官能小説『惠 絶頂感』

Shyrock作




第6話「雌の匂い」

 ひとしきりお互いを口で愛し合った後、惠は四つん這いの体勢を命じられ、後方から俊介が入ってきた。

「今日はちゃんと付けてるからね」

 しかしスキン越しにも俊介の逞しさは伝わってくる。
 祥太とのセックスでは味わえない野性的な『雄』の逞しさ。
 惠は後背位だと屈辱的なものを感じて、今まではあまり好まなかったが、この瞬間から『征服される悦び』を知ってしまった。
 人は実に得手勝手なものである。

 淫らな言葉を無意識に発してしまう惠。

「これ……これぇ……これが欲しかったのぉ……欲しかったの……ずっと……っ!」
「あぁ、いいかい? 感じる?」
「感じる! あぁ……すてき……感じるぅっ!」

 女性に生まれてよかった……そんな思いが惠の心に込み上げてくる。

「今度は上になってごらん……」

 俊介は肉柱を引き抜くと仰向けになり、惠はそれを花芯にあてがいおもむろに腰を下ろす。

「あぁぁっ……!」

 まるで身体の奥深くを電流が突き抜けるような快感が惠を襲った。。
 もう無我夢中だった。
 それでいながら、祥太の場合と比較をしている嫌な自分がいた。
 俊介が喜びそうな台詞……

「あぁ、主人のモノとは全然違う……比べ物にならない……俊介の方がずっと素敵っ……」

 そんな言葉を幾度となくつぶやいた。
 歯の浮くような三文ポルノのような台詞だが、惠としては事実なのだから仕方がなかった。

 やがて、惠が何度かの絶頂を迎えたとき、俊介も果ててしまった。
 惠はそのまま眠ってしまいたい衝動に駆られたが、俊介の部屋でいっしょにシャワーを浴び、化粧を整えて帰宅した。

💓💓💓

 自宅に入るときは罪悪感でいっぱいだった。
 さっきまでの幸福感がどこかに吹き飛び、一気に後ろめたさが惠を支配した。

(シャンプーの香りでばれないだろうか……?)

 不安がよぎる。
 意を決してドアを開けると、夫はすでに眠りについていた。

 リビングのテーブルには一人で飲んだ缶ビールと、カップ麺が残っていた。

(ごめんなさい……あなた……ごめんなさい……私、浮気をしてきました……)

 惠の目頭から涙が溢れ、リビングでしばらくうずくまっていた。
 しかしながらそれほどの罪悪感にさいなまれながらも、惠の身体は俊介を求めていた。
 心の片隅で祥太に対する罪悪感を抱えながらも、惠と俊介の関係が途絶えることがなかった。

 二人が愛し合うのは主に俊介が一人で暮らしているマンションであった。
 毎週木曜日は祥太が本社へ行き、帰りが遅く、ときには泊まってくることもあったので、その日は惠と俊介の愛し合う日になっていた。

 俊介の部屋ではアダルトビデオを見ることも多かった。

『人妻』『女子高生』『SM』……いずれも若干の嫌悪感を感じる程度で、さほど興奮するようなものではなかった。
 ところがその日見た『痴女』というジャンルは違っていた。
 ずばり言って惠の心の琴線に触れるものがあった。
 リビングの床に置かれたテレビを惠は食い入るように見ていた。
 画面には年下の男性を誘惑し、その身体をおもちゃにしている女性の姿が映し出されていた。
 セックスは男性が女性を翻弄する行為……そう信じていた惠の概念が崩壊し、異常な興奮をもたらした。
 鼓動は高鳴り、呼吸は荒くなり、その表情の変化を見つけた俊介は背後から惠を抱きしめた。
 衣服の上から乳首を探り当てられ、惠の呼吸はさらに荒くなる。

「へぇ~……意外だね、こういうの好きなんだ」
「好きっていうか……あぁ……何だか……」
「ふ~ん、いいんだよ……もっと興奮して」

 俊介は惠の右手を取ると、スカートの中へと導く。

「さぁ、正直になってごらん」

 惠の指を使ってショーツの上から花びらに押し当てた。

「そんな……だめ……です」
「いいから……素直に……ね」

 耳元でやさしくささやかれ、惠はショーツの上から自身の指を使って、恥ずかしい行為に耽った。
 俊介の手が添えられたまま、惠は指を動かす。

(これってオナニー? それとも私の指を使った俊介の愛撫?)

 そんなことを考えていると、惠は指先に熱い湿り気を感じ始めた。

「はぁ……あ……んっ……はぁはぁ」

 画面では女性が全裸で男性の顔に大きく足を開いてまたがり「お舐め!」などと命令している。
 以前、あるアダルト学問サイトで、男性の意思でその行為を行なう場合は『石清水』といい、女性の意思で行なう場合は『顔面騎乗』だと書いていたのを惠はふと思い出した。

「そう……正直に感じていいんだよ」
「はぁ……はぁ……」
「君だったら、どんな男の子をおもちゃにしてみたい?」

 とっさに惠の脳裏に浮かんだのは……

「こ、高校生……かわいい子」
「ふぅん、いやらしいなぁ……人妻が高校生をおもちゃにするんだ?」
「あぁ……いや……あぁ」

 指はさらに激しく湿り気の上からこすりつづける。

「何も知らない純情そうな坊やの顔に、あんな風にまたがるの?」
「そ、そう……です……あぁ……ぁ」
「でもさ……」

 と、その時、俊介は惠の手を掴むと、指先を彼女の鼻に持っていった。

「こんな匂い……高校生が嗅いだら……驚くんじゃない?」

 ツーンと、いやらしい匂いが鼻を突き、思わず惠は顔をそむけた。

「だめだよ、嗅いでごらん、自分の匂いだろ?」

 仕方なく惠は目を閉じて、自身の雌の匂いを嗅ぐのであった。



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