ありさ エゴイストな春 改

Shyrock作





第2話「ありさの縦線」

 初デートは一発限りの試験のようなもの。今後ふたりの恋が発展するかどうかは、初デートにかかっているといっても過言ではないだろう。
 トオルは事前に飲食店を予約するなど準備も怠りなく、当日も積極的にありさに話しかけてきた。ありさに好意を抱いていることが手に取るように一目で分かる。
 ありさもまた「トオルくんってもてそうだよね」「とってもオシャレなんだね」等と積極的に褒め言葉が飛び出し、さらには「今、彼女はいるの?」とズバリ切り出してきた。これはありさが興味を示している証拠といえる。
 二人の口から「楽しいね」といったポジティブワードも飛び出し、どちらからも「もう帰ろう」という言葉がなかなか出てこない。
 食事の後、バーに寄って少し帰りが遅くなったが一回目のデートとしては大成功といえる。

 その夜、すかさずトオルからLINEが入った。

『ありさちゃん、今日はありがとう! すごく楽しかったよ! また行こうね!』

 短い文言だがトオルの気持ちが十分に滲み出ている。

『私の方こそめちゃ楽しかったよ! また行きましょう!』

 その後すぐに二度目のデートの日がやってきた。
 しかしトオルから告白はなく、キスをしてくる気配もない。
 ありさは思った。

(女性慣れているように見えるけど、本当は真面目な人? 初デートからホテルに誘ってくる『カラダ目当て見え見え男』が過去いたけど、、トオルはがつがつしてないものね)

 デートも3度目になってようやくありさはトオルのマンションに誘われた。都内の1LDKに住んでいるという。
 黒のカットソーとチェックのラップスカートといういでたちで颯爽とマンションに向かうありさ。

 トオルはふだん掃除が滞りがちだが、今日ばかりは奮闘した。
 床は塵一つなくピカピカに磨き込んだ。
 ありさのために地元で有名なケーキ屋に行きケーキを二つ買った。
 購入した後、ありさはモデルをしているので甘い物は控えるかもしれない、とトオルは思ったがすべて杞憂に終わった。

「わあ、美味しそう~。いただきます~」
「よかったよ、ありさちゃん。買った後でもしかしたらありさちゃんは食べないかもしれないと思ったんだ」
「よく食べてよく運動をするのが、私のモットーだから」
「ありさちゃん、スタイルいいものね」
「ありがとう~。でもそんなに痩せてないよ」
「よくいうよ。かなりスリムじゃない」
「私ね、『ゆる腹筋女子』を目指しているの」
「『ゆる腹筋女子』ってなに?」
「モデルだけじゃなくて、世間の女の子は今、こっそりとお腹を鍛えてるの知ってる?」
「いや、知らない。腹筋を鍛えるっていいことだよね」
「でもね、バキバキに割れた腹筋……じゃなくて、お腹にすっと縦線が入った『ゆる腹筋』が目標なの」
「バキバキよりも柔らかい感じだし、より女性的な感じがするよね」
「そうなの。それが目標なの。ただ痩せているだけじゃなくて、引き締まった身体、それが『ゆる腹筋』なの」
「かなり引き締まってるように見えるけどね」
「少しだけ縦線入ってるよ」
「縦線って聞くと、別の縦線を想像しちゃうなあ」
「トオルくん、意外とエッチなのね」
「意外じゃなく、正真正銘エッチだよ。じゃあ、お腹の縦線ちょっとだけ見せてくれる?」
「いいけど、ちらっとだけだよ」
「うん、ちらっとでいい」

 ありさはカットソーの裾をほんの一瞬だけたくし上げた。
 細くて白い腹部が少しだけ覗けたが、腹部の縦線まではよく見えない。

「そんな一瞬じゃ分からないよ。ちゃんと見せてよ」
「でも恥ずかしいなあ」

 初めはもじもじしていたありさだったが、今度は裾をたくしあげるとそのまま下ろさなかった。
 トオルはうっとりとした表情でありさの腹部全体に見とれている。 

「おおっ! ありさちゃんって肌が白いしきれいな肌をしているね。それにウェストがめちゃ細い」
「ねえねえ、お腹の縦線を見るんじゃなかったの? そんなあちこち見ないでよ」

 ありさの言葉どおり腹部にはくっきりと美しい縦線が走っている。
 トオルからすれば今の状況はまるでへそ出しコーデを間近で見ているような、コケティッシュな魅力に溢れていた。

「見事だね、きれいに縦線が走ってる」

 じっくりと女性の腹部を眺めることなど滅多にないトオルはつい見惚れてしまった。

「もういいでしょう? そんなにずっと見つめられたら恥ずかしいよ」
「ねえ、少しだけお腹を触ってもいい?」
「うん、いいけど……」

 トオルはありさの腹部に手を伸ばした。

「どう……? 硬い?」
「うん、見た目は柔らかそうなお腹だけど、触ってみると案外硬いね」
「でしょ?」
「うん……ありさちゃんのお腹を触ってたら、急に気分が高ぶってきた……」

 トオルはカットソーの腹部から潜り込ませた指を、さらに胸元まで滑り込ませた。

「えっ……そんなっ!?」



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