第2話

 高校時代の私はバスケ部に所属していた。
 そこには何故か男子マネージャーがいた。
 同じクラスの友田典明くんは、例えるなら汗からフルーツの爽やかな香りが漂いそうな、まあ誇張の過ぎる言い方だけど、艶やかな黒髪を風になびかせる横顔は、どことなく甘いフェロモンを出していたと思う。
 百八十センチに近い身長の持ち主で、体育の授業であったバスケでも、華麗なドリブルからダンクシュートを決めていた。
 マネージャーとかやっていないで、もうお前ちゃんと男子バスケやれよとツッコミを入れたくなるのは言うまでも無い。
 そんな友田君から、私はマッサージを受けたことがあった。
「疲れ、取ってあげようか?」
 激しい練習で立ち上がる気力もなくなって、死体ごっこでもしているしかなかった私に、明るい笑みで微笑んできた友田君は、それから整体だとかエステに興味があって、実はそういう勉強をしているのだと話してきた。
 何となく信用して、私は身を任せた。
 綺麗な手でドリンクを配り、部員の怪我に気づいて声をかけ、重い荷物の持ち運びを手伝って下さる気遣いのできる男の子というポイントはもちろんあったが、果たして私はそれだけの理由でボディタッチを許したのか。
 なんてことはない。
 別に二人きりでも何でもなく、周りには他の女子達もいたので、まさかおかしな真似ができるはずもなかったからだ。
 それに、どの程度接触があるのか尋ねれば、胸やお尻へのマッサージ法もありはするけど、当然NGだろうしやめておくよと、友田くん自身が言うわけなので、あとは際どい内股も嫌だという条件で疲れを癒して頂いた。
 ふくらはぎを揉むのも、太ももに接触するのも、それはどういう手法で効果があるのかを逐一説明していきながら、心地良いマッサージで気持ちよくしてくれた。
 傍目にプロと見えたのか。
 それとも、甘いマスクのイケメンに触られたい下心か。
 何にせよ私へのマッサージが終わるなり、「私も私も!」と群がる黄色い声の女子軍団にも快い笑顔で接していた。
 プロのサービス業者かね、アンタは。
 なんて感想を抱くほど、丁寧な接し方で順番にマッサージを行っていた。


 さしてロマンチックというわけではなく、ただそれだけの思い出だが、練習が辛かったことを大いに汲み取り、労わりながら丁寧に扱って下さるマッサージは、とてもよく筋肉がほぐれて癒されたのだ。
 お金を払ったマッサージ店なら、あの時の感じを上回ってくるのだろうか。
 と、そんなことを私は思ったわけだ。
 ホームページを確認すれば、プレイ内容については事前にNG事項を告げておくこともできるらしい。
「本当に安全に受けられるサービスですか?」
 予約電話の際に尋ねてみた。
「もちろんです。お客様を気持ちよくして差し上げて、くつろいで頂くことが当店の使命になりますから、女性の嫌がることは致しません。もしも途中で駄目だと思ったら、いつでも中断を申し出て頂いても」
 なるほど、なるほど。
「挿入とかって」
「もちろんご希望しだいです。NGにしておきますか?」
「はい。お願いします」
「かしこまりました。局部への愛撫はいかがなさいますか?」
「ええっとぉ……」
「迷われているようでしたら、実際にマッサージを受けてみてのお気持ちで判断して頂くことも可能です。その場合は担当のマッサージ師の方にもお伝えしておきますので」
「はい。じゃあそれで」
「コースはどうなさいますか」
「百二十分でお願いします」
 あとは日曜日の朝に時間を決め、当日を迎えた私は、担当のマッサージ師として案内に現れた男の顔に仰天した。

 ――友田あぁぁあぁああああああああ!

 何故だ! 何故お前なんだ!
 元クラスメイトだぞ!?

 しかも、高身長からなるスラっとしたスタイルの良さは当時から変わっていない。スリムな体格から伸びる脚のラインも、爽やかな香りを放出しそうな顔立ちの良さも、何もかもが百点満点というもので、これを上回るルックスを求めようなど贅沢すぎて罰が当たる。
「あれ? もしかして、春野恵美さん?」
「覚えてるし!?」
 つ、つまり――。
 元クラスメイトにお金を払ってエッチしてもらう状況?
 やばい、やばすぎる。
 どうするんだこれ……。

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検査や診察で女性の(主として少女の)体を隅々まで調べ羞恥を煽る官能小説。
少女の頬が桜色に染まるのを眺めているような錯覚に陥ります。

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