官能小説『惠 絶頂感』

Shyrock作




第9話「祥太の海外出張」

 さて、惠と俊介との不倫関係は半年を過ぎ、季節は晩秋になっていた。

 この時期になると惠は腋毛の処理をしないことが多かった。
 理由は皮膚が弱いためで、できれば一年中したくなかったが、さすがに夏の間は身だしなみもありきっちりと処理しないわけにはいかないのだ。
 秋から冬にかけて腋を処理しないのは夫の祥太も承知しており、処理しないことで浮気に結びつけられることはなかった。

 今の俊介を形成したのが彩先生であることから、いつしか惠の中に彩先生への独りよがりなライバル心が芽生えていた。
 惠は意識的に八月後半から腋の処理をしないようにした。
 その甲斐あって十月頃には、黒々とした腋の下ができあがっていた。
 ただし少しでも汗をかくと数時間後には酸っぱい匂いが漂い始めることがある。
 そのため社内では手首や耳の裏に香水をつけて匂いを抑えることにした。
 脇の下や首元等の匂いが発生している場所につけると、汗の酸化した臭気と香水の香りが混ざり合い、さらに不快な匂いに変化する惧れがありめ絶対に禁物なのだ。
 家では、そもそも祥太は性交時に腋の下に興味を示さず、ひたすら「おっぱい、おっぱい」と好みがごく普通であり気に留める必要がなかった。
 惠としては、自分の妻が浮気相手のために腋の下を伸ばしている……そんなことは微塵にも考えない祥太が少し哀れに思えた。

💓💓💓

 十月の後半から、祥太が海外へ一か月ほど出張に行くことが決まった。
 今までにも時々海外出張があり少し寂しい気持ちになっていた惠であったが、今回は俊介への心のときめきを抑えることができなかった。
 後ろめたさを感じつつも、そこには祥太の出かける日を指折り数える惠がいた。

 とはいっても、旅立つ前夜ぐらいはドラマチックな夜になるだろう、とほのかな期待を寄せていたが、祥太にそんな気配は微塵もなかった。
 一か月も妻に会えないというのに、前夜身体を求めてこない夫……
 すでに惠の気持ちは完全に夫から冷めてしまっていた。
 もちろんセックスだけではなく、これまでの日常における数々の出来事が積み重なった上でのことである。
 
 惠は俊介と出会う以前から、祥太について不満に感じていたことがある。
 それは祥太がマザコン気質であることだ。
 例えば、実家に帰れば母親と買い物に出たり、映画を見に行ったりするのである。
 20才以下の少年ならまだしも、すでに30才を過ぎた大人の男性のあるべき姿と言えるだろうか。
 惠は、目の前で『やっぱりお母さんの料理は世界一だよ』と言う言葉を耳にしたとき、涙が出そうになったことがあった。

 惠が俊介に心惹かれたのもは、決してセックスだけではなく、彼の性格的な面や魅力が大きかった。
『できる男』と言うべきか、会社幹部や顧客、あるいは役所の職員に対しても、臆することなくはっきりとものを言い、部下の責任であってもきっちりと自分で始末をつけることができる。
 だから職場のみんなから信頼され慕われている。
 つまりそんな俊介だから交際に発展する以前から惹かれていたといえる。
 初めてのとき、簡単に唇を許してしまった理由もそこにあった。

💓💓💓

 さて、祥太が出張に旅立つ日がやってきた。
 土曜日の夕方、惠が夫を空港へ見送った帰り、俊介に空港まで迎えにきてもらうことになった。
 たった今、祥太を見送ったばかりだというのに……もう別の男に抱かれるのだ。
 惠と俊介は高速道路に乗って街を離れ、とあるインターチェンジで降り、近辺のラブホテルに入った。

「脱いで……」

 俊介の言葉に従い、惠は服を脱ぎはじめた。

「昨夜はご主人と……したの?」

 俊介はビールの入ったコップを傾けつつ尋ねた。
 その視線はきっちりと惠の脱衣する様をとらえている。

「いいえ……それはありません……本当です」
「本当? 証拠はあるの?」

 俊介は微笑みを浮かべて聞く。

「しょ……証拠……は……これです……」

 明々と照明の灯った部屋で全裸になり、惠は立ったまま俊介の前で、花びらを広げて見せた。

「あ、洗ってません……昨夜は一度も……だから、夫の匂いも無いはずです……」

 うつむいたまま、惠はテーブルに片足をかけ、俊介の目の前に秘所をさらけだした。
 羞恥に頬を染めながら……
 身の潔白を、俊介の大好きな匂いで証明したかったのだ。
 俊介は身を乗り出し、惠の秘所に鼻を潜り込ませている。

「うん……分かったよ……新鮮な君の匂いがしてる……君の……白い汚れもある……ごめんね、恥ずかしい思いをさせて……」

 惠は信じてもらえたことがとても嬉しかった。



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