第七話“媚薬とのいくさ” 男の言葉は的を得ていた。 秘裂から槍が引き抜かれた後も身体のほてりは治まるどころか、逆にひどくなり「熱い、熱い」と訴え続け、観衆からも一目で分かるほど息遣いが荒くなっていた。 さらに、陰部の痒みは尋常なものではなく、もし今磔台に拘束されていなければ体裁構うことなく掻きむしりたいほどであった。 全裸で腰をもじもじさせ懸命に痒みに耐えるありさ姫の姿が、黒岡たちの偏執じみた加虐心をひときわ煽った。 ありさ姫は苦悶の表情を浮かばせ、その白い肌には珠のような冷汗を滲ませていた。 「あぁ……あっ、あっ……ああっ……」 黒岡は床机から立ち上がり磔台近くまで歩み寄ると、痒みに耐えるありさ姫にわざと大声で尋ねた。 「姫よ、もしかしていづこか痒いのか?」 「ううっ……うぐぐっ……」 ありさ姫は憤怒と恨みの形相で黒岡を睨みつけた。 「いづこが痒いのか言ってみよ」 「くっ…………」 「首か?背中か?痒いところを言ってみよ。処刑中ではあるが姫のことなれば格別に役人に命じて掻いてやっても良しぞ」 「いづこも痒くなどなしな」 「ふふふ、本当にそうかのぅ?あまりに腰をくねらせるものなれば女陰でも痒くなってきしやと思ったがのぅ。違っておったか。わはははは~」 「うううっ……」 やがて媚薬はさらなる効果を発揮し始めた。 ありさの額にあぶら汗が光る。 「ううっ……か、かゆい……」 「ほほう、ついに痒いと申したな?もう我慢しきれなくなってきたか。姫、もう一度尋ぬ。いづこが痒いのじゃ?」 「くっ……さることは申せぬ……」 「正直に言ってみよ。女陰ならざるや?」 「ううう……うぐっ……か、かゆい……」 ありさ姫の腰の振り方が先程より激しくなってきた。 もう我慢の限界なのだろう。 「ひぃ~~~!!か、かゆい……!!ううう~~~~~~~!!」 「はっはっは~、かなり薬が効きて来たようじゃのぅ。ありさ姫、女陰が痒くて堪らなくなってきたのじゃろう?」 「ああっ……いったいあの壷に…あの壷にいかなる薬を入れしや……?」 「それは良き質問じゃ。壷の中の薬とは、わずか塗るのみで激しき痒みをもよおし、やがては男が欲しくて堪らなくなるじゃ。わははははは~~~」 「お、おのれ!黒岡めぇ……卑怯なる真似を!」 「ほざけ!恨むならば無能なうぬの父を恨むべし!」 「それは聞き捨てならぬ言葉!父の悪口は許しはべらずぞ!」 「さして大口を叩いていらるるもあとわずかじゃ。まもなく『女陰を擦って欲しき』と泣きて頼むじゃろうて。ほえ面が楽しみじゃあ!がははは~!」 「くっ!なんと無礼な!卑劣なる男め!」 散々辱めの言葉を並べ立てた黒岡は、すたすたと元の床机のある方へと戻っていった。 ありさ姫の身体に媚薬による新たな変化が現れ始めていた。 ほてりが更にひどく燃えるように熱くなり、更には花芯がびっしょりと濡れそぼり、痒みと相まって肉壷を掻き毟りたいような心境に陥っていた。 それでもありさ姫は歯を食いしばって必死に耐えた。 誇り高き自尊心がありさ姫を懸命に耐えさせたのだった。 それでも激しいほてりと痒み、それに強い性欲は怒涛のように押し寄せありさ姫を苦しめた。 「うううっ……くぅっ……!あ、熱い!か、かゆい!ひぃ!うぐぐぐぐぐっ……!!」 その頃、柵の向こうが興奮の坩堝と化していた。 ありさ姫のあられもない姿に鼻血を垂らしてぶっ倒れる若者から、大勢の前だというのに褌の紐をほどき怒張した肉竿をしこしこと擦る者まで現る始末であった。 「うわ!汚ねい!こっち向いて擦るなよ!」 「こらぁ!おらにぶっかけるとぶっ殺すぞ!」 大笑いする者、嘲笑する者、眉をひそめる者、逃げていく者…… ぴんと張りつめた緊張の糸がほんの一瞬だがぷつりと切れ、刑場とは思えないような穏やかな空気が流れた。 だがそんな空気もありさ姫がもらす悲痛な声にすぐにかき消されてしまった。 観衆の目は再びありさ姫に注がれた。 「痒みと疼きが続くとどうなるんじゃ?」 「んだな、おらにはよく分からんが、狂い死にするんじゃねえべか?」 「そうか。かわいそうになあ」 「あんなきれいなお姫様に『べっちょ掻いてくれ』と頼まれたら、おら何をおいても絶対にえぐよ」 「わっはっはっは~、そりゃ、おらも同じだべ」 「おらぁ、あのお姫様がだんだん哀れに思えてきた……」 「んだなこというと役人にしょっ引がれるぞ」 「だけど何で今槍責め休んでるんだんべい?」 「挿し込まないで放置しておく方がかえって堪えるからではねえべか」 そんな観衆のざわめきをよそに槍責めが続行されようとしたとき、再び黒岡が立ち上がった。 「おい、余にその槍を貸せ」 「はっ?ははぁ!」 執行役人は思いも寄らない城主からの下知に一瞬戸惑いを見せたが、すぐさま張形の着いた槍を黒岡に手渡した。 前頁/次頁 |