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<第34話 : 誰もいないオフィス> 後ろ髪をアップに纏めて銀色のピアスを揺らめかせ、上下黒のパンツスーツにエナメルレザーのピンヒール、そんな勝負モードのまま複合プリンターの前に屈んで紙を補充している真樹。 そんな彼女に迫った史郎は、背後から一気に抱きついた。 「きゃぁっ!!」 夜の11時を過ぎ、二人以外誰もいない秘書課のフロアで、真樹の大きな悲鳴が響いた。 一瞬である。一瞬のうちに右腕で背後から身体を巻き込むように抑え込み、左手でアップに纏めた後ろ髪を鷲掴みにして、頭を複合プリンターに押し付けた。 「背中が隙だらけなんだよ。真樹ちゃん。」 真樹は一切反応が出来なかった。紙の補充に気を取られていた真樹は、ピンヒールのまま屈むという態勢の悪さもあり、一瞬で史郎に押さえ込まれ、動けなくなってしまった。 「な、何でこんな。や、やめてぇ!」 大声を上げ、必死に抵抗しようとする真樹であったが、10cmのピンヒールで屈んでいたのでは力が入らない。 バランスを崩して複合プリンターに押し付けられるまま、虚しく身体をモゾモゾ動かすのがやっとであった。 「ぎゃぁぎゃぁ騒いだって誰もこないぜ今日は。僕の力はよ~く理解してるだろ。最年少執行役員、三ツ瀬真樹さんよ。」 1か月前の悪夢がフラッシュバックした真樹は、顔から血の気が引き、ガタガタと震え始めた。 「な、何でこんなこと。こ、ここは会社の中、、、だよ。。。」 「そうだよ。会社の中だよ。だから良いんじゃん。前から夢見てたんだよ。 パンツスーツで身を固めて、ハイヒールの音高らかに鳴らして偉そうに立ち回る三ツ瀬真樹を、会社の中で絡めとってヒーヒー言わせてやりたいってな。 しかも今日はクライアントとの会合の後で、バリッバリの勝負モードときてるんだから、スーパーキャリアウーマン三ツ瀬真樹を襲うには絶好の日ときてる。僕も運が良いね。 どうだい?自分がいつも恰好よく仕事してるオフィスの中で、ダメ男と呼んでた部下に捕らえられて怯える気分は?いいザマだな。流石の三ツ瀬真樹も震えるしかないだろ。」 言ってる間に、史郎の右手が真樹の足元に伸びてきた。 屈んだまま複合プリンターに押し付けられた真樹は、パンプスから踵が外れ、完全な爪先立ちになっていた。 そんな真樹の踵に手を伸ばした史郎は、そのままナイロンの被膜に包まれる足裏に指先を這わせていき、パンプスと爪先の間まで滑り込ませていった。 「お~や、真樹ちゃんご自慢のハイヒールとストッキングに包まれたおみ足、随分と蒸れてること。朝から何時間履き続けてきたんだろうね。この真夏に。 いくら美人で頭良くて仕事出来て、更にパンツスーツにストッキング・パンプスで偉そうにカッコつけても、こん中こうやって蒸れちゃうのはどうしようもないみたいだね(笑)」 髪の毛を鷲掴みにされて頭を複合プリンターに押し付けられた真樹は、震えたまま金縛りにあったように動かない。 「ふん。良いじゃん。1か月前の薬がしっかり効いてるみたいだね。外見はしっかり作りこんでいても、中身はこんなもんか。これなら楽しめそうだ。」 抵抗しようともしない真樹をいいことに、足裏を撫でていた史郎の右手は、ナイロン被膜の上を這いながら、黒いパンツの裾まで移動していった。 そして、掌を広げて足の甲や足首、踝と撫でまわし、そのままパンツの裾をずり上げつつ、ふくらはぎや脛までをも撫でていった。 史郎の手には、生脚とは違う、ナイロン被膜に包まれた脚のザラつきや貼り付き、そして化学繊維独特の硬さが伝わってくる、その感触を史郎は大いに楽しんだ。 「やっぱ良いねぇ。スーパーキャリアウーマン三ツ瀬真樹が、パンツスーツで固めて殆ど人目に触れさせないナイロン被膜に包まれた脚の触り心地。僕だけの特権だな。彼氏を除けばだけど(笑)」 裾を捲り上げたまま右手で触り続けた史郎は、足首にあるナイロン被膜の皺を指先で摘み上げ、爪を立てながら捩っていった。 真樹の足首を包んでいた薄いベージュの生地がカサカサと音を立てて引き伸ばされ、網目を広げられていき、やがてプスッという音と共に史郎の指を中に貫通させてしまった。 「おぉ!穴開いちゃった。やっぱ最年少執行役員に就任する三ツ瀬真樹でも、脚に巻き付いてるストッキングはフツーのだな。」 言いながらブチブチと穴を広げつつ中に右手を押し入れていく史郎。やがて、史郎の右手は全て中に入り込み、真樹の足首をガッチリと掴んだ。 そして、そこから足の甲へ向かってスルスルと手を滑らせていく。ベージュの薄い生地は足首から足先にかけて順番に盛り上がり、中で史郎の手がモゴモゴ動いているのを透かし見せている。 史郎の指先は、ナイロン被膜の中に潜り込んだまま這い進み、パンプスに覆われている真樹の足指の根元に達した。 「この足指、相当蒸れてるね。僕の指先にしっとりと湿り気がくるぜ。これだけ何時間も履き続けて蒸れた爪先、嗅いだらどんな匂いするかなぁ?」 真樹の足指をナイロン被膜の中で直接擦りながら史郎が囁いた。 「な、何よ、そ、そんな。。。こ、こんなこと直ぐに止めて。」 声を震わせながら必死に抗議する真樹だったが、史郎に止める気配は全くない。 「止める?止める訳ないじゃん。この日を夢見て今日まで過ごしたんだから。真樹ちゃんがスーパーキャリアウーマンとして格好良く決めたつもりのスーツ姿は、男の僕にとって最高のご馳走なんだよ。」 史郎はナイロン被膜の中から右手を抜いて、両手で真樹の髪の毛を鷲掴みにしながら、耳に息を吹きかけながら話すと、今度は爪先立ちになって踵の脱げたパンプスを足で踏みつけた。 細いヒールはバランスを失って横に倒れ、黒光りしていたパンプスが形を歪めて床に踏みつけられる状態となった。 「真樹ちゃんご愛用のパンプスも大したことないね。もう僕の足元で潰れちゃったよ。こんなん履いてるから直ぐ脱げちゃってストッキングの爪先を破かれちゃうんだよ。」 真樹は、1か月前の通勤途中に靴が脱げ、挙句の果てにストッキングの爪先が破れた、あの日の朝を思い出した。 そうだ。ダメ男と思っていた水島史郎からの逆襲は、あの朝から始まっていたんだ。 そう思い返した真樹であったが、今更どうすることもできない。 「い、痛い!ちょ、ちょっと引っ張らないでよ!」 史郎が突然、鷲掴みにしていた真樹の髪の毛を引っ張りながら立ち上がったので、真樹は痛みに耐えかねて悲鳴を上げた。 これから何をされるか分からない。しかも自分では史郎に全く歯が立たない。そんな恐怖感だけが真樹の心の中を支配していた。 前頁/次頁 |