ファンタジー官能小説『セクスカリバー』 Shyrock 作 |
<メンバーの現在の体力・魔力>
シャム 勇者 HP 710/710 MP 0/0
イヴ 神官 HP 590/590 MP 620/620
アリサ 猫耳 HP 600/600 MP 0/0
キュー ワルキューレ HP650/650 MP340/340
ウチャギーナ 魔導師 HP 510/510 MP 620/620
エリカ ウンディーネ女王 HP 510/510 MP 650/650
マリア 聖女 HP 520/520 MP 670/670
チルチル 街少女 HP 440/440 MP 0/0
ペペ 魔導師 HP 560/560 MP 660/660
シャルル 漁師・レジスタンス運動指導者 HP 740/740 MP 0/0
エンポリオ アーチャー HP 540/540 MP 0/0
⚔⚔⚔
階段を登りきったシャムたちの目に飛び込んできた光景は、恐ろしく天井が高く朴訥とした大広間であった。
床や壁はすべて花崗岩で造られており調度品等は一切ない。
この塔には珍しく左右の壁には小窓が多く設けられていて、わずかな陽射しが差し込んでいる。
シャム「なんだ? この部屋殺風景な部屋は……」
大広間の正面は教壇のようなものがありクロスボウを持った鎧の男が待ち構えている。
男がパンティスキーが言っていたモリガンなのかもしれない。
鎧の男からシャムたちのいる場所までは100メートル程度なので、クロスボウであれば十分に届く距離と言える。
いつ矢を射ってくるか分からないが、今のところ攻撃を仕掛けてくる気配は感じられない。
シャルル「奇妙な部屋だな。大きな岩がゴロゴロと転がっているぞ」
アリサ「本当だ! 鎧の男との間に大きな岩が置いてあるうううう!」
チルチル「何の目的で岩が置いてあるんでピョン♫?」
シャム「岩が置かれている理由は分からないけど、この岩を盾にして前に進めば、鎧の男がいる場所までたどり着くのは案外簡単かも知れないぞ」
シャムの妙案に仲間たちはこっくりとうなずく。
シャム「みんな聞いてくれ。正面にいる鎧の男がおそらくモリガンだ。オイラたちが進み始めると、ヤツは矢を射ってくるだろう。占い師は幻の矢も飛んでくると言っていたが、大量に飛んでくると本物とニセモノの区別がつかなくなってしまう。だからヤツがいる場所まで真っ直ぐに突っ走るのはとても危険だ。
そこでだ、ところどころに点在している岩をうまく利用する作戦をとる。ここから近くの岩にたどり着き、頃合いを見計らって次の岩に移動する。こちらからも弓や魔法で応戦しながら徐々に近づいていく。一番近い岩まで辿りついたら隙を見て一気に仕掛ける。そして敵を倒す」
イヴ「良い作戦だと思うわ」
エリカ「とにかく矢を避けることが一番大事なのでとても賢明な作戦だと思います」
シャルル「賛成だが1つだけ問題がある」
シャム「なんだ?」
シャルル「大きな岩とは言っても俺たち10人がすっぽり隠れてしまうほど大きいわけではない。だから2班に分かれた方が良いと思うが?」
シャム「うん、おいらもその意見に賛成だ。そうしよう。じゃあ2班に分かれよう」
右側の一番大きな岩がある方をシャルル組とし、シャルル、キュー、イヴ、エンポリオ、エリカ、チルチルの6人で構成し、
左側をシャム組とし、シャム、アリサ、ペペ、ウチャギーナ、マリアの5人で構成することに決まった。
ウチャギーナ「敵に少し接近したら魔法攻撃をするわ。ここからだと届かないけど少し近づけば届くと思うの」
ペペ「私もタイミングを計って魔法で援護します」
キュー「私は一番近い岩にたどり着いた時に召還魔法でゴーレムを呼び出すわ。ゴーレムの後ろに隠れて一気に攻撃をかけるわ」
チルチル「私は大した役に立てないけど、掛け声で励ますでピョン♪」
エリカ「皆さん、それぞれが持ち味を出せば良いのです」
シャム「一番敵に近い岩に辿りついたら、両班が示し合わせて一気に打って出よう! それじゃあ、行くぞ!」
シャムの合図とともに2班は行動を開始した。
2、3歩踏み出すとモリガンとおぼしき男は待っていたかのように早速矢を射かけてきた。
矢はシャムの1メートルほど左を通過する。
シャム「うわっ! 矢を放って来たぞ! みんな気をつけろ!」
シャム組が左側の岩に向かい、シャルル組も右側の岩へと向かう。
5階制覇はユマ姫救出の足掛かりになるだろう。
一段と士気は高まりモリガン打倒にメラメラと燃える。
モリガンが矢を放ってきたが、シャム組、シャルル組ともに臆することなく岩陰にたどり着いた。
シャムたちが岩まで移動している最中、モリガン側に大きな変化が起きていた。
あろうことかモリガンが8人に増えていたのだ。
最初に気づいたアリサは脳天に一撃を食らったような衝撃を受けた。
アリサ「にゃごぉ~~~~~! 大変っ! モ、モリガンがああああ!!」
シャム「落ち着け! モリガンがどうした!?」
ウチャギーナ「みんな、正面を見て! いつの間にかモリガンが8人になっているわ!」
マリア「そういえばパンティスキーさんが『モリガンが放つ矢は本物だけど、それ以外は全部幻覚』と言っていましたね」
ペペ「ほとんどが幻覚だと言っても、8分の1が本物ですからね」
ウチャギーナ「つまり全部本物だと思って行動しなければならないわけね。これは厄介だわ」
マリア「8人がどんどんと放ってきたら、矢をかわすのが一苦労ですね」
シャム「確かにそうだが怯んではいられないぞ。盾を前面に立てて突き進むだけだ」
アリサ「パンティスキーさんところで盾を借りてきてよかったね。ふだん戦士以外は盾を持たないものねええええ」
ウチャギーナ「でもレンタル料を取るなんてあの占い師はちゃっかりしてるね」
ペペは岩から少しだけ覗きこみ敵の動きを観察している。
ペペ「この距離だとちょっと遠いけど、近くの岩に近づいたら隙を見て魔法を仕掛けてみます」
ウチャギーナ「シャムやシャルルは接近戦しか挑めないから、私たち魔導師ががんばらないとね」
シャム「でも無茶はするなよ」
マリア「盾を持っていると魔法を使えないので、唱える瞬間だけ盾を下ろすことになります。とても危険な瞬間なので十分に気をつけてくださいね」
アリサ「ああ、アリサも魔法を使えたらいいのになああああ」
シャム班とシャルル班は別行動をとるので、大事なことは大声を張り上げ伝達することになっている。
シャム「くっ、どれが本物のモリガンだ? パンティスキーは幻の矢が混じっていると言っていた。つまり8人のうち7人はニセモノだ! ニセモノのモリガンが放つ矢に当たっても何ともないはずだ!」
アリサ「にゃお、でも本物かニセモノか、区別がつかないよおおおお」
シャム「厄介だなあ……みんな、とにかく絶対に矢に当たるなよ! 矢を避けながら一番近い岩に向かう! 敵に近い岩まで辿りついたら一気に勝負をかけるぞ!」
シャルル「おおっ、了解した! みんな、絶対に死ぬなよ!」
シャム「おいらはは不死身だから大丈夫だが、みんなは気をつけろよ!」
シャルル「よく言うぜ! わっはっはっはっは~~~!」
シャム班とシャルル班、同時に駆け出し1つ目の岩までは無事に移動できたが、次が問題だ。
中央に岩が1か所しかないのだ。
比較的大きな岩だが、2班11人の壁になるほどの横幅はない。
そこで閃いたのが時間差移動であった。
先にシャルル班だけが2つ目の岩へと向かう。その間シャム班の魔法部隊が掩護する。
シャルル班が2つ目の岩に辿りつき、機を見て3つ目の岩を目指す。
シャルル班が2つ目の岩から出ると同時にシャム班が移動を開始する。
シャム班が2つ目の岩に辿りつき、同じ頃シャルル班は3つ目の岩に到着する。
次に、シャム班が2つ目の岩から移動し左側の3つ目の岩を目指す。その間シャルル班は飛び道具や魔法で援護する。
シャム班が無事に3つ目の岩に辿りついたら、機をみて一気に総攻撃を仕掛ける。
それがシャムたちが描いた作戦計画であった。
早速、行動に移された。
シャムの合図と同時に、シャルル班は矢が飛来する中、盾を翳して2つ目の岩へと向かった。
8人の騎士たちは次々に矢を射かけてくる。
先頭を進むシャルルが剣で矢を跳ね返そうとするが、剣に触れるとまるで泡雪のようにすぐに消えていく。
シャルル「チェッ、ニセモノの矢か!」
キュー「シャルル、飛んでくる矢をいちいち跳ね返していたら切りがないよ。盾で防ぎながら進む方が手っ取り早いよ」
シャルル「俺としたことが。分かった、そうしよう」
珍しくシャルルがキューの助言を素直に聞き入れた。
シャルル班が2つ目の岩までたどり着くのに、さほどの時間を要しなかった。
シャルル班は岩陰で一呼吸入れると、頃合いを見て3つ目の岩に向かって走り出す。
その時だった。
キュー「きゃ~~~~~~~!! 矢がっ……!!」
シャルル「キュー、大丈夫か!?」
キュー「あわわわわわ……矢を躱したつもりが、失敗して足を通過していったの……ぞぉ」
イヴ「幻の矢だったのね。よかったわ」
エリカ「本物の矢だったら大変でしたね。みなさん、気をつけましょう!」
チルチル「ここにはヒール魔法の達人が2人もいるから安心ピョン♫」
イヴ「でも今はエリカさんも私も矢をよけるので必死だから、とてもヒールを唱える余裕がないと思うわ。とにかく当たらないように気をつけて」
シャルルたちは気持ちを引き締め直して、飛来する矢を躱しながら3つ目の岩に辿りついた。
シャルル班の3つ目の岩への到着を確かめたシャムは待機中の仲間に号令をかけた。
シャム「みんな、おいらたちも2つ目の岩に向かうぞ! 盾で身を守りながらおいらにつづけ!」
ウチャギーナ「分かったわ!」
アリサ「あんなヘタレ矢、当たるわけないわああああ!」
ペペ「移動中はこっちから反撃できないのが残念です」
マリア「とにかく守りが第一ですよ。みなさん、注意して進みましょう!」
シャムたちが2つめの岩に向かう途中も、間断なく降り注がれる矢の雨。
なんとか矢を躱しながら2つ目の岩に辿りついた。
ウチャギーナ「ふう、最後の岩までもう少しね。突撃をする前に敵を少しでも多く倒しておきたいわ。ここだと魔法で狙いやすいので試してみるね」
シャム「無理をするな! 魔法を唱える間は盾を使えないから危険だぞ、やめておけ!」
ウチャギーナ「大丈夫、岩の端っこから少しだけ覗いて、魔法を放つから」
アリサ「ウチャギーナ、ダメだよ、危ないってええええ」
いずれの騎士が本物なのかは分からない。
本物とニセモノの区別はつかないが、1人でも多く倒しておけば後が楽になる。
ウチャギーナは左から3番目の騎士に照準を合わせ魔法を唱えた。
風の魔法ウィンドカッターがうなりを上げて、3番目の騎士目掛けて放たれた。
だが惜しくもウィンドカッターは敵の手前に消滅してしまった。
ウチャギーナ「ああ、残念……敵まで届かないわ。私がまだ未熟なせいだわ」
マリア「ウチャギーナさん、落胆しないでください。3つ目の岩に辿りついてから攻撃すれば必ず命中するはずです。焦らないで」
ウチャギーナ「そうだね。うん、マリアさんのいうとおり次の岩まで行ってから敵を倒すことにするわ!」
シャルル班も同様に岩陰から敵を倒そうとその機会を狙っていた。
シャム班が3つ目の岩に辿りつくまで総攻撃ができない。2班が足並みを揃えて同時に仕掛けなければならない。
総攻撃をかけるまでまだ時間の余裕があるので1人でも多く敵を倒しておきたい。
遠距離攻撃ができるエンポリオとエリカも同じことを考えていた。
ちなみに3つ目の岩からなら敵に近く矢や魔法が命中しやすい。
エンポリオ「シャム班にだけ遠距離攻撃を任しておくわけにはいかないからな! 今度は俺の番だ! モリガンめ、俺の矢を受けてみろ!」
エンポリオはきりきりと弦を引きエルフの矢を放った。
矢が見事に右端の騎士に命中すると、呆気なく霧のように消えていった。
チルチル「やったあ~~~! エンポリオ、すごいでピョン♫」
イヴ「この調子で1人づつ消していけたらいいね」
エリカ「今度は私が攻撃します! ウンディーネの魔法に耐えられますか!」
エリカが岩の陰でウォータースライダーの呪文を唱え、魔法を放つ瞬間だけ身を乗り出した。
ウォータースライダーは右から2番目の騎士に向かって放たれた。
水魔法が敵に通じるかどうかは未知数である。
シャルルたちは固唾を呑んで見守った。
チルチルは両手を合わせて祈っている。
水魔法は敵を捉えるとすぐに威力を発揮した。
2番目の騎士もやはり幻であった。
残る敵はあと6人だ。
6人といっても本物のモリガンは1人だけで、その他は幻影に過ぎない。
エンポリオ「やったね、エリカさん! その調子で敵をどんどん減らそうよ!」
シャルル「シャム班が3つ目の岩に着いたら総攻撃をかけるぞ。今から腕が鳴るぜ」
キュー「総攻撃のときゴーレムを召喚させるからね。きっと心強い味方になってくれるよ!」
シャルル「おお、頼んだぞ! お~い、シャム、聞こえるか~! 総攻撃をかける時はゴーレムがいるこちらからから先に仕掛けるぞ。いいな~!」
シャム「おいらたちを舐めるなよ~! 総攻撃は同時だ! 分かったか~!」
シャルル「チェッ、意地を張りやがって。仕方がないから1匹でも沢山騎士どもを片付けようぜ。エリカ、エンポリオ、期待しているぞ~!」
エリカとエンポリオは期待に応えて魔法と飛び道具による攻撃を再開した。
⚔⚔⚔
シャム班も2つ目の岩陰から、ウチャギーナとペペが魔法を放ち応戦していた。
幻影の騎士が1人、2人と消えていく。
残るのは4人だ。
イヴとマリアは万が一に備えていつでもヒールをかけられる準備を怠らない。
ペペが魔法を放とうとして岩陰から身体を乗り出したとき、1本の矢がペペの胸部を襲った。
ペペ「ぐぁわ~~~~~~~!!!!!」
シャム「ペペッ!!」
アリサ「ぺぺっええええ!!」
ウチャギーナ「まさかっ!!」
マリア「ペペさん!!」
ペペはその場に崩れるようにして倒れこんでしまった。
胸元に受けた矢傷から血が溢れ、激痛が襲う。
飛び来る矢をものともしないで真っ先にペペに駆け寄ったのはシャムであった。
アリサたちとともに安全な岩陰にペペを移動させる。
シャム「ペペっ! しっかりしろ!」
シャムはペペを抱きかかえ、矢を抜こうとした。
だが胸を貫いた矢は容易には抜けない。
マリア「ペペさん、しっかりしてください!」
マリアはすぐさまヒール魔法をかける。
だけど矢を受けた場所が悪かったのかなかなか回復しそうにない。
悲壮な表情で繰り返しヒールを唱えるマリア。
薬草を口に含ませようとするウチャギーナ。
ペペ「ううっ……シャムさん……む、無念です……ゴホッ……」
シャム「ペペ、死ぬなよ!」
口から血を流してかなり苦しそうだ。
アリサ「ペペっ!! がんばってええええ!!」
ウチャギーナ「傷は浅いよ、大丈夫だよ!」
ペペ「ゴホッゴホッ……うう……僕は……もう……ダメです……」
シャム「弱気なことを言うな! マリアがヒール魔法を掛けてるから大丈夫だ! しっかりするんだ!!」
抱きかかえるシャムの腕もペペの血で真っ赤に染まっている。
その時、1本の矢がシャムを目掛けて飛んできた。
ペペの介抱に夢中になっていたため自身の足が岩陰からはみ出していることに気付かなかったのだ。
シャム「うっ……!」
矢はシャムの膝をかすめ、床で跳ね返った。
アリサ「シャムっうううう!」
シャム「いててて……くそぉ、本物の矢だったか……おいらは大丈夫だ」
トラウザーズの膝部分が裂け血が滲んでいる。
マリアはシャムにヒールを唱えようとしたが、シャムがそれを制した。
シャム「おいらはいいからペペを治してやってくれ!」
そう叫びながらペペの介抱をつづけるシャム。
シャム「ペペ、しっかりするんだ!」
ペペ「ううっ……僕はもうダメです……シャムさん、皆さん……今まで……ありがとうございました……皆さんといっしょに……旅ができて楽しかった……うっ……最後まで……ごいっしょできなかったのが……心残りですが……ぜひ目的を果たしてください……皆さんならきっとできます……僕は信じてます……ううっ……うううっ……」
シャム「ペペっ! しっかりしろ~~~! マリア、ヒールを! アリサ、ウチャギーナ、薬草を~~~!」
ペペ「もう……治療しても……無理だと思います……ヒールも薬草も……皆のために置いておいて……ください……ううっ……うううっ……」
シャム「何を言ってる! ペペ、ペペ~~~っ!! 死んではダメだ~~~~~~~~~~!!!!!」
ウチャギーナ「ペペ~~~! しっかりして~~~!」
アリサ「ペペ~~~! 死なないでええええ!」
マリア「神様……どうか、どうかペペをお救いください……」
離れた岩陰でシャルルたちも不安げな表情でペペの様子をうかがっている。
ペペは間もなく息を引き取った。
氷の魔導師としての道を歩み、シャムたちと共に戦い、わずか18年という短い生涯に幕を閉じた。
寡黙だが誠実で仲間に心優しき少年であった。
戦場は哀傷と嗚咽に包まれた。
シャム「マリア、ペペを生き返らせる魔法はないのか?」
シャムは涙ながらにマリアに尋ねた。
マリア「残念ながらありません。いかに卓越した司祭でも魔導師でも死者を蘇生させることはできません」
シャム「無理か……」
ウチャギーナ「グスン……そんな魔法があったらいいのにね……」
アリサ「絶対にペペの敵討ちをしてやるうううう!」
シャム「そうだ、ペペの弔い合戦だ! 3つ目の岩に辿りついたら総攻撃を仕掛けるぞ~~~~~!!」
シャム班一同「おおおおお~~~~~!!」
悲しみと怒りは時として激しく士気を高めることがある。
悲しみは仲間同士の結束力を深め、怒りは敵を倒すための原動力へと変化していった。
少し離れた岩陰で悲嘆に暮れるシャルルたちの姿があった。
しかしいつまでも悲しんでばかりいられない。シャムたちとともにモリガンを倒さなければならない。
シャルル「ペペ……おまえの仇は必ず討ってやるからな。必ずやつらを倒すぞ!!」
シャルル班一同「おおおおお~~~!!」
その時、キューがチャンドラーの剣を頭上に掲げた。
総攻撃に向けてゴーレムを召喚するときがきた。
キュー「ゴーレムを召喚するわ!」
イヴ「頼むね、キューちゃん!」
以前よりキューの魔力がパワーアップしているのでゴーレムも長い時間戦うことが可能だろう。
キュー「ゴーレム召喚!」
チャンドラーの剣が稲妻のような光を放つ。
ゴーレムが現れたらきっとみんなの盾になってくれるだろう。
みんなの期待が高まる。
ゴーレムは盾役を担う怪人の中ではトップクラスの体力と守備力を誇る。
矢を武器とする敵が相手だと実に頼もしい。
3つ目の岩に辿りついたシャムたちも期待の眼差しでゴーレム出現を待っている。
やがて稲妻が消えると同時に激しい地響きを響かせ1体のゴーレムが現れた。
キュー「ゴーレム! さあ、進んで! 敵はあの4体の鎧の騎士よ!」
キューの号令とともにゴーレムはのっしのっしと鎧の騎士目掛けて進みだした。
その足取りはお世辞にも速いとは言えないが一歩一歩に重々しさがある。
シャム班より一歩先んじたのはシャルル班であった。
シャルル班は召喚したゴーレムの巨体の陰に隠れて前進する。
モリガンたちはシャルル班に矢を発射してきたが、ゴーレムが壁となりすべて跳ね返すか、あるいは消滅してしまう。
モリガンたちがゴーレムとシャルル班に気を取られている隙に、シャム班が一斉に躍り出た。
騎士が4人残っているといっても本物のモリガンは1人いるだけだ。
モリガンはどれぐらい強いのだろうか。
それは誰にも分からない。
真っ先に挑みかかったのはアリサだった。
一番左側の騎士に跳びかかり漆黒の爪で顔面を引っ掻く。
騎士は音も立てずに呆気なく消えてしまった。
シャムが左から2番目の騎士に剣を突き刺すと、いとも簡単に消滅してしまった。
残るはあと2人だけ。
ゴーレムが右側にいる騎士に挑もうとすると、騎士はクロスボウを捨て、剣を引き抜いた。
キュー「ゴーレム! そいつが本物のモリガンよ! 倒しておしまい!」
キューは幻と判断したもう1体の騎士を剣で突き消してしまった。
4メートル近い巨体のゴーレムがモリガンを持ち前の怪力で押し倒してしまった。
鎧装備の割りに意外に俊敏なモリガンは、すぐに起き上がると剣を奮い自身の2倍近くもあるゴーレムに応戦してきた。
モリガンも2メートル近い巨体を誇るが体格ではゴーレムに敵うべくもない。
パワーでは断然ゴーレムだが、手数ではモリガンは負けていない。
硬いゴーレムを貫くことは困難だがチクチクと剣先がゴーレムを苦しめる。
そこへシャルルが切り込んだ。
シャルル「おい、モリガン! 今度は俺の剣を受けてみろ!」
突然躍り出たシャルルに標的を移すモリガン。
2本の剣が交差する。
やはり力ではモリガンが勝っているようでじりじりとシャルルを追い詰める。
後退りするシャルル。
モリガンの鋭い突きがシャルルを狙う。
反射的にモリガンの剣を自身の剣で受け止めるシャルル。
乾いた金属音と同時に火花が飛び散る。
押された力を利用してシャルルはバックステップをして間合いの外に出る。
切りつけてきたモリガンを必死の思いで何とか躱す。
連続攻撃をかけてくるモリガンにシャルルは防戦一方だ。
再び身をひねって躱したが……
シャルル「うっ……」
腕にじわりと鈍痛が走る。
血がポタリと滴り落ちた。
キュー「シャルル! だいじょうぶ!?」
シャルル「かすっただけだ……大したことねえ」
エリカ「白魔法ヒール!」
状況を見守っていたシャムが猛然とモリガンに襲いかかった。
シャム「今度はおいらが相手だ! モリガン!」
シャルル「シャム、邪魔をするな! こいつは俺が片付ける!」
シャム「シャルル、闇雲に剣を振り回しても無駄だ! 忘れたのか? こいつの弱点を!」
シャムはそうつぶやくとモリガンの膝に剣を突き立てた。
関節部分には鎧の構造上わずかな隙間が存在する。当然膝も同じだ。
急所を突かれたモリガンは大袈裟なほどの叫び声をあげ七転八倒した。
モリガン「ぎゃあ~~~~~~~~~~!!!!!」
モリガンは耳をつんざくほどの凄まじい声を張り上げている。
モリガン「ぐわあ~~~~~~~~!!!!!」
呆然として見守る中、鎧の騎士モリガンが金属音とともに崩れ落ちた。
見る見るうちに身体が溶けだし、まもなく鎧だけを残して消えてしまった。
シャム「よし! 倒したぞ!」
キュー「にゅう、やった~~~!」
アリサ「モリガンに勝ったああああ!」
エリカ「そういえばモリガンを倒すと『ユニコーンの角』が現われるとパンティスキーさんが言ってましたが?」
チルチル「ツノはどこにあるの? 触るの気持ち悪いでピョン♫」
イヴ「私もこういうドロドロしたのって苦手だな」
エンポリオ「モリガンはもう死んじゃったし、どうってことはないよ」
エンポリオはこともなげに床に転がっている鎧を探りはじめた。
ほどなく鎧の下から『ユニコーンの角』が出てきた。
白くて捻じれた貝殻のような円錐形をしている。
シャムたちは『ユニコーンの角』を手に入れた!
エンポリオ「『ユニコーンの角』をどのようにすれば7階に行けるんだろう?」
ウチャギーナ「どこかに差込口があって、そこにこのツノを差し込むと7階への階段が現れるとか」
マリア「その可能性は十分にあると思いますね」
⚔⚔⚔
人が死すべきさだめにある限り避けられないこととは言え、志半ばで凶矢の犠牲となったペペの死はあまりにも辛かった。
宿敵モリガンを倒し念願の『ユニコーンの角』が見つかってもシャムたちに笑顔はなかった。
現在戦闘途中ということもありとりあえずペペを荼毘に付すことにした。
シャム「ペペよ、おまえのためにも必ずルシファーとメドゥサオールを倒すからな」
仲間たちのすすり泣きが静かに塔内を満たしていた。
塔の中で火葬は無理なので一旦塔外に出て行なうことになった。
マリア「われらが神ゼウスよ。世を去りたるこの霊魂を主の御手に委せたてまつる。彼が世にありし間、弱きによりて犯したる罪を、大いなる御あわれみもて赦し給え。われらが神ゼウスによりて願いたてまつる……」
イヴ「神よ、永遠の安息を彼に与え、絶えざる光をかれの上に照らし給え。彼の安らかに憩わんことを……」
朗々としたマリアとイヴの詠唱が森の中にこだました。
他の仲間たちも深い悲しみに打ちひしがれている。
エリカ「ペペさんはジャノバの出身だと言っておられましたが、ご両親のことは聞いていますか?」
シャルル「両親は戦争で亡くなったと聞いている。肉親はジャノバで暮らすお姉さんだけだと言っていたなあ」
エリカ「それならペペさんの形見を何かお姉さんに遺しませんか?」
シャルル「それはいいことだ、そうしよう。で、何を遺せばいい?」
キュー「ペペの髪をひとふさ遺すのはどうかしら?」
シャム「よし、決まりだ。ジャノバに行ったら、お姉さんのところに行こう」
シャムは短刀でペペの髪をひとふさ切り落とすと、小さな布袋に収めた。
まもなくペペの亡骸は荼毘に付された。
大空に煙が立ち昇る。
ペペの屍は天空へと還っていった。
⚔⚔⚔
シャム「ただいま~~~!」
パンティスキー「誰かな? ただいま、と言ってくれるような身内はおらんはずじゃが。おうおう、あんたたちか、よく無事で戻ってきたのう。モリガンを倒したのか?」
シャム「あんなヨロイヤロウなんて朝飯前さ」
パンティスキー「あんたたちはわしが想像していた以上に強いようじゃな」
シャム「当り前さ~」
シャムは胸を張り尊大に構えた。
胸を張った際、後ろに反り返り過ぎたためひっくり返りそうになる。
アリサ「おっとっとおおおお!」
真後ろにいたアリサが慌ててシャムの背中を支えた。
アリサ「シャムったら、すぐに調子に乗るんだからああああ」
パンティスキー「『調子に乗るなら私に乗って』、と顔に書いてあるぞ、ネコ娘よ。ふぉっふぉっふぉっふぉっ」
アリサ「ネコ娘ではなく私はネコミミなのおおおお」
シャム「ところで爺さん、調子に乗りついでに7階への行き方を占ってくれない?」
ウチャギーナ「爺さんって呼び方は失礼よ、占い師さんに」
パンティスキー「いやいや、好きに呼べばよいぞ。7階への行き方を占ってほしければパンティを出すがよい。シャムよ、あんたの物はいらんぞ」
シャム「ふん、言われなくても、おいらのパンツは誰にもやらねえよ」
チルチルがもじもじしながら一歩進み出た。
チルチル「あのぉ、恥ずかしいけど……私の物で占ってくれるでピョン♫」
パンティスキー「おお、おお! ロリロリ~!」
シャム「爺さん、ロリコンか?」
パンティスキー「ふん、人聞きの悪い。『対象年齢に幅がある』と言ってもらいたいな」
シャム「ってことは15才から80才まで対象ってことか?」
パンティスキー「勝手に年齢幅を設けるでない。それはそうとロリちゃん、名前と歳を聞かせてもらおうか?」
チルチル「街少女チルチルです~♫ 15歳でピョン♫」
パンティスキー「ちなみにオケケはもう生えておるのかな?」
チルチル「いやぁん、そんなこと恥ずかしくて言えないでピョン♫」
シャム「セクハラで訴えるぞ、このクソじじい!」
パンティスキー「いたっ!」
シャムは手のひらでパンティスキーの額をパチンと叩いた。
パンティスキー「いててて……なんと乱暴な……ふん、もう占うのをやめた」
チルチル「そんなあ……」
イヴ「パンティスキーさん、ごめんなさい。シャムの無礼は私が代わりに謝るから機嫌を直してね。お詫びに私のショーツも差し上げるからお願い。ね?」
イヴはウィンクをしてパンティスキーの目の前でショーツを脱ぎ始めた。
パステル系が多いイヴとしては珍しく今日は黒であった。
パンティスキー「んっ?……はぁはぁ……なかなかよい眺めじゃのう」
先程の怒りはどこへやら、パンティスキーは鼻の下を伸ばしてイヴの脱衣シーンをじっと凝視していた。
チルチルとイヴから2人のショーツを手渡され、パンティスキーの機嫌はもうすっかり直っている。
むしろ上機嫌になっている。
パンティスキー「ところで『ユニコーンの角』はもってきたか?」
エリカ「はい、手に入れてきましたよ! これでいいですか?」
パンティスキー「おお、これじゃこれじゃ。では早速占ってしんぜよう」
パンティスキーは机の上の水晶に手をかざしながら例の呪文を唱えた。
パンティスキー「パンチラパンチラ~ カラコメテ~ ドルチェコメテ~」
シャムたちはゴクリと生唾を飲み込む。
今のシャムたちにとってパンティスキーは託宣者と言ってもよいだろう。
「おお……見えたぞ」
水晶に岩のようなものが映し出された。
パンティスキー「5階に岩が5か所あったのを覚えておるか?」
シャム「うん、あった」
パンティスキー「中央に2つ並んだ岩があったじゃろう?」
キュー「2番目の岩のことね、2つ並んでいるので幅が広くて皆が身を潜めるのに都合がよかったのでよく覚えているわ」
パンティスキー「その中央の岩のどこかに、この『ユニコーンの角』がぴったりと填まる穴がある。それを探すのじゃ。穴を見つけたら『ユニコーンの角』をグググッと挿し込むのじゃ」
シャム「グググッと挿し込めばいいんだな?」
パンティスキー「そうじゃ、グググッじゃ」
ウチャギーナ「何か言い方がいやらしいように感じるんだけど」
マリア「私もそう思います。卑猥さが漂っています」
パンティスキーが首を傾げた。
パンティスキー「岩の穴への入れ方を説明したのじゃが、女性戦士たちよ、もしかしたら欲求不満ではあるまいか?」
ウチャギーナ「そんなことないわ」
マリア「魔物を滅ぼし平和を取り戻すため、聖なる旅をしているので、決してそんなことはありません」
パンティスキー「そうか、それならわしがとやかく言う必要はなかろう」
シャルル「それでグググッの次は?」
パンティスキー「ゴホン。グググッの次はズッコーンじゃ」
アリサ「ぃやあんんんん」
パンティスキー「岩に正しく『ユニコーンの角』を挿し込むと、6階から空中に浮かぶ7階にズッコーンと行けるのじゃ」
シャム「それは一体どういうことだ?」
パンティスキー「ふぉっふぉっふぉっふぉ~。それは行けば分かる」
エンポリオ「ここまで言ったなら最後まで教えてほしいな~」
パンティスキー「いや、どのようにして行けるかは、あんたたちの楽しみにとっておいてやろう」
アリサ「にゃにゃにゃ、もったいぶってる~、でもなぜかしらワクワク感が止まらないよおおおお」
シャムが剣を振りかざし号令をかけた。
シャム「よし、みんな出発するぞ!」
パンティスキー「ちょっと待て、気が早いぞ。7階の敵のことを知りたくはないのか?」
キュー「にゅう、そりゃ塔のラスボスのことは知りたいよ、でも教えてもらうのにまたパンツがいるよね?」
パンティスキー「沢山パンティをくれたから今回は特別サービスじゃ。7階の敵は幻術師アボガドという。実はやつは強くない」
シャム「はにゃ? 塔のラスボスなのに弱いのか? それはありがたいな」
パンティスキー「話を最後まで聞け。強くはないがアボガドは2人の騎士を従えておる。この2人が滅法強いときてる。それとアボガド自身も奇妙な幻術を操り人心を惑わせるのがうまい。この幻術を見破らないと、あんたたちは彼らに手を焼くことになるだろう。いいか、苦境に陥った時は目ではなく、心の瞳で相手を見つめろ。必ずや真実が見えてくるはずだ。わしからの助言はそれだけじゃ」
シャム「うん、分かった。パンティスキー爺さん、色々と教えてくれてありがとう。必ずアボガドを倒してみせるから! ユマ姫が囚われていたらきっと救い出してみせるから!」
シャムは力強く宣言した。
パンティスキー「お前たちの幸運を祈っておるぞ」
イヴ「ハ、ハ、ハクション!」
パンティスキー「どうした? 風邪を引いたのか?」
イヴ「提供したショーツの代わりにもらったふんどしを着けているんだけど、ショーツよりも露出部分が多くてスースーするので風邪を引いたかも」
パンティスキー「パンティのスペアは持っていないのか?」
イヴ「いいえ、沢山あるのでご心配なく」
パンティスキー「風邪を引きそうなのにわしがやったものを着けておるとは、しおらしい女じゃのう。だけど無理は禁物じゃ、毛糸のパンツをやろうか?」
イヴ「毛糸のパンツ? 色々とお持ちなのね。でもそれって戦闘向き?」
パンティスキー「残念だが、スピードがマイナス5落ちるのじゃ……」
イヴ「それなら遠慮しておくわ。スピードが落ちるのは困るもの」
エリカ「パンティスキーさん、色々とお世話になりました。また占いしてくださいね!」
パンティスキー「無事に戻って来て、またわしにぬくぬくのパンティをおくれ。待っておるからな」
イヴ「あはは、エッチなんだから~。きっとまた来るので占い頼むわね~!」
パンティスキー「達者でな」
⚔⚔⚔
シャムたちはパンティスキーの元を去り、再び5階へと向かった。
『ユニコーンの角』を中央の岩に挿し込む前に6階に通じる階段を探すことにした。
しかし6階に通じる階段は5階の隅々まで探してみたが見つからなかった。
アリサ「ねえシャム、モリガンのいた場所の後ろにステンドグラスの窓があるねええええ?」
シャム「うん、あるけど、明かり採りか換気のためではないのか?」
アリサは教壇の後方にあるアーチ型のステンドグラス窓が気になるようだ。
窓を開けてみると少し広めのバルコニーがあった。
バルコニーは何のために設置されているのだろうか。
シャムたちはバルコニーに出てなにげに上空を見上げた。
アリサ「あっ! 空中に何か浮かんでるうううう!」
キュー「にゅう、あっ、本当だ! 大きな岩が浮かんでる!?」
上空に四角形の岩状の物体がプカプカと浮かんでいる。
物体までの距離は50メートル程度あるだろうか。
ウチャギーナ「もしかしてあれが7階かな?」
エンポリオ「まさか、7階は塔の真上にあるんだろ?」
マリア「でも上に登る階段が見つからないので、あの岩のような物が6階、7階かもしれませんね」
シャム「うん、占い師が幻術師アボガドは常識では考えられないことを仕掛けてくると言ってたからあの岩が7階かも知れない。もしそうならあそこにユマ姫が捕らえられているかも……。 とにかくユニコーンの角を中央の岩に挿し込むぞ!」
シャムたちはさきほどモリガンを倒した大広間に急いだ。
中央に置ある2つの岩を手分けしてつぶさに調べてみることにした。
ウチャギーナ「この岩のどこかに『ユニコーンの角』がぴったり合う穴があると言ってたけど……」
アリサ「あな、あな、あな、穴はどこにあるのおおおお」
エンポリオ「女の子が口にするとすごくエロイな~」
シャム「アリサの場合は特にそれが言える」
アリサ「も~、変なこと言わないでよ。アリサも真剣に探してるんだからああああ」
キュー「にゅう! 見つけた!!」
キューが指し示す所には『ユニコーンの角』がぴったりと填まりそうな穴あった。
チルチル「見つけたでピョン~♫」
シャム「どれどれ? おおっ! あった~!」
エリカ「たぶんこれですね。では早速『ユニコーンの角』を挿入してみましょう」
シャムはユニコーンの角を穴に中に差し込んだ。
シャム「ん? これでいいのか?」
ウチャギーナ「もっと奥に挿し込まないといけないのでは? パンティスキーさんが『ユニコーンの角をグググッと挿し込め』と言ってたもの。あら、とかなんとか言ってると変な気分なってきちゃった」
イヴ「最近ちょっとご無沙汰だものねえ、チンヒール。この塔のクエストが完了したらシャムにたっぷりと注入してもらわないとね~」
ウチャギーナ「そうだねえ」
エリカ「この重大事に2人して何を不謹慎なことを言ってるのですか」
イヴ「ドキッ……」
ウチャギーナ「てへっ」
カチャンッ……!
シャム「入った!」
『ユニコーンの角』がぴったりと穴に収まると、いずくともなく轟音がとどろいた。
ガタンガタン!! シュ~~~~~~~~!!
それはまるでどこかで何かが作動したような音であった。
はたして何が起こったのだろうか。
キュー「にゅう……!?」
マリア「明らかにどこかで変化が起きたような音ですね……」
チルチル「いったい何が起こったの?」
シャムたちは辺りをキョロキョロと見回す。
エリカ「ここから見た感じでは何も変化が起きていませんね。でも遠くないように思います」
シャム「んっ? もしかしたら、7階に通じる階段が現れたとか!?」
イヴ「きっとそうだわ! 違いない! 先程のバルコニーじゃないかしら!」
シャム「よし、行ってみよう!」
シャムたちはバルコニーへと向かった。
はたして7階に通じる道は拓けているのだろうか。
ユマ姫を救出するため、塔に侵入し難敵を倒し、ついに最上階への糸口が見つかった。
はたして囚われのユマ姫に会えるだろうか。
いや必ず会えるはずだ。
シャム「おおっ!! やっぱり!!」
アリサ「にゃご~! 階段ができてるうううう!!」
驚いたことにバルコニーから上空の四角の岩に向かって階段ができあがっていた。
ウチャギーナ「なんと!! この階段を登ればユマ姫様と会えるのね!?」
マリア「まだ油断は禁物です。アボガドたちはあらゆる手段を使って私たちに挑んでくるでしょうから」
エンポリオ「たぶんめちゃくちゃ強い敵が現れるだろうよ。でもここまで来たら必ず倒してやる!」
キュー「にゅう、早くユマ姫に会いたいわ。どんなお美しい方かしら~」
イヴ「キューちゃん、そんなことを言うのはまだ早いわ! まず敵を倒さなければ!」
シャムは号令をかけた。
シャム「さあ、階段を登るぞ! ん? ゲゲッ! 階段に手摺がないぞ!」
エリカ「階段はおよそ100段あるわ。途中で誤って足を滑らせたら真ッ逆さまに……」
チルチル「えええ~!? 手摺がないの!? 怖いでピョン♫」
シャム「だけど行くしかないな!」
ウチャギーナ「ここまで来たら後戻りはできないわ! みんながんばろうよ!」
エンポリオ「隊列はいつもどおり戦士系が前で、魔法系が後でいいな?」
シャム「それしかないな。よし! 登るぞ!」
シャム達は上空にそびえる岩石を目指して手摺のない階段を登り始めた。
左を見ても右を見ても広い空間が広がっている。
一歩間違えば一巻の終わりだ。
下で待ち構えているのは広大な森林だ。
シャム「みんな! 下を見るなよ!」
軽快な足取りでシャムは階段を駆け上がった。
二番手にシャルル、その後キュー、アリサ、イヴとつづき、アーチャーのエンポリオがしんがりを務めた。