前編(1)


朝はけだるい。
目覚めパッチリとは言えない俺は、登校時間が迫っているにも関わらず寝返りをうって「あと5分…」なんて昔の漫画のキャラみたいに呟く。

そこでふと何かを抱きしめたのに気付く。
枕か毛布かと思ったが、妙に温かい。

…あれ?
いくら眠くても、その辺の判断は正常だぞ?
まさか女共…。

俺はゆっくり(つーか恐る恐る)目を開ける。

「Σ…っっ!?!? さ…サクラァッ!?」

目の前の…本当に一寸くらいしかない(これこそ目と鼻の先といいんだろう)距離にあったその銀色に、俺は絶叫していた。

麗しいと言わんばかりのプラチナブロンドは、カーテンの隙間から差し込む朝日に照らされキラキラしている。
いつから見ていたのか少し睨むようなその目線だけが見えるが、その色はかなり不思議だ。
灰の瞳。そして日焼けしたことがないのではないかと言わんばかりの白い肌。

「…いつまで寝てんだよォ…早く起きねぇとまたクサナギに叩き起こされるぜェ…?」

そう言いながらベッドから起き上がる俺の同居人は、腰まで伸ばしたそのプラチナブロンドを欝陶しそうにかきあげた。

夜木 朔羅(よるき さくら)。色素をどこに忘れてきたのかと言いたくなるような透明度たっぷりなその生き物は、まるで作り物のように美しい。
だがこれはれっきとした男なのである。

俺の…天童の家ともっとも深い契りを持つ家系・夜木の息子で、三人みたいに分家とかではない。
代々こちらの女を嫁がせたりあちらから嫁いでもらったりが最も多い血縁なのだ。

実はうちの母さんもバーちゃんもこの家出身。最も、夜木の中にも色々あるからこいつとはそう直系じゃないんだけどさ。
…母さんの弟の子供だから近いっちゃ近いか。平たくいえば従兄弟だ。

「…んで、お前、何して…」
「起こしてやったんだろぉが。有り難く思えバーカ」

そう言って朔羅は、人のベッドからゆっくり下りた。しかし…。

「…何で裸なんだよっ!?」

細く、筋肉何それ美味しいの?とでも言わんばかりに薄っぺらい身体。一糸纏わぬその身体もめちゃくちゃ綺麗で、腰とか脚はまるで女の子。

「…知りたいィ?」
「…結構です」

ニヤァッと顔に似合わない不気味な笑みを浮かべた朔羅を全否定し、俺は頭を抱えた。

「つまんねぇ奴。部屋から直接きたからだよ。オレ寝るときは裸派だからァ」

間延びした言い方は、嫌いな人には本当にムカつく感じだろう。
慣れている俺だって、イライラしてるときは殴り飛ばしたくなるのだから。

しかし流石にそれはめったにしない。朔羅を怒らせたり機嫌を損ねたりしたら、百倍返しにあうからだ。しかも特別ねちっこいやり方とかで。
根暗、陰湿、陰険なんて、こいつの為にあるような言葉だし。
これでIQ未知数の天才少年なのだから、世の中終わってる。

「すーさんは?」
「飯作った後仕事だからってどっか行ったァ。夜には戻るらしいぜェ?」

床に座ったまま、朔羅は自分の髪を欝陶しそうにかきあげる。



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