<第4話:犯行予告>

ストッキングを履き替えてトイレを出た恵は、ポーチを元に戻そうと自席に戻り、バッグを開いた。と、そこに、新しい手紙が入っていた。
慌てて胸ポケットを確認したが、トイレで答えを書いた前の手紙が無くなっている。犯人はまたしても気付かぬ間に胸ポケットから手紙を抜き取って、新しいのをバッグに入れ込んだということか。
周囲には全く人気が無い。こんな一瞬でどうやれば出来る芸当なのか。まったくもって信じ難い。
恵は改めて周囲を見回し、人がいないのを確認すると、恐る恐る新しい手紙を開いて読み始めた。

(前略)親愛なるCA様
今履いてるのと予備1着で最後なの?それだけしか持って来てないの?何だ詰まらないな。あと1枚しか破く楽しみが無いってコトか。
それにしても優しい僕が再質問してあげて良かったね。黙って問答無用で破き続けたら、離陸後1時間経たずにお姉さんのパンスト無くなるところだったじゃん。てコトは残り6時間パンスト無しで乗務だよ。
ご自慢のパンスト美脚と言ったって、予備パンストまで全部破れたら作れなくなっちゃうんじゃん。そういう時CAってどうするの?キャリアも5年目に突入したってのに、随分とガード甘いんだね。
まさか制服着て偉そうにCA気取ってれば何とかなるなんて甘い考え持ってた訳じゃないよね。そもそも、その恰好良い制服姿だって、僕が手を出さないでいるから保ってられるんだって分かってるのかな?
まぁ、それはさておき、そろそろゲーム開始といきますか。犯行予告ってやつね。
これから軽食のサーブに入るよね。その最中は乗客対応しながら自分の足許、特にパンストに気を付けるんだよ。僕が狙ってるから。破れたら残り1枚を6時間守り通さなきゃならなくなるからね。
今度はさっきと違って、大っぴらに引き裂くつもりだから、もし僕の動きに気付けなければ、大切なパンストちゃんが脚に巻き付ついたまま、二目と見れない状態で通路を歩くことになるよ。
狙われるタイミングも分かってるし、流石に今度は気付けるかもね。何せキャリア重ねたJIAが誇る国際線CAだもん、見事に感づいてご自慢のパンスト脚守りきるかもね。もし守り切ったらお姉さんの勝ちね。
もし守りきれなければ。さぁ、どんなコトになるか。さっき破いて分かったけど、偉そうに脚魅せつけて乗務するCAも、巻き付いてるのは所詮フツーのパンストだもんね。僕が手をかけたら一瞬でビリビリいっちゃうよ。
きっと誰が見ても直ぐ分かるくらい派手にいっちゃうだろうな。うわ~、あのCAのパンスト酷いな。どうしたらあんなん履いたまま仕事できるんか?って周りの客が思うくらいに。
そうなったらどうする?僕の前で泣いちゃってくれる?それとも走って逃げる?まぁ逃げたところで「狭い機内」ですが(笑)。制服着たまま泣くCA見てみたいし、血相変えてその場を逃げ出すCA見るのも良いな。
さぁ、間もなくゲームスタートです。5年目CA高橋恵ちゃんは、ご自慢のパンスト脚を僕から守り切って軽食サーブを終えることが出来るでしょうか。それとも無残に敗れ去るでしょうか。
それじゃ、客席で格好良くCA頑張るお姉さんの活躍祈ってるよ。(草々)

何だこれは。ゲーム?犯行予告?私の名前やキャリア年数まで知ってるなんて。こうやって小出しに色々持ち出して、手紙読んで困惑してる私を何処からか見て楽しんでるのか。コイツは。
最低な人間だと罵ってやりたいけど、何も出来ずに馬鹿にされたままだ。悔しいが。
大っぴらにストッキング破かれるなんて冗談じゃない。そんな事の為にこんな締め付けるもの履いてる訳でもなければ、破かれるために予備持ち歩いてる訳でもないんだから。
でも今回は何時、何処を狙うかということがはっきり予告されてるんだから、香織にも協力してもらえば、何とか破かれる前に気付けるかもしれない。

読み終えた恵は、手紙をポケットに入れると、軽食サーブの最終チェックをすべくギャレーに入った。
そして、全ての準備が整い、ワゴンを客席に引き出そうとする直前、恵は香織の近くに寄っていき、彼女の耳元で囁いた。

「これからサーブだけど、ここでまた何かされる気がするの。多分さっきと同じように脚を狙って。だから吉永さんに怪しい人見つけるのを手伝って欲しいの。」

「喜んでお手伝いさせていただきます。自分で足許を視界に入れながらお客様にサーブするというのは難しいですから、何か道具を使うと気づかれずにああいったことが出来てしまうかもしれないですもんね。
 でも少し離れて外から見ていれば、足許に何かしようという怪しい動きも見つけられるかもしれませんから、こっちで監視して捉えてやります。」

「犯人の狙いが私だけなのか、無差別なのかも分からないから、今回はお互いに相手の事を監視出来るような距離を保ったままサーブをしていきましょう。」

「了解です。あんな事する人間は許せません。絶対に見つけてやりましょう。そして、二度とこんな事しないようにたっぷりとお灸を据えてやりましょう。」

頼もしい後輩である。頼もしいだけではない。頭が良い。少ない言葉数で真意をくみ取ってくれる。これなら、私の周囲で起こる怪しい動きを察知して、犯人のトリックを見つけてくれるかもしれない。
もし犯人を捕らえることが出来れば、何故こんなことをしたのか問い詰めて、二度とやらないようにさせなければ。

香織の言葉に勇気づけられた恵は、意を決して香織と共にワゴンを引いて客席に進んで行った。


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画像は相互リンク先「PORNOGRAPH」CAアンリ様からお借りしています
(原寸より縮小しています)






























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