<第3話:脱出>


バスルームでシンクに押し付けられたまま自力では逃げ出せそうもない美香は、近くに立つ後輩のベルに助けを求めようと鏡越しに視線を送るが、まるで気付く様子がない。

「どうしちゃったの?金沢さん。ベルのお姉さんを研修するために来たんでしょ。こういう時どうするか、ちゃんと手本示さないと。涙目でベルちゃん見つめてないでさ。」

ベルよりも先に美香の視線に気付いた太郎が耳元で囁いた。手本を示せと言われても、相手はパノラミックホテルのスイートルームに宿泊する客である。
そんな客からこんなことされようとは、美香とて経験も無ければ想像したことすら無い。手本を示すも何も美香自身がどうすれば良いか分からず、ただもがくのみであった。

「お、お客様。な、なんでこんなことを?お願いですから、や、止めて下さい。」

力では敵わない美香に出来るのは涙声で訴えるだけ。そして近くに立つ後輩のベルや太郎夫人の祐佳がこの惨状に気付いて止めに入ってくれるのを期待するだけであった。

「止めてくださいって何で?アイシャドウの効いた美味しそうな目。赤く彩られて輝く唇。綺麗にシニヨンで纏められた髪の毛。カットソーの中に隠された胸。これまた美味しそうなストッキングとパンプスでキメられた脚。
 流石は一流ホテルのクラブラウンジでフロントするほどのお姉さんだなぁと思って見てたら、バスルームまでご同行して鏡に向かって隙だらけの姿で背中見せてるんだもん。こんなご馳走を逃す訳ないじゃん。
 ここって良いよね。コーナーにある広いスイートルームの一番端のバスルーム。防音もしっかりしてそうだし、叫んでも廊下まで声届かないでしょ。ってことは制服姿の金沢さんを好き放題に楽しめる最高の密室って訳だ。」

「そ、そんな。だ、ダメです。お願いですから、も、もう、止めて下さい。」

哀願する美香を無視するかのように耳元で舌なめずりをしたかと思うと、太郎は胸を揉んでいた右手を下し、ストッキングに包まれた右脚の膝頭に触れた。そして、膝の周りから裏へと右手を使って撫でていく。
そんな太郎の動きに反応して脚を窄めようとした美香であったが、脚を動かすよりも早く、パンプスのヒールと爪先の間、ヒールの上に乗る踵から爪先にかけて斜めに下りる黒いパンプスの底辺と白い床が作り出す三角形の空間に太郎の靴先が押し込まれた。
左右ともである。大理石張りの床を滑っていた美香のパンプスは、足元の隙間が太郎の靴先に引っ掛かって嵌まり、今度は動かそうにも動かせなくなってしまった。いや、動かせないばかりか、内側から外側へ、力が加えられているのを感じる。
さっきまで踏ん張りが効かずに床を滑っていたパンプスである。脚を窄めようとする美香の意思とは裏腹に、内側から押し出そうとする太郎の靴先によって、パンプスごと徐々に外側へ広げられていった。

グイグイと強引に脚を広げられていくことによってバランスを保つのが難しくなってきた美香は、胸を揉む太郎の左手を握りつつ、右手をシンクのカウンターについて身体を支えざるを得なくなった。

「かっこよキメてたお姉さんのパンプス、脚を綺麗に魅せるには良いんだろうけど、こうやって内側から蹴り出されると踏ん張れないでしょ。ほらほら、頑張って耐えないと、あっという間に大きく股を開くことになっちゃうよ。
 それにしても、一流ホテルのお姉さんが魅せる美味しそうな脚、こうやって撫でられるなんて光栄だよ。ストッキングに包まれてザラザラした手に引っ掛かるような感触、最高に気持ち良い。俺好きなんだよね。この触り心地。」

美香が身体を支えるのに手一杯で、太郎の右手を制することが出来ないのを良いことに、美香の右脚は好き放題に撫でられ続けている。
右脚だけではない。胸だって太郎の力に美香が抗しきれないので、ずっと揉まれ放し。何度もインナー越しにブラカップを引っ張られているので、既に乳房をきちんとに包むことすら覚束なくなってる。

「え!?ちょ、ちょっと待ってください。だ、ダメ。ひ、引っ張らないで。す、ストッキングが切れちゃう。」

右脚を撫でる太郎の手が、膝裏にあるストッキングの生地を指先で手繰り寄せて皺を作ったかと思うと、おもむろに引っ張り始めた。
ツツツという生地の擦れる音と共に、薄いベージュの生地が引き伸ばされ、美香の脚から離れていく。更に、伸びた生地に太郎の指が食い込んでいくのが見える。

「へぇ、そんな焦っちゃって。やっぱ一流ホテルのお姉さんが履くストッキングも簡単に破けるんだ。破けたらどうするの?やっぱ履き替えるの?
 まぁ、綺麗なお姉さんだって仕事中にストッキング切っちゃうことあるだろうし、俺みたいにわざと破く客もいるだろうから、履き替えるための予備くらい用意してあるんでしょ?足りなくなれば近くのコンビニで買えば良いしね。」

指で摘み上げたストッキングの生地を薄く引き延ばしたまま指先で弄びながら太郎が問い掛ける。

「そ、それは。よ、予備は、、、ありますけど、、、で、でも、、、そんな、わざと破かれることなんて。。。」

美香は力なく答えた。
パチンという鈍い音が響くと同時に、美香の膝に生地の張り付いた感触が戻った。太郎が指で摘まんでいたストッキングを放し、弾かれた布が脚に戻ったらしい。
少しホッとした美香であったが、それも束の間、太郎の右手が膝から太腿へと美香の右脚を這い上がり始めた。

「いやぁ~!ダメぇ~っ!」

悲鳴のような声と共に、美香が両手でカウンターを力強く押し、太郎に体当たりをした。美香の突然の動きに不意を突かれた太郎はバランスを崩して後ろによろけた。

太郎から解放された美香は、漸くその場を離れ、赤く彩られた口に手を当て、半泣きの顔で駆け出した。
通り掛かりに談笑中の祐佳とベルを横目に見るが、やはりさっきと同じ姿のままピクリとも動かない。
ただ、この場から逃れることだけで頭がいっぱいの美香は、そんな二人の前を素通りして、バスルームからベッドルーム、リビングルームと駆け抜けていった。
玄関ホールを駆ける美香のハイヒールの音が早いテンポで響き、そして玄関扉から外へと出る。漸くロイヤルスイートという密室から脱出した瞬間であった。

しかし、このフロアはスイートルームオンリーである故に人気が殆どない。一刻も早くここから逃れたい美香は、非常階段へと急いだ。



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画像は相互リンク先「PORNOGRAPH」PORTER RIMU様からお借りしています



















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