第3話「子宮検査用プローブ」

 惠は介助してもらってるという意識があったからか、嫌がる様子は全くありませんでした。

「今度は立って腹部の写真を撮りますので」

 私は先ほどまでの事務的な口調にまた戻りました。
 惠はふらつきながらもようやく機械の前に立ちました。
 立ち上がる時に一旦上げてしまったショーツを、私は再びスルリと引き下ろしました。
 二度目でもあったし、あえて了解を求めませんでした。
 その瞬間、惠は驚いて少し振り返りましたが、異議を唱える気配はありませんでした。
 だって医療行為の一環なのですから仕方がないですよね。

「はい、それじゃ撮りますよ。息をしばらく止めてくださいね」
「はい……」

 ボタンを押します。
 腹部の写真を撮りました。
 惠はその一枚で撮影がすべて終わったと思ったようです。
 レントゲンの体勢を崩そうとしたとき、私は意地悪な言葉を浴びせました。

「まだ終わってませんよ」
「え……まだ、終わりじゃないんですか……」

 惠は少しがっかりしたように見えました。

「はい、胸部と腹部はこれで終わりましたが、症状から考えて、念のためもう一か所撮らなければならないのですよ」

 惠は不安そうな表情で尋ねてきました。

「あのぅ……もう一か所ってどこですか……?」
「はい、熱と腹痛の原因は最終的にドクターの判断になりますが、症状から考えて……」

 私はあえて言葉を濁して直ぐに答えませんでした。
 医療関係者が言葉を濁すと、患者というのは良い方にはとらないものです。
 惠の不安を増幅させるには十分な効果がありました。
 惠には気の毒なのですが、患者は不安がらせることによって、少々恥ずかしい検査であっても協力的になるものなのです。
 次に行なう検査は惠が恐らく嫌がると想像できましたので、私は予め手を打ちました。

「はい、ではさきほど胸部のレントゲンを撮った時と同じように、そこに顎を乗せて両手を機械に回してください」

 惠は私の指示するがままに、胸部レントゲン時の姿勢をとりました。

(ふふふ、準備万端……)

 私はさきほどさり気なく準備しておいた子宮超音波検査用のプローブを手にしました。
 プローブとは超音波を行なうための小さな機器で、子宮用は細長い筒状をしていて先端が丸くなっています。
 いや、それを挿入さえる女性にとっては、大きく感じるかも知れませんね。
 長さは取っ手を含めると約二十五センチメートルあり、一見バイブレーターのように見えます。
 バイブレーターとの大きな違いは先端にあります。
 バイブレーターの先端はまるで男性の亀頭のような形をしていますが、子宮検査用のプローブはバイブレーターのようにエラが張っていません。
 カメラが埋め込んである関係で先端が心持ち膨らんではいますが、単に丸くなっているだけで全体的にはほぼ同じ太さをしています。
 端的にいえばスーパーに並んでるソーセージのような形といえるでしょうか。

 私は子宮検査用プローブを手にして、惠の背後でささやきました。

「症状から考えまして、子宮も調べておく必要があります。今から機械を挿し込みますのでしばらく我慢してくださいね。痛くないようにゼリーをつけておきますね。では脚を少し左右に開いてくれますか」
「え?え?子宮?子宮が具合悪いんですか?」
「いえいえ、それはよく調べてみなければ、まだ何とも言えません。原因を調べるためにできるだけ多くのデータを集めなければなりません。協力してくれますね?」
「は……はい……分かりました……」

 惠は発熱と腹痛でこの救急病院に駆け込んで来ました。
 先ずは急いで原因を調べなければなりません。
 今はそのための検査を行なっているのです。
 そんな状況の中で、惠は「ノー」と言う返事などできるはずがないのです。

「じゃあ、ショーツをとってください」

 私は朴訥な口調で告げた。

「え?全部……脱ぐんですか?」
「はい、そうです」

 惠はためらいながらも、ついに諦めて、ショーツを下ろし始めました。
 腰をもじもじとさせながらゆっくりと下ろす光景は、男の劣情をかき立てます。
 私の白い服の下では、大きくなっていたものが一層大きくそして硬くなっていました。

 ショーツはボックスの中に放り込まれ、惠は再びレントゲン機と向き合いました。
 そして、レントゲン機に顎を置き固定し、両手は機械を抱きかかえるように廻しました。
 本来ならば、胸部の撮影では無いため、惠をこのような窮屈な姿勢にさせる必要は無かったのですが、「ぶれないように」と言う最もらしい口実を作り、あえて窮屈な格好にさせました。


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