第11話 繰り返される愛のささやき


今夜があの日だとすると?
いや、間違いなく今日はあの日なのだ。

美桜は焦っていた。
あと2時間ほどで、美桜も翔吾もホテルの火災に巻き込まれ、焼け死ぬ運命なのだ。

(翔くんを説得して、今すぐにホテルを飛び出せば?)

(だめよ、美桜。そんな夢のようなお話を、何も知らない翔くんが信用すると思っているの?)

(だったらホテルの従業員に『まもなく火事になります』って、知らせてあげれば?)

(それで火元はどこなの? それにね、根拠もなくそんなことを従業員にしたら、美桜の方が怪しいって疑われるわよ)

自問自答して、納得のいく回答を得られないまま、秒刻みで美桜と翔吾のライフゲージが削られていく。

「ふむぅっ、ちゅぶっ……翔くん、キスは……はむぅ、いいからベッドへ」

「じゅにゅ、じゅりゅぅ……そう急かすなよ。レロ、レロ……セックスをするにはさ、下準備が必要だろ」

美桜と翔吾は抱き合っていた。
唇と唇をひっつけ合わせてキスをしていた。
舌と舌を絡ませ合い、男と女の唾液もお互いに交換させ合っていた。

欲情させた顔で飛びかかってきた翔吾だが、美桜と肌を合わせた途端に獣染みた荒々しさを消した。
まるでこの後の運命を悟っているかのように、翔吾は美桜の背中へと両腕を回したのだ。
『絶対にお前を離さない』
交わす言葉とは裏腹に、そんな想いまで伝わらせて濃厚なキスを続けるのである。

(翔くんのキス、とっても上手。美桜のベロと唇を、翔くんの分厚いベロにクチャクチャされちゃう)

美桜にとっては、初体験2度目のキスである。
記憶のない翔吾だが、その身体は間違いなく、経験済みな初体験のキスを実践している。

「じゅぶ、じゅばっ……やっぱキスは、セックス前の前菜だよな」

「そ、そうかも……ちゅにゅ、ちゅぱ、翔くん……好き」

「美桜、俺も……はんむぅ、大好きだ」

脳内のカウントは続いている。
美桜の理性はどうしようもなく焦っていた。

けれどもお互いの素肌を密着させ合い、お互いの胸の鼓動を聞き合いながらの口づけは、甘美な興奮を高めていくのだ。
美桜の女の子している本能が、翔吾の肉厚な舌が突き刺さるたびに悦ぶのである。
キュンキュンとした切ない刺激が、まだまだ未熟な性感を解していくのである。

(もしかしたら火災なんて? わたしは悪い夢に操られているだけかも?)

そして心地よい触れ合いは、美桜の心に甘い誘惑を忍び込ませていく。
美桜は潤んだ眼差しのまま、いつしか翔吾に身を任せて……



「んふぅ、そんなに揉まれたら……はぁ、美桜のおっぱい」

「こうして手のひらを使って、すくい上げるようにさせると……ふぅ、はぁ、気持ちいいだろ、美桜?」

キスに費やされた時はどのくらいだろう。
次第に時間の観念も曖昧にされるなか、美桜の身体はベッドに寝かされていた。
彼女をお姫様抱っこした翔吾が、多少ぎこちない足取りでエスコートしてみせたのだ。

その二人は今、大きすぎるベッドの真ん中で身体を重ね合わせている。
美桜が下になり、翔吾が覆い被さる形で。
小麦色に日焼けした翔吾の両手が、薄く色づいた美桜のバストに乗せられている。

「はあぁ、翔くんに弄られてぇ、胸の奥までジンジンしちゃうぅ……んふぁ」

美桜の背中がじわりと浮いた。
ほどよく発達した半円形の乳房に翔吾の指が食い込み、切ない快感を拡散させる。

(早く翔くんを導かないと。翔くんの……その、あの、オチ〇チンを美桜の大切な処へ)

追い詰められた理性がざわついてみせる。
刻一刻と『生』のチャンスを失っていく様に、か細くされた心の声で訴えてくる。

「あはぁ、あのね……翔くん」

「なんだい、美桜?」

「ひぁ、はぁっ! 乳首を摘ままないでぇっ!」

恥ずかしさを我慢させて、意を決した訴えになるはずであった。
しかしそれは呆気なく頓挫させられた。
美桜の唇が開こうとする瞬間を捉えて、翔吾の指が動いた。
素早い指捌きで、ツンと尖らせた乳首をビンビンと弾いたのだ。

(翔くんのイジワル。このままだと、美桜も翔くんも大変なことになっちゃうのに)

伝えられないもどかしさ。
伝わらない美桜の想い。

「乳首いぃっ! 翔くんの指にぃ、グニグニされてぇ、ふはぁ、ひうぅっ……感じるぅ」

そして美桜も素直に鳴いた。
翔吾の唇が美桜の喉元にキスの雨を降らせて、翔吾の両手の指が何度も何度も、乳房の先端をなぞり、真っ赤な野苺の果実を弄ぶのだ。
全身を酔わせる快楽の波が、ザブンと美桜の神経くすぐった。

「美桜って、ホント敏感なんだな。ではこっちの方はどうかな?」

乳首の愛撫にたっぷりと時間を費やして、翔吾の好奇心は美桜の下腹部へと移動する。
しっとりと汗を含ませたきめ細やかな素肌を、翔吾の唇がこする。
両の手のひらで撫でるようにさせて、性感の極致の部分へと這い進んでいく。

「ああぁ、お願い早く……ふぅ、弄ってぇ……美桜のイケナイ処、翔くんの好きにしてぇ」

「あぁ、好きにしてやるさ。美桜の大切な処を鳴き出すまで愛してやるさ」

「やだぁ、翔くんったら。でもね、とっても嬉しい」

愛する人の全てを、美桜は女の下半身に感じた。
愛する人の指を、視線を、その全てを受け止めようと腿の筋肉を緩めていた。
ハシタナイポーズを自覚したうえで、両足をめいっぱいに開いていく。

「美桜のヘアーってさ、手触りいいよな。しなやかでフサフサしてさ」

それは1度目のエッチと同じである。
翔吾がまた褒めてくれた。
2度目のエッチなのに、まるでコピーしたかのように同じセリフを漏らして、恥丘に乗せた指先を遊ばせている。

「ちょっとぉ、いつまでもヘアーでなんか遊ばないでぇ……もっと美桜の、恥ずかしい処を……あぁ、弄っていいから」

美桜はそれがなんとなく怖かった。
だから過去のセリフを頭から消した。
まっさらにさせた淫らなセリフで翔吾を誘う。
ヘアーと戯れ続けるその指を、もっと感じるポイントへ。
溢れる羞恥と闘いながら、腰を上下に揺らせた。








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