<第15話:賽は投げられた>


「ガサガサ!カーン、カランカラン!」

突然、布が滑り落ちる音、硬い物が床を転がる音がバスルームから響いてきた。
ベッドルームに立つ四人が同時に音の方向を見た。

「あ、あちらはバスルームが、、、しょ、少々お待ち下さい。」

美香が上ずった声で話し、慌ててバスルームへと歩いていき、照明のスイッチを入れた。

大理石に覆われた白い床、そしてシンクに並んで設えられた大型の鏡が照明を反射し、バスルーム全体を明るく彩った。
が、バスタブの近くでバスタオルやフェイスタオル、シンクに備え置かれた歯磨き用のグラスが床に転がっている。

美香のヒールが大理石の床に早いテンポでキレのある音を刻んでいく。さっきまで見せていた優雅な動きとは対照的、後ろ姿からも狼狽しているのが読み取れる。
慌てふためいていると言っても良いくらいの歩き方をする美香の姿を眺めながら、太郎は彼女の後ろをついて歩いていった。

「大変申し訳ありません。客室係のセッティングに手落ちがあったのだと思います。直ぐに新しい物と交換させていただきます。」

しゃがんで床に転がった備品類を急ぎ拾って振り返った美香は、深々とお辞儀をして謝罪の言葉を口にすると、同行していたベルの女性に一式を手渡し、交換用一式を持ってくるよう指示して送り出した。

日本橋最高級クラシカルパノラミックホテルとして有り得べからざる手落ち。ベルを送り出す美香の表情や動きも、さっきまでの気品あるものとは違っている。
明らかに驚き、焦り、ホテルとしてのミスを取り戻そうと、必死になっている。高級ホテルの女がこの程度で取り乱しているというのが傍で見ていてありありと読み取れる。
心の余裕を一気に失って必死になっている美香の顔を、太郎は楽しみながら眺めていた。まだまだ始まったばかり、お楽しみはこれからだと思いつつ。

「こんなコトもあるんですね。驚きました。」

「いえ。このようなことは、、、本当はあってはならないのです。大変申し訳ありません。」

太郎と美香が一言二言交わしている間に、遠くの玄関ホールでベルが踏み鳴らすヒールの音が響き、扉が開き、そして閉まった。

「ところで、さっきベッド脇のパネルの操作がどうとか言ってましたけど。」

「あ、はい。改めてご説明差し上げますので、こちらへお出でいただけますでしょうか。」

太郎の問いにハっとしたような表情を浮かべた美香は、少し慌てた素振りを見せながら太郎を案内しつつベッドルームに向かって歩き始めた。
バスルームにヒールの音を響かせながら進み、入口に立つ祐佳の前を通り過ぎようとした瞬間、美香の動きが止まった。太郎が時間を止めたのだ。

目の前で固まる美香の背後にツカツカと歩み寄った太郎は、後ろから黒いタイトスカートに両手を当て、そしてウェストに向かって生地の上を滑らせていった。
太郎の手が進むほどに、タイトスカートの外側に被っている黒いジャケットの裾が捲れ上がり、間もなく白いカットソーの裾を巻き込むように履いているスカートのウェストが現れた。

「そういえば、あの時は裾を捲り上げてパンストをハサミで切り開いたから、このスカートは履かせたままだったな。」

一人呟きながら、太郎は背中にあるスカートのホックを外し、そしてファスナーを引き下げていく。時間の止まった世界で何も分からない美香は、固まったままタイトスカートをスルスルと膝まで引き下げられてしまった。
続いてベージュのパンストのウェストを掴んだ太郎は、中に履く水色のパンティ共々、同じように膝まで下げる。こうして美香は、何ら感知することなく、スカートや下着で隠していた大事なところを太郎の前に曝け出してしまった。

続いて、太郎は手に持つセカンドバッグから透明な瓶を取り出して蓋を開けると、おもむろに中に手を差し入れた。
瓶から手を抜き取ると、太郎の手には、ドロっとした透明な液体が付着している。

「あの時は、制服着たまま必死に抵抗するのを弄り回してヒーヒー泣かせてやったけど、今回は違う。未だ制服を着せたままパノラミックホテルのフロントを演じ続けさせてやる。その方が必死にプライド守るだろうしな。
 さ~て、ベルは送り出しちゃったからアンタ一人ロイヤルスイートに残っちゃった。このちょー贅沢な密室の中で、クラブラウンジを担当するフロントのお姉さんはどこまで上品さを維持出来るかな?制服脱がすのは崩れた後だ(笑)」

楽しそうに独り言を呟きながら、太郎は美香の陰部に指を当て、透明な液体を念入りに塗り込んでいった。二度、三度。表面だけではなく、指先を割れ目から中に差し入れて内部の壁にまで。
見ただけでも分かる程たっぷりと液体を塗り終えた太郎は、美香のパンティやパンスト、スカートを元に戻し、そして時間を再開させた。

美香の後ろを歩きながらベッドルームに向かう太郎。その傍らを歩く祐佳が、吐息がかかるほど太郎の耳元に口を寄せて囁いた。

「ちょっと、私も仲間に入れてよね。」

太郎が振り返ると、祐佳が意味深な目で太郎を見つめている。
そんな祐佳に向かって軽く頷いた太郎は、さっきの操作パネルの前まで歩き続けた。



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画像は相互リンク先「PORNOGRAPH」PORTER RIMU様からお借りしています



















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