<第26話:延長戦>

乗務を終えた恵は、成田空港のターミナルで、ワンピースの上にカーディガンを羽織り、一人買い物をしていた。
買っているものは、ピンクのパンティと黒のストッキング、そして制汗用のウェットティッシュである。
カーディガンを羽織っているとは言え、見る人が見れば職業や会社が分かるので、落ち着かない。
いそいそと買い物を終えると、足早にトイレに入り、着替え始めた。

成田から家まで電車で1時間かかる。
その間、何者かによってビショビショにされた下着のままでは、余りに気持ち悪いし、匂いも漂いかねないので周りの目が気になる。
前日まで来ていた下着を着て帰ろうかとも思ったが、もう1つ気になる事があって、新しいのを買って履いた方が良いと、恵の勘が言っていた。

恵はアソコを丁寧に拭き取り、パンティとストッキングを履き替え終わると、手持ちのバッグから白い封筒を取り出した。
未開封の封筒は、実は恵の知らぬ間に入れられていたもので、乗務を終えて帰り支度をしている時には気付いていたのだが、同僚がいるところで開く勇気は無く、今に至っていた。
誰にも見られる心配の無い所に来て、漸く覚悟がついて開けると、中にはネックレスが2つと、名刺とクレジットカード、そして便箋が入っていた。

え!?これって機内販売でお渡ししたネックレス。それにカードもお返しした筈。。。何でここに?

恵は、意外な内容物に狼狽しつつ、手紙を開いて読み始めた。

(前略)親愛なるCA様
機内販売で購入したのを客に渡さず、客のカードも預かり放しのCAなんて初めて見たよ。
そうそう、客の商品入れてた袋にも手紙と、恵ちゃんのパスポート入れといたよ。え、何でそんなことが出来るかって?
そんなの、機内で気付かれずにパンスト破いたり、アソコにバイブ突っ込んだり出来るんだから、入国審査後の恵ちゃんのバッグの中身を客の荷物と入れ替えるなんてお手の物だよ。
他のCA様達も、並んで歩いてたくせに僕の犯行に気付いたのが一人もいないんだもん、制服着て恰好付けてても、皆レベルは一緒だね。
ここ歩いてるCA軍団が履いてるパンストを手当たり次第派手に引き裂いて、更にパンプス全部脱がして隠しちゃったら、皆揃ってどんな反応するかな?って妄想しちゃった。
機内のゲームは1勝1敗のタイだったから、勝負を決めないとね。延長戦ってヤツね。
恵ちゃんには、商品を購入した客のトコに行って、商品とカードを返却してもらいます。名刺があるから連絡先は分かるでしょ。
大丈夫、客の方にも手紙入れといたから。JIAの職員から連絡がある筈から明日まで待ってあげて。明日になっても無連絡だったら届け出て良いよって。
届け出ちゃったらどうなるかな。窃盗かな。多分何話しても信じてもらえないだろうね。気付いたらバッグに入っていたなんて。僕が何かやったという証拠は一切出ないから。
ビッグニュースだ。JIAのCAが機内で窃盗事件起こしたって。恵ちゃんの人生も終わるな。
ゲームはね、今日中に返却を終えて家に帰れたら恵ちゃんの勝ち。任務を遂行できなければ僕の勝ち。
頑張ってね。JIAご自慢の美人CA様。(草々)

またしても、こんなゲームだ。そもそも参加しなければ私の人生は27年で奈落の底に落とされるというのだから、従う以外ないではないか。
何時も何処かで見ていて、好きなように私を弄び、楽しんでる。悔しいが私の力では抗うことが一切出来ない。ただ、大人しく従って、少しでもマシな結果になる事を願うしかない。

名刺には時遊人コーポレーション代表取締役社長 山田 太郎と書かれている。
手紙を読み終え、トイレを出て喧噪に紛れようと通路を歩き始めた恵は、携帯電話を取り出し、名刺を見ながら電話をかけた。

「はい、自遊人コーポレーションです。」

男性の声、感じからして初老くらいであろうか。

「私、日本国際空輸JIAの高橋と申します。恐れ入りますが社長の山田様はいらっしゃいますでしょうか?」

「山田でございますか。生憎今はおりません。1時間ほどすると戻ってくると思いますが。JIAの高橋様、もしかして高橋恵様ですか?」

「そ、そうです。何故お分かりになったのですか?」

「私、山田の秘書をしております佐藤と申します。
成田から移動中の山田から電話がありまして、機内販売で購入した袋の中に、何故か購入品の代わりにパスポートと手紙が入っていたと。
 何でも高橋恵様のパスポートで、手紙には本人から電話があるから暫く待っていて欲しいと書いてあったらしいんですね。
 山田は今移動中なのですが、オフィスに戻るということなので、もし電話があった場合は、オフィスにご案内するようにという指示を受けております。」

「左様でございますか。それでは、ご迷惑をおかけしますが、急ぎそちらに向かうように致します。」

「それでしたら、リムジンバスでTCATにいらしてください。迎えの車を用意します。」

やっぱり新品購入して着替えておいて良かった。昨日着た下着なんか履いて行った暁には、どうせまたヤツに酷く罵られるに決まっている。
「天下の国際線CAが、5年もキャリア重ねながら使用済み下着を履いて客のトコにお詫びに行った」とか言って。

恵は、荷物を持ってリムジンバスに乗り、TCATに向かった。



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画像は相互リンク先「PORNOGRAPH」CAアンリ様からお借りしています
(原寸より縮小しています)






























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