![]() ファンタジー官能小説『セクスカリバー』 Shyrock 作 |
ちょうどその頃、地下牢の角にひとつの人影があった。
質素な胴衣の上に黒いガウンをまとい、木でできた杖を持っている。
薄暗いのではっきりとは分からないが、フードの奥からチラリと見える顔は実に端正な顔立ちであった。
まだうら若き少女と思われ、年齢は17、8才といったところだろうか。
先程から鋭い眼差しで番人の様子を覗っている。
番人はまるでぜんまい仕掛けの人形のように、牢の前でいったりきたりを繰り返している。
現在地下牢に捕えられているのはシャムとアリサだけだ。
それは番人が通路の突き当りを折り返した隙に起こった。
「セガコキヤ、ツヤイルワ! ファイアボール!」
フードをかぶった少女が何やら呪文を唱えると、てのひらを発した赤い火の玉が番人めがけてすごいスピードで飛んでいった。
「うぎゃぁ~!!」
火の玉は見事に番人に命中し、衣服が燃え始めた。
「な、何者だ~!」
もう一人の番人はただただ狼狽するばかりだ。
ようやく槍を身構えフードの少女に突き込もうとしたが、ふたたび火の玉が発射された。
「セガコキヤ、ツヤイルワ! ファイアボール!」
「うわ~っ!!」
二人目の番人の衣服も燃え上がった。
二人の番人は幸い通路にあった水瓶の水をかぶりようやく鎮火した。
少女は壁に吊るされている鍵を奪い取ると、シャムたちが閉じ込められている地下牢の鍵を開けた。
「あなたたちを助けに来たわ! 早く出るのよ!」
突然救出に現れた少女に、シャムとアリサは唖然としている。
「おまえは誰だ? どうしておいらたちを助けてくれるんだ?」
「私は魔導師モエモエというの。今、説明してる暇はないわ。とにかく早くここから出て!」
「うん、礼をいうよ! 早くイヴを助けに行かなければ!」
「一刻も早く助けてあげないと大変なことになるわ! さきほどちょっと覗いたら、ドンマラに捕らえられて全裸にされていたわ!」
「うへっ! 全裸!? それで何をされていたんだ?」
「10人ほどの男たちに取り囲まれてすごいことを……」
「すごいことって?」
「触られたり、舐められたり……いや~ん、そんな恥ずかしいこと私に言わせないで……」
「うん、もういい」
(ガクンッ!)
モエモエはずっこけた。
「それなら最初から聞くな! この忙しいときに!」
「すみません……」
今は少しでも多く味方が欲しい。シャムはモエモエに援護を頼んだ。
「モエモエ、さっき魔法を見たけどすごいパワーだったね。もしよかったら山賊を倒すのを手伝ってくれないか?」
「もちろん、私も行くわ! あのドン・マラは絶対に許せないんだから」
「何か深い訳がありそうだな? 詳しくことは後で聞くことにして、イヴの救出を急ごう!」
「ええ、すぐに行きましょう!」
「にゃん! 私もイクイク~!」
「ひひひ、イクイクって聞くと何か想像しちゃうな~」
「もおおおお~! シャム! 今そんなこと言ってる暇ないのに~!」
「そうだったな!」
「プンニャン、プンニャン!」
アリサは三角ショーツすら穿いてなかったため、取りあえず番人詰所にあった布を適当に腰に巻きつけることにした。
シャムは剣の代りに、番人詰所に置いてあったハンドアックス(手斧)を握りしめた。
シャムが先を急ごうとしたとき、モエモエが急に顔を赤らめてそっとささやいた。
「あのぅ……シャムさん、アソコのジッパーが開いてアレが見えてるんですけど……」
「えっ? ええ~~~っ? ありゃあ……ははは~……いやあ、ここは開けておいた方が世界がよく見えるんだよ。ははは……」
「シャムの話ってなんか嘘っぽい! モエモエちゃん、シャムってすっごくエッチなの、実はねぇ……」
「おい、アリサ! 時間がないんだぞ! 急ぐぞ!」
シャムはアリサの言葉をさえぎって、足早に駆けていった。
アリサとモエモエも後につづいた。
途中モエモエは駆けながらアリサに、シャムのジッパーがどうして開いていたのかを尋ねた。
アリサは悪びれることなく、地下牢での出来事の一部始終をモエモエに話した。
⚔⚔⚔
「ひゃ……も……むりぃ……あぁぁん……いやぁん! ダメ、ダメっ……もうダメっ……!」
シャムたちが大広間に到着すると、悲鳴とも嬌声ともつかない悩ましい声が彼らの耳に飛込んできた。
イヴは衣類をすべて剥ぎとられ天井から吊るされており、周囲には男たちがハイエナのように群がっている。
乳頭を啜る男、乳房を揉みしだく男、背中に舌を這わせる男、手の指をしゃぶる男、尻を撫でる男、肛門に指を捻じ込もうとする男……
あらゆる辱めがイヴを責め苛んでいた。
ドン・マラはイヴの真正面に陣取って、ディルドでイヴの肉壷をかき回しているところであった。
ディルドはブナの木を男性器そっくりに成形し、湯で温めているためその感触は男性器と遜色がなかった。
そのためイヴの肉壷からはおびただしい蜜が溢れ、そのしずくは太腿にまで伝っていた。
「ぐぁっはっはっは! 手下どもの指と舌だけでもうイッたか? ではそろそろ俺のデカマラを食わせてやるとするか!?」
ドン・マラとその手下たちがすっかりイヴに気を取られていたため、シャムたちの存在に全く気づかない。
物陰に潜み攻撃の時機をうかがうシャムたち。
ドン・マラがディルドを床に捨てイヴに挑もうとしたその刹那、シャムを先頭にアリサたちが一気に襲い掛かった。
「イヴー! 助けに来たぞ~~~!」
シャムの姿を目撃したイヴの表情がパッと明るくなった。
「シャム! 助けに来てくれたのね! 嬉しいわ~!」
一方、シャムたちの突然の来襲に慌てふためくドン・マラたち。
「うわ~っ! てめえら、どうして地下牢から抜け出しやがったんだ!?」
シャムがハンドアックスで次々に敵をなぎ倒す。
「ぎゃぁ~~~っ!}
シャムに負けじとアリサも鋭い爪で山賊を引っ掻く。
前線で戦うシャムとアリサの後方でモエモエが例の呪文を唱えた。
虚を衝かれた山賊たちはパンツがずったままの無様な姿で、武器を構える前にバッタバッタと倒れていく。
シャムにとってハンドアックスは使い慣れない武器であったが、不意を突かれた山賊たちはシャムたちの敵ではなかった。
アリサも武器が爪だけという心細さはあったものの、その卓越した素早さで山賊たちを翻弄した。
ハンドアックスや剣で向かってくる山賊たちも、モエモエの火の魔法の前にはひとたまりもなかった。
「くそ~……シャムたちを逃がしたのはおまえだな? おまえはいったい何者だ?」
ドン・マラはモエモエに向かって叫んだ。
「私のことを憶えていないの? 無理もないわね。では5年前に、カーラ国の旅の一団を襲って殺戮と強奪を謀ったこと、まさか忘れたとは言わないわね?」
「な、なんだと!? それがおまえとどういう関係があるのだ!?」
「一団の中にはカーラ国王妃がいたの。その人は私の母よ!」
「な、何だと!!」
ドン・マラはモエモエの言葉に恐れおののき、見る見るうちに青ざめていった。
「あなたたち山賊は母を辱め、嬲りものにし、そして殺した……。深手を負いながらもようやく逃げ戻った者から聞いたのよ」
「まさか……そのときのカーラ王妃の娘だというのか……?」
「無残な姿で城に帰ってきた母の亡骸を見て、私は復讐を誓ったの。そして私はドン・マラ、そうあなたを探す旅に出た。女の私は剣ではきっとあなたに敵わないと考え、魔法を修行したの。そしてようやくあなたを見つけ出した。苦しみの淵で、もがきながら死んでいった母の仇、今、仇を討たせてもらうわ! ドン・マラ!」
「ま、待ってくれ~! ち、違うんだ! あの時は俺よりも仲間が……」
「この場に及んで言い訳なんてみっともないわ!」
「く、くそ~っ! これでも食らえっ!」
ドン・マラはモエモエを狙ってハンドアックスを投げつけた。
「伏せろ!」
シャムが叫んだ。
モエモエがシャムの言葉に反応し、身体をかがめたその瞬間、モエモエの頭上をハンドアックスが通過した。
「ふう……、危なかったわ。今度は私の番よ……」
「や、やめてくれ! 助けてくれ~!」
「往生際が悪いわね。人の命は虫けらのように扱う癖に、自分の命は惜しいのね! でも、もうこれで終わりよ! あなたも、そして私の旅も……」
「ま、待ってくれ~!俺の財宝をやる、だから見逃してくれ」
「財宝?そんなものは要らないわ。母の恨みを晴らすだけ。じゃあ覚悟するのね」
「うわ~~~! やめてくれ~~~!」
「セガコキヤ、ヲラマンド! ファイアボール~~~!!」
恨みを込めた真っ赤な火の玉は、山賊の手下に放ったそれよりも、ひときわ赤く燃えてドン・マラ目掛けて飛んでいった。
そして炎はドン・マラの厚い胸板に炸裂した。
「ウギャアアアア~~~!!」
炎に包まれ苦しみに悶える男の断末魔の叫びが、洞窟の隅々にまで轟き渡った。
「やっと倒したわ……」
「うん、見事だった!」
⚔⚔⚔
天井から吊るされているイヴの縄をすぐにほどかないで、しげしげと裸体を眺めるシャム。
「もう、シャムったら~! そんな嫌らしい目付きで見てないで早く縄を解いてよ~!」
「くっくっくっ、いい眺めだなー! こんな光景は滅多に見られないもんね~」
「バカなことを言ってないで、早く降ろしてよ」
「うん、待ってろよ。すぐに縄を解いてやるからな。それにしてもドン・マラたちに責められて、すごく気持ち良さそうな声を出していたね」
「バカ! 冗談じゃないわ。あれは悲鳴なのよ。ヒ…メ…イ…!」
「まあ、そういうことにしておくか。もう少し遅れていればドン・マラのアレを突っ込まれるところだったな~。危ない、危ない。でもドン・マラの立場からすれば、死ぬ前に一度は絶世の美女と心行くまで楽しみたかったろうね(しんみり)」
「もう! 悪者の立場で語るなっ~つ~の! シャム、あなた、本当に私のこと心配してたの?」
「もちろんだよ! すごく心配してたよ!」
「疑わしい……」
ドン・マラの玉座付近に宝箱があった。
開けてみるとなんと値打ちのあるアイテムがどっさり入っていた。
シャムたちは宝箱から、鉄の剣、細身の剣、鉄の爪、魔導師の杖、それに500Gを手に入れた!
鉄の剣はシャムが装備した! 細身の剣はイヴが装備した! 鉄の爪はアリサが装備した! 魔導師の杖はモエモエが装備した!
山賊ドン・マラを倒したシャムたちは、洞窟を後にしてアリサの父が待つラング村へと向かった。
「おお~、アリサや! よくぞ無事で戻って来た! すごく心配しておったぞ!」
「お父さあああん! アリサ、恐かったよおおおお! でもにゃん、この人たちが助けてくれたのおおおお」
「このたびは娘を助けていただき誠にありがとうございました! やはりあなたたちはお強かったですね! お礼と言っては何ですが心ばかりのものですが、どうかお受け取りください」
村長のロ―ニャンはそういってシャムたちに1,000Gを渡した。
「ん? くれるのか? じゃあもらっとくね」
イヴが横からシャムの袖を引っ張った。
「もうシャムったら~、ちょっとは遠慮をしなくては」
「だって、あげるって言ってるんだもの」
アリサがにこにこ笑顔でつぶやいた。
「長い旅にお金はいくらあっても困らないにゃ。これぐらしかできないけど、受け取っておいて」
「ほら、アリサもこう言ってるじゃん」
「もうシャムったら。すみませんね、村長さん、アリサちゃん」
村長が村人たちに料理を作らせ、食卓に豪華な料理が並んだ。
シャムたちは久々のご馳走に舌つづみを打った。
そして旅支度が整ったころ……
「村長、ごちそうさま~。じゃあ、おいらたちはそろそろ行きま~す」
シャムが村長宅を出ようとしたとき、アリサが足元にすがりついて来た。
「シャムぅぅぅ! 私も連れていって欲しいにゃん! にゃあ、お父さん、いいにゃん?」
「いやいや、それはダメじゃ。アリサ、おまえはまだまだ未熟じゃ。おまえが着いていくと皆さんの足手まといになるだけじゃ。お供をしたければもっともっと腕を磨くことじゃ。よいな?」
「やだやだやだああああ! アリサもいっしょに行きたいよおおおお!」
「アリサ、おいらもおまえを連れて行きたい。でもな、今はお父さんの言うとおりにした方がいいよ」
「くすん……シャムがそう言うのだったら……うん、分かった……」
アリサはシャムから諭されて、耳をすぼめてうな垂れ涙ぐんだ。
「泣くな、アリサ。いつか必ずおまえを迎えに来るからな。その日までしっかりと鍛えておけよ!」
「にゃああああん! アリサ、もっともっと強くなるうううう! アソコももっと感度よくしておくうううう!」
「うへっ……このタイミングでそんなことを言わなくても……」
横からイヴがキッとシャムを睨んだ。
「シャム? アリサちゃんの言ってる意味、どういうことなのかな?」
「いや、おいらは知らん……」
「ふーん、いつ、どこで何があったのかなあ? まさか私が山賊に責められている間に、地下牢で変なことしてないでしょうね? まあ、それは後からゆっくりと聞くとするか。それじゃあ、村長さん、アリサちゃん、元気でね~!」
「皆さん、お気をつけて!」
「シャム! みんな! ばいにゃ~!」
「アリサちゃん、またね~!」
「アリサ、元気でな!」
かくして、シャム、イヴ、モエモエの3人は、ラング村を後に再び旅路に着いた。
いつまでも手を振る村長とアリサの姿が次第に遠くなり、いつしか豆粒のようになって行った。
⚔⚔⚔
「お母さんの憎い仇ドン・マラをやっつけられて良かったな。でもこれからどうするつもりなんだ?」
シャムの問いにモエモエは微笑みを浮かべながら答えた。
「そうね。目的は果たしたから城に戻らないといけないんだろうけど、戻ったところで退屈な生活が待ってるだけだしね。もし良かったら皆の仲間に入れてくれないかな? ムーンサルト城が滅ぼされたと言うことは、私の国も危ないと言うことだし。悪い魔物たちを倒すことに私も一肌脱がせてもらうわ」
「え? 脱ぐ?」
モエモエの「脱ぐ」という言葉にシャムが即座に反応した。
イヴが言葉を挟む。
「もうシャムったらあ。そういう言葉にはすぐに反応するんだから。意味が違うでしょう?」
「あ、そうか、ははは~。いや、まだモエモエのヌードは見てないもので」
「見なくていいの~!」
ピシン!バシン!
左右両方から二つのパンチが同時に飛んで来た。
「イテテテテ……痛いなあ。何もマジにぶたなくてもいいのに」
こうしてモエモエが仲間になった!!
⚔⚔⚔
ムーンサルト城へ向かうシャムたちに、モエモエが寄り道をしないかと提案した。
「少し先に女神様が住んでいらっしゃる『マロンクリーム神殿』があるの。ちょっと寄って行かないこと? この先の戦いに何か大事なヒントをくださるかも知れないわ」
モエモエの提案にシャムとアリサはこくんと肯いた。
これから敵も次第に強くなるだろうし、かなり厳しい戦いが予想される。
情報は欠かせない大きな武器なのだ。
3人は一路、マロンクリーム神殿へと向かった。
木漏れ日さえ届かないほど鬱蒼と樹々が茂り、神殿へとつづく道は神聖な雰囲気に包まれている。
神殿は深い森の中にひっそりとたたずんでいた。
神殿の門にはウサギの仮面を付けた騎士が立っており、シャムたちの姿を見ると背筋を伸ばして敬礼をした。
歓迎された気分になり笑顔で会釈を返すシャムたち。
「やあ、どうもどうも~」
神殿の中へ入ってみると凛とした冷ややかな空気が流れていて、長い回廊の角々にはやはりウサギの騎士たちが立哨している。
一番奥に『女神の間』があるようだ。
シャムたちは緊張の面持ちでウサギの騎士が開けて誘導してくれた扉へと入り真っ直ぐに進んだ。
真正面には純白のドレスを身にまとった秀麗な女神が玉座に腰をかけている。
まるで絵画から抜け出したような華麗さと、歌劇の舞台から飛び降りてきたような優美さを兼ね備えている。
それでいて気取りが微塵も感じられない。
くっきりとした大きな瞳は海よりも青く、慈愛に満ち溢れている。
女神は厳かな口調で語りはじめた。
「ようこそ、勇者シャムと仲間の者たちよ。私がこの神殿を司っております愛と真実の女神チルです」
「ほへ~~~! すっげえ美人だ!」
女神のあまりの美しさにシャムは卒倒しそうになった。
チルは穏やかな微笑を浮かべ、優しい眼差しでシャムたちを見つめている。
シャムは突然、突拍子もないことをしゃべりだした。
「チル女神さま! このマロンクリーム神殿ってすごく美味しそうな名前だね! 美味しいケーキなんかをご馳走してくれるのかな? おいらたちちょっとおなかが空いたんだけどさあ」
「しいっ! シャムったらぁ、失礼じゃないの……。神殿へは食事に来たんじゃないのよ。それにマロンクリームってね、食べ物じゃないのよ。全く何も分かっていないんだからあ」
「へ? 違うのか?」
「おほほほ……」
シャムたちの会話を聞いていたチルがクスクスと笑いだした。
「ほら、チルさまに笑われたじゃないの。謝らなきゃ」
「あ、チルさま、大変失礼しました。どうかおいらたちを……じゃなかった、私どもをお導きください」
「シャム、いいのよ~ん♪ そんなに硬くならなくても。ふだんどおりに気軽にしゃべってね」
チルは友達に話すように気さくに話しかけてきた。
「え~? いいの~? わ~い! チル女神さまってなかなか話せるね~」
すぐに調子に乗ってしまうのがいつものシャムの癖だ。
「うっは~! でしょう~? あなたもそう思うでしょう?」
「うん、思う思う!」
シャムとチル女神はまるで既知の友人であるかのように意気投合し話が弾んだ。
モエモエがイヴに話しかけた。
「イヴさん、なんかあの二人、ヤケにノリがいいと思わない? もしかしたら昔からの知合いじゃない?」
イヴとモエモエは、シャムとチルの会話を微笑ましそうに見ている。
「おほほほほ、私とシャムは初対面よ。でも誕生日が偶然同じ日なの。だから通ずるところがあるのかも知れないわね。食事はあとでご馳走するとして、その前にあなたたちに大事なお話をしなくてはならないの」
「大事な話をするんだって。イヴ、メモ用紙と鉛筆は用意したか?」
「そんなもんない」
「じゃあ、モエモエは持ってるか?」
「私も持ってないよ」
「それじゃ、モエモエ、オッパイを出して?」
「どうして?」
「モエモエのオッパイにメモするからすぐにブラジャーを外してくれるかな?」
「いや~ん、エッチ~!」
「じゃあ、イヴ、お尻を出して」
「アホ! そんなもん出すか!」
パチン!
「イテテテ……」
「あなたたち、騒がしいわね。ちょっと静かにして」
「すみません」
「ごめんなさい」
「私の話を全部頭に叩き込みなさい。でないとこれから先、苦労することになるわよ」
「は~い、分かりました~」
「ごめんなさい」
「きっちり憶えておきます」
その直後、チルは血相を変えた。
「うわ~! モエモエさん! 何をしてるの?ブラジャーを外して。オッパイがポロリと出ているじゃない! ちゃんと着けなさい!」
「だって、シャムがブラを外せって……」
「全くもう……しょうがない人たちですねえ。メモするよりちゃんと3人で憶えておきなさい」
「シャム! モエモエちゃん! チル女神さまの話をちゃんと聞きなさい!」
イヴが横からシャムとモエモエを叱った。
「イヴさん、あなたもよ」
「えへへ、やっぱり」
イヴはいたずらっぽく舌をペロリと出した。
ようやく話を聞く姿勢が整った3人に、チルはおもむろに静かな口調で語りはじめた。
「これからの旅はきっと厳しいものになるでしょう。しかしシャム、あなたは天から選ばれし者であり、生まれ持って『徳』を持っています。『徳』とは、人が身に得た品性や知性、生まれつき備わった能力、天性のことなのです」
「いやあ、それほどでもないけどね~」
「シャム、黙って聞きなさい」
横からイヴに注意をされる。
「そして旅の途中あなたの周りには多くの仲間が集まってきます。仲間はあなたの力となります。もう一度言います。旅は厳しいものとなります」
「……やっぱり行くのをやめようかな?」
「いまさら何を言ってるの、逃げちゃだめだよ、シャム」
今度はモエモエがたしなめる。
「私は、あなたたちが必ず困難を乗り越え宿敵を倒してくれると信じています。それからもう一つだけあなた方に大切なお話をします」
「うん、なに?」
相変わらずぞんざいな言葉遣いだが、そこには真剣な表情でチルの言葉に耳を傾けるシャムの姿があった。
「戦いは大変ですが勝利すれば良いこともあります。敵が宝箱を残してくれることがあるのです。宝箱の中には、薬、アイテム、お金、時には武器や防具が入っていることもあります。レベルの高い敵を倒すほど、宝の価値も上昇します。
また、戦いに休息と治療は欠かせません。先ず休息ですが、できる限り宿屋に泊まりましょう。敵が来ないので最も安全です。一晩眠ればHPが満タンになっています。宿屋がなければ仕方が無いので野宿しましょう。でも野宿だとHPが完全に回復しない場合がありますので注意してください」
「ふむふむ、できるだけ宿屋で泊まれだってさ(ニヤニヤ)」
「むむ? シャムはどうしてにやけているのかしら?」
モエモエがいぶかしく思った。
「え? 何でもないよ」
モエモエはシャムの表情を見てピンときた。
(こりゃ夜がヤバそうだ。ショーツを重ね穿きしておかなくては)
「次は治療です。戦闘で傷ついた場合は治癒系魔法のヒールで治しましょう。え~っと、イヴさん? あなたは神官でしたね? ヒールは使えますね?」
「はい、ピルは持ってませんが、ヒールは使えます~」
「うわぁ! さむいギャグ!(ブルブル) あのね、イヴさん。余計なことは言わなくていいのよん♪」
「あ、すみません。私としたことが」
「ただしヒールは1回唱えてもせいぜいHPの20%くらいしか回復しません。薬草や緑キノコがあればいいのですが、薬類がない場合は取って置きの方法があります。ただしそれは、女性にしか効果がありません」
「といいますと?」
イヴとモエモエは興味津々といった表情でチルの次の言葉を待った。
「ゴホン……え~、あまり大きな声では言えないので、もう少し私のそばに来て……」
シャムたちは女神チルを取り囲むように玉座周辺に集まり、耳を澄ました。
「とても言いにくいことなのですが、ここにいる勇者シャムには大変珍しい能力が備わっています。いや~ん、とても恥ずかしくて説明できないわぁ……」
「チルさま、どうして照れてるの?」
シャムはチルの変化を目敏く指摘する。
「ゴホン……実は、シャムのオチン〇ンは女性のHPを回復するさせる力を秘めているのです」
説明をしているチル自身が顔を紅潮させている。
モエモエは唖然とする。
「ま、まさか! 信じられないわ? じゃあ戦いで怪我をしても安心ってことね。ポッ……」
すでにシャムと性体験のあるイヴも驚きを隠しきれない。
「すごい! シャムのオチン〇ンにそんな能力があるなんて!?(なるほど、道理であの夜エッチ後、私がすこぶる元気になったわけか。おほほほ……)」
イヴがニヤニヤしているので、モエモエが思わずツッコミを入れた。
「どうしたの、イヴさん? 何かにやけてるけど……」
「あら、そう? 別に何もないよ」
シャムは自身の驚くべき能力を知り、感激で舞い上がりそうになった。
チルは話を続ける。
「女性を回復させる方法はとても簡単です。シャムのオチン〇ンを女のコのせま~いアソコの穴にグイグイグイっと挿しこむだけでいいんです。ああん、いや~ん♪ 恥ずかしいわ~♪」
「女神さま、そんなに興奮なさらないで」
イヴがやさしくささやいた。
「イヴさん! わ、私、興奮なんかしてませんよ!(プンプン) ゴホン。で、話の続きです。挿しこんでもらうだけなら50%の回復。さらにシャムの白いシロップを体内に注いでもらうと80%まで回復するんです。さらに! それだけじゃないんです! 女のコがイッちゃうと……何と! 100%回復するんです! だから女のコは同じ挿してもらうにしても、イった方が得ということになるんです。 うえ~ん、誰じゃ! こんな超恥ずかしい説明を私にさせるようなシナリオを書いた無礼者は!」
「女神さま、まあまあまあ」
「チルさま、そう怒らないで」
「ああ~、恥ずかしかったわ。皆さん、分かりましたか?」
「は~い! よ~く分かりました~!」
シャムたちは元気よく返事をした。
イヴは嬉々としている。
「気持ちよくなったうえに体力がつく。願ったり叶ったりだわ~」
しかしモエモエは頬を真っ赤にしている。
「あぁ、恥ずかしいな~。あたしそんなエッチなことは無理かも知れないわ……」
照れるモエモエにイヴはさらりと言い放った。
「モエモエちゃん、何も無理にエッチしなくてもいいのよ。薬草だってあるんだしさ」
「もう、イヴさんのイジワル~!」
チルが説明を終えると、シャムは突然胸を張ってイヴとモエモエに告げた。
「ふっふっふ、君たち。僕がいる限りもう心配はいらないよ。ふっふっふ、安心して怪我をしたまえ」
「バカモンッ!」
「好き好んで怪我をする人間なんているものか~!」
ボカスカ!
「いてててててっ! 暴力はやめろ~!」
「まあまあ、大事な仲間なんだから仲良くしないといけないわ。そうそう、シャムの特殊能力に何かよい名前を付けなくては」
「はっはっは~! それもそうだな。治療をする時に『エッチするか?』じゃ締まらないよな」
「そうね。露骨過ぎるのはよくないわ」
イヴがチルに尋ねた。
「チルさまはすでに何かお考えですか?」
「そうですね、オチン〇ンで女のコの怪我を治すので『チンヒール』はいかがかしら?」
「ぷっ、そのままじゃん!」
突然シャムが吹き出した。
「シャム、失礼よ! チルさま、とても良い名前だと思います!」
「私もそれがいいと思うよ」
イヴとモエモエが賛同した。
「じゃあ、決まりましたね! あ、それと……」
「はい?」
「この『チンヒール』は休息時には大きな効果を発揮しますが、戦闘中使うのは難しいと思います。戦闘中傷を負った場合は、治癒魔法(ヒール)や薬草などで治療しましょう」
「は~い!」
「それから。回復薬としては薬草を使えばよいのですが、地域によっては薬草が手に入らない場合があります。その場合、緑キノコを探してください。緑キノコは薬草の代用品になります」
「緑キノコですね、分かりました」
「薬草は男女ともふつうに食べてください。しかし、緑キノコの場合、男性は薬草と同様に口から食べればよいのですが、女性は下のお口から食べないと効果が現れません。その辺を間違わないようにしてくださいね」
「いや~ん、恥ずかしい~」
モエモエが一人照れている。
一方イヴは冷静に、緑キノコは非常用でありできるだけ薬草を使用したいと主張する。
シャムは女性たちが緑キノコを食べる場面を想像し、ニヤニヤと一人にやけている。
「この先、面白い光景が見れそうだな~」
「シャム、女のコがキノコを食べる場面は絶対に見ちゃダメだよ~!」
「ケチ。見せても減らないのに」
チルは言葉を続ける。
「薬草が人気のようだけど、緑キノコの効果は薬草の3倍あるんですよ。敵が強くなると傷が増えると思うのでおそらく薬草では追いつかないと思います。今のうちに下のお口で食べる練習しておいた方がよいと思います。太めのタンポンを装着練習するようなものと思えばいいのよ」
シャムが鼻の下を伸ばしている。
「じゃあ、早速今夜練習しようぜ~!」
「シャムには関係ないの~!」
「男子は見ちゃダメ!」
ガックリ……
柔和なチルの表情が急に険しくなった。
「最後に敵のことを少々お話しておきましょう。あなたたちが倒すべき最終の敵は魔王ルシファーです。しかしその前にムーンサルト城を滅亡に追い込んだメドゥーサを倒さなければなりません。メドゥーサはルシファーの参謀であり大変凶悪です。髪がすべて蛇という邪悪な姿を持つ女の魔物であり、見るものを石にする目を持っていますので、絶対に目が合わないよう気を付けてください。
メドゥーサのことをもっと知りたければ、トスカの森の聖者ムッヒに聞くと良いでしょう。ムッヒは人間ですが彼の博識は神に近いと言われており、神々も全幅の信頼を寄せています。きっと彼はあなた方の力になってくれることでしょう。ではくれぐれも気をつけて旅を続けてください。もし困ったことがあればいつでもここに戻ってくるのですよ~♪」
シャムたちはチルから教わった数々の知識や情報に礼を述べた。
「チルさま、色々と教えてくれてありがとう~! それじゃ、おいらたちはそろそろ行くよ!」
シャムたちの勇姿を見送る女神チルは、彼らの健闘を祈りつつ、一言詫びた。
「本当は私もあなたたちとともにに戦いたいのですが、大天使ガブリエルさまから委ねられたこの神殿を守らなければなりません。いっしょに行けなくて許してくださいね。でもあなたたちならきっと大きな目標を成し遂げてくれると信じています」
「チルさま、おいらたちは必ずルシファーやメデューサを倒してみせるよ~!」
「チルさま~、また色々と教えてくださいね~!」
「私もファイアボールをガンガン飛ばして敵を倒すわ!」
「あ、そうそう、モエモエちゃんにはこれを差し上げましょう」
モエモエは『ファイアストームの魔導書』を手に入れた!
モエモエが操る炎の魔法がレベルアップした!
「それからシャムにはこれを。そしてイヴさんにはこれを贈るわ」
シャムは『銀の剣』を、そしてイヴは『神官の剣』を手に入れた!
シャムたちはマロンクリーム神殿を後にして、一路、聖者ムッヒの住むトスカの森へと向かった。
砂漠を越えて、コッペの泉を過ぎるとトスカの森が見えてくるはずだ。
第3章「羽根兜の戦乙女」につづく
<メデューサとは?>
メドゥーサは元々人間の娘で絶世の美女だったが、女神アテナより美しいと周りに自慢をしたことでアテナの怒りを買い、魔物にされてしまった。髪は全て蛇、身体は鱗状という世にも恐ろしい姿に変わり果てた。そのおぞましい姿を人々から忌み嫌われ、現世で住むことのできなくなったメドゥーサは魔界へと移り住んだ。そしてついには魔界で強力な魔力を手にした。魔力の中でも最も恐ろしいのが、相手を石に変えてしまう『石化の魔法』と言われている。
現世を追われたメデューサの恨みは果てしなく募るばかり……
神話では最終的にペルセウスに滅ぼされることになるのだが、本編では果たして……