<第13話:2度目の10月20日>


ここは何処だろう?真っ白い光だけに包まれた空間。他には何も見えない。

「初めまして。金沢美香さん。」

「だ、誰!?」

謎の空間に一人立つ美香は、響き渡る男の声を聞いて周囲を見回した。が、音の方向も掴めなければ、姿形を見咎めることも出来ない。

「私は光の妖精。ここは貴方の夢の中。貴方にお知らせしなければならないことがあって、夢の世界に入り込んできました。」

「夢の中?私にお知らせ?」

美香は声だけが聞こえる真っ白い空間で、辺りを見回しながら応じた。が、やはり姿形は一切なく、男の声だけが響き続けた。

「そう。今日と明日の勤務において、貴方は。。。」

--*--*--

秋の暖かな日差しが降り注ぐなか、太郎と祐佳が日本橋にある高層ビルのロビーに入っていった。

「パノラミックホテル。泊まるの何年振りかしら。」

祐佳が笑顔で太郎に話かける。

「5年前に泊まって以来かな。今年は結婚10周年だから奮発したんだよ。」

太郎が同じく笑顔で応じながら、祐佳を引き連れてエレベーターに向かって歩いて行く。

「あれ!?フロントでチェックインしなくて良いの?」

真っ直ぐエレベーターに向かう太郎を見て、祐佳が不思議そうに尋ねた。

「良いんだよ。今回予約した部屋には専用ラウンジがあるから、そっちでチェックインするんだ。」

「へぇ~。凄い。そんなのあるんだ。」

楽しそうに会話を交わしながらエレベーターに乗り込んだ二人は、クラブラウンジと表示されている42階で降りた。

「こんにちは。ご宿泊でございますか?お名前を頂戴できますでしょうか?」

クラブラウンジに入っていった二人は、フロントデスクの前で真っ直ぐに立つ若い女性から声を掛けられた。
綺麗に纏められた髪に、しっかりとメイクが施された美しい顔。黒のジャケットはVゾーンが広めにとられ、中に着ている白いカットソー、そのネックから首にかけてのデコルテを綺麗に見せている。そしてジャケットと同じ黒のタイトスカート。
スカート丈は膝頭の少し上。そこから下にヌードベージュのストッキングに包まれた美しい脚がスラっと伸び、足元には黒いパンプスが光っている。
立ち姿からしても美しく、流石は日本橋最高級パノラミックホテルのクラブラウンジのスタッフという印象を二人に与えている。

「あ、はい。2泊で予約してます山田です。」

「山田様でございますね。ご宿泊ありがとうございます。こちらへどうぞ。」

太郎と祐佳は、フロントデスクの前に用意された椅子へと案内され、女性はデスクを挟んで向かいの席に座り、手続きを始めた。

「山田太郎様。祐佳様。ご宿泊ありがとうございます。本日からお2泊、ロイヤルスイートルームでご予約を承っております。。。」

フロントデスクにおいて、チェックインの手続きをし、そしてクラブラウンジに関する説明などを1つずつ受ける太郎と祐佳。
手続きのためにPCのディスプレイを見たり、デスクの上に置かれた書類を指さして説明する為に瞼を少し下げている女性の目元が太郎からよく見える。

スプレーでしっかりと固められた前髪は眉毛にかからない程度で斜めに下ろし、左右の眉そのものも綺麗に整えられている。
目元は派手にならない程度にラメの入ったダークグレーのアイシャドウが瞼に施され、黒のアイライナーやマスカラも活用して目元を強調している。口元も赤いルージュに軽くグロスを載せて輝かせている。
デコルトが綺麗に見えるくらいネックの広いカットソーの上に着る黒いジャケット。その胸には黄金色のネームプレートがあり、「金沢」という名前が彫られている。

「山田様。それではお部屋へご案内させていただきます。本日はベルの研修を兼ねて、私がご案内させていただきます。」

手続きを一通り終えると、美香が立ち上がってデスクの前に歩み出で、太郎と祐佳を先導して案内を始めた。太郎もベルに荷物を預けると、美香の後ろを付いて歩いて行く。

ピンと背筋の伸びた美香の立ち姿、そして歩き姿は後ろから見ても美しい。
身長は160cm程度であろう。後ろ髪を団子状に纏めたシニヨンは襟足まで解れが無いほど綺麗に整えられていて、ジャケットやスカートも皺が少なく綺麗だ。
ヌードベージュのストッキングに包まれた両脚もスラっとして美しく、一歩ずつ優雅に前へと踏み出される細い7cmヒールのパンプスが美脚を更に強調している。

そう言えば、あの時の美香は、片足のパンプスを失ってパンストに包まれた爪先をカーペットにつけ、ヒョコヒョコと歩いていた。
制服も、部屋の中で太郎に散々撫でられたり揉まれたりした後だったので、スカートやらジャケットやらにも皺が寄り、いま目の前で見せている高級ホテルスタッフの気品などと言うものは消し飛んでいた。
そんな情けない姿で、エレベーターも使えずに非常階段を手摺りに掴まりながらフラフラと上る後ろ姿、あれは実に哀れなものであり、またその堕ちっぷりは太郎を大いに楽しませた。

太郎は、他の誰にもない彼だけの記憶を辿りながら、今の美香が見せる気品ある後ろ姿をじっくりと眺めつつ、部屋に至る道をゆっくりと歩いて行った。
この高級感溢れる美しきホテルレディを再び制服姿のまま貶めることが出来るというワクワク感を抱きながら。



前頁/次頁







画像は相互リンク先「PORNOGRAPH」PORTER RIMU様からお借りしています



















表紙

投稿官能小説(3)

トップページ
inserted by FC2 system