第2話

お互いに口を離すと、彼は私の胸に両手を伸ばし、乳房を下から支えるように持ちながら揉みはじめる。
…上手い。
この人、こういうこと素人じゃないよ。
旦那のあの乱暴で投げやりな愛撫に比べて、いま目の前にいるこの男性の何と心地良くて優しさ溢れることか。

「大きいんですね」

ここでようやく男性が口を開いた。
うん、痩せ型だけどこれでもDはあるんだ。
世間のそこらのオンナに比べても立派なオッパイだって自信はあるんだぞ。
少し自分が誇らしくなった。

「ぅん…」

私の答えは、返事をしたとも喘ぎ声とも取れるような曖昧なものだった。
本当に気持ち良くて、夢見ごごちだったから。
私、今まで実感したことがなかったけど、オッパイ揉まれるのって、こんなに気持ちいいんだな…。
何だか自分がこれまでの人生を損してきた気がした。

私の乳首は温泉でのぼせた所為もあり、赤く色付いてピンと立っていた。
そんな乳首を、敏感になっている乳首を、男性はくちびるで包み込み、舌を転がし始めた。
もう一方の乳首は、指でコロコロと転がされた。

「うあんっ!!」

電撃が走ったかのようなあまりの快感に私は思わず大きな声をあげ、ふと我に返った。
ちょっとちょっと、ちょっと待てよ。
ここ一般の混浴露天風呂なんだよ?
ここでこんなことしちゃってたら、お客さん来ちゃうじゃん!
それどころか、旦那が私の戻りが遅いのを気にして戻ってきたら?

いやいやいやいや、ダメダメダメダメ!!
夢見心地が一気に冷めた。
早く戻らないと!

そのようなことを瞬時に考え、私はザバァっと音を立てて立ち上が…。
立ち上がれなかった。
男性に強く抱き着かれてしまったからだ。

「あ、あのっ、私、人を待たせているんですっ!!こんな、こんなことになって本当にごめんなさい私これで失礼しま…」

「心配しなくていいですよ。ここには誰も来ないから」

え?
何で?
何でそんなことがアンタに分かるの?
ちょっとそんなことより早く行かなきゃ。
強引に男性の手を払いのけ背を向けると、今度は手を後ろから掴まれた。

「ちょっと、ごめんなさい、本当にだめなんですその、離してください」

懇願する私に、男性はなおも落ち着いた口調で諭すように言った。

「大丈夫なんですよ。あれ、入り口の看板見ませんでしたか?ここは14時~16時までいったん清掃中になるんで、その間は戸が閉まって誰も入れなくなるんですよ」

え?
そんなこと、書いてあった?
困惑する私に、男性はなおも言葉を続けた。

「だから、誰かが入ってくる可能性はないんです。それが貴女の旦那さんでもね。それと14時以降については、既に入っているお客様が退出するまで清掃は始めない決まりですので、ここはいま、私と貴女しかいないんですよ」

なあんだ、そうなんだ。
…って、そうじゃなくて!!
この人、何でそんなにここの事情に詳しいの?
それに、私が旦那と来てるとか何で知ってるわけ?

「ごめんなさい、私やっぱり…」

「旦那さんのところに戻りますか?」

(……………。)

私は観念したように、もう一度湯船に腰を下ろした。
そうだよなぁ。
申し訳ないけど、旦那といまここにいる男性とでは段違いだ。
男性がいつから私を狙っていたのか分からないけど、優しい感じだし、紳士的だし、それにエッチも上手そうだ。
旦那が戻ってくる可能性がないのなら、いいんじゃないか?

私は返事をする代わりに、もう一度目の前の男性にキスをした。
男性は、2度目のディープキスでこれに応じた。

そして、今度は温泉の中でじゃれ合うようにお互い抱きしめ合い、男性はあるときは正面から、あるときは後ろから私のオッパイを揉みしだいた。
至福だ…。
こんな至福なことが、この世にはあるんだろうか…。
あぁ、このままずっと時が流れなければいい。

ふと、男性が水泳の潜水のように首をすくめて温泉深くに沈んだ。
その次の出来事は一瞬だった。

(!!!!!!!!!!!!)

男性の両腕が私の両脚太ももを捉え、開脚されて丸出しになった私の一番敏感なクリトリスに舌先を這い回らせ始めたのだった。

「うあ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!いいいいいぎやゃぁぁぁぁっ!!!」

それは快楽なんて生易しい次元の衝動ではない。
声が誰かに聞こえるかもしれないとか、恥ずかしいとか、この人本当は誰なのとか、諸々の思考すべて宙の彼方に飛んで星となった。
精神が弾け飛んだ私の口から出るはただ絶叫のみ。
頭が真っ白になるとはこういうことなのだと私は知った。

次の瞬間、私は湯船に仰向けのまま、四肢の力すべて抜け、脳の中空っぽ、抜け殻のように水面にぷかぷかと浮かんでいた。

(私、イッちゃったんだ…)

イクのは初めてではない。
旦那とのエッチでは一度もないが、結婚前は男性経験ゼロではないし、そんな中で絶頂経験は何度もしてる。独りエッチだってする。
だけど。
オッパイたくさん揉んでもらい、身体を寄せ合い愛撫してもらって気持ちが高まっていたからなのか。
後から思えば、こんな風に丁寧にされたことって一度もない気がする。

今まで私が思ってきた「イッた」は、もしかしたらそうじゃなかったかもしれない。

そう思ってしまうくらい、この一瞬の絶頂は強烈だった。
太陽をレンズ越しにまともに見たような極光に、私の脳は焼かれた。
もう旦那も、いや私自身の人生も、どうでもいい。
この一瞬に勝ることなんて、きっとこの世にはない。


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