後編(6)

いつもこんな風に持ち運ぶからか、持ち手の部分は歯型がついていた。

「…吊るしましょうね。今度は首で」

首に巻かれた首輪を滑車に繋ぎ、立ったぎりぎりまで吊り上げる。背伸びしていないとつらい状態だ。
腕は頭の後ろに組ませ、手錠をかける。そのチェーンも首輪に繋げば終わり。
この時点で鬼人の顔には恍惚としたものが浮かんでいる。

「腕を下ろしたり逃げたりしたら、首が絞まりやすから」

鬼人がもってきた箱を開けてみれば、裁縫セットさながら、大量の針が並んでいる。
色々な太さや長さ、時には釣り針のような変わった形の物まで様々だ。

中の針は種類ごとに小さなケースに入れられていて、妖子はその一つを取り出してあける。

「ほぉら…お前の大好きな針っすよ? ピアスはあんまり増やすと綺麗じゃなくなるから、痕だけつけやしょうね」
「ぁ…あ…ッ」

針を一本手にとり、鬼人の目の前に見せる。
すると刺された痛みを想像したのか、フルフルと小刻みに震えながらも腰を揺らす。
早く刺してと瞳で訴える鬼人が可愛くて堪らないのか、妖子は針を鬼人の首筋に滑らせる。

妖子の持つ針は普通の物と違い、表面がやすったようにざらついている。
そのため、刺す時にそのざらつきが細かい神経を刺激して痛みが強くなるのだ。
前にも何度かしとがあるのだが、その時は初めてだったからか気を失ってしまった。
勿論その後起こして続きはしたのだが、針は数本だけだった。

「ケースには30本あるから…今日は全部さしましょうね」
「やっ…そんな刺したら…ぉ、ぉかしくなる…ッ」

「やめてほしい?」
嫌々と涙ぐむ鬼人にそう聞けば、すぐにまた首を横にふる。

「刺して、ほしい…。鬼人に針、いっぱい刺してくださいぃ…ッ。壊してっ…狂わせてぇっ!」

子供のようにねだる鬼人の声に、妖子は満足そうに針を胸板に滑らせた。

「味わいなさいな?」
乳首に嵌められたピアスから少しずらし、針を突き立てる。

「あっ、あっ、ぁあっ…!」
真っ赤に尖った乳首に、針が当たる。ゆっくりと押さえ付け、ついにプツン、と刺さった。

「ひぃいっ!」

先程まで体重を支えさせられたり鞭に打たれたりと散々嬲られたそこは敏感で、刺されただけで何倍もの痛みが広がる。
鬼人は喉をのけ反らせ、ちぎりとられそうな激痛に悲鳴をあげた。

「っ…キヒぃいいイいイィーッッ!!」

一拍置いた悲鳴はつんざくような悲痛なもので、食いしばられた歯の隙間から漏れているとは思えないほどだ。

だが勿論ただ刺しては終わらない。これからなのだ。
針がそのまま進められ、ざらつく表面が敏感な肉をこすりつける。神経の集まった部分だからこその激痛に、鬼人は全身から汗を噴き出して叫んだ。

「ひぎぃいぁああァアッ! やめっ、あぐぅぅああああああああっ!?」

あっさりと向こう側に到達した針先が、皮膚を押し上げている。そのまままたプツンという音が聞こえそうな程勢いよく針先が顔をだす。


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