後編(4)

「私とあんたの勝負は、まだ着いてないんだからね! これからだって何度も仕掛けてやる…ッ」
「あたしとしちゃあ、これっきりにしていただいた方が楽でいいんすけども…」

面倒過ぎる。逃げようか。否無駄なのはわかってる。ここは放っておいて刺激しないのが1番…。

「覚悟しなさい! このペチャパイ女!!」

ピクン。と、妖子の肩が揺れる。
教室に響いた怒鳴り声に、みんなが唖然としているが、美羽には妖子しか見えていない。
しかも妖子の様子の変化を、ちっとも不思議がっていないのだ。

「…今、何とおっしゃったんで?」
「ペチャパイ女」

まただ。小学生の体の時はともかく、妖子の本体はそこそこあってもいい外見である。
だが実際本体の胸は大変控え目だったりする。

「…あたしのこと、スよねぇ?」
「もっと言って上げましょうか? 洗濯板、ブラジャーいらず、貧乳の幼児体型っ」

………プツン。

「受けてたちましょ。正式な挑戦からは逃げも隠れもいたしやせん。
 あたしを連れ戻したきゃ、そちらも本気出してごらんなさい!…えぇ、やれるもんならやってごらんなさいな。出るとこでてなくったって負けるもんですか!!」

火花の散りそうな喧嘩は、この後睨み合いとなり、朝礼の時間まで教室中の児童達は唖然としていたという…。


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「……。…で、勝負を受けてしまったと」

怪の若干呆れたような信じたくないといったような視線が痛い。

「売り言葉に買い言葉だったというか…その…」
「決闘とまでは言いませんけど、悪魔同士の誓いは血の契約にも似てるから、下手に破ると犯罪者扱いになるんですよねぇ」

魔御は寧ろ暢気に笑っている。

「その場の勢いが…えーと…」
「今後向こうが何仕掛けて来ても、どっちかが負け認めるまでやり合わなきゃならんわけだ」

鬼人の言葉に、妖子は顔の前で両手を合わせる。

「ほんっとに申し訳ない! お前らを巻き込まないように、何とか片つけるからっ!」
「何をおっしゃいます。妖子様にもしものことがあれば、我々命を断つほかありません」
「大丈夫。僕らが守りますからね」

罰の悪そうな妖子の様子に、ペット達はため息つきつつ大丈夫だという。
面倒だとは思っておらず、怪の言うよう妖子に何かあったらという心配しかないのだ。

「…ありがとう…」

妖子もホッとしたように腕を下ろす。大事にならなければいいのだがと、内心己の短絡さに嫌気がさしていた。

「けど、向こうも痛いとこついてきたもんだよなぁ。妖子が貧乳気にしてるって知ってるとは」

ピタッ…と。妖子の動きが止まる。その気配に気付いた二人の顔が、さっと青ざめた。

「妖子の体、凹凸ほとんどねぇもんなぁ。それごまかすのにガキの恰好してんのかなって思ったくらい…」
「鬼人」

そこまで言った鬼人の言葉は、けして大きくはないが感情すら感じられない妖子の声に止められた。
鬼人の背中に、嫌な汗が流れる。


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