第5話 セクシーショーツ……その後
「でも先輩。エッチなランジェリーと言ったって、わたし……」
綾音は口ごもったまま俯いた。
美和が口にした男を挑発するような過激な下着など、彼女には持ち合わせがないのである。
ついでに知識の持ち合わせもなかったが……
「そっかあ、綾音って昔から下着に無頓着だったわよね。同棲してた頃なんか、確かグ○ゼのパンツを穿いてたっけ」
「いくらなんでも、穿いてません。もう少し大人のパンツを穿いてました」
「そう……大人のねぇ……それで、大人のパンツって、お尻の処にクマさんの絵がプリントされた……」
「ひっどーいっ! そんな遠い昔のことを蒸し返さないでください」
首筋まで赤く染めた綾音が、ほっぺたを風船のように膨らませて抗議する。
その幼っぽい仕草に、美和が笑いを堪え切れずにぷっと吹き出した。
「もう、綾音ったら。その顔、昔のまんまね。でも……そうねぇ、男をその気にさせる下着って口で説明しても無理よね。この子ったら早速オバサンパンツデビューしちゃってるし……」
綾音は、再びアゴの下に手を差し込むと考えるポーズを作る。
そして思考すること1分。
ほんのりと顔を赤らめた美和は、綾音の腕を取り耳元で囁いていた。
「そんなこと! ホントにやっても構わないんですか?」
「ええ、いいわよ。綾音にだけ恥ずかしい思いをさせるわけにはいかないもの。それに、きっと参考になると思うわよ」
「う~ん……だったら、お言葉に甘えて……」
5分ほど前の光景が、彼女達の立場を入れ替えて再現される。
美和の前で膝立ちになった綾音が、彼女のスカートに手を掛けた。
国際線の客室乗務員らしいエレガントなスカート生地に指を掛けると、ゆっくりと持ち上げていく。
「綾音。遠慮しなくていいから、思いっきりスカートを捲って」
「……はい……先輩」
上ずった美和の声が空から降ってきて、綾音は擦れたままの声で返事をした。
(先輩の肌ってすべすべしてる。やっぱりエステとか通ってるのかな? それに太股に無駄なお肉がついてなくて、ほっそりしていて……羨ましい)
次第に露わになる美和の下半身を、綾音は食い入るように見つめた。
裾を持ち上げる指の背中で、リアルな肌の感触も同時に受け入れていく。
そして、裾を掴んだ両手が美和のウエストに達した。
同時に綾音は、息を呑んで見つめた。
美和の股間に貼り付いたセクシーなパンティーを!
優雅なレース生地から覗く黒い翳りを!
その下に潜む、美和の女の部分を!
「綾音、ちゃんと私のショーツを見てくれてる? 女はね、いつだって男の目を意識しないといけないの。出掛ける時も、自宅でくつろいでいる時だってそうよ」
「は、はい……」
顔が燃えるように火照っていた。
でも、目は逸らせられない。
綾音は美和の股間に顔を近付けたまま、声だけを絞り出していた。
(これが男をその気にさせるランジェリーなの? サイドが紐になっていて、それにフロントが透け透けで……やだ、割れ目まで覗いてる?! これが先輩のアソコ?)
間近で見た女の部分に、綾音の女も疼き始めていた。
互いのパンティーを見せ合う女たちの光景に、昼下がりのリビングが妖しい空気に包まれていく。
「どう、綾音? わかってくれたかしら。アナタもこんな下着で吉貴さんに迫ったら、きっと上手くいくと思うの」
「え、ええ……わたしもそう思います」
そんな綾音の気持ちを断ち切るように、美和が身体を一歩引いた。
光沢のあるスカートが幕を下ろすように落下し、綾音の目線を遮っていた。
「あら、もうこんな時間。そろそろお暇しないと……」
そして美和が腕時計に目をやった瞬間、リビングに漂っていた妖しい空気が消えた。
綾音と美和。二人の間には昔ながらの関係が舞い戻っていた。
2日後……
寝息を立てる吉貴に背中を向けて、綾音はひとり寂しく指を動かしていた。
ミシ……ミシ……と控えめにベッドが軋む中、夫に膣出しされてヌルヌルとした内壁に指を束にして擦りつけては、官能の炎を昂ぶらせていく。
ずにゅ、ずにゅ、ずにゅぅっ……ぐちゅぅっ……
「んんっ……はむうぅぅっっ……」
唇を覆う左の手のひらが、漏れだす吐息をビリビリと感じた。
けっして夫には聞かせられない慰めの喘ぎ。それを寝室中に響かせようと、底意地の悪い右手の指ペニスが膣奥にまで触手を伸ばして蠢いている。
吉貴の激しい抽送で半分蕩けた柔肉を掻き回すように撫で擦っては、綾音仕様の快感へと塗り替えていた。
(吉貴のバカバカ! どうしてこうなるのよ)
背筋を這い上る刺激に、綾音は首を仰け反らせて応えた。
エッチで妖しい電流に頭の中が白く染まり、それと並行して湧き上がる虚しいモノが、綾音の瞳をじんわりと潤ませていく。
そして、次第に焦点の合わなくなった視線が、床の上に捨てられたピンクの布切れを拾った。
美和がアドバイスしてくれて、ランジェリーショップで頬を染めながら購入したTバックのパンティーが、丸められた無残な姿で打ち捨てられたように転がっているのだ。
(わたしがパジャマを脱いで見せてあげたら、吉貴ったら鼻の下を伸ばして悦んでたのに。なのにどうして? Tバックを喰い込ませたお尻を振ってあげた途端、もう我慢できないって、わたしを押し倒して……
セックスしてくれるのは嬉しかったけど、もう少しムードっていうかなんというか……まだアソコが濡れていないのに、オチ○チンで突かれて痛かったんだから。それなのにあっという間に出しちゃうし……)
要するに、恥じらいを浮かべながらお尻を揺する綾音に、吉貴の欲情が暴走したのだ。
鼻息を荒くして彼女をベッドに押し倒した吉貴は、性欲の源のようなTバックを剥ぎ取り、前戯もそこそこにバックから挿入。
恐怖のあまり身を固めた綾音を無視するように、がむしゃらに腰を突き動かしては、あえなく昇天という具合である。
「ふむうぅっっ……んむぅ、むうぅっっ……!」
ヴァギナの壺で、吉貴の放った精液が湧き出す愛液に薄められていく。
恥肉にズボズボと突き立てられる指ペニスの抽送に、綾音の頭が白く染まった。
独りエッチの快感に、吉貴のペニスの記憶が霞んで霧のように消滅する。
(イク、イク……綾音ぇ、飛んじゃうぅぅっっ!!)
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