第2話

 1週間後、香織は入院の準備をして大学病院に向かった。
 4月とはいえ東北地方には至る所に残雪があり外を歩く人々は誰もがコートを羽織っていた。
 受付で入院の手続きを済まし、5病棟のインターホンを押した。
 ここは閉鎖病棟。鉄の扉の中に病室があるのです。
「はい、どちら様ですか?」
「青山です」
 大きな扉がゆっくり開くと、一人の看護師が立っていた。
「青山さんですね?どうぞ……」
 中に入ると、想像していた以上に綺麗で、まるで高級ホテル並だった。
 看護師から持ち物のチェックをされ、病室に案内された。
「ここです」
 一人部屋だった。小さな洗面台があるだけの個室。
 ベッドの横の窓だけが、やけに大きく感じた。
 この病棟の決まりで、携帯電話はナースステーションに預けなければならない。
 1日に2度だけ病棟からの外出が許され、電話をかけたい時はその時に申告して携帯電話を受け取れる。
 香織は大きな窓から外を見た。
 見慣れた街の景色も5階から見渡すと一風変わって見えた。
 下を覗くと陽が当たらない中庭があり雑草が芽生えていた。
(きっと退院する頃にはあの雑草も刈り取られるんだろうな~)
 香織がぼんやり外を眺めていると、後ろから声をかけられた。
「青山さん、こんにちは」
「はい」
 後ろを振り向くと、晃一が立っていた。
「体調はいかがですか?」
「はい、特に変わりはありません」
「青山さんは暫く食事療法だけです。何も心配せずリラックスして過ごして下さい」
「江本さん、私いつ頃退院できますか?」
「そうだな~、青山さんは内臓の機能が低下しているから、いくらカロリーを摂っても1ヶ月に1~2キロ位しか体重は増えないだろうからな~」
 その事は、大野医師からも香織は告げられていた。
 摂食障害というのは厄介な病気だ。
 1度退院しても再入院の確率は50%を超える。
「江本さん、私頑張ります……」
「うん、頑張って!僕も応援する!」


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ネット小説界新進気鋭の麗人作家真理子さん。
愛溢れる官能小説からハードでちょっと危ない体験談まで。
サイト開設以降数多くの小説投稿は、管理人さんが持つ
『カリスマ性』『豊かな人間性』『人柄』が所以であろう。

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