第2章 第2話「千奈美と彼氏 2」
「白状しましたね」
「はい。しました」
千奈美はとてもお尻が大きいのだ。
丸く膨れ上がったお尻がワンピースを上へ持ち上げ、座った床の上へと潰れるように広がっている。腰のくびれたカーブから、巨尻の曲線にかけたラインは綺麗なS字で、その体格を見るだけでも、いかに良いお尻をしているのかと想像させられる。
「……何か、したい?」
千奈美は迷ったような考え込むような顔をして、極めて神妙な顔で尋ねてくる。
「それはその……。したくない、なんていったら明らかに嘘になるわけで」
「だよね。男の子だし」
そして、さらに考え込む。
額に親指を当て、悩みに悩んだ眉を潜めた表情で、何分も何分も静かに思考を巡らせている。
「…………」
健一は黙って待った。
「斉藤健一君」
やはり真剣な顔で、真っ直ぐに健一を見つめていた。
「はい。なんでしょう」
「……しよっか」
「――え?」
「キス」
「き、キスか……」
もしかして、ひょっとしてと思ったら、そういうわけでもなく、既に何度もしているキスの方を切り出された。長いタメで期待を煽られていただけ、さすがに少しがっかりした。
まあ、そういう千奈美のイタズラだったのだろう。
「へへーん。何だと思った?」
千奈美は小悪魔っぽく笑っていた。
まんまとからかわれたわけだ。
「いや? そういうことだろうなと思ったし」
「本当?」
「思ったからな?」
「じゃあ、そういうことにしといてあげる」
千奈美はおもむろに立ち上がり、すると半開きの傘にも似たスカートの広がりが、大きな尻の盛り上がりによって面積を拡張する。
「千奈美」
健一も立ち上がった。
「うん」
「好きだ」
「もう一回」
「好き」
「あとねー。百回くらい言って欲しい」
「喉が枯れるって」
腰に両手をまわしていくように、健一は千奈美を抱き寄せる。千奈美の顔は上目遣いで健一を向き、口付けを求めるためにその瞳を閉ざしていた。
そこへ、健一は唇を重ねた。
唾液のぬかるみを帯びたお唇同士が、その粘性の水分でぴったりと密着して、生温かい感触が互いの深くまで浸透していく。
口が離れる気配はない。
もう一分以上が経っていても、鼻で息をしている二人はお互いを求め合ったまま、千奈美は彼を抱き返す腕により一層の力を込めている。それに応じるようにして、健一も背中を強く抱き締め、苦しいほどまでに締め付けた。
そして、やっと唇が離れる。
「健一?」
甘い声だ。
「うん?」
「触るだけなら」
どこか、決意が篭っていた。
受け入れる覚悟を決めてくれたのだ。
「……ありがとう」
背中をさすっていた手を動かし、下へ下へとスライドさせる。そこに触れる直前となって、本当に触ってもいいのかという躊躇いから、健一は今一度目で尋ねる――いいか? と。千奈美はコクンと頷いていた。
健一は両手の指を全て広げて、巨尻の上にべったりと貼り付ける。
まるでほどよく空気を抜いたゴムボールだ。ふんわりとした柔らかい塊は、少し力を込めただけで、左右の五指が沈んでいく。指に強弱をつけて揉みしだくと、むっちりと肉の詰まった感触が手の平全体に伝わる。試しにいきなり力を抜いて指を離せば、尻の元の形に戻ろうとする弾性が働いて、プルンと弾けるように振動していた。
すぐに勃起した。
「……はぅ」
抱き締めあった密着で、健一のペニスに気づいた千奈美はピクンと肩を弾ませる。健一の胸に顔を押し付け、重心を預けて健一に身を任せた。
「すげぇ……」
ワンピースの布地表面を撫で回すと、お尻を包むショーツの生地を手に感じた。指先でゴムの部分を見つけてなぞっていき、割れ目に五指を差し入れ上下にさすった。
「……恥ずかしい」
「けど、デカくて柔らかい」
太ももの付け根にある垂れの部分から、指で持ち上げるようにして、千奈美の尻をぷるぷると揺らしてやる。まるで皮膚が波打つようによく揺れて、下から上へのウェーブで持ち上がった肉がプルンと落ちる。
そんな振動が、プルッ、プルッ、と。
揺らさば揺らすだけ、千奈美の巨尻は振動した。
「健一だって、大きい」
自分ばかり恥ずかしくて、何か言い返したいかのように千奈美は言う。
「……だね」
「男の子って、あれだよね。その、抜かなきゃ駄目?」
自分にも役目があって、真っ当するべきかと迷った顔で、千奈美は健一に上目遣いを向けて尋ねた。
いけるのだろうか?
今なら、この少し先まで……。
「できるなら、そうしたい」
「そっか。私まだ、裸は恥ずかしくて、他にどうすればいいかな」
ドキリとした。
自分は一体何をするべきなのか。その判断を健一に委ねているのは、男としてのこちらの願いがいくらか叶うということだ。
試したいことはたくさんある。
それが今、できるのか?
「手で、するとか」
恐る恐る言ってみた。
すると――。
「して欲しい?」
千奈美の上目遣いが、健一を真っ直ぐ射抜く。
できるのだ。
今まで夢に見てきたプレイの一つが行える。ただ性的な欲望が叶う嬉しさは当然だが、それ以上に千奈美が自分のために何かをしたいと思っている。喜ばせたいと思って、覚悟を決めた眼差しを向けている。
ドクンと、心臓が弾み上がった。
それは証拠になるのだ。
千奈美がどこまで自分を好きでいてくれて、だからこそ相手のためになることをしてくれるのかと、好き合っている証となる。
以前までなら、エロスは単なるエロスだった。
しかし、こうして一人の女の子を向き合ってみてみると、エッチが一つのコミュニケーションになるという、考えてみれば当たり前の事実に気がついて、健一はもっと本当の意味で興奮していた。
自分の気持ちを行動で示して、尽くそうとしてくれている事実。
千奈美が、健一を性的に喜ばせたいと思っている事実。
それらがたまらなくて、ズボンの中にある肉棒の膨らみは、もはや血管が破裂せんばかりにまでなっていた。
「ああ、して欲しい」
「仕方ないから、してあげる」
千奈美は恥ずかしそうに苦笑して、ズボンの膨らみへ手を近づけ、その右手をペニス間際の腹の上まで運んでいった。
これから、その手が股間を握る。
健一は生唾を飲み込んで、躊躇いと恥ずかしさで立ち止まった手首を掴む。決して強引にはしないようにと、力を加えすぎない程度の握力で、ゆっくりゆっくりと、優しく股間へ導いていき、千奈美の手の平を肉棒に乗せた。
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