ありさ エゴイストな春 改

Shyrock作





第1話「合コン頭数合わせのはずが」

 現在ありさは大学3年生、彼氏イナイ歴6か月。大学生のかたわら、ギャルファッションブランド『エゴ〇スト』のモデルとして人気を博し、着用した服やアクセサリーが瞬く間に売れてしまうほどである。
 それでも驕ることなくいつも気さくでごく普通の女の子なのである。
 日頃ありさは、オフショルダーやショートパンツを愛用し、胸元・背中を大胆に開いて見せたデザインなどセクシーな肌見せが多い。

 桜も散った4月の後半、白のチュニックにデニムのショートパンツとカジュアルないでたちで街を颯爽と歩くありさ。
 友人の美和から連絡が入った。

『ありさ、今度の土曜、空いてる?』

 美和の問いに、軽く『うん、空いてるよ』と答えてしまったありさ。
 あとで合コンと聞いてがっかりする。
 断ろうとしたら、まもなく美和から電話がかかってきて、

「あ~良かった~。これで人数揃ったわ」

 と喜ばれてしまって、断れなくなってしまったのだ。
 頭数要員と分かり、ちょっとご機嫌ななめなありさ。

「くそ~、騙されたあ~」

 ありさは自然出会い願望派であり、お膳立て恋愛の合コンがあまり好きではなかった。
 ところがどうだ。とかく人生はどう転ぶか分からない。
 ありさは頭数合わせの合コンで、なんと理想の男性と出会ってしまったのだ。

 爽やかなイケメンであり、会話をしているだけですごく癒され、明るい気分になれる。
 ありさが最初に受けた印象であった。
 
「社本トオルです」
「トオルさんね、立花美和です」

 すかさず美和がたずねる。

「トオルさんって専攻は何ですか?」
「医科学専攻です」
「医学部ですか? すごいな~! 将来はお医者さんですね?」
「はい、将来は開業医になりたいと思ってます」
「私、親戚にお医者さんっていないからすごく興味があるんですよ」

 トオルが美和と会話するのを、ありさはじっと聞き入っている。

「敬語は使わなくていいよ、僕もタメ口でしゃべるから」
「はい、そうします」
「でも結構長い間、病院でがんばらないといけないんだよね」
「そういえば開業医に若いお医者さんってあまり見たことないよ」
「医院開業の平均年齢って四十歳ぐらいだからね、意外と遅いんだよね」
「そんなにかかるんだ。結構大変だね」
「勤務先の病院で一定期間のキャリアを経たあとに開業するので、かなり年数がかかってしまうんだ」

 美和はリッチな男性が一般的に好む話題を選び、海外旅行や高級車などの話題に振ってみたが、どうも盛り上がらない。
 それもそのはず。トオルは金持ちの御曹司が好むような趣味には興味がなく、いたって平凡な趣味嗜好の男性なのだ。
 美和が提供した話題は見事にすべってしまった。

 そんなとき美和に助け舟を出そうと、なにげに料理の話題を提供したありさに、トオルが興味を示した。
 横浜の実家で母から料理を教わったありさはかなり自信があった。
 実はトオルが料理の上手な女性が好きだったことで話題がピタリと填まったのだった。
 トオルはありさと嗜好が一致したことで、その後の会話は大いに盛り上がった。

「ありさちゃんの服装っていつもそんな感じなの?」

 ありさのその夜の服装は可愛い系で、オフショルダーのトップスとフレアスカートでまとめていた。
 またワンポイントの赤いリップスはきっちりとは塗らず、グラデ―ションにすることで愛らしさが一段とアップしていたことが、トオルの目を惹いた。

「ふだんはもっとカジュアルなの」
「へえ~、たとえばどんなの? Tシャツにデニムとか?」
「うん、デニムのショートパンツが大好き」
「そうなんだ。今着ているファッションとかなりギャップがあるね。見てみたいな~」

 トオルがありさに執心であることを察した美和は、気を利かせてトオル以外の男性と会話を始めた。

 ありさは爽やかな印象のトオルに好感をいだいた。
 硬すぎない、かといってチャラくない。やさしくて話のセンスもよい。話していて肩が凝らないし、とても楽しい。
 トオルもありさのことが気に入ったようだ。
 数合わせで参加したはずの合コンで、何と他の合コン期待女子を差し置いて、頭数合わせのありさが一人の男性の心をを射止めてしまったのだ。
 その後トオルとLINEのIDを交換しその夜は閉会となった。

◇◇◇

 その夜、合コンが終わって2時間後トオルからLINEが入った。
 鉄は熱いうちに打てということわざがあるが、トオルの行動は実に迅速であった。
 合コン後のタイミングとしては絶妙といえる。

『ありさちゃん、今日はありがとう! 君と話ができてすごく楽しかったよ! もっと君と話がしたいのでまた飲もう~!』
『こちらこそありがとう。すごく楽しくてあっという間に時間が過ぎちゃったよ! また行きましょう~!』

 まもなくありさに返信が届いた。

『さすがモデルさんだけあって、オシャレ感が半端なかったよ』
『ありがとう! でも褒め過ぎ~』
『ありさちゃんともっと話したかったなあ』
『私も~』
『そういえば、ありさちゃんどこに住んでるんだっけ?』
『自由が丘なの』
『東急線沿線だね。東京医療センターがあるね』
『よく知ってるね。入院したことあるの?』
『違うよ(笑) 少し前に医療研修で行ったんだ』
『あっ、そうか。医者の卵さんだものね。えへへ、ごめんね』

 合コンの場でうまくいってもいかなくても、その後大事なことはLINEやメールをするタイミング。
 気になる女性と距離を縮められるかどうかは、その後のフォローが決め手となる。
 せっかく女性といい雰囲気になれてもその後のフォローがきちんとできていなければ、その出会いは無駄になってしまう。
 その点、トオルはそつがなかった。
 ありさも合コン時トオルに対し好感を抱いていたので、彼の誘いを二つ返事で承諾した。
 やがて数回にわたる「LINE」の交換でありさとの距離を縮め、ついにデートへと漕ぎつけた。



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