|
<第18話:新しい衣装> 陽の長い夏とは言え、19時を回る頃には青空も深い藍色に染まり、闇が間近に迫ってきていた。 とは言え、ここは東京日本橋。真樹は明るく輝く都心の夜景を見下ろす部屋の一角に佇んでいた。 会議室で顔の汚れを取り敢えずはという程度に拭き取った真樹は、史郎の言う通り及川によって、時遊人コーポレーションが入るビルの45階に案内された。 そう言えば、このビルの上階は高級ホテルであったと思いながら歩く彼女が通された部屋はロイヤルスイートルーム。恐らくホテルでも最上級であろう広大な部屋であった。 史郎の言いつけ通り、シャワーを浴び、顔に昼間と同じ勝負メイクを施した真樹は、シャワー中に及川が持ってきた着替えを手に取った。 光沢のある赤いショーツにブラジャー、赤いジャケットに、これまた赤のタイトスカート。そして黒いパンティーストッキング。中に着るインナーと足元に履く靴は自分の物を使えと言われた。 順番に袖を通しながら、真樹は絶句していた。 強めに施された黒いアイメイクに真っ赤な口紅、耳には銀色のリング。それでVゾーンが広めに取られた赤いジャケットの中にデコルテを綺麗に魅せる白いスクエアネックのカットソー。 用意された赤いタイトスカートは膝上20cmはあるようなミニで、その裾から伸びる脚は透明感ある黒ストッキングに包まれ、足元は10cmヒールの黒光りするエナメルパンプス。 これでディナーの相手をしたら、まるで水商売ではないか。 日頃タイトなパンツスーツで颯爽と歩く真樹にとって、こんな格好させられるだけでも恥ずかしい。 それが、この姿で客の相手である。彼女の心中は、水商売を強要されているような悲しい気持ちに覆われていた。 そんな真樹の心境とは裏腹に、扉の向こうで人の出入りする音が聞こえる。微かに聞こえる声から察するに、ルームサービスが届けられている感じだ。 間もなく、及川が真樹を迎えにきた。彼女は促されるままに、ベッドルームを出て、真っ白い大理石が敷き詰められた1部屋分はあろうかというような広い玄関ホールを通り抜け、反対側の扉から別室へと入っていった。 真樹は、今更ながらロイヤルスイートルームという部屋の大きさを実感した。ここはリビングダイニングに2ベッドルーム、都心としては恐らく1・2を争うほどの広さを持つゲストルームなのだ。 「これはこれは三ツ瀬さん。美しい姿に戻られて。今日は我々のディナーにお付き合いいただけるとのことで光栄です。」 ダイニングテーブルの脇で待っていた隆が真樹に声を掛け、そして恭しく彼女を席へと促した。 隆と太郎、そして真樹。三人のディナーが始まった。 食事中は仕事の話は殆ど無く、三人ともジェネラルな会話を終始交わしながら和やかに時を過ごしていた。 が、真樹は途中から例のごとくアソコが湿り、そして疼いてきていることを気にしていた。 おかしい。空腹で飲んだシャンパンや赤ワインが効いてるのかと思ったけど、この疼き、会議の時と近いけどちょっと違う。 内面から熱く火照るような感覚から始まって、徐々にアソコが熱く湿り、遂には疼き出した。ここに水島史郎は居ないのに。まさか、クスリを盛られた? 不安を覚えながらも、真樹は目の前の二人に異変を気取られまいとヒヤヒヤしながら和やかな会話を続けていた。 「うん。美味しい食事でした。あと、デザートがもう少しで届きますけど、お腹も暫し小休憩ですな。」 満足そうな顔をしながら語る隆。太郎も満足そうに頷いている。 「本当、美味しかったです。すみません、デザートの前に、ちょっと失礼させていただきますね。」 「あぁ、お化粧直しというヤツですね。どうぞ。デザートが届くまで少し時間がありますから。」 話し掛ける隆に愛想笑いを浮かべながら席を立った真樹は、元いたベッドルームへと戻って行った。 バスルームへと入った真樹は、ミニスカートの裾から中へと手を入れ、透明感ある黒い布の上から股間を撫でてみた。 「やっぱり。。。」 真樹は悲しそうに呟いた。 ストッキングの上から触るだけでも手に湿り気が伝わる。と言うことは気のせいではない。恐らくショーツの中がジットリと濡れてる筈だ。 もしかしてとは思ったが、やはり水島史郎は単にディナーの相手をさせる訳ではなかった。きっとクスリを盛られて苦しんでる私のことを見えないところから想像してほくそ笑んでるに違いない。 悔しいけど、この一週間はずっとアイツの掌で踊らされているような気がする。この私が、あの水島史郎ごときにだ。こんな筈じゃなかったのに。アイツは何の恨みがあって私にこんなことを。。。 答えの出ない疑問に思いを巡らせつつも、今ここから逃げる訳にはいかない真樹は、気休め程度にはなろうと、制汗用のウェットティッシュでアソコを綺麗に拭き取り、正しく化粧直しをして隆と太郎が待つ部屋へと戻っていった。 前頁/次頁 |