思いますか。私も以前からそう思っていました。あはは」

 リョマは数日間寝たきりのウチャギーナに外出することを提案した。

リョマ「ところでウチャギーナ、明朝木を切りに山に出掛けるんだけど、体調も戻って来たようだしいっしょに行かないか?」
ウチャギーナ「はい、行きたいです! でも木こりはできないし、足手まといにならないかなあ?」
リョマ「ははははは。まさか君に木こりをさせるつもりはないよ。君は私が木を切るのを横で眺めているだけでいいんだ。山道を散歩してうまい空気を吸うだけで気持ちがすっきりすると思うよ」
ウチャギーナ「正直退屈していたので、ぜひ連れて行ってください」
リョマ「じゃあ今夜は早く寝なさい。明日朝が早いからね」



第31章「戦士の影」 第3話

 翌朝、リョマが昼食用の天日干ししたプラムと黒パンをバスケットに詰めている。
 小麦で焼いたパンは白くなるが、ライ麦で焼いたパンは黒色になることから黒パンと呼ばれている。
 ライ麦は小麦よりも安価なので、一般庶民が食するのはほとんどが黒パンであった。

ウチャギーナ「私は水を用意しますね」
リョマ「この水筒に水を入れてくれるかな」
ウチャギーナ「はい」
リョマ「熊が出現した時のために何か武器を持っておくべきかと」
ウチャギーナ「この杖ではダメですか?」
リョマ「ん、魔導師の杖か? 君は魔法を使えるんだね。うらやましいなあ」
ウチャギーナ「でもまだまだ駆け出しです」

 リョマとウチャギーナは小屋を出て裏山に登って行った。

⚔⚔⚔

 その頃、シャムたちはウチャギーナを探して、村の中を訪ね歩いていた。

村の男A「いやあ、そんな子は見かけないねえ」
村の男B「そんな子は知らないな」
村の女「この村には滅多によその人は来ないの。木こりや狩人は時々来るけど、女性の姿はなかったわ」

 村で出会った人々に尋ねてみたがウチャギーナに関する情報を得ることはできなかった。
 そんな折、この村にはすごいパワーを持つ女性の祈祷師がいると聞き早速訪れてみることにした。
 祈祷師であれば何か手掛かりをつかめるかもしれない。
 祈祷師は名前をサチェルというらしい。
 村の外れにポツンと佇む一軒家に住んでいるという。

 親切な村人に教えてもらい祈祷師の家はすぐに見つかった。

イヴ「ごめんください」

 幾度となく呼んでみるが返事がない。

エリカ「サチェルさ~ん? ……ん?……お留守でしょうか?」

 物音ひとつしない。

イヴ「買い物にでも出掛けてるのかしら」
ユマ「あら……鍵がかかってないわ……」
シャム「勝手に入るのはよくないけど、気になるのでちょっと覗いてみようか」

 シャムたちは玄関扉を開いた。

シャム「わっ!」
ユマ「まあっ!!」

 シャムたちは部屋の中が随分荒れてることに気付いた。
 まるで盗賊に物色されたような酷い状態だ。
 タンスの引き出しは開けっ放しで、衣服は床に散乱し、暖炉では湯がグツグツと煮えたぎっている。

シャム「これはただ事ではないぞ!?」
シャルル「泥棒が入ったか!?」
アリサ「あれ? 机の上に何か紙切れがあるうううう?」
シャム「ん……?」

 紙切れに何か書かれている。
 シャムは紙切れに目を走らせた。

『竜騎士リョマに告ぐ
妹は私が預かっている。妹を取り返したいなら 1人でボヘミアンの洞窟まで来い。
バリキンソン』

シャム「なにっ! バリキンソンだと~~~!?」
イヴ「エリカさんを酷い目に遭わせたあの馬面の男ね!?」
アリサ「アリサも覚えてる! すごくエロいヤツだったよおおおお!」
ユマ「そんなにエロい男なの!? シャムよりも!?」
アリサ「エロさなら良い勝負かなああああ」
シャム「おいおい、あんな馬面野郎といっしょにするな」

 エリカは当時の記憶が蘇ったようで不安そうな表情をしている。

マリア「エリカさん、だいじょうぶですよ。今は多くの仲間がついていますから」
エリカ「励ましてくれてありがとうございます。でも私のことより祈祷師サチェルさんがとても心配です」
エンポリオ「竜騎士リョマか……? う~ん、聞いたことがないなあ」
キュー「バリキンソンがサチェルさんを誘拐したのは、彼女が目的ではなくお兄さんのリョマさんが目的ではないかしら」
イヴ「これはおそらく竜騎士リョマさんをおびき寄せるための罠だわ、きっと……シャム、どうする?」
チルチル「でも今はウチャギーナちゃんを一刻も早く見つけないといけないし」

 行方不明のウチャギーナも早く見つけたいし、面識はないが誘拐された祈祷師サチェルのことも気にかかる。
 シャムたちは難しい選択を迫られることになった。
 そして出した答えは……

シャム「よし、2班に分かれて行動しよう! シャルル、エリカ、チルチルの3人は引き続きウチャギーナを探してくれ! おいらと他のみんなは祈祷師を助けに行こう!」
エリカ「それは良い方法だと思います。ウチャギーナさん探しは任せてください」
シャルル「了解した! 二度とバリキンソンが悪事を働ないように徹底的にやっつけて来てくれ!」
チルチル「みんな、気をつけてピョン♫」

 シャムたちとシャルルたちはサチェルの家を出ると早速分かれて行動することになった。

アリサ「ボヘミアンの洞窟ってどこにあるのかなああああ?」
エンポリオ「確かこの村の北にあったと思う」
シャム「じゃあ直ぐに出発だ~!」

 兄のリョマが妹のサチェル宅を訪れることが予測して、バリキンソンの手紙をそのまま残しておくことにした。
 ただし手紙の裏面に一言付け加えることにした。

『妹のサチェルさんは必ず私たちが助け出すので、リョマさんはここで待っててください。
○〇月〇○日〇〇時
勇者シャムとその仲間たち』

 シャムたちは装備を確認するとまもなく村を出発した。
 はたしてバリキンソンと竜騎士リョマとはどんな因縁があるのだろうか。
 バリキンソンは実に狡猾な男だ。
 どんな罠を仕掛けているか分からない。
 油断することなく気持ちを引き締めて掛からなければならない。

 シャムたちは隊陣を整えボヘミアンの洞窟へと向かった。



第31章「戦士の影」 第4話

 汗を流しながら木を切るリョマをウチャギーナは切り株に座って眺めている。
 何か手伝えることはないかと申し出たが、リョマは首を縦に振らない。

リョマ「木を切るのは私の仕事だから、君は本でも読んでゆっくりとしてなさい」

 鞄の横には1冊の書物が置いてある。
 休憩時にリョマが読んでいるのだろう。
 書物は詩集であった。リョマの豊かな感性がうかがい知れる。
 しかしウチャギーナはさらりと頁をめくっただけですぐに書物を元に戻し、リョマの働く姿に視線を送っていた。
 大きな木を斧で切り倒していく。
 額に汗して働く男の姿は美しい、とウチャギーナは思った。
 リョマの凛々しい表情と躍動する筋肉の美しさに、ウチャギーナは強く“男”を感じるのであった。

 木こりの作業が終わったのは夕暮れ前であった。
 二人は帰り道小川に寄ることにした。
 川で水を浴びて汗を流すのがリョマの習慣になっていたからだ。
 リョマは上半身裸になって濡れた布で汗を拭う。
 遠目で眺めるウチャギーナ。
 鍛え抜かれた見事な肉体はまるでブロンズ像の造形美を彷彿とさせる。
 その光景がとても眩しく感じられた。

リョマ「ウチャギーナ、すまないが少し背中を拭いてくれないか?」
ウチャギーナ「は……はいっ……」

 リョマからの思いがけない依頼にウチャギーナはどぎまぎしながら、やっと口の中から返答の言葉が出た。
 そして急いでリョマの背後に向かい、絞った布で背中を拭いた。

リョマ「ありがとう。助かるよ」
ウチャギーナ「いいえ、何もお手伝いができなくてごめんなさい。せめてこれぐらいは……」

 リョマのそばに行ってみると彼の背中がひときわ大きく見えた。
 ウチャギーナの心臓は胸から飛び出しそうなほど高鳴っている。
 男性の背中を拭くのは初めてだ。シャムの背中だって拭いたことがない。
 不慣れだがウチャギーナは何事においても丁寧だ。
 広い背中を丹念に拭く。

リョマ「ウチャギーナには兄弟がいるの?」
ウチャギーナ「いいえ、一人っ子なんです。リョマさんにはいらっしゃるの?」
リョマ「妹が1人いるんだ」
ウチャギーナ「そうなんですか。どこにお住まいですか?」
リョマ「島内の小さな村に住んでいて、祈祷師をしてるんだ」
ウチャギーナ「まあ、祈祷師をされているのですか?」
リョマ「しばらく会っていないので近いうち様子を見に行こうと思ってるんだ。妹の作るガレットは美味いんだよ。よかったらウチャギーナもいっしょに行かないか?」
ウチャギーナ「はい、喜んで!」
リョマ「兄の私が言うのも何だが、妹には不思議な霊力があるんだ」
ウチャギーナ「へえ、どんな力があるのかしら?」
リョマ「祈祷師といえばお祓いやおまじないをする職業だが、妹の場合は死者の魂を呼び出し死者と語らうことができるのだ。とは言ってもそれを信じる人もいれば信じない人もいるがね。もちろん私は妹の能力を信じてる」
ウチャギーナ「妹さんはすごい人なのですね。私も霊力は信じますわ。実はね」
リョマ「ん?」
ウチャギーナ「私の祖母は魔女なんですよ。なので不思議な力を持っていてまれに驚かされることがあります」
リョマ「なんと。君のおばあさんは魔女なのか? それは驚いたなあ」
ウチャギーナ「そういえば先日、クリトビスの塔で占い師と出会いました。先のことを言い当てるので驚いてしまって」
リョマ「この世界には驚くべき能力を持った人っているものだね」
ウチャギーナ「そうですね、時々いますね」
リョマ「ところで占い師には何を占ってもらったの? 恋とかかな?」
ウチャギーナ「そんなの占っていませんよ」
リョマ「ずばり聞くけどウチャギーナには好きな人はいるの?」
ウチャギーナ「いないです……」
リョマ「そうなんだ。では私が君のことを好きになったとしても迷惑ではないんだね?」
「えっ……!? め、迷惑だなんて……そんなことは決して……」
「迷惑ではないということだね?」
「迷惑どころか、むしろ嬉しいです……」
「それはよかった。実はね、僕は君を初めて見た時、君を好きになってしまったんだ」

 突然告白をされて戸惑いを隠しきれないウチャギーナ。

ウチャギーナ「えっ……!? まさか……」
リョマ「何と可憐で美しい女性だと。ウチャギーナが荷馬車に落ちてきた時、私は天女が舞い降りてきたと錯覚したよ」
ウチャギーナ「そんな大げさな……」
リョマ「いや、大げさではなくて、率直にそう思ったんだ」

 天女と間違えたというリョマの奇想天外な発想には驚かされたが、ウチャギーナへの熱い想いを告白されて、ウチャギーナはとても嬉しく思った。
 この数日間手厚く介抱されて、ウチャギーナ自身も彼に好意を寄せていたのだ。
 否、もっと正確に言うならば、日を追うごとにリョマへの想いが大きく膨らんでいた。
 今リョマから告白されて初めて自分自身の気持ちに気付いたのであった。

 言葉が途切れ再び背中を拭き始めると、突然リョマが振り返りウチャギーナの肩に手を触れた。
 ウチャギーナは彼の思いがけない行動に驚いたが、射貫くような熱い眼差しに心が蕩けそうになってしまった。



第31章「戦士の影」 第5話

リョマがそっとささやく。

リョマ「ウチャギーナ、君は僕にとって太陽のような人だ」

 野趣あふれた髭のせいで今まで気付かなかったが、よく見るとよく整った鼻と口元。
 その端正な顔立ちは女のウチャギーナでもうっとりとするほどである。

ウチャギーナ「リョマさん……」
リョマ「ウチャギーナ……」

 リョマはウチャギーナの背中に手をまわし、しっかりと抱きしめる。
 がっちりと鍛えられた身体に支えられたウチャギーナはまるで子供のように見えた。

 ふっと熱い息が漏れた。
 ふたりの唇が重なる。
 リョマの髭が肌に触れ少しくすぐったい。

ウチャギーナ「あのぅ……」
リョマ「ん? なに?」
ウチャギーナ「髭がくすぐったいんですけど」
リョマ「ああ、この無精髭だね。ごめんごめん。じゃあ、キスはやめとこうか」
ウチャギーナ「ううん」
リョマ「え? いいのか?」
ウチャギーナ「うん」
リョマ「じゃあ、もう一度」

 チュッ……

 なんでもない些細な会話がふたりの気持ちを和ませる。
 そればかりか、周囲に誰もいないと男女の行動はより大胆になっていく。
 ふたりはもつれ合ったまま近くのマロニエの木にもたれた。
 身体を絡めて、息を荒げながら、狂ったように濃厚なキスを交わすリョマとウチャギーナ。
 とろけるような甘美な世界へと迷い込み、身体が次第に覚醒していく。
 ウチャギーナの胴衣がはだけて胸元があらわになった。
 白くふくよかな乳房がこぼれ、リョマの大きな手がそれに触れた。

ウチャギーナ「あ……っ」
リョマ「美しい肌をしているね」
ウチャギーナ「あぁ……」

 ウチャギーナがリョマの手のひらの感触を乳房に感じ、声をあげる。
 そして、やわやわと揉みしだかれると、目をぎゅっとつむり、切なそうな顔になる。

ウチャギーナ「ふわぁ……気持ちいい……リョマさん……」

 リョマはウチャギーナの大きな乳房をすくい上げたりこね回したりしている。

ウチャギーナ「ああっ……」

 桜色のきれいな乳首に唇を寄せるリョマ。
 時折、髭が乳房に触れるが、ウチャギーナはもう気にならなくなったようだ。
 ウチャギーナは熱くなった身体をリョマに預けるかのように、なすがままに任せている。
 そんなウチャギーナに羞恥心が薄れ、女の本能がめらめらと燃え始める。

ウチャギーナ「あぁ……リョ、リョマさぁん……」

 ジュパジュパジュパ……

ウチャギーナ「はぁ……あぁ……あああぁ~……」

 ウチャギーナの胴衣がはだけて身体から落ちそうになっている。
 空かさずリョマが下穿きをずらす。

ウチャギーナ「あっ……そんなぁ……」

 黒い繁みがリョマの目に飛び込んできた。
 下穿きは落ちずに膝に引っかかっている。
 リョマは跪くとウチャギーナの足を割り広げ、くっきりと縦に走る亀裂に触れた。
 そのとき、ウチャギーナの肉豆が他の女性と異なっていることに気付いた。

リョマ「あれ? ウチャギーナのここって、まるで宝石のようだね」
ウチャギーナ「そうなんです、不思議なんです。私の場合は他の子と違って光っているんです。でもどうして光っているのかは知らないの……」
リョマ「なんと! これは珍しい!」
ウチャギーナ「そんなに珍しいのですか? リョマさんって沢山の女性を知ってらっしゃるのね」
リョマ「いやいや、そんなに多くはないが、輝くクリトリスを見るのは初めてだよ」
ウチャギーナ「でも私だけじゃないみたいなんです。シャムの周囲に集まってくる女性は光っている子が多いの」
「シャム……って、確か勇者だと言ってたね」
ウチャギーナ「はい」
「その勇者シャムには、何か不思議な力が宿っているのかも知れないね」
ウチャギーナ「私もそう思うのです」
「それはさておき、ウチャギーナ……私は君を離したくない……」

 リョマは不意にウチャギーナの唇を奪い花びらを指でまさぐった。

ウチャギーナ「ああっ……」

 ウチャギーナは戸惑いをみせたが決してあらがうことはなかった。
 たっぷりと蜜が溢れると、リョマは屈みながら花びらに唇を寄せた。

ウチャギーナ「あっ、そんな……」

 ウチャギーナはマロニエを背にして、甘ったるい喘ぎ声を漏らす。
 周囲に誰もいないから気遣うことはない。
 もしか見ているものがいるとしたら、それは小鳥たちだけだ。
 そんな安心感がウチャギーナを大胆にさせる。

 チャプチャプチャプ……ベチョベチョベチョ……

ウチャギーナ「あぁ~……ああっ~……リョマさぁん……」

 きらめく肉豆にも秘めやかなる谷川にも舌による愛撫が施された。
 最近些かチンヒールから遠ざかっていることもあって、すぐに官能の炎がメラメラと燃え始めた。
 花園からとめどなく溢れる熱いしずく。
 リョマの髭をも濡らしウチャギーナは悶える。

リョマ「ウチャギーナの蜜は実に美味い」
ウチャギーナ「いやぁ、そんなぁ……恥ずかしいことを……」

 ペチョペチョペチョ……ベチョベチョベチョ……

 啜る音が気になるのか枝に隠れてリスが覗いているが、ふたりは一向に気づかない。
 リョマが自身の衣を解き始めた。
 ニョキっと反り返ったイチモツが現れたが、ウチャギーナはわざと素知らぬ素振りで視線を逸らしている。



第31章「戦士の影」 第6話

 リョマが正面からウチャギーナもたれかかり立位の体勢で怒張した肉柱を突き立てる。
 挿入直前に先端で花弁をなぶると、肉豆が擦れてウチャギーナは早くもイキそうになる。

ウチャギーナ「はぁっ……、あああっ……!」

 肉柱が割れ目をかきわけ、ヌブっと花芯をとらえる。

リョマ「おおっ……おおおっ!」
ウチャギーナ「あっ……あぁっ、あああっ……!」
リョマ「うおっ……、いいよ……イイッ……すごくいいっ……!」

 リョマはグイグイと押し込む。
 見つめ合って、唇を重ね合って、大木にもたれ立ったままで愛し合う。
 ふたりの興奮は高まっていく。

ウチャギーナ「あっあっあっあぁっ……! あああっ……!」
リョマ「はぁ、はぁ……気持ちいい?……」
ウチャギーナ「うんっ……すごく……あああぁっ……!」

 対面立位だと深くは挿入できないが、その分時折肉豆が擦れてとろけそうになる。

ウチャギーナ「あああぁイクっ……、もう……イっちゃう……! あっ……、あっ、あぁぁぁぁ~~~~~~っ!」
リョマ「はぁ、はぁ……イキそう?」
ウチャギーナ「うん……」

 リョマはウチャギーナの左の膝裏に手を添えてグググッと持ち上げた。
 対面片足上げ立位である。 
 この方が断然挿入しやすい。
 ウチャギーナの片足を上げることで必然的に股間が開き、上げた方の足にリョマが足を絡め股間を密着した。

ウチャギーナ「恥ずかしい……」
リョマ「はぁ、はぁ、はぁ、もっと深く……ウチャギーナを愛したい……」

 そそり立った肉柱は襞をこじ開け奥地へと進入する。

ウチャギーナ「ふあぁぁぁ! あ~っ! あ~~~~~っ!」

 ピリッと痺れるような感覚が走り、ウチャギーナは大木から腰を浮かせる。
 全身を包み込むような陶酔の境地へと導かれていく。

⚔⚔⚔

 深い森を抜けると、もうすぐボヘミアンの洞窟が見えてくるはずだ。
 シャムたちは気を引き締めた。
 竜騎士リョマとはいったいどんな人物だろうか。そしてその妹はどんな女性だろうか。
 まだ見ぬ女性を救出に行くと言うのも変な話だが、誘拐されたと知った限りは放置しておくわけにはいかない。

 ようやく洞窟らしきものが見えてきた。
 川の近くに忽然と大きな入口を開けている。
 おそらくあれがボヘミアンの洞窟だろう。

 入口には番人がいるようだ。

シャム「見張りがいる。みんな伏せろ」
イヴ「大勢で行くと番人が警戒するかも知れないわね」
シャム「じゃあ少人数で行こう」
イヴ「少人数でも武器を持ってるとやっぱり警戒されると思うの」

 キューに名案があるようだ。

キュー「ここはアリサちゃんと私に任せておいて。女の子が行く方が怪しまれないと思うの。武器は置いていくわ。いざとなったら2人とも素手で戦えるから」
アリサ「にゃご~、キューちゃんの言うとおり。アリサたちに任せてええええ」
シャム「『任せて』と言っても、どうやって見張り2人を倒すつもりなんだ?」
キュー「うふ、このダイナマイトボディでノックアウトするのよ。アリサちゃん、それじゃ行こうか」
アリサ「にゃああああ」
シャム「『にゃあ』って、おい、大丈夫か?」
イヴ「シャム、彼女たちに任せておけば? きっとうまく行くよ。私たちはここで見物してようよ」
シャム「そんなのんきな……」

 キューとアリサは談笑しながら見張りがいる洞窟の入口へと接近した。
 彼らに警戒心を与えないため武器はシャムたちのところに置いてきた。
 見張りの男たちはきょとんとした表情でキューとアリサを注視している。
 うら若き乙女2人がこんな人里離れた洞窟にやって来ることが不思議なのだろう。

見張りA「なんだ。おまえたちは?」
キュー「私たちは踊り子なの。旅一座のみんなとはぐれてしまって困ってるの」
アリサ「にゃうん~、道が分からなくなってしまったのお。それに今日ずっと何も食べてないからおなかが空いて倒れそうなのおおおお」
見張りB「つまり食べる物が欲しいということだな?」
キュー「パン1切れでもいいので……お願い、私たちを助けてください」
アリサ「にゃあ、もう死にそおおおお」
見張りA「恵んでやってもいいが、只ではなあ……なあ?」
見張りB「そうだとも。只というわけには行かないな」

 男たちはそうつぶやきながら、キューたちに上から下まで舐めるような視線を注いだ。

キュー「いいわ。それじゃあいいもの見せてあげるから、パンを1切れちょうだい?」
見張りA「いいものって何だ?」

 アリサはエンジ色のタイトミニスカートの裾を摘まんで少しまくって見せる。
 ちらっと白い肌が覗けた。
 男たちは目を凝らしてアリサの太股を見つめている。

アリサ「これ以上はパンをもらってからでないとおおおお……」

 パンを先に出すようアリサは求めた。

見張りB「へっへっへ、パンをやればもっと見せてくれるんだな?」

 男はヘラヘラと軽薄な笑みを浮かべながら、足元の布袋を探り始める。
 袋の中から黒パン1個を取り出しアリサに与えた。

アリサ「にゃご~! わ~い、パンだ~! おじさん、ありがとおおおお!」

 アリサはもらった黒パンを割って半分をキューに手渡した。



第31章「戦士の影」 第7話

キュー「おじさん、ありがとう!」
見張りA「おじさんって、オレまだ28なんだけど」
キュー「ごめんごめん! お兄さんごめんね~! じゃあ、いただきま~す!」

 モグモグモグ……

 2人は夢中でパンに齧りつく。
 見張りの男たちはパンを頬張る2人をしげしげと眺めながらしゃがれ声で言った。

見張りB「食べ終わったら、後からちゃんと見せろよ」
見張りA「パンツも脱ぐんだぞ」

 キューたちには見張りの男たちの話が耳に入ってないようで、談笑しながら頬を膨らませている。

アリサ「モグモグモグ……このパン美味しいね、キューちゃんんんん」
キュー「うんおなかペコペコだったもんねえ」
見張りB「おい! 聞いているのか!?」
アリサ「キャッ、ちゃんと聞いているよおおおお」
キュー「じゃあ、ちょっとだけ見せてあげるね」
見張りA「おおっ、待ってました~! しっかりと見せろよ!」

 キューは白いスカートの裾を少しだけめくり上げ、太股をあらわにした。
 よく引締まった美脚を舐めるように覗き込む見張りの男たち。
 刺激を受け堪らなくなったのか、見張りの1人がキューのスカートの中に手を差し込んできた。

キュー「キャッ! だめ~!」

 キューはスカートを押さえ太股を隠してしまった。

見張りA「なぜだよ? 約束が違うじゃねえか?」
キュー「誰も触っていいって言ってないよ」
見張りB「じゃあ、もう1個パンをやるから触らせろよ」
キュー「アリサちゃん、どうする?」
アリサ「パンをもう1個くれるなら、アリサ、サービスしちゃおうかなああああ?」
見張りB「どんなサービスかな?」

 男は口元にいやらしい笑みを浮かべながら期待を膨らませている。

アリサ「パンツの上からだったら、ペロぺロまでいいよおおおお」
キュー「ちょっちょっと、アリサちゃん! いくら何でもそれはちょっと……!」

 アリサの口から出た言葉はキューの肝を冷やした。

見張りA「もう1個パンをやれば舐めさせてくれるのだな? 嘘ではないな?」
キュー「ほ……ほんとうだよ……」
見張りB「もし嘘だったらどうなるか分かっているな?」
アリサ「きゃあ! 恐いいいい!」
見張りB「大人しくしてたら酷い目に遭わさねえよ」
キュー「分かったわ。早くパンをちょうだい」

 男は再び布袋から黒パンを取り出すとアリサに渡した。
 アリサがパンを2つに割っていると、1人が凄みを利かせてきた。

見張りA「おい、食べる前にスカートをまくってもらおうか」
キュー「わ、分かったわ」

 キューはアリサに目で合図を送ると、同時にスカートをまくり上げた。
 見張りの男たちはひざまずき、スカートの中へ顔を埋める。

見張りA「へっへっへ~、こりゃいい眺めだぜ~」
見張りB「ひぇ~、女の匂いがプンプンして堪らねえや」

 キューのスカートにもぐりこんで来た見張りは太股を撫ではじめた。

見張りA「まるでカモシカのようなきれいな足をしているじゃねえか。こりゃいいや」

 太股にすがり付き頬擦りまではじめる始末。

キュー(気持ちわるぅ……)

 もう1人の男も触発されたのか大胆に挑んできた。

見張りB「どれどれ、どんな味がするかな?」

 ペロリ……

 ショーツの布越しとはいえ微妙な箇所を舐められたアリサは顔をしかめる。

アリサ(ゲゲッ……いやだなああああ……)・

 ペロペロペロペロ……

 見張りの男たちがスカートの中で淫らな行動に没頭している最中、キューとアリサはちらりと目配せをした。
 次の瞬間、電撃のようなパンチが男たちの後頭部を襲った。

 ガツンッ!

見張りA「ギャッ!」
見張りB「うぐっ!」

 男たちはうめきながら倒れてしまって立ち上がれない。
 気絶をしてしまったようだ。

シャム「でかしたぞ! あとはおいらたちに任せろ!」

 またたく間にシャムたちは見張りの男たちを縛り上げてしまった。

シャム「それにしても2人のパンチは強烈だな~。見張りの男を一発でのばしてしまうんだから」
キュー「何ならシャムにも一発あげようか?」
アリサ「シャム、試してみるうううう?」
シャム「ぞぉ~……いらん」

キュー「見張りのおじさんたち、このまましばらく眠っててね」
アリサ「さるぐつわをしたので起きても大丈夫だよおおおお」
キュー「うん、大丈夫。それにしても太股を触られて気持ち悪かったよ~」
アリサ「キューちゃんはまだマシだよ。アリサなんて、あそこを舐められてえずきそうだった。オエッ……」
キュー「それがもしシャムだったらどう反応するの?」
アリサ「もっと~もっとおおおお!」
キュー「あはは、やっぱりね~」
シャム「それじゃあ、行くぞ~!」

 シャムたちは洞窟の中へと入っていく。
 洞窟内にはところどころに明かりが灯っている。
 中に人がいることがうかがえる。

イヴ「ねえねえ、キューちゃんとアリサちゃん、どんな手を使って見張りの男を倒したの?」
キュー「ないしょだよ~」
イヴ「もったいぶらないで教えてよ」
アリサ「ペロペロバシーンでイチコロだよおおおお」
イヴ「なに、それ……?」

 イヴたちがひそひそ話をしていると、エンポリオが口の前で人差し指を立てにして静かにという身振りをした。

マリア「バリキンソンはずる賢い男なので、途中罠を仕掛けているかもしれません」
シャム「みんな気をつけろ。通路が狭いので、隊列は一列に組むぞ。先頭のおいらにつづけ」
アリサ「アリサが先頭になるよ。罠を見抜くのはアリサが得意だからああああ」

 隊列を少しだけ変更することになった。
 視聴臭覚においてすぐれた能力を持つアリサが先頭を受け持ち、二番手にシャムがつづき、しんがりは防御力に優れたキューが務めることになった。



第31章「戦士の影」 第8話

 片足上げ立位で攻めつづけていたリョマは、突然ウチャギーナのもう片方の膝裏にも手を伸ばし、一気に担ぎ上げた。
 対面両足上げ立位、現代風にいうと駅弁ファックの体勢だ。
 ウチャギーナの自重により、肉柱の先端がズブズブと襞奥を突き破った。
 「きゃっ!」と叫び声をあげてリョマの首にしがみつくウチャギーナ。

ウチャギーナ「いやだ、リョマさん、恐いよっ! ……あぁんっ……!」

 リョマの太い肉柱が子宮口をグイグイと押しつけてくる。
 初めは痛みを感じたが、すぐに快感へと変わっていった。

ウチャギーナ「あ、あ……っ! なに? この不思議な感覚っ……!」

 リョマは構わず抱きすくめたウチャギーナをユッサユッサと上下に揺すりリョマは抽送を開始する。
 ウチャギーナは天を仰ぎ、その麗しき肉体をバウンドさせる。
 対面両足上げ立位から生じる牝肉の収縮は、リョマを大いに堪能させた。
 女体をバウンドさせるたび、ギュッと精を搾りとられていくかのような感覚におちいる。
 肉洞の粘膜が粘っこく絡みつき、射精をいざなう。
 その都度、下腹に気合いを入れ、先走りを堪え忍ぶリョマ。

リョマ「どうだ?」

 ウチャギーナは何も答えず、首に手を回したまま俯いてハアハアと息を漏らしている。

リョマ「気持ちいいのか? こうしたらもっとよくなるぞ」

 リョマはマロニエの前をグルグルと歩き回った。
 身体が揺さぶられるたびに、ウチャギーナは吐息を漏らす。
 不定期に子宮口に刺激を受け、言葉も出ないほどの快感の波が打ち寄せてくる。

リョマ「大丈夫か? 痛くないか?」
ウチャギーナ「だ、だいじょうぶ……というか、すごい…気持ちいい…」

 ユサユサと揺さぶるリョマ。
 両足上げ立位だと遠慮なく膣奥を突き立てる。

ウチャギーナ「「んひぃっ……! だめぇっ……! そこはぁっ……! あはぁん……そ、そんなことされたらぁ……あひぃっん!んぁっ……」

 昂っているのはウチャギーナだけではない。
 強烈な刺激はリョマの性感をも揺さぶった。

リョマ「はぁはぁはぁ……ウチャギーナ……すごい締め付け……!」

 グッチョグッチョグッチョ……!

ウチャギーナ「あぁ! もうだめ! イキそう~、イッちゃいそう~!」
リョマ「私も我慢の限界だ!」
ウチャギーナ「あぁぁぁぁぁっ! イクぅ~~~~~~~~!!」
リョマ「おおっ……うううっ……!!」

 ウチャギーナは身体の奥に熱いものがほとばしるのを感じた。
 チンヒールとよく似ているが、どこか違う。
 何が違うのかはよく分からないが、終わった後もずっとリョマに抱かれ繋がっていたかった。

リョマ「すまない……」
ウチャギーナ「どうして謝るの?」
リョマ「私は君への募る想いを押さえ切れずについこんなことを……」
ウチャギーナ「いいの。リョマのことが好きだから……」
リョマ「ウチャギーナ……」
ウチャギーナ「リョマ……」

 リョマはウチャギーナの髪を撫でながらポツリとつぶやいた。

リョマ「ウチャギーナ、君と出会えたことは歓びだ」
ウチャギーナ「同じ気持ちです」

 まもなくリョマはウチャギーナの衣服の乱れを直してやり下山する支度を整えた。

ウチャギーナ「もしよかったら今からベガ村に行ってみませんか?」
リョマ「ベガ村に? どうして?」
ウチャギーナ「リョマさんの妹さんに会ってみたくなったの」
リョマ「私の妹に? 構わないけどどうして?」
ウチャギーナ「なんとなく」
リョマ「うん、いいよ。私もしばらく会っていないので行ってみようか」
ウチャギーナ「いいのですか? わ~い、リョマさんの妹さんに会える。どんな妹さんなのか楽しみだわ」
リョマ「内気な性格なので友達が少なくて、ウチャギーナが行くときっと喜ぶだろう」
ウチャギーナ「名前はなんていうのですか?」
リョマ「妹はサチェルっていうんだ」

⚔⚔⚔

 行方不明のウチャギーナを探して村の中を尋ねて歩くシャルルたちだったが、これといった成果がなく深いため息をついていた。

シャルル「かなり歩き回ったけど情報は得られなかったな」
チルチル「どこに行ってしまったのかなあ……ウチャギーナちゃん……」
エリカ「村の人たちから情報を得られないと言うことは、やっぱり村に来ていないのかもしれないですね」
チルチル「ねえねえ、あそこの看板に『よろず屋』と書いてあるけど『よろず屋』ってなんだピョン♫」
エリカ「一口にいうと何でも屋です。生活や戦闘に使ういろいろな品物を売っているお店です」
シャルル「ジャノバのような大きな街なら道具屋、武器屋、道具屋など色々な店があるけど、田舎だと店が少ないので1軒の店で何でも置いているんだ」
チルチル「へ~、勉強になるでピョン♫」

 シャルルたちは店内を覗いてみた。
 狭い通路の右側に武器、左側に道具類がずらりと並べられている。
 ただし入店の目的は物品購入ではなくウチャギーナの情報収集だ。

おやじ「いらっしゃい。何をお求めですか?」
エリカ「すみませんが人を探していて、もしご存知なら教えてほしいのですが」
おやじ「どんな方をお探しですか?」
エリカ「ウチャギーナという17才の導師服を着た女の子なんです。もしかすると怪我をしているかもしれないのです」
おやじ「ふーむ……悪いが知らないねえ」
エリカ「ご存じありませんか……」
おやじ「女の子どころか、このベガ村には滅多に旅の人は来ないんですよ。あなたたは1カ月ぶりぐらいかな?」
エリカ「砦が閉鎖されたからですか?」
おやじ「それもあるけど元々この村に来る用事ってまずないですからね」
エリカ「そうですか」
おやじ「港町ジャノバから出る船のとんどが北のオデッセイ大陸に行ってしまうので、この島が繫栄しないんだよね」
シャルル「それはよくないな。ジャノバ国王は何をやってるんだか……まったくもう……」
おやじ「もしかして国王のお知合いですか!?」
シャルル「ま、まさか! 俺が国王の知り合いなわけないじゃないか……」
おやじ「……ですよね。失礼しました。ところで、最近オデッセイ大陸で若い女性が次々変死するという事件が起きているらしいので、皆さんも気をつけてくださいね」
エリカ「それは物騒ですね。どこの街で起きているのですか?」
おやじ「詳しいことは知りません。村の者から聞いた話なので」

 シャルルとエリカが店主と会話中、チルチルが商品を眺めている。

チルチル「エリカさん、シャルルさん、これって何だろう?♫」

 チルチルは黒い粉が入った小さな瓶を指し示した。

おやじ「ああ、それは『変な薬』です」



第31章「戦士の影」 第9話

シャルル「変な薬? どんな効き目があるんだ?」
おやじ「はい、これを使用すると敵を混乱させることができるのです」
チルチル「どんな時に使うのでピョン?♫」
おやじ「味方が不利な状況になったとき、敵の1人に投げるとその敵は仲間を攻撃します。ただし効果は1回きりで3分程度です。その間にこちらは態勢を立て直し戦況を有利に持ち込むことができる……らしいです」
エリカ「それはありがたい代物じゃないですか。1ついくらですか?」
おやじ「100Gです」
シャルル「じゃあ5個ほど売ってくれるか?」
おやじ「すみません。1つしか残っていないので、お安くしておきます。50Gにまけておきます」
エリカ「まあ、まけてくれるのですか?ありがとうございます」
シャルル「それじゃ行こうか。おやじさん、ありがとうな~」

 シャルルたちは『変な薬』をゲットした!
 店を出ようとしたそのとき、シャルルの腹が鳴った。

エリカ「あら、おなかが鳴っていますね。食事もしないでウチャギーナさん探しをしていので、そろそろ食べに行きますか?」
チルチル「私もおなかが空いたでピョン♫」

 シャルルたちは店主に、村にある唯一の食堂の場所を聞き、まっしぐらに向かっていった。
 食堂はすぐに見つかったが、店内はガランとしていて、シャルルたち以外に客は1組しかいなかった。
 空いている店は不味いのかな……とつい疑ってしまうことがある。
 だけど他に食堂がないので諦めて腰を据えることにした。

食堂のおやじ「今日はマトンカレーしかできないけど、それでいいですか?」

 メニューも少なくあまり商売気が感じられない店だが、他に食堂がないので、ここで腹ごしらえをするしかないだろう。
 携行しているパンを齧ってもよいのだが、旅用の食料はできるだけ残しておきたい。

シャルル「マトンカレー? 上等だ。早く作ってくれ。腹が減った~」
エリカ「マトンカレーを3人前お願いします」

 味は正直期待していなかったが、ふわふわになった羊の肉に味がしっかりと染み込んでいて、噛めば噛むほどスパイスの味わいが楽しめ、シャルルたちは大満足であった。

シャルル「これはいける!」
エリカ「全然羊臭さがないし、トマトの酸味とブラックペッパーがよく効いてて美味しいです」
チルチル「美味しいね~、おかわりがほしいでピョン♫」

 食後、店主にウチャギーナのことを尋ねてみたが、これといった情報は得られなかった。

食堂のおやじ「ところで皆さんはポリュラスに行ったことがありますか?」
エリカ「オデッセイ大陸の一番南にある賑やかな街ですよね。私は以前一度だけ行ったことがあります」
シャルル「以前はよく行ったよ。交易とダイヤモンド採掘で街は活気があったな~」
食堂のおやじ「実はね、ポリュラスで息子が酒場をやってるんですよ。もし店に行かれることがあれば『たまには便りをよこせと親父が言ってた』と伝えておいてくださいな」
エリカ「もし行くことがあればきっとお伝えしますわ。因みに息子さんのお名前は?」
食堂のおやじ「息子の名前はチーロで、店は『ウブリアーコ』と言います」
エリカ「まあ、『ウブリアーコ』とは『酔っ払い』という意味ではないですか。とても印象的な屋号ですわね、おほほほほ」
チルチル「私はおこちゃまだから酒場には行けないでピョン……クスンッ」
シャルル「だいじょうぶだ。きっと酒以外もあるよ」

 隣のテーブルには20代とおぼしき2人の女性が向かい合って座っていたが、ふと彼女たちの会話がシャルルたちの耳に飛び込んできた。

若い女性A「知人から聞いた話なんだけどさ、ポルケの街の外れにうっとりと見惚れてしまうほどのイケメンが住んでいるらしいの」
若い女性B「ああ、聞いたことがあるよ。しかも伯爵の称号を持ってて大金持ちだとか」
若い女性A「かなりの遊び人で夜な夜な美しい女性を見つけては誘っているらしいわ」
若い女性B「一度でいいか誘われてみたいものだわ。ポルケに行ってみない?」
若い女性A「たとえポルケに行ってもそのイケメンから誘われるとは限らないわ」
若い女性B「それもそうね、ポルケの街と言っても広いし、顔も知らないものね……(ションボリ)」

 聞き耳を立てていたチルチルはエリカの耳元でヒソヒソ話をした。

チルチル「噂になるほどのイケメンってどれほど美形なんだろう? ねえ、ポルケという街はどこにあるのでピョン♫?」
エリカ「ポリュテスから北へ1時間ほど行ったところにあります。チルチルさんも年頃ですね、イケメンに興味があるなんて」
シャルル「ここにもイケメンがいるぞ」

 シャルルは自身を指し示した。

チルチル「どこに? どこにもいないでピョン♫」
エリカ「そうですね、この辺にイケメンはいませんね」
シャルル「おまえたちの目は節穴か~~~~~!」
チルチル「きゃぁ~~~!♫」
エリカ「ひぃ~~~!」



第31章「戦士の影」 第10話

 見張り番を倒したシャムたちはアリサを先頭に洞窟を進んでいた。
 湿度が高く空気がヒンヤリと冷たい。やたら起伏が激しく地面が柔らかいのが特徴だ。

アリサ「アップダウンの多い洞窟だねええええ」
シャム「全くだ、先頭と最後尾の段差が大きいと全員を見渡せなくなるからなあ。みんな、できるだけ接近してはぐれないようにしろよ~」
エンポリオ「了解した」
ユマ「バリキンソンってどんな人物なの?」
キュー「半馬人で自称男爵と名乗っているけど素性は不明なの」
ユマ「半馬人ということはケンタウロスのような感じかな?」
キュー「そんな格好いいもんじゃなくて、身体は人間だけど顔は完璧に馬の顔なの」
ユマ「キモ……」
キュー「しかもすごくエロくてずる賢いと来てる」
ユマ「最悪だね」
イヴ「そんなバリキンソンが潜伏している洞窟だから、どんな罠があるか分からないわ。みんな気をつけて」
エンポリオ「分かった。でも坂が多くて歩きにくい洞窟だなあ」
イヴ「先頭のアリサちゃん~、しっかり監視しててね~!」
アリサ「はあいいいい!」

 軽やかな返事をしたアリサだったがすぐに立ち止まった。

アリサ「みんな止まってええええ!」
シャム「なんだよ?」
イヴ「アリサちゃん、どうしたの?」

 アリサは足元の岩を指し示した。

アリサ「罠が仕掛けてあるうううう!」
シャム「どれだ!?」
アリサ「ここ見てええええ」
シャム「ん? 普通の岩のように見えるが……」
アリサ「もっとよく見てよおおおお!」
シャム「おおっ! まるでクリトリスのような突起があるぞ!」
アリサ「例えがエロ過ぎるんだけど。それはいいとして、ねっ? ピンク色のボタンがあるでしょおおおお?」
シャム「あるある。で、ここを踏むとどうなるんだ?」
アリサ「それは私にも分からないけど、きっと何か仕掛けがあると思うのおおおお」
シャム「仕掛けがあるのか!? それだと危なくて進めないな~。これ以上先へ行くのやめて宿屋に戻って皆でチンヒールごっこしようか?」
イヴ「何を情けないことを言ってるの! 祈祷師さんが囚われていると言うのに」
シャム「でもなあ……」
マリア「祈祷師さんってすごい美人かもしれないですよ」
シャム「行く行く! やっぱり奥に進むぞ~!」
ユマ「あらら……なんと現金な勇者さん」
イヴ「底なしの女好きなんだから~」
シャム「ふうむ、否定はしない」
エンポリオ「前でごちゃごちゃ言ってないで先へ進もうよ。仕掛けのボタンを押すのがおっかないなら、俺が矢を射ってみるよ。はね返ると危ないので、皆、ちょっと下がってて」
シャム「下がると言っても洞窟狭いからなあ」
ユマ「みんなできるだけ下がろうよ」

 エンポリオがグイと弓を引く。
 シャムたちは数歩下がって防御姿勢をとった。
 矢が放たれた。
 矢は見事にピンク色のボタンに命中した。

エンポリオ「……!?」

 まもなく前方の天井に変化が起きた。
 号音とともに天井から大きな岩石が落下したのだ。

シャム「うわ~!」
アリサ「きゃっ! 前で岩が落ちたああああ!」

 もし足でボタンを踏んでいたら、真上から岩石が落ちてきてアリサや周囲の者は圧し潰されていただろう。

シャム「ぞ~っ……危ないところだった……」
イヴ「危機一髪だったね。アリサちゃんとエンポリオのお陰で助かったわ」
エンポリオ「以前兵学校で教わったことを思い出したんだ。これは『メガロック』というトラップで、床を踏むと天井から岩が落ちてくる仕掛けなんだ。アリサちゃんのような罠を事前に発見できる子が仲間にいるから心配はないけど、そうじゃなかったらきっと犠牲者が出ていたと思う」
シャム「寒気がしてきた……」
アリサ「だいじょうぶだよおおおお。私がいる限り心配ないよおおおお」
ユマ「アリサちゃんは頼もしいわ」
シャム「よし! それじゃあ先に進むぞ!」
アリサ「でもこの落ちてきた岩が邪魔で通りにくいねええええ」

 通路の中央に岩石が落下してきたため、シャムたちは岩石をよけながら通ることにした。

 その後、行く手には数か所の『メガロック』が仕掛けられていた。
 通路が平坦なら岩が落下してくるのを避けるだけでよかったが、登り坂だと大きな危険が伴った。
 落下した後、こちらの方にゴロゴロと転がってくるのだから堪ったものではない。
 また『メガロック』だけでなく他の罠も潜んでいるかも知れない。

 アリサはゆっくりとした足取りで、細心の注意を払いながら一歩ずつ進んでいく。
 おのずと口数も減り一行は沈黙でアリサの後に続いた。
 ひんやりとした洞窟を進む彼らに、今までの洞窟とは異なる緊張感が漂っていた。

⚔⚔⚔

ウチャギーナ「妹さんは何才になるの?」
リョマ「今年でちょうど20才になるんだ」
ウチャギーナ「じゃあ私より2つお姉さんね」

 リョマは前方を指さした。

リョマ「おお、見えてきた。あの小さな家が妹の家だ」
ウチャギーナ「突然行くとびっくりするのでは?」
リョマ「そうだね。ウチャギーナのような可愛い女の子を連れていくと驚いて腰を抜かすかも知れないね」
ウチャギーナ「うふ、そんなことないわ」

 ふたりは楽しそうに語り合いながら、祈祷師をしている妹の家の玄関先に到着すると早速リョマが扉を叩いた。



第31章「戦士の影」 第11話

リョマ「サチェル、私だ。開けてくれ」

 反応がない。
 再び扉を叩く。

リョマ「サチェル? いないのか?」

 今度は強めに扉を叩くリョマ。
 やはり反応がない。

リョマ「妙だなあ……洗濯でもしていているのかな?」

 リョマはドアの取っ手を捻った。

リョマ「あれ? 開いてるじゃないか……鍵を掛け忘れたのかな? 用心悪いなあ。とにかく中に入ろう。ウチャギーナ、さぁ入って」

 リョマがウチャギーナを伴いサチェルの家に足を踏み入れた瞬間、愕然とした。
 目の前に広がっていたのはひどく散らかった部屋の惨状だった。

リョマ「これはいったいどういうことだ……!? サチェル……!」

 家の中にサチェルの姿はなかった。
 リョマの顔はみるみるうちに険しくなっていった。

ウチャギーナ「サチェルさ~~~ん!」
リョマ「サチェル! どこに行ったんだ!?」

 リョマが血相を変えてサチェルを探し始めたとき、ウチャギーナは円卓に残されていた1通の手紙を見つけた。

ウチャギーナ「リョマさん、ここに手紙があるわ!」

 急いで手紙に目を走らせるリョマ。
 手紙はバリキンソンからリョマに宛てられた例の1通であった。

『竜騎士リョマに告ぐ
妹は私が預かっている。妹を取り返したいなら 1人でボヘミアンの洞窟まで来い。
バリキンソン』

リョマ「むむむっ……! あのウマズラ野郎め~~~っ!」

 珍しく語気を荒げるリョマ。

ウチャギーナ「どうしたの!? サチェルさんの身に何が……!?」
リョマ「サチェルが誘拐された……うううっ……くそっ……!」
ウチャギーナ「そ、そんなことって……!? どうして……? バリキンソンって誰?」
リョマ「詳しいことは後で話すよ。それより、テーブルの上にあるもう1枚メモがあるが何だろう……!?」

 そこにあったのはシャムから伝言であった。

『妹さんはおいらたちが助けに行くので、あなたはここで待っててください。
                    ○月○日
                    勇者シャム』

ウチャギーナ「こ、これはっ……! シャムがここに来たんだわ!」
リョマ「勇者シャムってウチャギーナが話していた礼の仲間だよね!?」
ウチャギーナ「そうよ! シャムたちがサチェルさんを救いに行ったんだわ! であればきっと大丈夫よ!」
リョマ「でも、どうして、見ず知らずの私の妹を助けに行ってくれたのかな?」

 リョマは不思議でならなかった。
 普通は危険を冒してまでわざわざ見知らぬ人間を救出に行こうとは思わないはずだ。

ウチャギーナ「そういう人なのよ、シャムという人は。損得抜きで困っている人がいれば助けようとする人なのよ」
リョマ「そうなんだ、分かった。でもシャムさんたちだけに任せておくわけには行かないよ。私も今からボヘミアンの洞窟に行くよ! ウチャギーナはここで待っててくれないか!」
ウチャギーナ「嫌よ。私も行くわ!」
リョマ「でも病み上がりだし」
ウチャギーナ「私はもう大丈夫よ。リョマが介抱してくれたからすっかり元気になったわ。それに少しでも役に立てることがあればしたいの」
リョマ「分かったよ。それじゃいっしょに行こう!」

 リョマは山仕事の道具類をサチェルの家に置き、すぐに向かおうとした。

ウチャギーナ「剣や防具類は持って行かなくていいの?」
リョマ「家に戻ってる暇はないよ。伐採用の斧があれば十分だ」
ウチャギーナ「そうね。私もこのままでいいわ」
リョマ「でも無理をするんじゃないよ」
ウチャギーナ「だいじょうぶ。私の魔法を見てびっくりしないでね」
リョマ「こんな時不謹慎なことを言うが、楽しみにしてるよ」

 一瞬笑顔を浮かべたウチャギーナであったが、すぐに気迫のこもった厳しい目で遠くを見据えた。

リョマ「そうそう。ウチャギーナに良い物をあげよう」
ウチャギーナ「……?」

 リョマは本棚の引き出しから小箱を取り出しウチャギーナに渡した。
 小箱を開けると青く輝くブレスレットが入っていた。

ウチャギーナ「まあ、きれい!」
リョマ「これは武術大会で優勝した時に国王からいただいた物で『神秘のブレスレット』というんだ。腕に着けると魔力が10%増すので君に使ってもらいたい」
ウチャギーナ「そんな大切な物をいただくわけにはいきません。サチェルさんにあげて」
リョマ「実は赤と青の2つがセットになっててね、赤はサチェルが持ってるんだ。青は誰も使っていないので、頼むよ、ぜひ使ってほしい」
ウチャギーナ「分かりました、では遠慮なく使わせてもらいます。この腕輪を着けてサチェルさんを必ず救ってみせるわ、リョマ……」

 ウチャギーナは『神秘のブレスレット』をゲットした!
 ウチャギーナの魔力が10%アップした!



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勇者シャム&街少女チルチル(画:ワルキューレキュー作)











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