第8話 貧乳娘の巨乳化計画 「それってさ、ホントに『不幸』とか『不運』とか言うのかな?」 公園のベンチに腰掛け、コンビニで太一に買ってもらったペットボトル入りオレンジジュースを飲みながら、美紗が訊いた。 「ま、まあ……感情の問題だし、聞き手の基準で多少は変わったり……でも、俺にとっては……」 「えっと、大学のセンター試験3日前に、気になっていたテレビゲームが売り出されて、三日三晩ぶっ通しでゲームに弄ばれて、おかげで大切な試験の最中に居眠りしちゃったんだよね。ご両親も真っ青な得点を抱えて、その挙句、住所と名前さえ書ければOKの私立にGOって感じで」 「センター試験3日前なのに、ゲームなんて発売するからだ。あれさえなければ、俺は……」 夜の公園で、太一は唇を噛んだ。 「えっとその次は、もっと大切な就活中なのに、追っかけをしていたアイドルグループが解散騒ぎを起こして、頭の中が真っ白。面接官が質問しても、『僕は、ラブラブキッスが大大大ダーイ好きです。解散なんて、大大大ダーイ反対です!」って、絶唱したんだよね。はぁ~っ、面接の人も頭を真っ白に染められちゃったよね。きっと」 「そうだ。あの時、解散なんて噂が立たなかったら、ミー子は今頃センターを取ってたのに……クソ」 自分の人生よりも大切なモノがある。 太一は夜風に吹かれながら、拳を握り締めていた。 「だけど平和な国、ニッポンだよね。ご気楽な国、ニッポンかもね。こんなおじさんでも、ちゃ~んと平凡なサラリーマンをやってるんだから」 美紗はラッパ飲みするようにペットボトルの底を持ち上げた。 ゴクゴクと小さな喉仏を鳴らしながら、オレンジ色の液体を飲み干していく。 「いや、僕の『不幸』と『不運』は、こんなものじゃない。この後も……」 「目が合った事務員さんがウインクしてくれて、喜んで付き合おうとしたら、目にゴミが入っただけだったとか。社内のゴルフコンペで、奇跡のホールインワンをしたと思ったら、突然の夕立ちでお流れになったり、えっと他には……なんかたくさん聞かされたけど、美紗忘れちゃった……えへ♪」 美紗は空になったペットボトルを、ポイと投げた。 分別収集用に分けられたゴミ箱に、スポンと収まった。 「とにかくだ。俺は『不幸』と『不運』に取り憑かれているんだよ。現に今も……」 「今も……?」 「美紗ちゃんが飲んだジュース。俺も飲みたかったのに、キミの分だけで売り切れになるなんて……くそぉ、なんてついていないんだ」 太一は吹き付ける風に向かって毒づいた。 満天の星空を恨めしそうに見上げた。 「はぁ~ぁ……わたしって、人を見る目がないのかも。というか、美紗の方がついていないような……」 目の前の男のように、つい毒づきたくなる気持ちをグッと堪えさせて、美紗も空を仰いだ。 太一と一緒の恨めしい眼差しで、飲み干したばかりのジュースをゲップして、もう一度口の中に含みそうな、そんな溜息を何度も吐きながら。 「わたしね、好きな人がいたの」 そしてそれは不意なことだった。 夜空に向けて美紗もつぶやいていた。 太一は落としかけた頭を引き上げると、耳を澄ました。 「でもね、告白する前にフラレちゃったの」 (いた? 告白する前に?) つぶやいた美紗の声が、さっきまでとは打って変わって沈んでいる。 なんとなく辻褄の合わない過去形のセリフに、太一は胸の中で疑問符を記していた。 「今日こそはって、告白のお手紙だって用意したんだよ。だけどね……渡せなかった」 沈んだ美紗の声に、かすかな震えが混じる。 夜空と接着させていた太一の視線がぐら付いて、黒眼だけが分離したように隣に立つ少女へと注がれる。 (もしかして、泣いているのか? この子……) 濃紺の制服が揺れていた。 背筋を反らすほど真っ直ぐな姿勢で、太一に好きにさせたバストを突き出すように強調させていた。 けれども美紗の瞳に、光るものは見当たらない。 「その人が話しているのを聞いちゃったの。その人って、おっぱいが大きな女の人でないと……」 沈んで震えて、美紗の独り言は次第に途切れていく。 ささやかな胸の膨らみの上で赤いリボンを踊らせて、声が消えたと共に反比例するように大きく弾ませた。 「美紗ちゃんってさ、まだ16だろ?」 「ううん、あと3週間で17になっちゃう」 美紗の独りつぶやきが終わりを迎え、太一が訊いた。 閉じたばかりの少女の唇が、少し尖り気味に不満を口にした。 「16だって、17だって変わらないよ。まだまだ青春ど真ん中、胸の成長だってこれからだと思うよ。美紗ちゃんも明美さんの年になった頃には、こーんなおっぱいになってたりして」 そんな美紗を慰めるつもりなのか、太一は自分の胸の前で、両腕に大きな半円を描かせた。 初々しさに満ち溢れた、クスッと笑ってしまいそうな恋の悩みなど吹き飛ばせと言わんばかりに、眉を垂れさせて笑顔も作った。 顔面は星空と接触させたまま。 「うふふ♪ おじさんって、ものすごーく頼りないのに、励ますのは上手なんだね。だけど……」 「だけど?」 「わたしは今すぐに大きくしたいの。美紗のおっぱいを……それで、巨乳命な男の子をその気にさせて……そして……」 「そして、どうするの?」 「うん。その男の子の真ん前に立って、『ごめんなさ~い。わたしってアソコの大きな男の子にしか興味がないの』って言って、フッてあげるの。みんなが見てる中でね」 「……そ、そうなんだ」 思わず太一は俯いた。 突拍子もない美紗の言い様に、返す言葉も見付けられないまま、ズボンのフロント部分を見つめていた。 密閉された空間で、美紗のおっぱいをオカズに膨張した一物が、果たして規格外の逞しさなのか? 告白する恋人候補でもないのに、取り合えずとばかりに。 「わたしはね、とっても焦っているの」 「だから16才と9か月なのに、今すぐにおっぱいを……?」 「そうよ。貧乳だと前には全然進めないもの。ということで、おじさんも協力してくれるかな? 美紗のおっぱい巨乳化作戦に、ふふふ」 美紗が笑った。 ほんのちょっぴり目尻を潤ませて、黒眼を夜空の端から端まで泳がせている太一を覗き上げるようにして。 手のひらの中にすっぽりと納まる小粒な乳房を、制服の上から持ち上げ、ムニュムニュと揉んでみせながら。 (どうするんだ、俺? 相手は、おっぱいの巨乳化だけに全てを捧げようとしているトンデモガールだぞ。ある意味一途だけどトンチンカンで……方法そのものが相当歪んでいるけど、だけどそんな女の子を相手に『きみの初体験をください』なんて。『不運な山際太一を助けると思って』なんて。あと3週間で17才になる少女に、セックスの相手を求めるなど……) 太一は、女占い師の言葉を恨んだ。 女占い師が晒してくれたおっぱいも恨んだ。 ふくよかにも、たわわにも程遠い美紗のペチャパイなのに、なぜなのか? 薄っぺらい乳肉なのに、どうして触れた指の感触がそっくりなのか? もしかしたら、指の神経がマヒしたのかもしれない。 純真無垢な天然美少女のオーラに、汚れた己の指が浄化されて…… (もう一度、女占い師のおっぱいを揉んで、指の肌に記憶させて……?) 『消費税込みで5400円になります』 都合よく算段をする太一の頭に、営業スマイルを浮かべた女占い師の声が響いた。 前頁/次頁 |
作者とっきーさっきーさんのHP 羞恥.自己犠牲 美少女 みんな大好き♪♪ オリジナル小説 そして多彩な投稿小説 『羞恥の風』 |