第2章 第1話「千奈美と彼氏 1」














第2章 第1話「千奈美と彼氏 1」

 検診及び測定の実施される当日――。

 平沢千奈美はため息をついていた。
「はぁー……」
 深く、ため息をついた。
 どうして、裸で検診を行うのかについては、生きていれば必ず先生から聞かされる機会がある。過去の病例多発事件なんかも、学校で見せられたドキュメンタリー映像を介して知っていて、その恐ろしさについても学んでいる。
 だから、検診自体に文句は言えない。
 言えないけれど……。
「はぁ……」
 言いたい。
 だって、せっかく付き合っている彼氏がいて、ハダカで彼を喜ばせてあげる未来はいつだろうかと想像していた。真摯な愛を受け取って、大好きな相手のモノを感じ取りたい乙女の夢というものがあった。
 ……あんまりだ。
 せめて、もう少し待ってはもらえないのだろうか。
 どこまでも、憂鬱な気分に浸っていた。

 これはその数日前。

「ねえ、今って何考えてる?」
「え!? ええっと、何だろうな」
「エッチなことでしょ」
「は! そんなこと……ねーし……」

 唐突な言葉を受け、斉藤健一は自信のない小さな声を漏らしていた。
 この恋人と――平沢千奈美と付き合い始めたのは中三の十二月からで、今年の四月から晴れて高校生となり、四ヶ月目の関係に差し掛かっている。四ヶ月もあればいい加減にキスはしているし、手を繋いだり抱き合ったり、その程度のことも経験済みだ。
 しかし、まだエッチだけはしていない。
 お互いの家を訪れたり、その時には都合良く両親不在だったり、チャンス自体は今までに何度かあったが、強引なことをして嫌な思いをさせたらと、怖がらせてしまったらどうしようかと憚られ、内心ではやりたいてと思っていても、実際に押し倒す度胸はまだなかった。
 千奈美は初めての彼女だから、いつどのタイミングで手を出せばいいものか、健一にはわからないのだ。
キスまではどうにかなったが、その先がなかなか駄目だ。
「健一? 焦ってるねー」
「焦ってない焦ってない」
「うそ」
「……はい。嘘です」
 追求され、健一は素直に認めてしまった。
 千奈美はとても魅力的だ。
 大人しそうな地味めな顔は、派手さには欠けるが整っている。下手な美人よりも手の届きそうなタンポポというべきか。あまりアイドルチックな可愛らしさの女の子より、平凡な自分の身の丈に合っている気がして話しやすい。
 教室でも少しばかり大人しくて、華やかな女子達とはしゃぐように喋るより、同じく文化系の大人しいタイプと付き合っていて、好きな本だとかの話をしている。健一にもいくらかの読書癖があるので、共通の趣味もあって楽しい。体育会系のように声が大きかったり、馬鹿騒ぎをする男子グループの煩いノリが苦手だから、割りに静かなタイプの千奈美とは、一緒に過ごしていても本当に落ち着くのだ。
 外見だけなら、他に魅力的な子はたくさんいたが、華やかな女の子よりも千奈美のことが気になったのは、やっぱり性格の一致が大切だ。パソコンでAV女優でも見る分には、顔だけで選ぶことも多かったが、クラスメイトに関して言えばルックスが理由で惚れたことは一度もなかった。
 もちろん、全くもって興味ゼロかとまでいったら、多少は嘘だが。誰だってそこにアイドルのような容姿の持ち主がいたら、最低限『多少』は興味が沸くものだろう。
 けれど。
 きちんと惚れたのは、千奈美だけだと思った。
 だから、告白した。
 まさかOKをもらえるとは思わなかったが、その場で慌てふためいた千奈美から、やがて静かに頷く形で返事を貰って、受験前の時期にたった数回だけのデートをした。
 同じ高校志望だったため、合格発表は一緒に見に行ったのだが、嬉しくも二人一緒に合格が決まったことで、その日嬉しかった盛り上がりで帰り際にキスをした。
 それから、今日になるまで何度かのキス経験。
 中学卒業から高校の入学前という空白期間のデートで、映画館や遊園地で手を繋いだ。一緒に夜景を見ながら抱き締めあった。
 どこまで進んでいるかといったら、千奈美とはまあそんなところだ。
 当然、キスよりも先のことにも興味がある。
 千奈美の部屋に招いてもらって、ワンピース越しのお尻を気にしていたら、その視線がバレて追求されたというわけだ。



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