第3話

 恥ずかしければガウンや下着着用でも良いとのことで、頂いた紙ショーツと紙ブラジャーに着替えた私は、ガウンを羽織って待機した。
 マッサージルームはオシャレな仕上がりだ。
 ラテン系の壁紙模様に艶やかなフローリングと、観葉植物で緑を添えた一室にうっとりとするようなアロマが焚かれ、とても落ち着きやすい雰囲気だ。
「準備はよろしいですか?」
 友田君がベッドの傍へやって来る。
「い、一応……」
「今回春野さんの担当をさせて頂く友田典明です。まあ高校以来になるわけだけど、あれからこういう仕事に就きました」
「マッサージ師?」
「そうだね。あの頃から興味があって、色々と勉強してたんだ」
 穏やかで落ち着きのある声質は、それだけで耳をくすぐるところがある。実は肌からフェロモン物質でも出てはいないかという甘い顔立ちも、長身のスタイルも、全てに乙女心をくすぐるずるさがあった。
 この人から、これから性感マッサージを?
 やばい、緊張する。
「そうだったんだ。私は商社のOLでさ――」
 テンパって声の上ずっている私は、緊張を誤魔化すべくして早口で身の上をペラペラ語り、上司の愚痴をこぼすと友田くんは、うんうん、そうだねと、頷きながらしっかり耳を傾けてくれている。
 友田くんも自分が今の仕事に就くまでを語ってきて、少しのあいだ雑談に花を咲かせた。
「春野さんは昔より綺麗になったね」
 なんてことをサラっと言われてしまっては、「えっ!?」と一瞬私は固まる。
「バスケやってたでしょ? 僕としては背が高めなのは悪くないし、スポーツでラインの出来てる体って、とてもいいと思うんだよね」
 なんぞ褒められているんだ私は!
 ま、まあ……。
 お喋りに夢中になったおかげで、顔の強張るほどの緊張も和らいで、話題が落ち着いたところで友田くんは切り出した。
「そろそろ始めようか」
「……そ、そうね」
 とうとう、この時が来てしまった。
「ガウンはどうする?」
「うーん。着たままでも?」
 だって、いきなり下着姿はちょっと……。
「うん。それじゃあ、初めはそのままにして、だんだん気持ちを高めてあげるからね」
「あのっ、優しくしてね? 友田くん」
「もちろん」
 ニコっとした微笑みは、やっぱり反則くさい。
 アイマスクがあるというので視界を閉ざし、マッサージ用のベッドにうつ伏せとなり、全身の力を抜いた私は、枕に顔面を埋め込んだ。
 私のガウンはパチっと留めるスナップボタン式で、バスタオル巻きのようなことになっているので肩から腕にかけては露出している。背中の肩甲骨まわりも見えている。丈は十分に膝のあたりまでかかっているが、一体どこから触るのだろう。
 アイマスクの厚みが完全に光を遮断して、物音でしか周りの様子がわからない。 
 わからないから、周囲にやたらと意識がいく。
 何か、棚から取った音だろうか。
「アロマオイルの効能で肌を良くするからね」
 きっとオイルを手に取ったのだろう。足首から太ももにかけ、トロみのあるものが伸ばされて、私の足はヌルヌルにコーティングされていく。
 友田くんの気配が背後へまわり、指先がそーっと触れてくる感触があったのは足首だ。触れるか触れないか、いわゆるフェザータッチがアキレス腱を細やかにくすぐって、円を描くように撫で始めた。
「始めるからねー」
 ブルブルと腕を振動させた指の震えが、産毛だけを撫でてぐるぐると、回転しながらふくらはぎへ上がってきて、膝の裏まで到達すると、アキレス腱のスタート地点に戻ってしまう。
 な、なんだこの感じは……。
 くすぐったいようでいながら、本当にくすぐったいのとは違う微妙な心地が、私の皮膚を少しずつ溶かしているようだ。
 そ、それに熱い! 火照ってくる!
 皮膚が発熱した熱さは、もしやオイルの仕業なのか?
 タオルの丈が少しだけ上にずれると、まずは約半分ほど出た太ももに同じアロマオイルをまぶしていく。ぬかるみによって固められた私の皮膚は、振動気味のフェザータッチでわずかに産毛だけで浴びていた。

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検査や診察で女性の(主として少女の)体を隅々まで調べ羞恥を煽る官能小説。
少女の頬が桜色に染まるのを眺めているような錯覚に陥ります。

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