前編(2)


「…お前、また貫徹明けだろ」
「クククッ…三日目だぜェ?」
「ちゃんと寝ろ馬鹿」

すぐわかる。顔色が悪い。ただでさえ血の気のない顔からさらに血の気が引いているのだ。

「朝飯食って寝ろ」
「久しぶりの朝飯にありつけるってのに、機嫌悪ィのな」

悪かったな。寝坊大王で。そう言いたいのを我慢し、俺は朔羅の顔色を覗き込んだ。

「倒れたらどうすんだ。俺伯父さんにお前のこと頼まれてんだからな?」
「…学校行けっていわねぇのな」

学校。確かにこいつの出席日数は芳しくない。これでもこいつは俺とタメで、同じ高校に通っているのだから。

「お前の体調のが大事。また不眠症再発か? それとも今度は自立神経? …節食障害モード入ったらすぐ言えよ。伯父さん呼ぶから」

病気のオンパレードは全てこいつの持病。他にも心臓と気管支、内臓が弱かったり、メラニンが極端に少ないせいで日光に長時間あたれなかったりする。
超不健康、よくいえば薄幸の美少年…ウーン…。

「ヤダネ。別に何でもねぇよ。ただ論文書いてたら眠れなかっただけだ」

制服に着替える俺の背後でそう可愛いげもなく答えると、朔羅はゆっくり立ち上がって部屋をでていった。

「あ、おい朔羅ッ。朝飯!」
あの調子じゃ、食わないだろうな。

*---

「…どうして俺の周りって変なのばっかなんだ?」

もしかして、もしかしなくとも俺も変人なんだろうか…と、俺は大きく溜息をつくのであった。
朝食を食べ終わる頃に、いつものごとく龍香がズカズカあがりこんでくる。不法侵入だろと思いながら顔をだすと、俺が起きていたことに驚いていた。

「…めずらし。朝飯まで食ってやんの」
「朔羅が起こしにきたんだよ。これ片したらいくから」

皿を洗いながらいうと、龍香は「ふぅん…」と何か納得したような反応をして玄関に戻る。何かあるのか?

玄関で待つ三人は、最近様子が変わっていた。
外見とかではなく、雰囲気が。わかりやすくいうと、以前よりも静かになった。理由は…あの夢が確かならそれが原因だろう。
あの窮鼠の事件の後、天照が三人の夢枕?に立ったのである。夢に現れたというか…。

そうして三人に妙な命令をしたのだ。
龍香にはズイキとかいう、粘膜に触れると痒みが産まれる道具で蜜壷を。
美凰には浣腸を。真鱗には乳首とクリ○リスを縛ることを毎日、三人ともにするように言った。

けどイってはいけない。三人の性感帯を毎日刺激し、絶頂を許さない。
調教というわけだ。
それを三人共守っているなら、体は相当じれったいことになっているだろう。

なんで俺がそれを知っているかというと…天照視点でその夢を見たからである。
あれが俺の妄想なら…相当たまってるぞ、俺。

まぁあれから暫く事件らしい事件も起こってないし、無事残りの学生生活を送れるなら多少の欲求不満は寧ろ健全だよな。
なんて自己完結しながら、俺は三人のカシマシ娘(古いか?)を前に苦笑してしまっていた。



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