前編(2) もっとも、鬼人がこれに付き添うのは珍しい。鬼人は本来奉仕タイプではないからだ。 魔御の様に奉仕の行為自体に興奮したり、怪の様に妖子に尽くすのを生き甲斐にしているわけではなく、一方的に責められてぐちゃぐちゃにされ、服従させられたいという生粋のマゾヒストなのだから。 そしてそれに比例したサディストなので、壊し専門とすら言われている。理性が必要な調教はあの二人の担当だ。 百合子の時は、毎度壊していられないからと加減をしたのだろう。それでは何故鬼人がやっているのか。 理由は簡単。ご主人様があまりにもほうけていたもので、残り二人が無駄に心配していたのである。 それを見兼ねた鬼人が、「面倒だからやる」とかってでたわけだ。 「…のぼせるぞ?」 「あー…」 泳ぐ訳でも眠る訳でもなくほうけている。普段の色気が幻に思える程今日の妖子はやる気がない。 「…年寄りみたいな声だしてんじゃねぇよ。ただでさえ見た目でごまかして…」 「絞め殺しやすよ?」 耳は正常らしい。 湯舟からあがると、陶器のような白い肌が些か湯だってピンク色になっているのがわかった。 こうして見るとやはり美しい。 彼女の放つフェロモンが底無しで、ストリップだけで免疫のないものは卒倒するだろう。 毎日の様に見ている三匹さえ、惚れた弱みか緊張するというのに。(彼等の場合惚れたというより主人への従属的な愛なのだが。) 「全く…年寄り扱いしないでくださいな。あたしゃまだまだ現役ですぜ?」 その言い方が年寄りくさいのだと、思わず言いかけて口をつぐんだ。本当に絞め殺されたらたまったものではない。 「…わかったから、少しは恥じらえ。年頃の娘なら」 濡れた髪が白い身体に纏わり付き、小振りな胸やキュッと締まったウエスト、プルンとした尻を強調させている。 小学生の裸体とは思えないいやらしさに、鬼人は頬を赤らめる。彼女の正体を知っているからこそ、尚更。 「…鬼人、少し上せたみたいっす」 「は? だから言わんこっちゃな…ッ!?」 不意に、妖子が自分に向かって倒れ込んできたため、鬼人はそれ以上言葉を続けられなかった。 だが妖子のその言葉の意味が、あることへの遠回しな命令だと気付くのに、そう時間はかからなかった。 *--- 「んっ…ふ、ぅぐゥっ…!」 鬼人の体が震える。背中にあびせた鞭の回数はすでに二百を越えていた。 他の場所の分も足したら、五百近い。 その間、彼が意識を保っていられるのは、人間の何百倍も体力のある魔物だからというのでは済まないだろう。 主の許可なく意識を飛ばすなんて、彼等にできる愚行ではない。堪えるのが当然なのだ。 それに他の二人ならいざ知らず、鬼人は生粋のマゾヒスト。このくらいの激痛は快感に変換してしまえる。 「いい恰好すね。わかってます? 鞭だけでさっきから何度も空イキしてんの」 前頁/次頁 |
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