第6話   アダルトショップで、バイブ買います!!


ピンポーン♪♪

「綾音、元気してる?」

1週間後、綾音の哀しい決末に責任を感じた美和が、再び訪ねてきた。
フライトスケジュールが詰まり忙しい身の上だったが、妹のように可愛がってきた後輩が心配でならないのだ。

「それで吉貴ったら、腰をクイクイとさせて、『あっ、出る』で、終わりなんだもん。もっとこう……長く愛して欲しいのに」

「あらあら、恥ずかしがり屋さんだった綾音にしては、大胆な告白ね。エッチな下着の影響でちょっとスケベちゃんに変身したのかな。ふふふっ」

「先輩、笑わないでください。これでもわたしは本気なんですから」

綾音は、美和が持参したショートケーキを頬張ったまま、ほっぺたを膨らませてみせる。
美和の軽い笑いに、彼女なりの抗議を示したつもりだった。

「ごめんね、綾音。笑うつもりはなかったんだけど……でも、そうねぇ。可愛い後輩のためだし、新しい吉貴さん攻略作戦を伝授してあげるわ」

「ホントですか、先輩。嬉しいです」

「ふふ、だから綾音、耳を貸しなさい」

真顔になった綾音に、美和が顔を寄せ耳打ちする。
彼女達以外にリビングには誰もいない。それにも関わらずに声を潜めて話す美和の内緒話に、綾音の表情が刻々と変化していく。
そして話のラストのあたりでは、小さく頷きながらも目線が宙を彷徨い、顔を首筋まで赤く染めていたのだ。

「でも、先輩。そんなの恥ずかしいです」

「綾音、これも幸せな夜の営みを実現させるためなの。ちょっと恥ずかしいくらいなによ。我慢なさい、いいわね」

美和は戸惑う綾音を言い含めると、フライト時間に追われるようにマンションを後にした。



その日の午後になって、綾音は周囲に気を配りながら外出した。
駅前に向かうと電車に乗り、隣街のまた隣街へと向かう。

駅に到着した綾音は、ポケットに忍ばせたサングラスを掛けると、同じくポケットに忍ばせたメモ用紙をこっそりと拡げる。

(えーっと、『大人の玩具のお店 デカマラ屋』だよね。先輩が教えてくれたお店の名前って。でも、こんな店名にして従業員の人って恥ずかしくないのかしら?)

そんなハレンチな店へと向かう自分はもっと恥ずかしいのに、心の中の綾音は他人事のように振舞っていた。
買い物カゴをぶら下げれば似合いそうな地味な服装にサングラスという、違和感のあるファッションの彼女は、駅前の信号を渡った先の路地でその店名を見付けると、相変わらず他人事にしがみ付く心を引き連れて小走りに店の中へと入って行った。

「いらっしゃいませ~♪」

綾音が店に足を踏み入れた途端、金髪店員の軽い声に出迎えられる。
真っ昼間に、それも女性だけで訪れる客は珍しいのだろう。
その店員はレジのカウンターから上半身を乗り出すようにして、綾音の姿を目で追っている。

(嫌だわ、あの店員さん。わたしがお店に入ってからずっとこっちを見てる。レジの前でお客さんが待ってるのに)

綾音はレジの死角になっている通路へ向かうと、再びメモ用紙を拡げた。
美和が耳元でアドバイスしてくれた商品名を、口の中で復唱する。

(『パワー自慢!デカチン君』と。絶対に声に出したくない名前だよね。でも、どこに有るんだろう?)

狭い通路を挟んでびっしりと並んだ卑猥な道具に目を逸らせていた綾音だったが、いつまでもこうしてはいられない。
焦る気持ちと戦いながら、棚の端から端へと商品名を流し読みしていく。

(何よこれっ! 手錠なんか売ってるけど、どこで使うのよ。こっちは……やだ、怖い。ムチに蝋燭って? これってSMの必需品よね、女の人を痛めつけて悦ぶエッチなプレイで……キャッ! ブリキのオマルにガラス製のシリンダーまである?! まさか、浣腸セットまで?)

結婚してからの2年間。吉貴とノーマルなセックスしか経験のない綾音にとって、店内に展示された商品は少々刺激が強すぎたのかもしれない。
目にしただけで身体が火照りだし、下腹部からはジンジンとした疼きが忍び寄ってきていた。

(やだ、アソコがムズムズしちゃう。指が降りていって……ダメダメ! 綾音、何しているのよ。さ、早く商品を見付けて退散するのよ)

気を抜けば、太股どうしを捩り合わせそうになる。
そんな淫らな感情をなんとか堪えると、綾音は駆け足で店内を見て回る。
店員からも男性客からも好奇な視線を浴び続けているが、知らない振りをする。
ようやく発見したバイブコーナーと記された一角で、目を皿のようにして『パワー自慢!デカチン君』を探した。

(あった! これだわ♪)

棚に貼り付けられたシールを見て、綾音はホッと胸を撫で下ろしていた。

(あっ! 在庫が……)

しかしである。そこだけぽっかりとスペースが空いているのだ。
他の商品は山積みになっているにも関わらずに。

「どうしてよ、ついてないな……」

だからといって、諦めるわけにはいかない。
美和のアドバイスだけが、頼りなのである。

(ファイトよ、綾音。吉貴との幸せなセックスタイムが、アナタを待っているわよ)

綾音はサングラスを掛け直すと、金髪店員の元へ急いだ。
相手が聞き取れる保障がない、早口兼小声で『パワー自慢!デカチン君』を連呼していた。



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