第36話“二種類の座位”
盛り上がってきたところで声を掛けられた俊介はいささか水を差された面持ちだった。 俊介「はぁはぁはぁ・・・な、なに?今いいところなのに」 球は悪戯っぽく微笑みながら尋ねた。 球「そんなに気持ちいいの?」 俊介「はぁはぁはぁ・・・もちろんいいけど・・・どうして?」 球「じゃあ、ありさと比べてどっちがいいの?」 俊介「そんなこと・・・」 球「ねえ、どっちなの?」 俊介「どうしてそんな意地悪な質問をするの?ふたりともいいよ」 球「うふ、『ありさ』だっていわないのね?」 俊介「もちろんありさはすごくいいよ。でも球だって負けないぐらいいいってこと」 球「にゃっ、そうなの?嬉しいな~」 俊介「おしゃべりしてないで、せっかくの機会なんだからもっと楽しもうよ」 球「あ、そうね。ごめんね」 『座位』は向かい合せで行為に至るため、お互いが真正面で顔を合わせることになる。 そのため会話も容易にできるのだが、行為中のおしゃべりは必要最小限にとどめるのがマナーというものだ。 第一おしゃべりが過ぎると気が削がれてしまうこともある。 甘い言葉を交し合うのは性感アップに繋がるが、相応しくない会話だと男は萎え、女は乾いてしまう場合があるので、余計なおしゃべりは控えるべきであろう。 ふたりの会話はまもなく途切れ、再び円滑な動きに戻った。 球が腰を上下動させるたびに、俊介も両手を副えて球の動きを増幅させた。 球が髪を振り乱して激しく躍動する。 悩ましい声は暗い部屋内に轟くほど大きなものとなった。 ところが意外にもすでに佳境を迎えていたありさたちの耳には届かなかった。 それほどありさと浩一ともども何も見えなくなるほど夢中になっていた。 浩一は正常位のあらゆるバリエーションでありさ攻め続けていた。 開脚もあれば、閉脚もある。 両脚を揃えて伸身もあれば、海老のように折り曲げる屈曲もある。 また角度を変えて、浩一がありさに対して垂直になる事もあれば、完全密着抱き合いっこスタイルもある。 ありとあらゆる正常位のバリエーションでありさを攻め続けた浩一だったが、ようやく体位を移行しようとしていた。 浩一「はぁはぁはぁ~・・・ぼちぼち体位を変えようか」 ありさ「ふぅふぅふぅ・・・今度はどんな体位なのかにゃん?」 ありさはすっかり溶け込み浩一とのセックスを愉しんでいるように思われた。 向かい側には本来の恋人がいるというのにだ。 ジメジメと湿った背徳感や罪意識は乏しく、スカッと割り切れる性格なのかも知れない。 浩一「じゃあ、次は座ってやろうか。膝の上に座って」 ありさ「はぁ~い~」 浩一は浅めにソファに座り、足を前に突き出し身体を反り返らせた。俗にいう「ふんぞり返り」スタイルである。 ありさは浩一と向き合って浩一の膝の上に座ろうとした。 浩一「いや、そうじゃなくてさ、ありさもオレと同じ向きで座って欲しいんだ」 ところが浩一は対面座位ではなく背面座位を求めたのだった。 第37話“三所攻め” ありさ「こう?」 ありさは丸い尻を浩一の方に突き出しゆっくりと腰を沈めた。 浩一はありさの腰の両側に手を副え怒張している物体へと導いた。 背面座位はふたりが慣れていないと意外と手間取ることがあるが、浩一の誘導でふたりは容易に結合することに成功した。 (グジュ・・・) ありさ「あっ・・・!」 見事に怒張したイチブツが桃のような淫裂にずっぽりと突き刺さっている。 その卑猥な光景はありさには見えないが、暗い中であっても浩一にはほのかにうかがえた。 (ズズズ・・・) ありさ「はぁ・・・」 浩一「どう?」 ありさ「うん・・・すごくいいよ~・・・」 浩一「今からもっとよくなるよ」 ありさ「もっと?」 浩一「そう、もっと」 浩一はそうつぶやくと上体を少し起こし、ギターを演奏するときのような格好でありさを包み込んだ。 左手でありさの左乳房を揉み始めた。 ありさ「あ・・・ああっ・・・」 続いて右手は下方に伸び薄い茂みに覆われた恥丘に差し掛かった。 浩一は茂みのさらに下方に指を伸ばし、丸い突起物を探り当てた。 丸い突起物を覆う包皮をめくり上げ中指で円を描いた。 ありさ「ひぃ~・・・そ、そこはぁ・・・」 浩一「ふふふ、この格好はね『三所攻め(みところぜめ)』と言って、女の子の敏感な箇所を同時に3箇所攻める体位なんだよ。もしかしてもう俊介に教えてもらってるかな?」 ありさ「やん~、俊介の名前は出さないでぇ・・・」 浩一「じゃあ、総攻撃いくよ」 ありさ「・・・?」 三所とは「乳房、クリトリス、膣」の3箇所をいう。 浩一は乳房を揉みしだきながら、クリトリスを擦り始めた。 更に結合した部分をグイグイと律動させ始めた。 鋭敏な3箇所を攻めることによって、女性に最高の歓喜を与え絶頂率80%といわれている幻の体位ではあるが、強いてこの体位の弱点を探すならば、体勢から考えてどうしても挿入が浅めとなってしまい、深い挿入を望む女性には若干物足りなさが残るという点であろう。 しかし少々結合が浅くても、鋭敏な三箇所を同時に攻め立てられて感じない女性の方が珍しいといえるだろう。 乳房(乳首)を揉まれ、クリトリスをいじられ、膣に男根が食い込む。 女性は目を閉じていたすと、まるで3人の男性から攻められているような錯覚に陥っても不思議ではないだろう。 ありさ「くはぁ~、すごっ!あぁん~、感じちゃぅ~、やんやんやん~、あぁん~!そこだめぇ~~~!!」 ありさは向かい側で励む球と俊介のことをすっかり忘れ、浩一の猛攻撃に早くもメロメロになっていた。 よがり狂う女の痴態を見つめ、激しい息遣いを耳にすると、男はいっそう元気になる一面がある。 汗だくになりながらも浩一は攻撃の手を緩めることなく三所攻めに精を出した。 ありさは感極まって泣き出す始末で、時折身体を弓なりに反らせるため、結合部は抜け危うくソファからずり落ちそうになる場面もあった。 ありさ「ふわぁ~、あぁん、すごい!やぁ~ん、しゅ、俊介、すごくいいわあああ~」 浩一「チェッ・・・俺は浩一だって・・・」 名前を間違えられた浩一はさすがにムッとして、ありさに一言告げた。 だが無我夢中のありさは自分が何をつぶやいたのかあまり分かっていないようであった。 浩一「ふぅふぅふぅ・・・ありさ、バックになって」 浩一もかなり昂ぶってはいたが、背面座位で射精まで至るのは些か難しいようであった。 第38話“松葉くずし” 浩一がフィニッシュに選んだ体位はバックであった。 ありさは浩一が言うとおりソファに両手をついて臀部を高々と突き出した。 ありさの場合モデルとしては適度に肉感的であり、男性からすればいわゆる“美味しい体つき”であった。 暗闇の中ということもあり、浩一としてはありさのあられもない姿を拝めないのはとても残念であった。 また、たとえ一夜だけであっても共に過ごした女に対して男は一種の情が湧くことがある。 それは決して移り気などではない。球が誰よりも好きな女性であることに変わりがない。 ところが恋人以外との情事が、時には恋人との関係を一層緊密にする刺激剤になることもある。 4人それぞれがこっそり浮気をするのではなく、公明正大に恋人以外と性行為を行なう。 そしてそれぞれの心に芽生えた罪悪感も、互いの罪で相殺してしまう。 だが1つ間違えるととんでもない方向に走り出す危険性も孕んでいる。 要はそれを行なう者の心の在り方が重要なのだ。 ありさと浩一組がフィニッシュの態勢へと進んだ頃、球と俊介組も『座位』から『松葉くずし』へと体位を変えていた。 座位でのけぞったり逆にしがみ付いたりと大きなアクションを見せていた球は、秘所はもとより内股までがぐっしょり濡れていた。 球と俊介もまた気持ちが激しく昂ぶり、すでにありさたちに注意を払う余裕などなかった。 ふたりは松葉が交差するように足をV字に開き肉棒を花弁に挿入した。 肉棒が反り返って膣壁と摩擦するので刺激は強くなる。 慣れたふたりであれば位置を少し調整するだけで、股間が突き出されて根元までの深い挿入が期待できるが、今のふたりにはそれはちょっと高望みかも知れない。 俊介「そう、もう少し右足を外へ出して」 球「こう?」 俊介「そうそう。じゃあ、入れるよ」 (ズリュン) 球「あぁ・・・」 決して深い挿入ではないが、ふたりの股間を交差させるシチュエーションは珍しく、球と俊介の興奮は半端なものではなかった。 男が身体を少し捻る姿となるため、真直ぐには膣道に入らない。 窮屈な状態での挿入であるがゆえに特定の箇所が強く擦れる。 その擦れた箇所が偶然性感帯であれば大儲けということになるが、いつもそう上手くいくと限らない。 (ヌチョヌッチョヌッチョ・・・) 球「にゃぁ~、あぁ~、何か変な気分・・・」 俊介「どう、気持ちいいかい?」 球「うん、うん、いい感じ・・・」 俊介は左手で球の長い右脚を抱え、更に奥の方へ突き進んでいく。 第39話“深い結合” (グニュングニュングニュン・・・) 球「くはぁ~、あぁん、すんごい・・・ああっ・・・こんな気分初めてぇ・・・」 球の場合、松葉が合っていたようだ。 いや、俊介の挿入角度が偶然ヒットしただけかも知れない。 そんな球の言動をもしも浩一が知ったなら、いくらお互い様とはいっても浩一は気分を害していたかも知れない。 想像以上の手応えの良さに気を良くした俊介は、さらに気を入れて球を攻め続けた。 俊介「はぁはぁはぁ・・・どうかな?こうして股間と股間を交差させる気分は?」 反応から推して球からどんな反応が返ってくるか凡そ分かってはいたが、俊介はあえて尋ねてみた。 男は「すごくいい」という答が返ってくることを密かに期待している。 俊介は松葉の形でピストンを繰り返していたが、途中から回転に切替えた。 (グルグルグルグル~) 球「あ・・・何?このかき回される感じ・・・ぃやん~・・・す、すごいわ~・・・」 激しく硬化した肉棒は球の中でわんぱく小僧のように暴れまわる。 これには球も堪らず激しくあえいだ。 球「くわ~あ~、はふ~、はぁ~ん、ああっ・・・あ・・・いけないわ、あっ・・・どうしよう・・・ああ~~~っ・・・」 (グルングルングルン~グルングルングルン~) 俊介「うっ・・・おっ・・・オレもだんだんヤバくなってきた・・・」 俊介はそうつぶやくと動きを止めて体位を変換した。 発射の危惧があるとは体位変換が1つの延伸手段なのだ。 『松葉くずし』から『正常位』への移行。 その間、俊介は挿入したイチブツを決して抜こうとはしなかった。 体位を変える時でも決して抜かない事が、ふたりの盛り上がりを維持させる最善の秘策なのだ。 例えバックから正常位のように極端に異なる体位移行であっても、一度挿しこめば抜かないことがベターといえる。 俊介は球の両膝を抱えてグググッと突き込んだ。 (ズズズン!) 球「はぁ~ん・・・」 挿入した瞬間、球の口から甘く切ない声が漏れた。 俊介はピストンだけではなく先ほどと同様に回転技を織り交ぜて球を攻め立てた。 球「にゃはぁ~ん、あぁん~、くわぁ~・・・もう、もう、もう~・・・」 俊介「はぁはぁはぁ・・・もう?もうどうしたの?」 球「もう・・・イクかも~・・・イキそう~・・・ああっ・・ああん、いやぁん~・・・」 球の呼吸が次第に荒くなっていく。 女は感極まってくると酸欠状態に陥るため、口を開け酸素を補給しようとする。 球「だ、抱きしめてぇ・・・」 球は両手を差し出し俊介に抱擁を求めた。 絶頂に達するとき、できる限り相手と身体を密着させたいと願うのは女の自然な欲望。 俊介は球の希望に応え、抱えていた両足を解き、上体を球の身体に重ね合わせた。 (ズニュズニュズニュ~!) 肉棒はさらに奥深く挿入された。 球「あぁっ・・・」 重なり合った状態での正常位。 最も緊密感のある体位ではあるが、男の動きはどうしても鈍くなってしまう。 それでも俊介は密着したまま腰を小刻みに律動させた。 第40話“ポルチオ攻め” 膣の最奥部には神秘の宮殿、子を宿す宮が存在する。 その少し手前には『ポルチオ』と呼ばれる女性最大の性感帯がある。 女性の性感帯の中ではクリトリスと双璧といわれているが、クリトリスとは違い外から目視できないためその存在が分かりづらい。 中にはその存在すら知らない男性もいるし、セックス時忘れられている場合も多々ある。 見えないため無視されたとしても不思議ではない箇所なのである。 専用バイブレーターを使用する方法はさておき、『ポルチオ』を目覚めさせるには、先ず深く挿入できる体位で絡むことが不可欠だ。 深く挿入した後、あるポイントを擦ると女性は泣きたくなるほど気持ちが良いのだ。 『ポルチオ』攻めは肉棒以外でも可能だ。 『ポルチオ』を刺激するには2本または3本の指をできるだけ奥まで入れ、指の先で女性のお腹の方向に突き上げれば良い。 コツはポイントを刺激するのではなく、子宮全体を揺らすようにすると効果的だ。 恥骨部分にあてた親指と、挿入している中指薬指とを挟むようにし、かきまぜるように揺さぶるのが秘訣なのだ。 (ズン!) 俊介は肉棒挿入で球の最奥部を攻めた。 攻めると言っても通常の縦ピストンではポルチオを目覚めさせることは困難なので、最奥部に触れた瞬間、俊介は先端を激しくスイングさせた。 (クリュンクリュンクリュン!) 球「ひゃあ~~~!なんなの!?この猛烈な感動は~~~!?」 俊介は球の問いかけには答えず、ひたすら腰をグルグルと回転させた。 (クリュンクリュンクリュン!クリュンクリュンクリュン!) 球「うおぉ~~~!すごいわ~~~!わ、わたし、どうしよう!?あっ、あっ、あっ、どうしよう!?」 (クリュンクリュンクリュン!クリュンクリュンクリュン!) 球「あうっ、くっ、ううっ!あっ、いやっ、あぁ、だめっ!イ、イク・・・イッチャいそう!」 (クリュンクリュンクリュン!クリュンクリュンクリュン!) 俊介の肩に廻した腕に力がこもる。 凄まじい力で俊介にすがりつく。 球「ああっ、ああっ!!イク、イク、イッチャうよ~~~~~~~~~!!!!!」 球は無意識のうちに爪を立てた。 俊介「いてっ!」 球「イクぅ~~~~~~~~~~~!!!!!」 絶頂に達した球は俊介の下で身体を痙攣させて悶えた。 もしもこの光景を浩一が目撃していたら、恐らく激しい嫉妬に燃え狂ったであろう。 公然浮気なのだからお互いが認め合わなければならないのだが、頭では理解できても感情というものはそうたやすくいかないものだ。 それでも自分の彼氏、彼女にはできるだけ気を入れて欲しくない、と言うのが彼らの一致した本音であった。 簡単にいえば自分以上に燃えないで欲しいのだ。 そんな自己中心的ともいえる思考が4人の脳裏には渦巻いていた。 ところがそれは冷静なときの思いであって、絶頂に達するときには全く眼中になかった。 およそ『性』とは人間の理性を吹き飛ばしてしまうほど猛烈なものなのかも知れない。 前頁/次頁 |