前編(9) その夜。少し前。 水島家では、少し遅めの夕食を食べ終わったところだった。 魚月の体のほてりもそれなりにおさまり、ホッとしながら食器を片付けている。 (やっぱ欲求不満なのかなぁ…好きな人と一緒だから…) リビングにくつろいでいる叔父と海斗の方を見て、魚月は溜息をつく。 「なっちゃん。疲れてるみたいだけど…」 「え? あ、平気平気っ。考えごとしてただけ」 心配そうな叔母に笑顔を返し、皿を洗い出す。 「そう? 疲れてるなら無理しなくていいのよ?」 「大丈夫だって~(笑)」 言えるわけがない。海斗のことが好きすぎて、オナニーに耽ってしまったから…だなんて。 「あぁ、そういえば海斗。結局どうなったんだ? あの先生」 番組がCMに入ったからか、叔父が海斗に何か話題を振っている。 「ん? 何が?」 「ほら、あのナントカって女の先生」 「あぁ百合子先生か…」 海斗の声のトーンが少しさがる。 「全然。もう二週間たつけど、音沙汰もないし」 確か、海斗と同じ高学年の担任だった女の先生だ。 二週間程前に突然行方を眩ませ、誘拐か自殺か等と大騒ぎしていたが、まだ見つかっていないようだ。 学校も公にしたくないのか、彼女の実家が捜索願いを出しただけの状態らしい。 「生徒は何とか落ち着いてきたけど…ホント、どこ行っちゃったんだか…」 溜息混じりの海斗の声が聞こえる。 「結構真面目な人だったからさ、心配だな」 他の女の人の心配をしているのはつまらないけど、場合も場合だしと、黙っていた。 皿を洗いながら、段々と海斗達の声が遠退いていくのがわかった。 *--- あれから一週間。給食室の復活で給食が再開し、弁当の期間が終わる。 その一週間、陽菜が作ってきてくれるお菓子を毎日食べ、その度に魚月はオナニーに耽っていた。 たかが一週間。 されど一週間。 帰宅してすぐにオナニーをしてしまう癖がつくには、十分な期間だ。 だが、陽菜はまだ足りないようだった。 その夜陽菜はその屋敷に向かっていた。 「…客か?」 目を開けた先にホールがあり、そこには少年がいる。 「…あの魔女はどこにいるの?」 「妖子は魔女じゃねぇよ。…あながち間違ってもいねぇが」 ラフなTシャツとジーパン姿の少年は、耳のピアスを指で撫でながら呟く。 「その妖子さんはどこ?」 「…きな。こっちだ」 少年は髪をかき揚げ、あの真っ黒な扉の部屋に向かっていく。 「あんた随分慣れてるな…まさか…」 「そうね。三度目よ」 陽菜は、その黒いドアを見つめる。この扉の前に立ったのは、三度目。 一度目は、姉の裏切りを見たときだった。 憧れていた姉が、両親の留守中に見知らぬ男を連れ込み、情交に耽っているのを見てしまった時。 あの美しい姉が、浅ましい獣のように乱れる姿を見て、陽菜は裏切りを感じた。 だから汚した。調教し、奴隷におとしめた。 二度目は、姉を完全に屈服したとき。 そして…。 「これはこれは近江様。どうもお久しぶりで」 ドアが開き、中にいる真っ黒な少女。 彼女と視線を交わすだけで、妙な感覚が生まれる。彼女に会えた時は、願いが叶うときだから。 「今日はどのようなご用で?」 「落としたい子がいるの。…親友よ。だけど…性奴隷にしたい」 陽菜の言葉に、妖子が微笑む。 「いくら欲しいの? 見返りなら払うわ。だから協力してちょうだい」 「…そうっすねぇ」 妖子が、楽しげに髪をかき上げる。 前頁/次頁 |
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