第2話

「気丈ですね・・・未だに抵抗する意思を見せるとは。まぁ、すぐに恐怖に歪むと思いますが・・・」

 男は微笑みながら、錫杖を壁に立て掛けると、ローブを脱ぎ始めた
 しゅる、という布摩れの音がすると、男が身につけていた衣服が地に落ちる
 息を呑む。気管を空気が駆け、声帯が、ひ、と鳴った

──驚くのも無理はない
 男の身体はすでに半壊して、所々の肉が削げ落ちたようになくなっていた
 生きたままの肌の質感と生々しさを持ったままの腐乱死体。まさに「生ける死体(リヴィング・デッド)」
 
「この身体ももう限界でしてねぇ・・・新しい身体が欲しいと思ってたんですよ」

 男は、にやり、と口を歪めながら語る。不気味な光景である
 何しろ、腕は肘の骨が露出し、右脇腹の肉もごっそりと消え、内蔵──紐状の形からして腸だろう──がはみ出している。太腿に至っては外側の肉が完全に削げている
 ラァラは、恐怖によって震えて上がっている。見た目からの恐怖もさることながら、男の台詞で、これから起きるであろう事を予測したのだ

 『この男は、私の身体を乗っ取るつもりなのだ』と──

「エルフの肉体はさぞ長持ちするでしょうねぇ。あ、大丈夫ですよ。悪いようにはしませんから」

 直後、男の身体が仰け反り、丸見えの腹腔から何かが飛び出す
 ごぽ、という濁った音を伴って現れたソレは、あまりにおぞましく、忌むべきものであった
 赤黒い、血と肉の丸い塊。大きさは一抱えほどもある。表面には血管が浮き、どくどくと脈打つのが見て取れる。そして何より・・・その身体には無数の触手が生えているのだ
 太さは約3センチぐらい。短剣の柄ぐらいだ。そんなに太くはない。だがそれは平均的なものであって、中には指のように細いのもいれば、ラァラの手首よりも太いのも存在する。様々な太さを持つ触手がくねり、絡み、蠢く
 そのうちの一本がラァラに気付いたかのように、鎌首をもたげた
 それに習うかのように、他の触手たちも一斉に首をもたげる

ざっ

 妙に統率のとれた動きで、触手全てがラァラの方を向く
 一瞬の、間

ぎゅるるるるるるるるるるっ!!

 見るからにおぞましい、どろりとした血の色をした触手が一斉にラァラの元に殺到する

「んむ!? ・・・むぅぅー!」

 触手たちはあっという間にラァラの身体中に絡みつく
 ラァラはその触手たちの感触に嫌悪感を隠せないでいる
 ずるずると身体中を這いずりまわる触手の群れ
 ラァラの白い肌に、触手の体表面から滲み出た粘液が付着していく。その粘液はナメクジが通ったような光沢を放ち、べたり、と肌に張り付く
 手足は拘束され動かせない。もがけばもがくほど、堅い革のベルトが肌に当り、擦れ、食い込む。白い肌が赤く擦り剥け、ついには血が滲み、雫となって垂れ落ちる
 触手たちは、先端の小さい穴から紫色の舌を伸ばし、こぞって血を舐め始める



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