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<第21話:器の差> 「あ、あの。ベルが当分帰って来ないって、ど、どうして分かるんですか?」 髪形が崩れ、ジャケットを脱いでスクエアネックのカットソーだけになった美香が不思議そうに尋ねた。 「あら貴方、砂時計の意味が分かっていないのね。」 「す、砂時計って、バスルームで突然現れた。。。」 美香は言い淀んだ。砂時計が現れたら目の前の客に身体を提供しろと夢では言われた。が、あの砂時計の意味というのは知らなかった。 「そうよ。ほら、自分の腕時計を見てご覧なさい。」 祐佳に言われて、美香は自らの左手を顔の前に上げ、腕時計を見た。特に変わったところはない。が、 「時間が進んでない。秒針が止まってる。。。と、時計が壊れた?」 美香には事態がまるで呑み込めなかった。時計が壊れているから止まっているとしか考えなかったからだ。 「違うわ。時間が止まってるのよ。あの砂時計の砂が落ちきるまで、動いているのは私たち三人だけ。ほら、私の時計だって。」 祐佳が自らの腕時計を美香に見せる。やはり同じ時間で止まっている。 「え!?そ、そんな。。。し、信じられません。じ、時間が止まるなんて。」 「まぁ、信じられないのは無理もないわね。でも、現実よ。光の妖精は時間を自在に操れる。そして貴方や私たちの夢に入り込んでお告げも出来る。更に、彼の者の正体は誰にも分らない。 だから、貴方の大事なところは知らぬ間に変調をきたして二度も粗相をし、ロックのかかっていない筈の扉をホテルスタッフである貴方ですら開けられなくした。 そう、そんなヤツだから貴方を破滅させるのも、生かすのも自由。逆らわない方が身のためよ。一流ホテルのスタッフと言っても所詮は一個人、狙われてしまえば何も出来ずにプライドも人生もズタズタに引き裂かれること間違えなし。 でも今回の指令なんて簡単なものじゃない。貴方がパノラミックホテルのフロントとして磨き上げた身体を使って私たちに奉仕するだけなんだから。」 話を聞いている内に、美香は顔を引き攣らせ、涙で赤くなった目を大きく開き、ストッキングに包まれた脚をガクガクさせ始めた。 そんな彼女を正面から祐佳がしっかりと抱き留め、そして耳元で囁き続けた。 「大丈夫。他のスタッフにはバレないように上手くやってあげるから。」 抱かれたまま震える美香は、怯えた表情のまま首をコクリと縦に振った。優しく語りかける目の前の祐佳に縋る他ないと観念したのである。 が、そんな美香をしっかりと抱きながらも、祐佳の両手は美香の背中からウェストへと静かに下がり、タイトスカートのホックを手際よく外していた。 更にホックの下から縦に、外見では分からないほど巧妙に隠し込まれているファスナーをスルスルと引き下ろす。 ウェストから尻の中ほどまでタイトスカートが左右に開き、中に入れ込んでいたカットソーの白い生地が顔を出した。 如何に気落ちしている美香と雖も、ここまでされれば流石に気付く。静かながらもかすかに聞こえてきたファスナーの音と共に感じた違和感。美香が首を回して覗き見た。 「えっ!?や、ちょ、ちょっ!」 慌てて声を発した美香であったが気付くのが遅かった。ホックもファスナーも開かれたタイトスカートは、美香に押さえる猶予も与えず臀部・太腿・膝と一気に滑り落ち、黒い布の塊となって足元のパンプスに被さった。 「いやぁーっ!」 悲鳴を上げ、パンストに包まれた太腿を窄めて水色のパンティに覆われた股間を隠し、更に両手を開いて股の付け根を覆う。 あまりに突然のことで狼狽した美香は、大事な部分を隠して立ち尽くすのがやっとで、そこから動くことが出来なかった。 「スカート脱がされたくらいで騒ぐんじゃないわよ。みっともない。どうせ下半身汚しちゃって着替えなきゃいけないんだから、こんな役に立たないタイトスカートなんか不要でしょ。」 足元に落ちた黒い布を踏みつけ、シニヨンが崩れて垂れ下がっている後ろ髪を握った祐佳が、青くなっている美香の顔を自分の方に向かせた。 日本橋最高級パノラミックホテルのフロントとして気品ある振る舞いを見せていた美香などは、歳が一回りも違う祐佳にしてみれば単なる小娘に過ぎず、玩具を弄ぶ程度の感覚で扱える存在であった。 故に、気落ちした美香を丸め込んで安心させた上で、制服という鎧を1枚また1枚と剥ぐ程度の事は、祐佳にとって朝飯前。女としての経験も器も差がありすぎた。 経験の浅さにまんまと付け込まれた美香は、スカートをずり下ろされた今になって漸く、騙されたかもと思ったが、時既に遅しであった。 「ほら、さっさと足抜いてこっち来なさい。変になった貴方の身体を何とかしてあげるから。」 祐佳に髪の毛を掴まれている美香は、引っ張られるままによろけながらスカートから足を抜き、姿見の前に立たされた。 スカートに引っかかってパンプスまでが一緒に脱げてしまい、美香はベージュのナイロン生地に包まれた足で大理石の床を直に踏み、白い石の冷たさと硬さをモロに感じていた。 これで彼女の身体からは、ジャケット・スカートそしてパンプス、既にパノラミックホテルのフロントとして纏う制服の鎧が3点も剥がされたことになる。 いや、正確には残ったのは下着みたいなものばかり。鎧と呼べるようなものは既に全てが剥ぎ取られたと言っても過言ではなかった。 前頁/次頁 |