ファンタジー官能小説『セクスカリバー』 Shyrock 作 |
<メンバーの現在の体力・魔力>
シャム 勇者 HP 650/650 MP 0/0
イヴ 神官 HP 540/540 MP 570/570
アリサ 猫耳 HP 550/550 MP 0/0
キュー ワルキューレ HP600/600 MP320/320
エリカ ウンディーネ女王 HP 470/470 MP 600/600
チルチル 街少女 HP 400/400 MP 0/0
シャルル 漁師・レジスタンス運動指導者 HP 680/680 MP 0/0
ウチャギーナ 魔導師 HP 470/470 MP 570/570
ペペ 魔導師 HP 510/510 MP 610/610
マリア 聖女 HP 480/480 MP 620/620
エンポリオ アーチャー HP 490/490 MP 0/0
⚔⚔⚔
若さというのはすばらしいものだ。
シャムたちはわずかな睡眠だけで体力が回復し、若鮎のようなはつらつとした姿を取り戻していた。
ユマ姫救出を目前に控えていたことも、彼らの行動力にいっそう拍車をかけていた。
エルフの村を出たシャムたちが丘を越え森を抜けて『クリトビスの塔』に到着した頃、陽はすでに西に傾き始めていた。
『クリトビスの塔』は組石で造られており円柱形をしている。
ところどころに窓はあるが設置個所は非常に少なく塔内部は鬱蒼としていることが予測された。
そんなこともあろうかと予め松明の準備はしているのでまったく不安はない。
塔付近はエンポリオが妖術師に記憶喪失の術をかけられた忌まわしい場所だ。
金髪の少女が抱きかかえられて塔に入っていくところを目撃したことで、術を掛けられてしまったのだ。
エンポリオ「俺が術をかけられたのはこの辺だったと思う。くそ、あの幻術師には必ず仕返しをしてやるぞ! そしてあのとき救ってやれなかった少女を絶対に助けるんだ!」
メラメラと闘志をたぎらせるエンポリオ。
その表情には強い決意がうかがえる。
シャルル「エンポリオ、ちょっと力み過ぎだぞ。もっと力を抜いて」
エンポリオ「うん、分かった」
シャム「みんな用意はいいか! 今から塔に突入するぞ! どんな敵が現れるか、どんな魔法や術を使ってくるか分からないので油断するなよ!」
アリサ「にゃああああん!」
ウチャギーナ「任しておいて!」
マリア「私もがんばります」
チルチル「私、かなり腕を上げたんだピョン♪」
イヴ「みんな、できるだけ離れないようにね」
エリカ「幻術はまやかしなので、惑わされないでくださいね」
シャルル「最近戦っていないので身体がなまって仕方がない。今日は思う存分戦うぞ!」
キュー「にゅう、ワルキューレの力を見せてあげるわ」
エンポリオ「初参加だけど俺も役に立ってみせるぞ!」
ペペ「みなさん、がんばりましょう」
塔の周囲をぐるりと回ってみたが、入口はここだけのようだ。
シャムが古びた木製の扉に手をかける。
シャム「ん? 押しても引いても開かないぞ。塔の住民さん~! 扉を開けてくれませんか?」
イヴ「アホか……」
キュー「今から敵が潜んでいる塔に突入するというのに、わざわざ声をかけないで! 鍵がかかっているだけではないの?」
シャム「じゃあ扉をぶち壊そう」
そうつぶやくとシャムは扉に向かって体当たりを敢行した。
二度三度と体当たりをしてみたがびくともしない。
シャルル、エンポリオ、キューも加わり試みたがしたがやっぱり開かない。
相当頑丈にこしらえてあるようだ。
ウチャギーナ「私に任せて」
シャム「ウチャギーナ、おまえ、力が強かったのか?」
ウチャギーナ「まさか。魔法を使うのよ。みんな、扉から離れてて」
アリサ「にゃう~ん、ウチャギーナちゃんならきっと扉を開けられるよ」
ウチャギーナ「やってみないと分からないわ」
イヴ「風の魔法を使うのね、がんばって!」
扉附近にいた者はいっせいにその場から離れウチャギーナを見守った。
【ウィンド・ボン】という風の魔法を使うらしい。
風の摩擦を利用して特定の場所を爆発させるのだ。
上げた両手周辺がキラキラと輝き、小さな渦巻きが生まれた。
呪文を唱えつづけるウチャギーナ。
まもなく大きくなった渦巻きが手から発射された。
渦巻きは扉に激突すると爆発音とともに扉は木っ端みじんに砕け散った。
シャムたちはその光景に唖然としている。
ペペ「ウチャギーナさんの魔力はすさまじいですね」
シャルル「あんなの喰らったらひとたまりもないな~」
エリカ「いいえ、シャルルさんの分厚い胸板ならきっと持ちこたえますわ」
魔法を唱え終わったウチャギーナは静かに目を開けると、魔法の成果を確かめようと扉があった場所を覗きこんだ。
次の瞬間、彼女の周囲から歓声が巻き起こった。
チルチル「やったでピョ~ン♫」
アリサ「ウチャギーナの魔法はやっぱりすごいねええええ!」
マリア「私、驚きのあまり腰が抜けそうになりました」
シャム「腰のどの辺かな?」
マリア「きゃあ~~~! お尻を触ったらダメですよ~!」
イヴ「シャムったらドサクサに紛れて何をしてるのよ~」
キュー「にゃっ、いよいよ謎に満ちた塔に進入しようと言うのに、シャムってのんきだね~」
エリカ「いいんじゃないですか。エッチなのはシャムさんの持ち味ですからね。余裕の現われではないでしょうか」
ペペ「場を和ませ周囲の緊張をほぐす……きっとシャムさんの高等な作戦だと思いますよ。そうでしょう、シャムさん?」
シャム「そうなの? おいらはマリアの突き出した尻を見てたら、つい触りたくなっただけ」
ペペ「なんですか、それは。ははははは~」
シャムは剣をかざし、先陣を切って足を踏み入れた。
続いて仲間たちが次々と塔の中に入っていく。
塔の中はずっと扉を閉ざしていたせいか空気がよどみかび臭さがあった。
玄関を入ってみると殺風景でだだっ広いエントランスホールが広がっているだけで、特に仕掛けがある気配はなかった。
周囲を見回すと右奥に石の階段がある。上階へと繋がっているようだ。
壁面に採光窓が少なく陽光が遮られていたが、随所に松明が設置されており塔内部を見渡すことができた。
シャム「客などないはずなのに、松明を点けてくれて、ここの主って意外に親切じゃないか」
マリア「もしかしたら私たちが来ることを予測してたのかも知れませんわ」
シャルル「ってことは歓迎してくれてるってことか?」
エリカ「手荒い歓迎が待っているかも知れませんね」
ウチャギーナ「それにしても静かね。特に変わった様子はないし」
チルチル「これならすいすいと上の階に行けるでピョン♫」
イヴがきゅっと眉をひそめた。
イヴ「そんなに甘くはないよ。この先にはきっととんでもない罠が待ち構えているわ」
エンポリオ「いつ敵が現れてもいいように矢を射る準備をしておこう」
エンポリオはそうつぶやくと、背中の矢筒から矢を一本取り出した。
アリサも爪を立て臨戦態勢をとっている。
非力な戦士を中央に据え、周囲を武闘系戦士が取り囲む。今の状況では隊列を縦長にするよりも円陣が最も適している。
ゆっくりと円陣を前に進めるシャムたち。
だけど敵が現れてくる様子がない。
幻術を仕掛けてくる気配すらない。
何も起こらないことが、シャムたちにとってはかえって不気味であった。
シャム「ちぇっ、何だよ。何も起きないじゃないか。さあ、さっさと2階に上がろう」
他の仲間たちより数歩先を進んでいたシャムが階段の1段目に足をかけた時であった。
突然、後方のアリサが叫び声をあげた。
アリサ「シャム、待って! そこを踏まないでええええ!」
アリサの声に驚いたのはシャムであった。
シャム「えっ……!?」
突然階段の一部が四角い口を開き、シャムは穴の中に落ちてしまった。
シャム「うわ~~~~~っ!!」
アリサ「シャ、シャムうううう~~~!」
イヴ「きゃあ!! シャムッ!!」
穴の底に吸い込まれてしまったかに思われたが……
開口部が約90センチメートル四方であったため、シャムは落ちる瞬間、両腕を左右に伸ばして体重を支えたので、底への転落だけは免れたのであった。
エリカ「ほっ……」
ウチャギーナ「良かったぁ……」
チルチル「みんな、ぼーっとしてないで早くシャムを助けようよ!♫」
シャルル「そうだな~」
キュー「直ぐに助けてあげるからね」
シャルルとキューがシャムを引き上げようと近づき穴の中を覗きこんだとき、2人の顔色が変わった。
穴の底には無数の槍がシャムたちを睨んで直立していたのだ。
シャルル「ぞ~っ……」
キュー「シャム、し、下を見ないように……」
シャム「下がどうしたの? セクシーな美女軍団でもいるのかな?」
シャルル「そんな良いものではないかと……」
キュー「見ないほうが良いかと……」
シャルルとキューの様子があまりに奇妙なので、シャムは何気に穴の底に目をやった。
シャム「ぎょえ~~~~~~!! 槍だらけ~~~~~!!」
キュー「だから見ないほうが良いと」
シャルル「かなりやばい」
シャムたちの異変が気になり、ほかの仲間たちも一斉に穴の周辺に集まった。
エンポリオ「なんと、これは!」
マリア「まあ、怖いですわ……」
シャム「おまえら、驚いている暇があったら、早くおいらを引き上げろよ!」
エンポリオ「ああ、忘れてた……」
シャム「おい!」
シャルル「しっかり俺の手に掴まれ」
落とし穴から無事脱出したシャムだがまだ息が荒い。
エリカ「ん? あの槍、どこか怪しそうですね」
アリサ「怪しい? つまりあれはニセモノということなの?」
エリカは床に転がっていた大理石のかけらを穴の中に投げ込んだ。
コツンと底にぶつかる音がした。
シャルル「なんと!? 底にあった槍が消えてしまったぞ!」
ウチャギーナ「摩訶不思議っ! 槍がなくなって土になってる~!」
イヴ「槍がなければ、落ちてもこの深さなら打ち身ぐらいで済みそうね」
マリア「槍はまぼろしでしたね。つまり幻術でしたか」
マリアが安堵のため息をつく。
アリサ「にゃん? 槍はニセモノだったということおおおお?」
シャム「おいらの股間にそそり立つ槍は本物だぞ~~~!」
アリサ「きゃああああ~! でもその槍は大好きいいいい~!」
イヴ「そうね。あの槍なら串刺しにされてもいいわ」
何故かイヴの頬が紅潮している。
エンポリオ「はぁ? この人たち、生死がかかったこの局面でおかしくない?」
キュー「いいの。この人たちはいつもこんな調子なの。気にしないで」
チルチル「私なんか、もう慣れたもの」
エリカ「じゃあ、2階に上がりましょう」
ペペ「先を急ぎましょう」
落下事件を乗り越えたシャムたちは、再び2階を目指すことにした。
一段めに足を掛けて気づいたが階段から上はかなり暗い。
エントランスホールには松明が灯っていたが、階段にはまったく照明が設置されていない。
シャム「階段は真っ暗だなあ。2階まで何段あるのだろう? かなりあるようだけど」
キュー「持参の松明に火を点すわ」
キューが魔法の鞄から松明を取り出し火を点した。
突然明るくなり周囲を照らした。
しかしこの明るさでは2階までは照らさない。
階段は何段あるのだろうか。先が見えないと人は不安になるものだ。
シャムたちは一歩ずつ、慎重に足場を確認しながらのぼっていく。
マリア「アリサさんってすごいですね。シャムさんの足元の罠がどうして分かったのですか?」
アリサ「にゃんにゃん~、大好きな人に危険が迫るとアリサ分かるの。近未来に起こる光景が頭の中にフワッと浮かんでくるのおおおお」
マリア「まあ、なんと! 予知能力を持っているのですね。すごいです!」
アリサ「よ~ち? アリサそんなに幼稚かなああああ?」
チルチル「違うよ。マリアさんが言ってるのは幼稚じゃなくて予知能力だよ。先を予測する力があるってことだピョン♫」
アリサ「にゃう~、あ、そうなんだ。でもシャムしか分からないのおおおお」
マリア「それはつまりアリサさんがシャムさんのことが好きだからですわ」
チルチル「シャムを好きなのはアリサちゃんだけじゃないでピョン♫」
マリア「そうなのですか。まあ、シャムさん、持てますわねえ」
イヴ「おしゃべりはやめて前方に注意をして! いつ敵が出現するか分からないよ!」
マリア、チルチル、アリサ「は~い」
女性のリーダー格といえるイヴの一言で、3人は口を閉ざしてしまった。
雑談は場を和ませる効果があるが、時と場合による。
いつ何が起こってもおかしくない今の局面では、神経を研ぎ澄ましておくことが大切なのだ。
シャムたちは無言で階段をのぼった。
のぼり始めて、かれこれ5分が経過しただろうか。
まもなくシャムたちはその異変に気付いた。
キュー「ねえ、この階段、いくらのぼっても2階に着かないんだけど、どうなってるのかな?」
ペペ「やけに長い階段ですね」
エリカ「そうですね、奇妙ですね」
もう2階に到着しても良い頃なのに、不思議なことにいくらのぼっても2階に辿り着かないのだ。
2階に上がるために5分、10分と歩かなければならない建物など古今東西を探してもおそらく見つからないだろう。
イヴ「もしかしたら、幻術なのかも……」
ウチャギーナ「これはきっと罠だわ」
エンポリオ「だとすれば俺たちは永遠に階段をのぼり続けなければならないのか?」
イヴ「そんなぁ……ずっと階段のぼり続けたらのびちゃうよ~」
そのときウチャギーナがポンと手を叩いた。
ウチャギーナ「あ、そうだ! おばあちゃんからもらった参考書があったわ!」
キュー「参考書? そんな物をおばあちゃんからもらってきたの?」
ウチャギーナ「うふふ、正確にいうとね、もらったんじゃなくて、旅立つ直前におばあちゃんが編集中の『魔道対策ブック』を盗んできたの~」
チルチル「ぬ、盗んできたって! ウチャギーナちゃんは悪い子だピョン♫」
マリア「今頃、おばあ様はお困りなのではないでしょうか。神様、どうかウチャギーナさんの悪行を許したまえ……」
ウチャギーナ「悪行だなんて人聞きの悪い……」
エリカ「でもこの期に及んで参考書が役に立つかもしれないですね。ウチャギーナさん、すぐに調べてくれますか」
ウチャギーナが1冊の書物を取り出すと、キューが気を利かして松明を近づけた。
書物には文字やら挿絵が記されているようだが、黒魔法に疎いキューには何のことかさっぱり分からなかった。
代わって、エリカとペペが書物を覗きこむ。
数ページ繰ったところに、
【幻術について】
・階段無限ループ対処法
という記載が見つかった。
ウチャギーナ「あ、これだ!」
『階段無限ループ対処法
階段無限ループは幻術の一種である。当幻術は人間の感覚を狂わせる効果がある。術にかかると、階段や石段をいくら登っても上階にたどり着かないという幻覚に陥るが決して慌ててはいけない。目を閉じよ。目を閉じて着実に進めば必ず上階にたどり着く。ただし、同時に敵からの攻撃の可能性もあるので注意が必要である』
ウチャギーナ「目を閉じてのぼればいいんだって」
マリア「なるほど。錯覚というのは視覚から陥る場合が多いですからね」
アリサ「にゃあ? 三角、四角うううう?」
チルチル「アリサちゃん、三角、四角じゃなくてピョン♫ 錯覚と視覚だよ~」
アリサ「にゃう~ん、そうなんだああああ」
ウチャギーナ「アリサちゃん、分かったのかな?」
エリカ「たぶん大丈夫だと思いますよ」
全員で目を閉じて階段をのぼることになったが、踏み外さないかという不安がよぎる。
イヴ「つまづくといけないから、シャムを先頭にして、みんな前の人のどこかを持って進もうよ」
シャム「おいらが先頭なのか?」
イヴ「いつものお決まりじゃないの。隊列はシャムが先頭で進むって」
シャム「でも目を閉じてだろう? どちらかいうと苦手だなあ」
イヴ「目を閉じて階段をのぼるのが得意の者なんてここにはいないんだから。は~い、シャム頼んだよ~」
と言うことで決着がつき、シャムを先頭にキュー、アリサ、イヴと続き、最後尾のシャルルまで縦に長い隊列でのぼることになった。
シャムたちは暗闇の階段を一歩ずつのぼっていく。
先頭を行くシャムが声を出し段数を数えている。
シャム「12、13、14、15……」
もちろん仲間に現状を知らせるためだ。
シャム「16……ん? 階段がもうない……みんな、のぼり切ったぞ!」
16段目を踏んだあと、足を伸ばしてみたが階段がもうない。
ようやく階段をのぼり切り、2階に辿り着いたようだ。
シャム「みんな、階段は16段だ! おいらは今、踊り場に着いたぞ!」」
キュー「階段はわずか16段だったの? 普通の階段なのにすごく長く感じたね」
シャム「ウチャギーナが階段無限ループ対処法を教えてくれなかったら、大変なことになっていたぞ」
エリカ「ウチャギーナさん、表の扉を魔法で開けたり、階段の謎を解き明かしたりと大活躍ですね」
ウチャギーナ「どういたしまして。おばあちゃんの本が役に立って良かったよ!」
2階の踊り場は相変わらず薄暗く、松明を掲げなければうっすらとしか見えなかった。
踊り場から右側に長い廊下が続いている。
注意しながら3階につづく階段を探さなければならない。
シャムたちは松明を灯し警戒を緩めることなく進む。
飾りっけ一つない殺風景な廊下だが、どういうわけか騎士の鎧が数領並んでいる。
城であればよく見かけるが、騎士のいない塔になぜ鎧があるのだろうか。
キュー「にゅう、立派な鎧が飾ってあるね」
シャルル「どうして塔の中にあるのかな?」
イヴ「今はそんなことよりユマ姫を助けることが先よ」
先頭のシャムが持つ松明がさきほどより揺らめきが大きくなった。
廊下には窓がなく密閉空間といえるのに、どこから風が吹いてくるのか。
おそらくどこかに空気孔が開いててその個所から空気が流入しているのだろう。
幽寂な廊下に飾られている数領の鎧に、まるで生気が宿っているかのような不気味さが漂っている。
チルチル「鎧が今にも動き出しそうな感じで気持ち悪いでピョン」
ウチャギーナ「チルチルちゃん、変なこと言わないでよ」
エリカ「これは鎧ですよ。人が入っていないのに動くはずがないじゃないですか」
チルチル「そうだよね。置物みたいなものだものピョン」
エリカは近くの鎧に触れてにっこり笑った。
エリカ「ほら、チルチルさん、動かないでしょう?」
チルチル「本当だ、動かないね。近くで鎧を見たのは初めてだけどすごい迫力でピョン♫」
ウチャギーナ「騎士は大変ね。こんな重い物を身につけて戦うんだものね」
ペペ「我々魔導師は軽装だから余計にそう思いますよね」
エンポリオ「戦士系は大変だよね」
キュー「にゅう、でも私もシャムも戦士系だけど比較的軽装だよ」
エンポリオ「金属の鎧をつけて長旅はできないものね」
キュー「それとね、金属の鎧って防御力は上昇するけど、物によっては重さが40キログラムもあるので動きが極端に鈍るのよ。私はスピード重視だからこれでいいの」
エンポリオ「以前ある戦士から、鎧は剣で切ってもほとんどダメージを与えられないけど、ハンマーなど打撃系の攻撃には弱いって聞いたことがあるよ」
キュー「エンポリオって物知りなのね」
鬱蒼とした塔の中で緊張がつづくと、つい軽口を叩きたくなるものだ。
シャムたちは鎧が配備されている前を通過しようとしている。
もう少し廊下を進むと曲がり角がある。
角を曲がるともしかしたら3階に通じる階段があるかもしれない。
そんな期待を膨らませていた矢先、アリサが妙な声を出した。
アリサ「にゃん? 右端の鎧、ちょっと変だよおおおお……」
イヴ「何が変なの? ふつうじゃないの」
アリサ「でもおおおお……」
イヴ「……?」
アリサ「首が……」
イヴ「えっ?」
アリサ「ない……」
イヴ「あは、アリサちゃん、鎧なんだからさ~、首がなくても別に不思議は……」
ガシャ……
イヴ「えっ、なに!?」
アリサ「にゃっ!?」
イヴ「もしかして、あの鎧、今、動かなかった?」
アリサ「う、う、動いたああああ……」
イヴ「きゃあ~~~!!」
アリサ「にゃああああ!!」
2人の叫び声が静寂を切り裂いた。
シャム「なんだよ、騒々しいなあ」
イヴ「だって置物の鎧が動いたんだもの」
アリサ「私、モンスターは怖くないけど、お化けは苦手なのおおおお」
シャム「わっはっはっは~、鎧が動くわけないじゃないか~」
ガシャ!!
シャム「んっ!?」
イヴ「きゃあ~~~~~! 化け物よ~~~~~!!」
アリサ「にゃごおおおお!!」
ガッシャ、ガッシャ、ガッシャ……
首のない鎧がゆっくりとした足取りでイヴとアリサがいる方向に向かってきた。
イヴ「こっちにきたよ!」
アリサ「しかも手に剣を握ってるよおおおお!」
首のない騎士「ワタシノクビヲカエセ……」
シャム「首を返せだと? おまえの首など知るものか!」
首のない騎士「ワタシノクビヲカエセ……」
キュー「にゅう、首のない騎士さん、なにか勘違いしていない? あんたの首なんか知らないよ」
首のない騎士が歩きながら剣を上にあげた。
キュー「切ってくるつもり? じゃあこっちから先に攻撃させてもらうよ! ワルキューレの剣を受けてみて!」
首のない騎士に向かってキューが果敢な攻撃を仕掛ける。
剣が交わったのはほんの一瞬であった。
恐るべき力に押し返され、キューはもんどりうって床に倒れてしまった。
キュー「きゃ~~~! 何という力なの!」
首のない騎士は剣を振りかざす。
エンポリオ「危ない!」
エンポリオは首のない騎士を狙って矢を射った。
矢は首のない騎士を捉えたが、惜しくもはね返され真っ二つに折れてしまった。
エンポリオ「えっ……? 俺の矢が折れてしまうとは!?」
エリカ「キューさん、起き上がってはダメですよ! そのまま転がって逃げてください! その者は化け物ですよ!」
キューは懸命に転がって敵の攻撃から逃れた。
エリカ「おそらく彼は地獄の騎士『デュラハン』だと思います! 恐ろしく強いと聞いていますので、皆さん、気をつけてください!」
マリア「なんですって!? あの死を運ぶ地獄の騎士デュラハンがこの塔に眠っているというのですか!?」
エリカ「間違いなく彼はデュラハンですわ!」
うずくまったキューにシャムが手を貸す。
キュー「ふう~、あの首なし、むちゃくちゃ馬鹿力だよ。私、軽く飛ばされちゃった」
青ざめた表情のキューが仲間たちに注意を促す。
シャム「よし、どれだけ馬鹿力かおいらに見せてみろよ」
シャムが剣のグリップを握ったとき、それよりもいち早くシャルルがデュラハーン目掛けて剣を突きこむと、つづいてアリサが漆黒の爪を立てて飛びかかった。
二方向からの攻撃を難なく受け止めたデュラハンは反撃に転じる。
デュラハンの剣から危うく逃れたシャルルとアリサの前面に、シャムが躍り出た。
シャム「おまえかなり強いな~。今度はおいらが相手だ!」
真っ向から突きを入れたシャムであったが、彼もまた簡単にいなされてしまった。
シャム「いててて、なんて野郎だ……」
後方で戦況を見守っていた魔法部隊が次々と魔法攻撃を開始する。
ウチャギーナは風の魔法『ハリケーノス』を、ペペは氷の魔法『ブリザード』を、そしてエリカは水の魔法『ウォーターフロント』の呪文を唱える。
風の魔法と氷の魔法についてはまったく効果がなく、水の魔法だけがわずかな効果を見せた。
とはいっても効果は微々たるもので、デュラハンはすぐに体勢を立て直した。
攻撃魔法の効果がほとんど見られない。
チルチル「効くかどうか分からないけど、やってみるでピョン♫」
得意の笛を吹いてみるチルチルであったが、何の変化も起こらなかった。
チルチル「がっくり……」
キューが何か閃いたようでポンと手を叩いた。
キュー「じゃああれを試してみようかな?」
一番最初に剣攻撃を跳ね返されたキューに何やら奥の手があるようだ。
「じゃあ今からゴーレムを召喚するわ」
そう宣言したキューは愛用のチャンドラーの剣を真上に掲げた。
召喚のイメージは、正しき道を進む人々を救済する祈り。召喚するのは鉄壁のゴーレム。
キューは魔力を使い果たすつもりで、全力で魔力を注いだ。
キュー「ゴーレム召喚!」
チャンドラーの剣は強い光を放った。
穏やかな光の中から強い炎の魔力が流れ始めた。
これがゴーレムの力か。
まもなく光の中からゴーレムが現れた。
いかなる硬い岩石をも砕くと言われていう怪力ゴーレムと、地獄の騎士デュラハン。
果たしてゴーレムは勝利できるのか。
もしゴーレムが敗れたら、シャムたちは手詰まりとなりそれは同時に彼らの敗北を意味することになるだろう。
キューの前にはゴーレムがデュラハンと対峙している。
キューの後方にはシャムたちが真剣な眼差しで行方を見守っている。
先手を打ったのはゴーレムだった。
巨体に似合わぬスピードでデュラハンに挑みかかった。
両者の対格差は歴然で、圧倒的にゴーレムが大きく優にデュラハンの2倍はあるだろう。
デュラハンが剣を構えるよりも早く、ゴーレムの豪腕がデュラハンの胸板に炸裂した。
この一撃はすさまじくデュラハンはあっけなく吹き飛ばされてしまった。
勢いづいたゴーレムは倒れたデュラハンに覆いかぶさるように襲いかかる。
だがデュラハンも負けてはいない。次の瞬間、デュラハンの魔剣がきらめいた。
シュパッ!
ゴーレム「ウガ~~~~~ッ!」
ゴーレムは地響きのような唸り声をあげた。
強靭なゴーレムの巨体がデュラハンの魔剣に貫かれてしまったのだ。
ゴーレムは苦しみもだえながらも渾身の力を込めてデュラハンに鉄拳を振るった。
ガツンッ!
デュラハンはゴーレムの一撃を胸元に喰らって鎧をビクリと波打たせた。
かなりのダメージがあったようだ。
強烈な一撃を放ったゴーレムだったが、力が尽きたのかまるで大木がなぎ倒されるように床に崩れ落ちた。
激しい振動がシャムたちに伝わってきた。
ゴーレムの姿は次第に薄れ、やがて消えていった。
キュー「ゴーレム~~~~!」
シャム「もしかしたら相打ちか? それとも両方死んだのか!?」
キュー「大丈夫よ。召還魔法で呼び出した魔人はダメージを受けてもHPが0になる前に元にいた世界に戻ってしまうの」
ウチャギーナ「ということはゴーレムの勝ちなの?」
マリア「いいえ、そうとも言えませんわ……」
シャム「なんだと!? あれだけ強烈な攻撃を受けていながらデュラハンはまだ生きていると言うのか?」
マリア「はい、おそらく……残念ですが……」
マリアの言葉を裏付けるように、床に伏せていたデュラハンの手がピクリと動いた。
マリア「でも相当体力が落ちているようですね。今チャンスかも知れませんね」
シャルル「俺がとどめを刺してやるぜ!」
体格ではデュラハンに引けをとらないシャルルが猛然と切りかかった。
地獄の騎士デュラハンももはやこれまでかと思われたが、起き上がりざまシャルルの剣をはね返し一気に反撃に転じた。
シャルルは勢いに勝るデュラハンに壁際へ追い詰められ、ついには腕に傷を負ってしまった。
仲間の危機に颯爽と躍り出たのが勇者シャム。
デュラハンの注意を自身に引き付けようと、しきりに挑発する。
シャム「おい、首なし野郎! 今度はおいらが相手だ! 掛かってきやがれ!」
シャルルを追い詰めていたデュラハンが向きを変えシャムに襲いかかる。
シャムはデュラハンの魔剣を受け止めギリギリのところで踏ん張っている。
イヴ「シャム、無理をしないで!」
エリカは攻撃よりも仲間の治療を優先した。
負傷したシャルルたちをヒール魔法が包み込む。
マリア「デュラハンの体力は確実に落ちているようです。動きが鈍ってきた今がチャンスかも知れません。シャムさん、私に考えがあります」
シャム「どんな考えだ!? 攻撃魔法を使わないおまえが杖で戦おうというのか?」
マリア「まさか。私の攻撃はこれです……」
シャム「……?」
マリアはそうつぶやくとヒール魔法をデュラハンに向かって唱え始めた。
シャム「おいおいマリア、敵を助けてどうするんだ? せっかくゴーレムががんばってくれたのに!」
マリアの行動に疑問を抱いたシャムはヒール魔法をすぐやめるよう訴えた。
イヴ「シャム、マリアさんを信じてあげて。きっと何か考えがあるはずだから」
シャム「敵を治療するなんて冗談では……えっ? なに!?」
白い霧に包まれたデュラハンは次第に苦しみ始め、立っていることが困難となり膝を落としそのまま床に崩れてしまった。
鈍い金属音が鳴り響く。
シャム「……!」
マリア「……!」
その後デュラハンが立ち上がることはなかった。
アリサ「にゃああああ……?」
エンポリオ「マリアさん、すごい!」
シャム「なんと? 溶けていくぞ……」
床に崩れたデュラハンはどす黒い絵の具を撒いたように液状化していく。
シャム「勝ったのか?」
ウチャギーナ「やったわ! マリアさん、すごい!」
イヴ「私たちにとってヒールは回復のための魔法だけど、アンデッドには逆にダメージになるわけね。ゾンビをヒールで退治したことはあるけど、デュラハンに効果があるなんて気づかなかったわ。マリアさん、さすがね!」
エリカ「マリアさん、立派ですわ! 同じヒール魔法を唱える一人として面目ないです」
チルチル「何かよく分からないけど勝っておめでとう~~~! めでたいでピョン♫」
ペペ「やりましたね! 黒魔法の効果がなかったのでかなり焦りましたよ!」
アリサ「あれ? デュラハンが消えた場所に剣が残ってるうううう!」
デュラハンは消えてしまったが、彼がいた場所に剣だけが残されていた。
漆黒の剣でデュラハンが使用していたものだ。
シャムたちは『デュラハンの魔剣』を手に入れた!
シャルルが装備しようとしたが……
アリサ「待って! その剣、装備しないでええええ!」
シャルル「えっ? どうしてダメなんだ?」
アリサ「悪い予感がするの。うまく説明できないけど何となくうううう」
シャルル「アリサがそう言うのであればやめておくけど、もったいないな~」
キュー「危険予知能力を持つアリサちゃんが言うんだから装備しないのが正解だと思うよ。もしかしたら呪われた剣かも知れないからね」
イヴ「一応保管をしておいて後で確かめようよ」
チルチルが呪われた武器のことを知りたいようだ。
チルチル「もし呪われた武器を装備したらどんなことが起きるのでピョン♫?」
イヴ「呪いの種類によって異なるけど、歩くだけでHPが減ったり、運の良さがゼロになったり、敵との遭遇率が急激に上がったり、受けるダメージが2倍になったりと、何らかの悪いことが起きるの。中には装備するだけで1日以内に死ぬ恐ろしい呪いもあるらしいの」
キュー「ぞ~っ、おっかないね。拾った剣をうかつに装備しないほうがいいってことね」
シャルル「だけど中には強敵を倒せるすごい武器が見つかる場合もあるから、恐がって避けてばかりいると幸運を逃すかもしれないぞ。見ただけでは分からないから厄介なんだよな。まあ、アリサのように危険予知能力を持った子がいると助かるけどな」
チルチル「どこに持って行けば呪いの有無を確かめられるのでピョン♫?」
シャルル「武器屋のおやじなら目利きができるから武器屋に持って行けばいい。呪いの武器でも一応買い取ってくれるし、もし装備したければ祈祷師に呪いを解いてもらえばよい。それとも少し値段は張るが呪いを解く薬を買ってもよい」
シャルルの腕の治療はさきほど済ませたが、軽傷を負ったほかの仲間たちの治療を行なうことになった。
チンヒールとヒール魔法は温存し、治療はキノコと薬草数本だけで済ますことができた。
治療やMP補充を完了したシャムたちは上階へと通じる階段を探すことにした。
はたして3階にはどんな敵が潜んでいるのか、そしてどんな仕掛けが待ち受けているのか。
3階への階段はすぐに見つかった。
注意を払いながら階段をのぼる。
今のところ仕掛けは見当たらないが油断は禁物だ。
3階には小部屋がなくだだっ広い空間が広がっていた。
奥にはチャンセルがあり一段高くなっている。
司祭が神の啓示を受け、信者への説教に使われたりする場所だ。
チャンセルの右側には階段の手摺りらしきものが見えている。4階に通じる階段かもしれない。
エリカ「やたら広い場所ですね。全体を見渡せるので安心感があります。4階に向かいましょう」
キュー「そうかしら? 私はこの広さが逆に何か薄気味悪さを感じるんだけど……」
イヴ「そういえばエルフの長老が敵はエッチな攻撃を仕掛けてくるから気をつけろと言ってたね。今のところそんな攻撃はないよね?」
マリア「イヴさんはまるでエッチな攻撃を待っているみたいですね。おほほほ」
イヴ「やだ~マリアさんったら。そんなの待つはずがないじゃないの~」
そんな会話を交わしていると、突然周りに霧が立ち込めてみるみるうちに濃くなっていった。
辛うじて仲間の輪郭が霞んで見えてはいるが、シャムたちに不安が横切る。
シャム「なんだ? この紫色の霧は……?」
ペペ「困りましたね、周りがよく見えないですよ」
ウチャギーナ「この霧、いい香りがするね。何の香りだろう?」
アリサ「くんくんくん……?」
イヴ「何か官能的な幻想をかき立てる香りというか」
エンポリオ「おおっ……なにかムラムラしてきた……」
エリカ「……!? 皆さん、この香りを嗅いではいけません! 息を止めてチャンセルの右側にある階段のところまで走りましょう!」
シャム「えっ! いったいどうしたって言うんだ!?」
エリカは血相を変えて珍しく大きな声で叫んだ。
エリカ「この香りは【ステロンフォミュラ】という有名な催淫剤なのです!」
シャム「な、なんだ? そのステロンなんとかとは!?」
エリカ「匂いを嗅ぐと異常なまでの性的興奮が起きるのです! だから匂いを嗅いではいけません! 皆さん、息を止めて階段の上り口まで駆けてください!」
シャム「そ、そんなこと言っても、おいら、もうかなり匂いを嗅いだぞ!」
ウチャギーナ「あぁん、何かおかしくなってきた……」
エリカ「とにかく走ってください!」
エリカを先頭に一行は、紫色に立ち込めた濃霧の中をまっしぐらに駆けだした。
ところが……
アリサ「にゃあ~……あぁ~……身体が熱くなってきたにゃああああ……」
イヴ「ああ……私も……あぁ、困ったわぁ……手足の力が抜けていくぅ……」
キュー「にゅう、や、やばい……煙を吸ってしまった……」
エンポリオ「ゴホンゴホンッ! ううっ……何かムラムラしてきた……」
シャム「おっ、おっ、おおおっ……急においらのモノがでっかくなってきやがったぞ~」
エリカ、マリア、シャルル、チルチル、ペペの5人は無事にチャンセル横の階段付近まで辿りついた。
階段を見上げると、不思議なことに紫色の霧は及んでいない。
霧が立ち込めているのはシャムたち5人がいる広い空間だけなのだ。
霧はかなり重い気体なのかも知れない。
エリカたち5人は残してきた仲間たちのことが気がかりだったがとにかく階段を駆け上がることにした。
全滅してしまうと救出にも行けないわけだから。
シャムたち6人は床にうずくまっていた。
この場所から逃れようとするのだが、身体全体が強い脱力感に襲われて思うように動けないのだ。
しかし不思議なことに、肉体のある一部分だけは恐ろしく活力がみなぎっていた。
シャムとエンポリオの股間は股間を隆々と膨らませ強い欲望に悶え、イヴ、アリサ、キュー、ウチャギーナは床に伏し股間に指をあてがい悩ましい声を漏らしている。
シャムたちの周辺の霧は一段と濃さを増し、1メートル先も見えなくなっていた。
どこに誰がいるのかさっぱり分からない。仲間を繋ぐ鎖が分断されて各々が孤立した状態になっている。
力が入らないから立ち上がって逃げることもできない。たとえ逃げようとしても方向が分からないから進みようがない。
皮肉なことに、性欲だけは衰えることなく、まるでマグマのように熱くたぎっている。
そんなさなか、シャムたちは紫霧の向こうに何かが動く気配を感じた。
シャム「ん……? なんだ……?」
シャムから姿は見えないがウチャギーナの声が彼の耳に届く。
ウチャギーナ「やん~、あぁん、何かいやらしい気分~……んん? なあに?」
カサカサカサと音がする。
アリサ「にゃごおおおお~困ったなあ、無性にエッチしたい気分だよおおおお。あれ? 何か動いたああああ?」
音は鳴りやまない。
明らかにそこに、何かがいる。
そしてぐんぐんと近づいてくる気配がする。
時を同じくして、周囲に殺気を感じていたイヴは早くも腰の剣を抜いていた。
だけど剣を握る手に力が入らない。
イヴ「誰なの、そこにいるのは……?」
イヴの問いかけに呼応するように紫色の霧の中から青い半透明をした大型のスライムが現れた。
旅の始まりなら経験値稼ぎにちょうど打ってつけなのだが、格段強くなった現在のシャムたちにとってスライムは正直言って物足りない敵といえるだろう。
なにしろ魔物多しといえどスライムは最弱の敵なのだから。
イヴ「なんなの? この大きなスライムは……? クリトビスの塔内に雑魚のスライムが現れるなんて拍子抜けするんだけど……あぁ、それにしてもこの身体の火照りって何とかならないかしら……」
アリサ「何が現れたの? こちらからは見えないんだけどおおおお」
シャム「おおおっ、これは困った……勃起が治まらないぞ……」
キュー「イヴさん、だいじょうぶ? 全然見えないよ」
霧のせいで周囲の仲間たちの姿が確認できない。
周囲が見えなければそれぞれが孤立しているのと同じ状態といえる。
イヴの前に現れたスライムはかなり大きめだがしょせんは最弱モンスターだ。
簡単に倒せるだろう、とイヴは高をくくっていた。
ところが剣を構えようとしたが手が震えて思うように握れない。
両手を使ってようやく剣を支えることができた。
スライムは動きが緩慢で音もなくのろりのろりと忍び寄ってくる。
イヴが剣を構えてもまったく動じない。
剣が届く位置に接近してきたのでイヴは剣を振り下ろした。
剣はスライムをとらえることができた。
「やったわ!」
切った感触があった。
スライムに損傷を与えたはずだがまったく反応がない。
「……!?」
上部にある黄色い目のようなものがイヴを睨んでいる。
その直後スライムは猛然とイヴに襲いかかってきた。
イヴ「きゃ~~~~~!」
ねっとりとしたゼリー状の感触がイヴを覆う。
骨や関節がない点は軟体動物に酷似しているが、タコやクリオネのように形が定まっていないので不定形生物といえるだろう。
スライムの身体から仮足とも触手ともとれるようなものが伸びてきた。
またたく間に腕に絡みついた。
仰向けに倒れたイヴの上にスライムが乗ってきた。意外と重たい。
普段のイヴならスライムを跳ねのけるぐらい造作もないことだが、催淫剤を吸い込んでしまったせいで身体が思うように動かない。
もがいてみたが乗っかったまま離れない。
思うように力を出せない今、もし顔に乗られたら窒息してしまうだろう。
イヴ(今私を倒したければ口を塞げばよいはず……でもスライムは私を倒そうとはしていない……では何が狙いなの……?)
イヴは答えを探した。
脳裏に悪い予感がよぎる。
残念なことにその予感は的中してしまった。
べちゃり……
イヴ「ひゃぁ~~~~~!」
イヴはねばねばしたスライムに身体を包まれた。
スライムの束縛から脱出するために手足を動かしてみるが、床も身体もヌルヌルになって抜け出せない。
スライムは簡単に衣服の中に入り込み、ぬちゃぬちゃと水音を立てながらイヴの身体をゆっくりと撫で回す。
イヴはスライムの愛撫がまるで大きな舌にゆっくりと身体を舐められているような不快感で身を震わせた。
イヴ「ダ、ダメッ……!」
ぬちゃっ、ずりっずりっ、ぬりゅう……
「はぅんっ! やっ、舐めちゃ、ダメっ……」
身体をよじる度にツンと上を向いた乳首が誘うように揺れる。
スライムは身体の一部を左右の乳首に伸ばし、口の形を作り、乳首にしゃぶりつく。
くちゅう……
イヴ「ふぁあ~~~ん!」
スライムに乳首を吸われ、舐め転がされ、弾かれる。
到底人間にはできない巧みな責めにイヴは耐える術がない。
イヴ(腹立たしいけど、このスライム、シャムより上手かも)
こんな切羽詰まったときにシャムと比較するとは何と不謹慎だろうか、と顔を赤らめる。
ちゅぅ~、ちゅっ、ちゅっ……
イヴ「きゃあ~~~! いや~~~!」
あまりの不快感にイヴは悲鳴をあげた。
シャム「イ、イヴ! だいじょうぶか!?」
イヴの悲鳴を聞いたシャムはすぐに駆けつけたかったが、自身も催淫剤のせいで身体に異変をきたしている。
時を同じくして、アリサ、キュー、ウチャギーナにも大型スライムが急襲し、全身舐め回されるなど散々な目に遭っていた。
彼女たちも決して手をこまねいていたわけではなく、よく善戦した。
アリサは爪を振り回し応戦したが、如何せん柔らかいスライムには歯が立たず、イヴと同様にスライムの餌食となっていた。
キューはがんじがらめに剣を封じられ、やむを得ず素手で応戦したがスライムには効果がなかった。
ウチャギーナは魔法を唱える前に拘束されてしまい、あえなく撃沈してしまった。
イヴ「えっ……もしかしたら魔力を吸ってるの!? ダメッ、魔力を吸わないで……!」
スライムがじゅぱじゅぱと乳首を吸引するたびに貴重な魔力が奪われていく。
イヴ(うぅっ……このスライム、ただのスライムじゃないわ!)
イヴが感じれば感じるほど魔力減少が加速していく。
この特殊なスライムの役目は、シャムたちが塔のボスキャラと遭遇するまでに、彼らの魔力を削ぐことにあるのかもしれない。
魔力を吸うとスライムはさらに魔力を求めイヴの全身を責めてくる。
首筋、うなじ、脇、乳房、乳首、腹部、脇腹、背中、臀部、足の付け根、太腿。そして肉豆も攻撃の対象となる。
くちゅっ じゅる くりゅくりゅくりゅ……
イヴ「あうっ、ダメッ、そこ弱……ひぃっっ!」
肉豆を舐められ、思わず腰をよじるが、ジェル状のスライムの動きを封じることはできず、イヴは次第に追い詰められていく。
イヴ「はぁぅ……んっ、あぁん、困ったわ、感じちゃうっ……」
腹の奥が熱くなる。踏ん張って堪えないと魔力を吸われてしまう。そんなイヴの想いなど気にもとめず、スライムは膣内に侵入していく。
「そっ、そこは、入っちゃダメ……っ!」
ずりゅっ ぬぷぷ グチュグチュッ……
イヴ「あっあっ……くうぅ、はあんっ……!」
繊細な部分が満たされ、同時に強烈な快楽がイヴを襲う。
イヴ「あっ、うぁ……はぁあぁ、ダメぇっ!」
膣内で徐々に硬くなるスライム、しっかりとイヴに存在感を知らしめる。
同時にイヴのつま先から首筋までをまるで賞味するかのように吸いつき、舐め転がした。
イヴ「はぁん、あっ、ダメぇ……もう耐えられないっ……」
イヴの絶頂を予感してスライムの責めが一段と激しく、イヴを追い詰めるような執拗な動きに変わっていく。
全身は力強く舐められ乳首は激しく吸われ、特に肉豆は念入りにコリコリとしごかれる。
太ももやふくらはぎに至る隅々まで這いずられ、いくら身体をよじってみても強烈な快楽からは逃げられない。
イヴ「ダメダメダメ……あっ、ゃっ、イッくぅ~~~!」
限界が訪れたイヴの身体がゆっくり反り上がる。
びっくんっ びくっ びくん……
イヴが絶頂に達した瞬間、スライムはイヴの乳首と膣内を全力で吸いたてる。
ジュルルるるるるるる!
イヴ「ふぁあぁぁぁぁ~~~~~!」
絶頂をさまようイヴの精神が最も無防備な状態になる。
じゅるるると下品な音を響かせながらスライムはイヴの魔力を美味しそうに吸いあげる。
魔力を吸われるのはすごく気持ちいい。
イヴは魔力が吸われていく虚脱感が与える強烈な快楽により身を跳ねさせた。
じゅるるる……
イヴ「はあ~~~、んぁっ、ひゃうん!」
魔力吸引中は絶頂から解放されない。
最も敏感で無防備な女体が下等な魔物に好き放題なぶられる。
スライムは満足してきたのか、次第に魔力吸収が弱まっていく。
霧の向こうではイヴと同様に、ウチャギーナとキューもスライムに襲われ魔力を吸い取られている。
ウチャギーナ「ちょっ、やっ、やめて! 魔力がなくなると……困るから!」
ウチャギーナはスライムの愛撫に身体をくねらせ、胸や秘所、太ももなど、よく感じる部分をせわしなく手が往来した。
彼女は快楽に耐えるため手で身体を押さえているのだが、その姿はまるで激しく自慰をしているように見えた。
ウチャギーナ「やっ、だめっ……ふぁあん!」
瑞々しい若い肉体を執拗にむさぼり続けるスライム。
彼らにとって魔力吸引は豪華な食事なのか、それとも性的欲求を満たすための行為なのか。
一方、キューの膣内を責めていたスライムも突然硬さを増し、一回り膨張した。
じゅぷじゅぷとキューを犯していた凶器がズッチュズッチュと重々しい刺激に変わっていく。
キュー「ん、くはぁ! やっ…… やめてぇ!」
膣内を犯す抽送が速さを増し、キューの女としての危機感が一段と高まっていく。
「あっあっあっあぁっ! やめっ、スライムの子供なんて生みたくないから、ダメ…… 出さないでぇ~~~!」
人間の女性がスライムと交尾しても子供を宿すことなどあり得ないのだが、キューはとんだ思い違いをしていた。
そんなキューの中にスライムの熱い液体がぶちまけられた。
それでもスライムの凌辱は終わらない。
「あっ、いやっ、やっ、はぁん! もう、んっ…… 許して」
キューが懇願してもスライムの動きは止まらない。
ぐちゃぐちゃになるまでキューを犯し、何度も何度も欲望をキューの膣内に注ぎ込む。
イヴ、ウチャギーナ、キュー、アリサを霧の中で犯すスライムたち。
いくら射精しても彼らの欲望は果てしがない。
どんな終焉が待っているのだろうか。
⚔⚔⚔
時を同じくして、霧の中をさまようシャムとエンポリオにも奇怪な髪の毛がしゅるしゅると忍び寄っていた。
シャム「な、なんだ、なんだ? この髪の毛は!?」
エンポリオ「お、おい! 巻きつくな! 気持ち悪い!!」
褐色の髪の毛がシャムたちの手足だけでなく胴体にも巻きついてきた。
シャムは剣を、エンポリオは短剣を振るい、応戦したが、髪の毛は切っても切っても絡みつく。
やがて剣や短剣にも髪の毛はグルグルと巻きついてきた。
シャム「うわ~~~っ!」
エンポリオ「やめろ~~~っ!」
突如、霧の中から2人の美女が現れた。
絶世の美女として名高く各地に伝説が残っている妖魔リリスである。
黒い2本の角と長い髪が特徴的だ。
リリスという名前は彼女の一族に受け継がれている名前であり、個々の名前ではない。
シャム「おお~~~! すげえ美人じゃないか~!」
シャムは険しい表情から一変して相好を崩している。
エンポリオ「シャ、シャムさん、こいつらやばいよ、きっと怪物だよ! 美人とかそういう問題じゃなくて!」
シャム「怪物だなんて失礼だぞ。もしかしたら仲間に入りたいのかも知れないし」
エンポリオ「たぶんそれはないかと……」
妖魔リリスがにっこりと微笑んだ。
リリス姉「久しぶりに美味しそうな男が現われたわね」
リリス妹「そうですわね、お姉さま」
リリス姉「この塔に幽閉されてからというもの、退屈な日々の連続だったけど、今日は存分に楽しめそうだわ」
リリス妹「活きの良い男たちの精液をたっぷりと味わいましょう」
リリス姉妹の会話を聞いていたエンポリオが竦みあがった。
エンポリオ「お、おい! おまえら、俺たちに何をする気だ!」
シャム「エンポリオ、ここはやつらに任せておけ。おいらたちを殺すつもりはなさそうだし」
エンポリオ「よくもそんな呑気な!」
リリス姉「長い剣を持ってるそっちの坊やは物分りがいいわね。身体が干からびるまで精液を吸い取ってあげるわ」
リリス姉が物騒なことをささやいているが、シャムは意に介さないばかりか、むしろ嬉々としている。
シャム「てへっ、良い気持ちにしてくれるなら大歓迎~!」
エンポリオ「シャムさん! いくらなんでもそれは拙いよ、身体が干からびるまでと言ってるんだよ!」
エンポリオはすっかり怖気づいている。
リリス妹「私たちの生命の源は男の精液なの。精液を取り込むことで若さを保つことができる。一方男もかつて体験したことのない最高の快楽を得ることができるの」
リリス姉「でもとことん吸い尽くされた男は快楽の代償として、骨と皮になってしまい、最後は……」
シャム「最後は……?」
リリス姉「死ぬの」
シャム「ぎゃお~~~~~! やっぱりやめておこうかな?」
リリス妹「あなたたちに選択権はないわ。選ぶことができるのは私たちだけ」
シャム「おい、エンポリオ、これはやばいぞ~~~! 早く逃げよう!」
エンポリオ「いや、霧を吸ってから勃起して走れないよ。動きも鈍いし……」
シャム「でかくしたまま走ればいいんだ!」
エンポリオ「そんな器用なことはできないよ」
リリス姉妹の前に、シャムとエンポリオはなすすべもなく撃チンしてしまうのか。
あっという間に下穿きを下ろされ、情けない姿を晒す破目となったシャムたち。ただし霧のせいで他からは見えない。
2人ともたいそう立派なイチモツを持っており、隆々とそびえている。
リリス姉「まあ、美味しそうなキノコだわ」
リリス妹「ほんとうですわ。お姉さま、早速賞味しましょう~」
リリス姉「では私はこちらの人間の男をいただくわ」
リリス妹「それなら私はこちらのエルフの男をいただきますわ」
そそり立った2本のイチモツをあんぐりと口を開けて咥えるリリス姉妹。
シャム「おお、おい! やめろっ! 気持ち悪いぞ! いや、ちょっと気持ちいいかも!」
エンポリオ「おおおっ! 吸うな~! うううっ、これは堪らん~~~っ!」
チュパチュパチュパ……
チュルチュルチュル……
シャム「すげえ~~~! まるで天にも昇る気分だ~~~~~!」
エンポリオ「シャムさん、気持ちはいいんだけど、こいつら魔物だし、かなり拙い状況かと! うおっ、これは効く~~~!」
リリス姉「おほほほ、そんなにいいの? でも当然かもしれないわね。だって私たちは人間の女性の舌とは全然違うんだもの。見てみる?」
リリス姉はそうつぶやくとペロリと舌を出した。
シャムとエンポリオは彼女の舌を見て愕然とした。
驚いたことに舌の先端に窪みがあって、吸盤のようになっている。
リリスの舌の構造も一種の女性器といって差支えがないようだ。
シャム「こりゃすげえ! これで吸われたらそりゃ堪らん!」
リリス姉「驚いた? それじゃあもっと気持ちよくしてあげるわね」
パックン! ペロリンペロリンペロリン~
シャム「くふ~~~~~っ、これは効く~~~~~!」
ジュパジュパジュパッ……
シャムの肉柱はみるみるうちに硬く、天井を睨むほどに反りかえっている。
リリス姉は幹をしっかりと握りしめ、咥え、舐め、そして啜った。
幹がビクンと激しく痙攣した。
シャム「おおおっ! おおおっ! うが~~~~~~~~~っ!」
ドピュ~~~ン! ドピュドピュドピュ!
リリス姉「うふ、もうイったの? 意外と早いわね」
リリス妹「エルフ坊やも今、イったところよ」
リリス姉「おほほほ、どちらも早いわね、これはオードブルよ、それでは2食目をいただこうかしら」
シャム「お、おい! ちょっと待て! タイム! いくらおいらがタフだと言っても、ちょっとぐらい休憩をさせろ! 」
リリス姉「ダ~メ、ダメダメ、ダ~メ~」
パックン!
シャム「おおっ! ちょっと待て! ちょっと待て! おい! おおお~~~っ!」
ジュバジュバジュバジュバ……
リリス姉の技巧で萎えていたシャムとエンポリオの肉柱はまたたく間に怒張してしまった。
シャイ「おい! しゃぶるのやめろっ! ……いや、やめなくていい!」
エンポリオ「シャムさん、どっちなの? おおお~! 俺も高ぶって来たぞ~! くおっ!」
ジュポジュポジュポジュポ!
リリス妹「お姉さん、私、もうがまんできないわ~ 肉壷に収めちゃうね~?」
リリス姉「好きにすればいいわ~ 私もそろそろ下のお口に収めたくなってきたわ~」
リリス姉妹はシャムたちの肉柱の上に馬乗りになって腰を振り始めた。
そのわずか数分後、シャムたちは呆気なく昇天してしまった。
リリス姉「まあ、早いこと。これじゃ全然イけないじゃないの~。まあ、いいわ、それじゃもう一度」
シャム「おい、ちょっと待て! いくらタフなおいらでもちょっとぐらい休憩させろ!」
リリス姉「休憩なんて無用、無用無用ゴム用なんてね~、さあ、がんばろうか~?」
ズンッ!
むりやり彼らを勃起させて、再び求めてくるリリス姉妹。
彼女たちの欲望は無限なのか。
シャム「おおおっ! くうっ! おお~っ!」
エンポリオ「シャムさん、俺、かなりきついよ! もう死にそうだ!」
シャム「おいらだって、うお~~~!」
エンポリオ「くお~~~っ! 出るぅ~~~!」
無類の精力を誇るシャムとエンポリオだが、立て続けに苛烈な吸淫地獄に遭い辟易している。
逃げることも反撃することもかなわずリリス姉妹のなすがままであった。
またイヴたちも相変わらずスライムたちから逃れることができず、散々いたぶられ青息吐息になっていた。
徹頭徹尾性的な攻撃を受けたシャムたちには、それは快楽を通り越してもはや苦痛でしかなかった。
一方、一足早く紫霧地獄から脱出したエリカたちは……
チルチル「ああ、どうしよう……姿は確認できないけどイヴさんたちの辛そうな声が聴こえてくるよ。何をされてるんだろう……私、もうがまんできない!助けに行くでピョン!」
エリカ「今行くと敵の思う壺です! それより他の方法を考えましょう!」
マリア「問題はこの紫色の霧ですね。これがあるから催淫に悩まされるし、周囲が見えません。どうしたら消せるか考えましょう」
シャルル「ここにいても埒が開かないぞ。逆に上に登ってみないか?」
ペペ「それは良い方法かもしれないですね。行ってみましょう」
エリカたちは霧に包まれた大広間を後にして、上に繋がっている階段を駆け上がることにした。
はたして4階はどんな世界だろうか。
もしかしたら3階よりもさらなる危険がエリカたちを待ち受けているかも知れない。
だけどエリカたちは躊躇わなかった。
もしもシャムやイヴたちが全滅するようなことになれば、自分たち4人もきっとこの塔から生きては戻れないだろうから。
エリカたちはシャルルを先頭に階段を駆け上がった。