イヴ |
ありさ |
第2話 「イヴ、声をもっと潜めて……」 「あぁん、いいじゃないのぉ、少しぐらい聞こえたって~。ありさちゃんだって、もう子供じゃないんだし」 「いや、そういう問題じゃ。とにかくまずいってば」 「ねぇ、あなたぁ、乳首吸ってよぉ~」 「お、おい、ちょっと声が大きいよ、もっと声をちっちゃく」 隣の部屋で寝ているありさとオレ達の間には戸襖しかない。 最近いくら住宅の遮音性能がよくなったと言っても、薄い戸襖の向こうに音が漏れないわけがない。 オレは音をさせないように気配りしながら、できるだけ大人しいめに乳首を慈しんだ。 吸うと「チュウチュウ」と音が出るので、舌先でチロチロとかするように乳首を舐めてみた。 「あぁん、それ、いいわぁ~。強く吸うのもいいけど、その弱々しくかするのも、なんか、かえってもどかしくて、すごく感じるのぉ~……」 「おい、もっと静かに。ありさちゃんが目を覚ますといけないし」 オレは焦った。 ありさはもう寝たかも知れない。 いや、慣れない寝床のせいでなかなか寝付きにくくて、まだ起きているかも知れない。 どちらにしても声が漏れるとまずい。 ところが、イヴはさほど気にしている様子がなく、オレの繰り出す愛撫にいつも以上に強い反応を示す。 「あぁ……、あなたぁ、そこ、いいわぁ、あぁんもっとぉ~……」 (もしかしたら、イヴは自分達の睦言をありさに聞かそうとしているのではないだろうか……) ふとそんな思いが頭をよぎったが、それも束の間、いつしかオレの欲望も高まりをみせ、イヴとひとつに重なり合っていた。 (ズンズンズンズンズン……) 「あっ、あっ、あっ、あっ、あぁ、あなたぁ、いいわぁ~……ああっ、あああっ……あっ……」 オレはもうイヴを諌めたりはしなかった。 「もっと声を静めて」と、イヴに言っても無駄だと思ったのと、オレ自身の中にも、「ありさに聞かせてやれ」という思いが沸々と滾り始めていたことも事実だった。 若い独身女性が襖1枚隔てた向こう側の、先輩夫婦の嬌声をつぶさに聞かされたらどんな反応を示すだろうか。 若い肉体はすぐさま反応し、もしかしたら悶々として眠れないかも知れない。 などと意地悪で残酷な想像が頭を駆け巡った。 「あああっ、す、すごく、あっ、あっ、あっ、すごくいいのぉ~、ああっ、そこいい、すごくいいっ、ああっ、ああっ、ああっ……」 イヴは喘いだ。 さすがに声は幾分抑え気味であったが、人は心拍が上がると「はぁはぁ」という吐息が無意識のうちに大きくなっていく。 特に運動中は抑えようとしてもなかなか抑え切れるものではない。 ましてや喘ぎ声は少々殺しても意外と第三者の耳につくものだ。 オレは体位を正常位から後背位に移行し、さらにイヴを攻め続けた。 オレが「ズン」と突き込むたびに、イヴは「あぁ」と熱い喘ぎを漏らせる。 (ズン、ズン、ズン……) (あっ……あっ……あっ……) (ズン、ズン、ズン……) (あっ……あっ……あっ……) オレの腰のメトロノームにイヴはリズムを合わせるかのように切ない声を漏らせる。 いつしかふたりが刻むリズムも一段と激しさを増し、やがてイヴは身体をピクピクと痙攣させ始めた。 「あっ、あっ、あっ、あああ~、あなたっ……ああっ、だめ、わたし、イクかも……ああっ、ああっ、ああああああっ、イ、イキそう……ああああああっ、もうだめ、いっちゃう、ああっ、いっちゃう、あああああああああああああああ~~~……」 イヴは精一杯声を抑えようとはしていたようだが、堪え切れなくて、ついには女性特有のあのイキ声を奏でてしまっていた。 オレもつられて危うく声を張り上げそうになったが、歯を食いしばってどうにか声をとどめることができた。 BACK/NEXT |