ファンタジー官能小説『セクスカリバー』

Shyrock 作



<第26章「蘇りし記憶」目次>

第26章「蘇りし記憶」 第1話
第26章「蘇りし記憶」 第2話
第26章「蘇りし記憶」 第3話
第26章「蘇りし記憶」 第4話
第26章「蘇りし記憶」 第5話
第26章「蘇りし記憶」 第6話




<メンバーの現在の体力・魔力>

シャム 勇者 HP 630/630 MP 0/0
イヴ 神官 HP 530/530 MP 560/560
アリサ 猫耳 HP 540/540 MP 0/0
キュー ワルキューレ HP580/580 MP310/310
エリカ ウンディーネ女王 HP 460/460 MP 590/590
チルチル 街少女 HP 390/390 MP 0/0
シャルル 漁師・レジスタンス運動指導者 HP 660/660 MP 0/0
ウチャギーナ 魔導師 HP 460/460 MP 560/560
ペペ 魔導師 HP 500/500 MP 600/600
マリア 聖女 HP 470/470 MP 610/610
エンポリオ アーチャー HP 470/470 MP 0/0

⚔⚔⚔

第26章「蘇りし記憶」 第1話

キュー「にゅっ? 夢の中で会話してるじゃん。ぷぷぷ! 笑っちゃうよ~」
ウチャギーナ「本当だ、可笑しいね。落ち着いたらゆっくりとスイーツを食べに行きたいね」
キュー「私もパフェが食べた~い~」
ウチャギーナ「ねえ、キューちゃん、パフェってどういう意味なの?」
キュー「パフェってフランス語の【Parfait(完璧)】が語源だと聞いたことがあるよ。 英語だと【Perfect】かな」
ウチャギーナ「へ~、そうなんだ。でも、どうしてパフェが完璧なお菓子なの?」
キュー「ある国にすごくお菓子の好きな王様がいたの。ある日、国中のお菓子作りの職人を集めてコンテストを開催したの。で、ある腕の良い若い職人が夜を徹してすごくきれいで美味しいお菓子の作ったの。結局その若い職人が優勝し、王様がその若い職人を褒めたたえて、『おお、すばらしい! 完璧なお菓子じゃ! そなたを我が王室のコック長に迎えようぞ~』と言って、すごく満悦したの。それからあのお菓子がパフェと呼ばれるようになったの」
ウチャギーナ「へ~、そうなの! すごい、キューちゃんって物知りね!」
キュー「それほどでも~。実はね、ワルキューレ村にいた頃近所のシェフから聞いた話なの」
ウチャギーナ「そうなんだ。ああ、本気でパフェが食べたくなってきた。とはいっても人生でたった1回しか食べたことがないんだけどね」

 キューとウチャギーナのパフェ談義が終わっても、依然アリサとチルチルは寝言で会話を続けていた。

アリサ「にゃんふ~にゃんふ~……チルチルちゃん、チョコパフェ食べるぅ……?」
チルチル「むにゃ……むにゃむにゃ……私はイチゴが乗ったパフェがいい……♫」

ウチャギーナ「まだ寝言を言ってるよ。パフェへの執念すごい!」
キュー「ウチャギーナちゃんの地元を悪くいうつもりはないんだけど、ペルセ島にはしゃれたカフェがないので、ロマンチーノ大陸か北の大陸に行ってからだよね、パフェが食べられるのは」
ウチャギーナ「全然いいよ、そのとおりだもん」

⚔⚔⚔

 エリカが足音を忍ばせエンポリオの部屋に入ってみると、すやすやと気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。

エリカ「やっぱり眠ってますね。6回も射精したので無理もないでしょう。でももう一踏ん張り、いや、三踏ん張りしてもらいますからね」

 時計の針はすでに3時を指している。
 6時頃には東の空が白々と明けてしまうだろう。
 エリカに残された時間はあと3時間。6時までに性交を3回行わなければならない。
 熟睡しているエンポリオを叩き起こしてでも、任務を全うしなければならないのだ。
 だが、たとえ揺り起こしたとしても完全に目が覚めるまでにしばらく時間がかかるだろう。

エリカ(ここは奥の手を使うしか方法がないわ)

 エリカは眠っているエンポリオのベッドの横に立ち呪文を唱えようと身構えた。
 ところが何と……

エリカ「あら……呪文、どうだったかな……」

 滅多に使わない『覚醒の呪文』なのでエリカはすっかり忘れてしまっていた。

エリカ「え~と、ザッハトルテはケーキでしたね。ザーメンは男性のアレでしたし、え~と、何だったっけ? 記憶をよみがえらせる立場の私が呪文を忘れたら洒落にならないですね。え~と……」
エリカ「ザハ、ザハ……あっ、思い出しましたわ! ザハメットですわ! あら、私としたことが。嫌ですわ。おほほほ~」

 まもなくエリカは寝息を立てているエンポリオに向かって呪文を唱え始めた。

エリカ「ザハメザハメザハメ~、神よ、この男子を深き眠りから覚ましたまえ~。ザハメザハメザハメ~」

 人差し指の先端から白い光がエンポリオに向って放たれた。
 光はエンポリオの額にす~っと吸い込まれていく。

エンポリオ「むにゃむにゃ……むにゃ……ん? んん……?」
エリカ「うふふ、早速効果が現れたようですね」
エンポリオ「え~? ええっ!? どうして~~~!? またまた女が変わった!」
エリカ「そんなに驚かなくてもいいですわ。私は、先に来たイヴさんとマリアさんの仲間ですから。私の名前はエリカです。どうぞよろしくお願いします。うふ」
エンポリオ「エリカ? それはそうと、今夜はどうして入れ替わり立ち代りいろんな女性が入ってくるのだ? いったいどうなってるんだ?」
エリカ「それは後から詳しく説明します。その前に私といいことをしましょう?」
エンポリオ「どひぁ~~~~~! まだやるの?」
エリカ「え? エンポリオさんは先に来た2人の女の子と何かしたのですか?」
エンポリオ「いえいえ~、決して何もしてません!」
エリカ「そうですか、何もしなかったのですか。それなら私と秘め事を行ないましょう」

 エリカはそうささやくと、エンポリオにもたれかかった。
 麝香性(じゃこうせい)の刺激的な香りがエンポリオの鼻腔をくすぐる。



第26章「蘇りし記憶」 第2話

 年齢的にはそれほど変わらないが、エリカにはイヴやマリアとは一味違った大人の色香が漂っていた。
 大人の色気とは内面と外見の美しさが調和から生まれるもの。
 そんな大人の色香を持った女性がまだ青さの残る少年を誘惑すればひとたまりもないだろう。
 エンポリオがエリカの誘惑にどれだけ耐えられるだろう。
 エリカはエンポリオに覆いかぶさり早くもキスの雨を降らしていた。
 唇だけではなく首筋や胸部にも怒涛のように。

エンポリオ「うううっ……」

エリカは少し意地悪な質問をしてみた。

エリカ「ねえ、エンポリオさん? さっきのお姉さまたちと本当はいいことをしたのでしょう? どんなことをしたのですか?」
エンポリオ「な、何もしてないよ」
エリカ「嘘はダメですよ」
エンポリオ「ほ、本当だよ」
エリカ「あら、そうなのですか。へえ~……」

 エリカの細い指がエンポリオの股間に伸びた。

エンポリオ「あっ……」

 下穿きは着用しているが、すっかり元気さをとり戻しているのが手に取るように分かる。
 エリカは猛々しく隆起したイチモツをそっと撫でてみた。

エリカ「もうこんなになっているじゃないですか」
エンポリオ「うぅぅ……」
エリカ「気持ちよくしてあげましょうか?」

 エンポリオは静かに肯いた。その表情は何かを期待しているようだ。
 エリカがエンポリオの下穿きをずらした。
 イチモツがまるでバネのように弾み出た。

エリカ「まあ、立派なモノですこと。うふ、どんなお味でしょうか」

 エリカはそうつぶやくとカリの部分をパクリと口に含んだ。

エンポリオ「うっ……」

 チュポチュポチュポ、チュポチュポチュポ、チュパチュパチュパ……

エンポリオ「ううう……おおおっ……」

 カリを舐めた後、舌は幹へと移り、さらには玉袋まで移動した。
 早くも肉柱は痛々しいぐらいに怒張している。

エンポリオ「エリカ……もう、もう、我慢できない……」

 エリカはその言葉を待っていた。
 男の挿入願望が強いときに挿入させることが、早い射精を望むことができる。
 夜明けまであと2時間弱、できるだけ有効に時間を使いたい。
 エンポリオがいくら若いと言っても疲労だってある。
 早急に射精させてやることが少しでも体力の温存に繋がる。

 最終走者となるエリカが受け持つ体位は『対面立位』『背面立位(立ちバック)』『松葉くずし』の3つだ。
 3つのうち2つは立ったままで進行する。立位になることでエンポリオにの脳に刺激を与え眠気を吹き飛ばす効果が期待できる体位といえるだろう。
 最終の『松葉くずし』は9つの体位の中で最も困難だが、その分奇抜で刺激的なので大いに効果が期待できる。

 かなりの体力を消耗しているはずだが一向に衰えは見せず、魅惑的なエリカの前では驚くほど早い回復力を見せた。
 萎えることの知らないエンポリオに対して、エリカも負けじと大いに奮闘した。
 めくるめく官能の世界に浸る2人に、最終ラウンドを終えた頃、窓辺から微かな光が差しこんだ。

エリカ(朝が訪れたわ……)

 エリカはイヴ、マリアからバトンを受け取り懸命に疾走した。
 童貞のエンポリオと床をともにする役目を無事終えた後、エンポリオの様子を観察していた。
 はたして記憶回復術『満月九射の術』は成功したのだろうか。

エリカ「すごく良かったわ……エンポリオってすごいのね」
エンポリオ「俺もすごく気持ち良かったよ。でも……」
エリカ「でも?」
エンポリオ「もう眠いよ~。目が閉じそうだ。俺、もう寝るね」
エリカ「あっ、ダメ! まだ眠ってはダメ! お願い、もう少しだけがんばって起きてて」
エンポリオ「どうして? どうして眠ってはダメなんだ?」
エリカ「うん、エンポリオに1つだけ聞きたいことがあるの」
エンポリオ「俺から聞きたいこと? それって起きてからでも構わないだろう? とにかく眠いんだ。寝かせてくれ」
エリカ「だめ、今どうしても聞きたいことがあるの」
エンポリオ「え~? 今じゃなきゃダメなの? で、なんだよ、聞きたいことって」

⚔⚔⚔

 一方、エリカとエンポリオの一戦が終わるのを待ちわびていたシャム、イヴ、マリアの3人がエンポリオの部屋の前に到着していた。

 エリカはエンポリオにそっと尋ねてみた。

エリカ「エンポリオさん、今から聞くことはとても大切なことなんです。慌てなくていいのでゆっくり思い出して答えてくださいね」
エンポリオ「うん、いいよ」
エリカ「あなたは『クリトビスの塔』へ行ったことがありますか?」
エンポリオ「うん、あるよ。中には入ってないけど」

 エンポリオは事も無げにさらりと言った。
 塔に行った時のことを覚えているようだ。
 ついにエンポリオの記憶が蘇ったのか。

 エリカとエンポリオの会話を、扉の外で息を潜めて立ち聞きシャムたちの姿があった。



第26章「蘇りし記憶」 第3話

エリカ「塔の中に入らなくても、何か見たでしょ?」
エンポリオ「見たよ。はっきりと覚えているよ」
エリカ「何を見たのですか?」

 エンポリオとエリカの会話を聞こうと扉に耳を当てていたシャム、イヴ、マリアに加え、ほかの仲間たちも一斉に耳をあてがったため、扉にかなりの圧力がかかった。
 血気盛んな若者たちの圧す力は計り知れないものがある。大勢でグイグイ圧されてはたまったものではない。
 扉は圧力に耐えかねてエンポリオがいる部屋側に音を立てて倒壊してしまった。

 ドシャ~~~ンッ!!

 扉を壊してしまった張本人のシャムたちは唖然としていたが、それ以上に驚いたのが部屋内にいたエンポリオとエリカであった。

エンポリオ「うわ~~~! 何事だ~~~!」
エリカ「みなさん、何をしてるんですか!? 扉を壊してしまって! 記憶が戻ったエンポリオさんが当時のことを話そうとしていたのに、会話の腰を折らないでください!」

 今にもエンポリオが語ろうとしている時に、水を差したてしまったためエリカが真剣に怒っている。

シャム「すまん、2人の会話に聞き耳を立てているうちに、つい力が入ってしまって……。エンポリオ、扉は後からちゃんと修理するからな」
エリカ「当然ですよ」
イヴ「エンポリオ、こっそり聞いちゃってごめんね。でもあなたの記憶が回復してすごくうれしいわ!」
マリア「扉を壊してしまったことは私からも謝ります。記憶が戻って本当によかったですね」

 エンポリオとしてはシャムたちが語る『記憶回復』の意味がよく分からなかった。
 分からないのも無理はないだろう。エンポリオ自身は一時的であっても記憶を失っていた自覚などまったくないのだから。

エンポリオ「記憶? 回復? 俺は記憶喪失していたのか?」
シャム「エンポリオ、驚かないで聞くんだぞ」
エンポリオ「うん」
シャム「実は、エンポリオは悪いやつに魔法で記憶を消されていたんだ」
エンポリオ「ええ~~~!? 本当に~!?」
シャム「自覚はないと思うが事実なんだ」
エンポリオ「そうだったのか。それでその記憶喪失の魔法がどうして解けたの?」

 シャムがにやにやと意味ありげな微笑を浮かべながら問い返す。

シャム「聞きたいか?」
エンポリオ「そりゃあ聞きたいよ」
シャム「どうしようかなあ。言おうかな~? やめとこうかなあ~?」

 もったいぶってみせるシャム。

イヴ「シャムったら~、焦らせるのは前戯だけにしてよ。早くエンポリオに真実を話してあげてよ~」
シャム「どうしてあっちの話を引き合いに出すかな~。じゃあ、エンポリオ、照れないで聞くんだぞ」
エンポリオ「は~い」

 めくるめく3人の美女とのベッドシーンを回想するエンポリオの頬は緊張感なく緩んでしまっている。

シャム「記憶喪失の魔法を解いたのは、イヴ、エリカ、マリアの3人だ。3人が連係してエンポリオの記憶喪失を解いたんだ」
エンポリオ「俺の記憶を戻してくれたの? どんな方法で?」
シャム「マジで覚えてないのか? 彼女たちが不眠不休で解いてくれたのに」
エンポリオ「えええ~~~~~~~~~~~!? ま、まさか! あの夢のようなあの気持ちよい時間が全部治療だったとは!?」
シャム「この色男が~! いい思いをしやがって~~~!」

 エンポリオの額を軽く小突くシャム。

シャルル「そうだよ! 俺なんてまったくあやかっていないのに!」
エリカ「どさくさに紛れて何ですか、シャルルまでが。みっともないですよ」
エンポリオ「いや~、あれは魔法だったとはいまだに信じられない……」

 エンポリオは夢路をさまようように恍惚の表情を浮かべている。

エリカ「エンポリさん、記憶喪失のことと、それを解いたのは私たち3人だということは理解してくれましたね。今度はあなたが話す番です」
エンポリオ「うん、分かった」
エリカ「もう一度聞きますね。塔の前で見たものを教えてください」

 視線がエンポリオに集中する。
 固唾を呑んで一同が見守る中、エンポリオがぽつりと語りはじめた。

エンポリオ「まるでどこかのお姫様のような豪華な衣装の女の子が、黒い導師服の男に抱きかかえられて塔の中に入って行ったのを見たんだ」

 一斉にどよめきが起こった。
 やはり塔の中に連れ去られた女性がいたんだ。それはユマ姫かもしれない。

エリカ「その後どうなったのですか?」

 エンポリオはまだ快楽の夢路のつづきをさまよっているのだろうか。口を半開きにしてポカーンとしている。

エリカ「もしもし~、エンポリオさん?」
エンポリオ「あっ、はい……ごめんなさい」
エリカ「全部話してくれたらすてきなご褒美があるかもしれませんよ」
エンポリオ「つづきを話せばすてきな褒美があるの? エリカ、イヴ、マリアとまた楽しいことができるとか?」
エリカ「それも良いのですが、今度はあなたと同年代の女の子たちがお相手をしてくれるかもしれないですよ」

 エリカはそうささやくと、アリサたちがいる方向に視線を向けた。
 エンポリオは視線を移す。
 シャムの左手には、アリサ、キュー、ウチャギーナ、チルチルが並んでいる。



第26章「蘇りし記憶」 第4話

 真っ先に異議を唱えたのはキューであった。

キュー「にゅう、冗談じゃないよ~!」
ウチャギーナ「エリカさん、話を振らないでよ」
チルチル「私、まだ未成年なのでご辞退でピョン♫」
アリサ「面白いかも知れないねええええ」
キュー「じゃあ、アリサちゃんが相手をしてあげたら?」
アリサ「私1人じゃいやだよ、キューちゃんも付き合ってよおおおお」
キュー「私を引き込まないでよ」
シャム「まあその話は置いといて。それよりもエンポリオ、早く話してくれよ」

 記憶が戻ったエンポリオはついに回想を始めた。

 エンポリオの話では『クリトビスの塔』の東側に塔内部に通ずる入口があるらしい。
 黒っぽい導師服を着た男は豪華な衣装の少女を抱きかかえて、当の中に入って行ったという。

エンポリオ「俺は近くの草むらで身を潜めて様子を窺っていたんだが、誤って音を立ててしまい男に見つかってしまったんだ。俺に気づいた導師服の男は『見たな?』と脅かしてきた」
シャム「ふむ」
エンポリオ「後退りする俺に、導師服の男は何やら呪文を唱え始めた。その後、頭が割れるように痛くなって倒れてしまった。薄れる意識の中でぼんやりと導師服の男と少女が塔の中に入っていくのを見たんだ」
イヴ「その時の呪文がおそらく記憶を消す魔法だったんだわ」
シャム「その少女の顔は覚えてる?」
エンポリオ「暗かったのでよく覚えてないよ」
シャム「髪の色とか、他に何か特徴はなかったか?」
エンポリオ「髪は金髪だったよ。衣装はピンク色だったと思う」
シャム「金髪でピンク色の服か、それだけじゃなあ……他に特徴はなかったか?」

 ユマ姫であるという確証が欲しいところだが、現在の証言ではちょっと希薄だ。

エンポリオ「う~ん、そう言われてもなあ……暗かったし……」
キュー「シャム、これじゃユマ姫とは断言できないね」
シャム「そうだなあ……」

 次の刹那、エンポリオは何か思い出したようでポンと手を打った。

エンポリオ「あっ、そういえば!」
アリサ「にゃおっ、何か思い出したのおおおお!?」
エンポリオ「うん! 確か足首にピカピカ光る輪っかを着けていたよ。輪っかにはお月様の形をした飾りがあったと思う……」
ウチャギーナ「足首に輪っか? それってアンクレットだね!」
シャルル「アンクレットってなんだ?」
エリカ「足首につけるリング状の飾りです。手首につける飾りはブレスレットといいます」
シャルル「へ~、そうなんだ」
イヴ「お月様の形は三日月だった?」
エンポリオ「うん、三日月だったと思うよ」
イヴ「シャム! 間違いないわ! その少女はユマ姫よ~!」
シャム「どうしてユマ姫だと言えるんだ?」
イヴ「だって三日月はムーンサルト城の紋章じゃないの!?」
シャム「おお~~~そうか~~~! ムーンサルトの軍隊はいつも三日月の戦旗をなびかせていたのを思い出したぞ~! その少女はユマ姫に間違いないぞ~~~!」
イヴ「ようやくユマ姫の近くまで来たね」
チルチル「シャム、よかったでピョン♫」
ペペ「発見おめでとうございます!」
アリサ「にゃんにゃん~アリサも嬉しいよおおおお!」

 歓声を上げる仲間たちをエリカが制した。

エリカ「ちょっと、みなさん、喜ぶのはまだ早いですよ。その女性がユマ姫だとしても、私たちはまだ救出していないではありませんか」
シャム「えへ、そうだった」
エンポリオ「最初はよく呑み込めなかったけど話が大体分かったよ。要するにみんなはユマ姫とやらを探しているんだな? 心配するなって。俺が入口まで案内してやるよ」
シャム「いいのか!? かなり危険だぞ?」
エンポリオ「あんたたちがここに来てなければ、俺は記憶を失ったままだったろう。だけどあんたたちのお陰で記憶が戻った。だからせめてもの恩返しだ。俺に案内役を任せてくれ」
イヴ「地理に詳しいエンポリオが案内してくれたら助かるわ。ねえ、みんな」
エリカ「大助かりですよ。じゃあ、エンポリオさん、よろしく頼みますね」
エンポリオ「俺だって少しぐらいは武器を使えるんだぞ」
シャム「何を使うんだ?」
エンポリオ「俺の武器は弓矢。上手くはないけど少しぐらいは役に立つかも知れないぞ」
シャム「これは頼もしい! じゃあエンポリオ頼むぞ!」

 エンポリオが仲間に加わった!



第26章「蘇りし記憶」 第5話

 エンポリオの記憶回復の知らせを受けた両親は早速帰宅し感涙に咽ぶのであった。

エンポリオの父「皆さん、息子の記憶を元に戻していただきありがとうございました! お礼の言葉が見つからないほど、嬉しい気持ち、感謝の気持ちでいっぱいです……」

 父親はそう述べると目頭を押さえ声を詰まらせてしまった。

エンポリオの母「あなた、皆様の前ですよ。そんなに泣いてばかりいたら失礼ですよ……皆様、申し訳ございません。お医者様からもさじを投げられたのに、皆様のがんばりのお陰でエンポリオが治りました。本当に嬉しいです」

シャム「治ってよかった! おいらたちも塔のことが聞けて大助かりだよ~!」
母「エンポリオは塔で見たことをちゃんと話しましたか? 探しておられるお姫様は見つかりそうですか?」
シャム「エンポリオの話から考えて、幻術師に連れ去られた少女はユマ姫に間違いないと思う」
母「じゃあ、今から『クリトビスの塔』にお姫様救出に行かれるのですね?」
シャム「少しでも早く助けたいので、すぐにでも出掛けたい。そうそう、おばさん、エンポリオを連れて行くけど構わない?」
母「もちろんいいですとも。でも足手まといにならないか不安はあります」
エンポリオ「おふくろ、そんないつまでも子ども扱いはやめてくれよ。俺だって今アーチャーの修行中で弓矢には自信があるんだから」
母「そうだったわね。がんばって少しでも皆さんのお役に立ってね」

 声を詰まらせていた父親がようやく口を開いた。

父「皆さん、昔からの言い伝えですが、あの塔に入った者は二度と戻って来ないと言われています。何でも塔の主が色々な罠を仕掛けてきて、訪問者は幻惑され、脱出できなくなってしまうと恐れられています。ですので事前に村の長老ヤコポと会って、情報を入手してから行かれた方がよいと思います」
イヴ「長老は塔について詳しいのですか?」
父「長老はかなりご高齢ですが、若い頃は『エルフのメシア』と呼ばれるほどの英雄でした。他の部族が襲ってきたときも先頭に立って勇敢に戦い勝利に導きました。またクビトビスの塔に入って唯一生還した人物とも言われています」
エリカ「長老はすごい方なのですね。ぜひ会ってお知恵を拝借したいものですわ」
シャム「塔に入る前に寄ってみよう」
父「皆様の旅用の食料を準備しておきましたので、長老宅に行かれたら一度ここに戻られて旅の支度をしてください」
シャム「おじさん、色々とありがとう!」

 長老の屋敷はエンポリオの家から少し歩いたところにあるらしい。
 シャムたちはエンポリオをともない長老の屋敷を訪問することにした。

⚔⚔⚔

長老ヤコボ「おお、エンポリオか、記憶が戻って良かったのう。皆様、エンポリオを治してくださりありがとうございました。本当に何とお礼を言えばいいのやら」
シャム「いやいや、お礼だなんて~。村の美女たちを三日三晩そばにはべらせて酒池肉林するだけで十分ですよ」

 バチン!

イヴ「調子に乗るな!」
シャム「いてててっ!」
長老「わっはっはっはっは~。面白い人たちだ。美女を三日三晩酒池肉林ですか? もちろん結構ですとも。お望みなら村のきれいどころを集めて宴会をしましょう。しかし、シャムさん、あなたの周りには美しい女性たちがいっぱいいるではありませんか?」
アリサ「にゃん! 美女だってええええ? 聞いた? キューちゃんんんん」
キュー「にゅう、聞いたよ~、気分がいいね~。長老様から褒めてもらえるって」
長老「では早速本題に入りましょうか」

 アリサとキューはぬかるみに足をとられたようにずっこけた。

アリサ、キュー「社交辞令かい!」

長老「経緯はだいたい分かりました。 で、これから『クリトビスの塔』に行くのですね?」
シャム「塔の中に囚われている少女がユマ姫だと分かったので今から助けに行くんだけど、塔の中のことを教えてくれない? 長老は塔に入って唯一脱出できた人だって聞いたよ」
長老「わっはっはっは~、もう古い昔の話ですよ。私は比較的非力なエルフという種族でありながら、剣が好きで若い頃武芸に励んでいました。塔の中にしか生息しない薬草を採るために塔の中に入って行きました」
エリカ「特殊な薬草なのですか?」
長老「はい、昔、村にある伝染病が流行りました。その病はどういうわけか若い娘たちだけを襲いました。その病を治す薬草が塔の中に生息していると聞きました」
エリカ「そんなことがあったのですか」
長老「あくまで噂だったのですが、このまま放っておいても娘たちの命はあと数日しか持たないし、私は勇気を奮い立たせ、脱出不能の塔と呼ばれていた『クリトビスの塔』に入って行きました」
チルチル「薬草は見つかったでピョン♫?」
長老「はい、見つかりました! 薬草の効果で娘たちは見る見るうちに元気になりました」
マリア「塔の中に幻術師がいるという噂がありますが」
長老「はい、噂ではなく彼は本当にいました。私を脱出させるまいとあらゆる幻術を掛けてきました」
ウチャギーナ「例えばどんな幻術?」
長老「例えば、あるフロアにはドラゴンがいて私に襲い掛かって来ました」
ウチャギーナ「ドラゴンって本物なの!?」
長老「いいえ、それは全て幻だったのです。本当に食われたり、傷を負わされたりはしないのですが、恐ろしい恐怖を体験しました。つまり心理に迫ってくるわけですね……人間の恐怖心を煽るためのあらゆる幻が襲って来ました」
イヴ「でも、あなたはそれに打ち勝ったのですね。すごい精神力だわ」
長老「打ち勝ったといえば聞こえはよいですが、薬草を持ち帰り、ようやく村にたどり着いた後、心がボロボロでしばらく寝込んでいました……」
シャム「塔の中で心にすごくダメージを受けたのだろうな」



第26章「蘇りし記憶」 第6話

長老ヤコボの表情が険しくなった。

長老「あの幻術師は我々の想像をはるかに超えた能力を持っています。決して侮ってはなりません」
シャム「でも長老が戦ったのは昔のことだよな? 幻術師もそれなりに歳を食ってるだろうから老人になってるんじゃないの?」
長老「それは甘いです。あの男には年齢など関係ありません」
シャム「どうして? 誰でも歳をとるじゃないか」
長老「彼は人間ではありません。もちろんエルフでもありません」
マリア「では魔物ですか?」
長老「いいえ、違います。おそらく……」
マリア「……?」
長老「アンデッドです」
マリア「ま、まさか……!?」
ウチャギーナ「つまりアストラルやスケルトンやゾンビということですか?」
長老「それは私にもよく分かりません。彼の正体は不明なのです。ただ言えることは、彼の魔力は半端なくすごいです」
アリサ「にゃう~ん、そんなにすごいのおおおお?」
長老「すごいの何のってアンタもう~」

 鬼気迫る長老の言葉に間近で聞いていたアリサは寒気がした。

アリサ「ゾォ~、鳥肌が立ってきたああああ」
長老「エッチな攻撃も仕掛けてくるので要注意ですよ」

 エッチな攻撃と聞いて即座に反応したのはチルチルであった。

チルチル「どんなエッチな攻撃なのか興味あるでピョン♫」
長老「私が男性だったこともあって、美女が現れてか~なりエロイ状況になってしまって……」

 シャムが何やら嬉しそうだ。

シャム「それいいな~! なあ、エンポリオもそう思うだろう?」
エンポリオ「アンデッドというから、キモいゾンビのお出ましかとげっそりしていたけど、美女なら大歓迎~! 楽しみ~!」
エリカ「何をのんきなことを言ってるのですか、揃いもそろって。塔の主を退治して姫を助けなければならないのですよ」

 エリカが諫めようが何のその、長老は当時を懐かしむように目を細めている。

長老「エロイの何のって。私はもう勃起しまくりでしたよ。ははははは~」
シャム「それはいいな~! よだれが出てきた~」
シャルル「そんなエロい敵なら大歓迎だ!」

エリカ「男性の皆さん、いったい何を考えているのですか。皆さん、鼻の下を伸ばし過ぎですよ」
イヴ「もしかしたら女性に対してもエッチな攻撃を仕掛けてくるのかしら?」
長老「そればかりは私にも分かりません。当時、私を含め、エルフの若い男性だけで進入したもので」
キュー「ちょっとだけ楽しみかも」
ペペ「何を言ってるのですか。もっと気持ちを引き締めて臨まないと敵の思うつぼですよ」

 マリアが長老に尋ねた。

マリア「ところで、塔は何階建てですか?」
長老「それが……私自身、頂上までのぼっていないので、どれだけの高さなのか分からないのです」
マリア「地上から見上げれば何階建てか大体分かるのではありませんか?」
長老「ところが6階附近に雲がかかっていて、そこから上が見えないのです。それは晴れた日でも変わりません」
マリア「それも幻術かもしれませんね。雲を作り出すとすれば恐るべき相手です。心して掛からなければなりません」

 長老ヤコボからの聞き込みも無事に終了したようだ。

シャム「長老、色々と教えてくれてありがとう~。それじゃ今から塔に乗り込むよ!」
長老「参考になりましたかな? では皆さんのご武運をお祈りしています。それはそうと皆さん、何となく眠そうに見えるのですが」
マリア「実は色々と訳があって昨夜あまり寝ていないのです」
長老「おっと、これは失礼を。エンポリオを救うために徹夜でがんばってくださったのを忘れておりました。よかったらここで仮眠をとって、すっきりしてから行かれたらどうですか?」
イヴ「正直かなり眠いのは事実なのですが、一刻も早くユマ姫様を救出したいのです」
長老「『めぞん一刻』……懐かしいなあ」
キュー「そんな古いラブコメ知らないわ」
ウチャギーナ「ラブコメだと知ってるということは、ストーリーを知ってるということだよね?」
チルチル「『めぞん一刻』って何だピョン♫?」
エリカ「ラブコメ漫画の金字塔でしたわ」
マリア「どうして20代前半のエリカさんがご存知なのかしら」
エリカ「母親から聞いて知っておりますの。オホホホホ」

 長老が突然真顔に変化した。

長老「あの幻術師を侮ってはなりませんぞ」

 ドテンッ!

シャム「なんだよ、長老。急に話を戻して。びっくりするではないか~」
長老「そろそろ話を戻さないと、この壮大なエロティックファンタジーが単なるギャグ小説になってしまうと思いましてな」
イヴ「色々とご配慮ありがとうございます」
長老「くどいですが、彼の使う幻術はかなりの優れものです。皆さんはきっと幻覚に悩まされることでしょう。特に睡眠不足だと幻覚に陥りやすいです。できれば少し眠ってから行かれることをお薦めします」
シャム「だいじょうだよ~」
イヴ「でも長老がおっしゃっているんだから、少しだけ眠ってから行きましょうよ。私もちょっとだけ寝たいし」
エンポリオ「ふわ~~~……俺もかなり眠くなってきたぞ。長老、ちょっと休ませてもらうよ~」

 結局、一行は長老宅で少し仮眠をとってから出発することになった。
 その間エンポリオの両親はシャムたちのために、食料や薬草等をせっせと整えていた。

 昼過ぎ、仮眠と休息をとった一行は旅支度を終えた。
 シャムたちはエルフ村の入り口に立ちクビトリスの塔がそびえる北西の空をじっと見つめた。

(ユマ姫、待ってろよ。必ず助けに行くから……)



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ウンディーネ・エリカ


エルフ・エンポリオ











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