官能小説『隣人 改』
しょうた&リレー小説参加者の皆様

※第1話~第2話はしょうたさんの直筆により、
第3話以降はリレー小説の皆様の合作によります
編集はしょうたさんです



第23話

 キーケースを落としたと告げたのは、久美がシャワーを浴び終えたあとだ。みどりがそのことを知ったのは、久美から聞いてからだろう。だから、久美がシャワーを浴びている間にみどりが鍵を探すことはない。
 それに、俺の話を聞き終えた後、久美は、たぶん、真っ先に寝室を探したはずだ。探し物が寝室にある可能性が高いということは、久美も知っているからだ。
 まさか、俺と激しく交わったベッドルームの中でみどりと一緒にキーケースを探すとは思えない。
 それじゃぁ、いったい、いつ、みどりは寝室にはいったのだろう?
 久美がシャワーをしている時に寝室にはいったとしか考えられない。
 そこで偶然、キーケースを見つけた……だが、キーケースが床に落ちていたからといって、それが俺のものだとわかるだろうか? 拾って黙っている必要性はどこにある?
 考えれば考えるほど混乱してくる。
 いったい、若妻は何を考えているんだ……。

「吉川さぁーん、お待たせしましたぁ~」
 背後から聞こえた久美の声に振り返ると、久美はカウンターに料理や皿、グラスを置き、みどりがそれらをテーブルに並べていた。キッチンの方から、料理の旨そうな匂いが漂ってくる。
「あ、すみません。僕も何かお手伝いすることありませんか?」
 テレビを消し、ソファから立ち上がり久美に向って言った。
「あとは、料理を並べるだけですから、お手伝いはいりませんわ」
「すみません、お役に立てなくて……」
「うふっ、そんな、気にしないでください。ねぇ、みぃちゃん」
「そうですよ、だって、主婦が二人もいるんですから。さっ、吉川さん、もう直ぐですから、どうぞ席に座ってください」
 みどりに促されて、ダイニングへ移動するとカルボナーラのクリームの甘い香りが漂ってきた。
 カルボナーラに、生ハムのサラダ、チーズにカナッペ、パテと、まるでイタリア料理店のランチセットのようだ。
 そのうえ、テーブルの中央にはシルバーのワインクーラーの中に白ワインが冷やされている。
 普段、昼間は妻がパートにでかけていることから、週の大半の昼食を弁当やパンなど質素なものですます俺は豪勢な昼食に思わず感嘆の声をあげた。
「いやぁ、旨そうだぁ」
「旨そうじゃなくて、本当に美味しいんですよ。だって、久美さん、調理師の資格ももっているから」
 俺の言葉にみどりが続けて反応した。
「ほぉ、そうなんですか。それにしても、こんな手料理を毎日のように楽しめるご主……いや、ご家族が羨ましい」
 思わずご主人と言いそうになり、ご家族に言い換えた。久美から夫が浮気をしていることを聞いているから、久美の夫は毎日のようには久美の手料理を食べていないことだろうと思ったからだ。それに、この場は久美の夫の話はしない方がよいと思った。
「あは、いつもは違うんですよ。あ、それよりも、昼間からアルコールなんていけないかしら?」
「そんなことないですよ」
 久美の問い掛けに俺とみどりは、ほぼ同時に同じ返答をした。
「よかったぁ~」
 久美はにこやかな笑みを浮かべてワインクーラーからボトルをとり、ナプキンで拭き始めた。
「いや、コルクくらい僕にあけさせてください」
 久美からボトルとワインオープナーをうけとり、コルクを開けていく。
 そして、コルクを抜きとり、久美、みどり、俺のグラスにワインを注いだ。




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