前編(2)
何故俺が、今時そんな時代錯誤なことをしているのか…。それは、俺の実家が関わってくる。
俺の実家は代々霊媒士の家系で、当主の後継ぎとなる者は立志が済むと俗世間にいる『魔』を始末する、いわゆる『ゴーストバスター』の役割をあてられる。
その際、分家である「築館」「幸生」「羽永」の者を一人づつ共として連れ立ち、悪霊祓いや妖魔退治を行うのだ。
それがこの三人で、俺は毎朝…いや、毎日この三人と色々な怪事件を片付けているわけである。
が…俺は正直、この日常が日常だとは思えない。
俺はただ、平凡で平淡な毎日がほしいだけだ。
幽霊が見えたり、妖怪に触れたりすることも異常だし、それを退治したり除霊したりするのが日常になっている現在は…大変不本意だっ。
いくら美少女三人に囲まれて登下校したり一緒に飯食ったりしてたって、全っ然楽しく…。
「マリコ、また乳育ったんじゃねぇの?」
「そういえば、心なしか大きくなったかもね」
「え~ちょっとやめてよぉ」
た…楽しくねぇぞ!楽しくなんかっ。
「光輝~育ってなんかないよねぇ? ほらっ」
なんだよ、いきなり振り向くな。
そう思っていた俺の腕は、真麟によって掴まれ、その推定Eカップの胸をもまされる。
「ちょっ…朝っぱらから何の話してんだお前らッ! 男の前でッ!」
真っ赤になって抗議する俺だが、そんな抗議が聞く相手ではないことくらい百も承知だ。
「そういえば、光輝は男の子だったわね」
「それくらいでガタガタ言ってんなよ。しっかり揉みほぐしといて」
…悪いか、俺も男なんだよっ。
「光輝ったらぁ…エッチなんだから」
「お前が揉ませたんだろうがっ!」
ニヤニヤしながら俺が慌てるのを楽しみ女共を見ながら、俺はやっぱり楽しくなんかねぇというのを、改めて実感していた。
*---
学校について教室に入った所で、やっと開放された気分になる。
が、正直あまり楽はない。あいつら二年の癖に、一年の教室に平気な顔して入ってくるのだ。
今日こそは何事もない普通の日でありますように…。
俺のそんなささやかな願いを知ってか知らずか、昼休みのチャイムと同時に龍香が教室に入ってくる。
毎度のこととはいえ、校内でも有名な美人(龍香は何故か女子にモテる。宝塚だもんなこれ)が教室に入ってくれば、女子は黄色い声を上げ男子もおののく。
…嫌な予感。
「光輝。ちょっとこい」
「あー…俺今から昼食…」
「いいからいくぞっ」
良くない。
全然良くない。
乱暴に連行され、俺はしかたなく弁当箱にしばしの別れをするのであった…。
連れて来られたのは、旧校舎の空き教室。
たまに授業が入る以外は利用する者がほとんどおらず、俺達はよくここで事件の話をする。あー…また事件、起きたんだ。
黄昏れもつかの間、すでに待っていたらしい美凰と真麟の側に放り出される。
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