官能小説『惠 絶頂感』

Shyrock作




第8話「想い出の彩先生」

 惠と俊介は全裸で抱き合いながら、ツーショットダイヤルに電話をする。
 スマホのスピーカー機能を利用して通話をするので内容は筒抜けになってしまう。
 相手には申し訳ないが、通話を聞かれることにより、ひときわ興奮を覚える二人。

 テレホンセックスだとふだんは淑女の惠は一転して痴女に変身する。

「どう、おねえさんの陰毛……形が良くて素敵でしょう……見て」
『あぁ……僕のおねえさん、大好き、旦那さんがうらやましい』
「バカね……うちの人よりもあなたの方がずっと素敵よ……あぁ……して……お願い」

 俊介の気配を相手に悟られないようにしながら、若い男性とのテレホンセックスを楽しむ。
 惠は自分の中にこんな淫らな一面があるとは思ってもみなかった。
 俊介も、若い男性とのテレホンセックスを愉しんでいる惠に嫉妬して、より濃厚な愛撫を仕掛けてきた。
 惠としては、夫の祥太を裏切っているにもかかわらず、さらに俊介以外の男性と浮気をしている気分がして、不謹慎な背徳感から異常な興奮を覚えた。

 こうして惠と俊介のセックスは、より刺激的でディープな部分へと填まって行き、気が付くと惠は、夫との生活がひどくつまらなく感じるようになっていた。
 俊介とのセックスを経験した惠は、確実に自分が変化していることに気付いていた。
 祥太が求めて来ても、何となく断ってしまう自分がいた。
 しかし『これじゃいけない』と考え、仕方なく3回に1回ぐらいは応じていた。
 祥太とのありきたりな行為であっても快感もあるし絶頂感もある。
 一度、祥太が「おまえ……なんかエッチの時にすごい表情をするようになったな」
 とつぶやいたとき、惠は口から心臓が飛び出そうになってしまった。
 それもそのはず、俊介との関係が3か月ほど経過し、夏頃には週に一度身体を重ねる生活になっていたのだから、ごく自然に表情の変化があったとしても不思議ではないだろう。
 いつのまにか祥太との行為よりも頻度が高くなっていたわけだから。

💓💓💓

 以前、俊介が自身のことを『匂いフェチ』だと言っていた。
 具体的にいえば、女性の体臭、特に腋の下や陰部の臭気に興奮してしまうという。
 ところが俊介だけではなく、実は惠にも過去同じようなところがあった。
 高校生の頃、バスケットボール部のマネージャーだった惠は、憧れのキャプテンの汗の匂いが漂ってくると、どこかけだるいような、下半身がムズムズするような感覚に陥ったことがある。
 惠はふと思った。
 今にして思えば、惠自身も『匂いフェチ』だったのではないかと……
 だけど、潔癖で綺麗好きな祥太には、決して求められないものであった。

 惠が俊介に、『どうして匂いフェチになってしまったの?』と尋ねたことがある。
 俊介はそのいきさつを懐かしむように語った。

 俊介は小学生時代、空手道場に通っていた。
 先生だけでなく奥さんも女性空手家で、夫婦で道場を運営していたという。
 高校生以上及び一般部は先生が、小中学生は奥さんが空手を指導していた。
 奥さんは上〇彩に似た美人で、門下生は『彩先生』と愛称を付けて親しんでいた。
 二人とも昼間は学校の先生をしていて、ボランティアで空手を教えていた。
 俊介は、二人に子供がいないこともあって、大変可愛がられたようだ。
 しかし俊介が中学二年生のときに、先生が交通事故に遭って早世してしまった。
 その後も彩先生が道場を運営していたが、さすがに一般部の指導までは手が廻らず、道場は高校生以下専門になってしまった。
 俊介は高校一年生で黒帯を取り、他に高校生がいなかったこともあって、彩先生の助手のような形で子供たちを指導して、わずかながらも小遣いをもらっていたようだ。
 毎日の稽古のあと、道場の戸締りなども任され、準師範のようなポジションにいた。

 高校二年のある夜、俊介がいつものように道場の戸締りを終え、奥の座敷にいる彩先生に挨拶に行くと着替えの最中であった。
 女性は空手着の下にTシャツのような白のアンダーシャツを着る。
 彩先生も例に漏れず白のアンダーシャツだった。
 俊介は慌てて「すみません」と座敷の外に出たようだが、すぐに中に入るよう指示された。

 汗にまみれたアンダーシャツ姿の彩子先生は、突然……

「シュン君(俊介の当時の呼称)寂しいの……解って……」

 と、ささやきながら、俊介に抱きついてきた。
 当時まだ三十代後半の未亡人。寂しさに耐えられなかったのだろう。
 そのまま俊介は彩先生に愛の手ほどきを受け、大人になったのだった。
 女性空手家として鍛え抜かれ、腹筋も少し割れていた彩子先生の裸体は、彫刻を見るようであったという。
 そのとき見た黒々と茂った恥毛はことさら印象的だった。
 その日から俊介と彩先生は、稽古の後は毎日のように愛し合っていたという。

 空手の稽古の後だから、当然いっぱい汗をかく。
 そのときの彩先生の汗の匂いや、陰部の匂い……
 憧れの麗しい女性でも、匂うものはやっぱり匂う……そのギャップが魅力であり、俊介の脳裏に刻まれ忘れられなくなったようだ。
 すると俊介が、

「彩先生の匂い……僕……大好きです……汚れてても構わない、いっぱい嗅ぎたい」

 と、打ち明けたら、それから彩先生は、俊介を焦らすかのようにセックスのときに、最初に匂いだけを嗅がせるようになった。
 彩先生は次第にエスカレートしていき、四つん這いの体勢で、自分の手でお尻を開いたりするようにもなり、俊介もそこに漂う特有の匂いを夢中になって嗅ぎ、興奮を高めていたという。

 俊介が付け加えた。

「前戯の時は僕がMで彩先生がS、ペニスを挿入するや否や先生がMに変わった」とのことだ。

 また、彩先生の恥毛は結構濃いめだったようで、腋の下も冬場は黒々としていた。
 それも俊介のフェチに繋がっていったようだ。
 かくして17歳の俊介はアブノーマルな嗜好を持つ少年に成長していき、それから30年を経た現在でも当時と変わることなく匂いや恥毛に感じてしまうという。



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