後編(1) この季節に、部屋の暖かさだから大丈夫なのだろうが、露出の高いドレス。真っ白な腕や首筋に、黒い髪とドレスのコントラスト。 この空間だけ、色を無くしたのではないかと思いそうになる空気。 「…前上げた薬とは別のをあげやしょう。使い方はお任せしやす」 「…ありがとう」 「見返りは…そうっすねぇ…」 黒い魔女は、怪しげに微笑む。 「…あんたの命だ」 少女は悪魔と契約する。 気付いてもいないのだ、その相手が悪魔以上に恐ろしい相手だということを。 *--- 翌週の、週末だった。 「ねぇナツ。よかったら冬休み、泊まりにこない?」 陽菜に誘われ、魚月は考える。 初めてのことではないし、多分叔父夫婦も許可してくれるだろう。ただ、クリスマスは海斗といたい。という気持ちがある。 「…ナツ?」 「え? あ、ウン…叔父さん達に聞いてみるよ。よかったらメールするね」 「そう。わかったわ」 微笑を浮かべ、陽菜は帰宅の準備をする。 陽菜といるのは楽しい。けど、海斗とも過ごしたい。 (…我が儘なのかな、あたし) 海斗は魚月の気持ちに気付くこともなく、年末の学校行事の忙しさに毎日疲れた表情で帰ってきている。 なのに……海斗が頑張っているのをわかっているのに、ここ最近海斗を見ていると体が疼く。 毎日帰宅したら、声を殺しながらオナニーして海斗を求めている。自分がこんなに浅ましいなんて、思ってもみなかった。 (海ちゃん…) 「ナツ。元気ないけど…大丈夫?」 陽菜の心配そうな声に、魚月は笑顔を繕う。 「平気平気。ちょっと寝不足なだけ」 「そう…ちゃんと休んでね」 魚月は苦笑しながら、その陽菜の心配そうな表情に答えていた。 *--- 「ただいま~」 帰宅すると、鍵が開いていた。誰かいるのだろうかと中に入ると、海斗の靴が玄関にある。 こんな時間に戻るなんて珍しいが、もう冬休みも近い。小学校なんてあっという間に終わるのだろう。 「ただいま」 「あ、お帰り。なぁ魚月。お前今年のクリスマスの予定は?」 「え…?」 まさか二人で過ごしてくれる? いや、そんなミラクルあるわけがない。けどもしかしたら…。 「特には…どうしたの?」 「いや、実はな? 生徒たちうちに呼んで、クリスマスパーティーしようかと思ってさ」 「…ぇ…」 「実は生徒にせがまれちゃってさ。親父と母さんはなんか、二人で23くらいから旅行行くらしいし…何もないならお前もどうだ?」 海斗はいつも生徒第一。自分の教え子が可愛くて堪らない。自分は違う。従姉妹の、妹止まり…。 「魚月…?」 「…ゴメンッ。その日、姫のうちに泊まり誘われてたんだった! ちょうどよかったじゃんっ」 精一杯の笑顔を浮かべる。心配しなくていいからと。海斗は納得したように笑みを浮かべる。 「そうか。よかった」 「あたし部屋にいるから、何かあったら呼んで。準備くらいなら手伝うからさ」 そういって部屋に駆け上がり、ドアを閉める。 そのドアを背に、魚月は座り込む。 涙が頬を伝い、期待していた自分に悔しさしか募らない。携帯を開き陽菜ヘメールを打つ。 [姫☆大丈夫になったから、イヴの日に行くよっ!二人でクリスマスパーティーしようね♪] あくまで明るく。いつものメールを打つ。画面に涙がおち、それを拭っても拭ってもまた濡れる。 その日は久々に、自慰をしなかった。 前頁/次頁 |
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