<第16話:再来>

日も暮れ、イベントの終了時間まであと30分ほどとなった。彩は本日最後の仕事とブースの前で笑顔で来場客の相手をしていた。

あれから二人の姿は見かけていない。人混みだから今日は何もせず帰ったのか。それとも、私は富士で楽しんで満足したから、今日は別の女の子を狙って、あの時私にしたような悪戯をしているのか。
兎に角あと30分頑張れば、今日という日が終わり、私はあの日のような酷い目に遭わずに済む。何とか無事に終わって欲しい。そう願う彩であった。

しかし、ほどなくして会場内の音が突然止み、周囲の人々の動きが止まった。会場内に気味の悪い静寂が訪れた。そして彩だけが一人動いている。
この感覚は富士の時以来。そう、あの時と同じだ。コンパニオンとして露出度の高い青と黒の衣装に包まれ、笑顔を振りまいていた彩の顔から笑みが消え、目を大きく見開いて恐怖の顔へと変わっていった。

「こんばんは。素敵な素敵な現役RQ水沢彩さん。やっぱオーラが違うね。青と黒のコス、メッチャ恰好良いよ。ウェーブのかかったロングヘアーも似合ってるし。」

背後に人の気配がしたかと思う間もなく、耳元で囁く声が聞こえた。忘れもしないあの声。富士で私を徹底的に貶めた時間を止められるとかいう高校生の声。

「こ、こ、こんばんは。な、な、何でしょう?」

彩は恐怖で声を震わしながら、やっとの思いで返事をした。心臓が止まりそうなくらいの恐怖が彩を襲う。後ろを振り返る勇気すら持てない。

「おや。パンストで引き締めてキラキラさせた美しいお膝がガックガックしてるけど。もしかして震えてる?人気RQ水沢彩ともあろうお方が。たった一人の高校生を相手に。」

今度は下から声がした。しゃがんで震える膝を後ろから眺め、そして指先でパンスト越しに膝回りを撫で、更に膝裏を覆っている薄いベージュの生地を摘まんで引き伸ばしているのを感じる。
その手はやがて、裏腿から内腿へと伝っていき、脚の付け根に向かって這うように進んでくる。金縛りにあったように動けなくなった彩は、その場で立ち竦んだまま、恐怖で震えるばかりだった。
彩の脚を撫でる手は、遂にホットパンツの裾まで到達し、隙間から中に入り込もうとした。

事ここに至って、漸く彩が反応した。

「えっ!?や、ちょ、ちょっ。そこはっ!」

両脚を重ね合わせるほどに窄め、両手で股間を隠しつつ、ホットパンツの裾を押さえて隙間を塞いだ。すんでのところでホットパンツの中への侵入を阻止できた。
彩の動きを見た高校生の手は、入るのを諦めたように太腿を伝って再び下がり始め、膝を通って膝下を取り巻く黒いロングブーツの淵を撫でるに至った。

やがて、その手は黒光りするロングブーツを包み込むように軽く握り、そのまま更に下がり続け、足首に寄った黒革の皺に向かっていく。
あの日のようにブーツを脱がす気であろうか?でも、ホットパンツの中に手を突っ込まれてアソコを弄られるくらいなら、ブーツを脱がされ、パンストを破かれるくらいは我慢するしかない。
怯える目で太郎を見つめながらも、そう思う彩であった。

「このロングブーツカッコいいですね。脚が引き締まって見える。」

「。。。」

何を考えているのか分からない。そう感じて不安に思う彩は、返事が出来ずに黙ったままであった。
足首にあるブーツの皺を指先で弾いたり摘まんだりして遊んでいた手が、更に下がって彩の踵をブーツ越しに掴んだかと思うと、留まること無く更に下へと進み続ける。

「このヒール凄く細くて高いなぁ。流石はRQ。こんなのでカッコよく歩いてるんだもん、凄いよね。高さは何センチくらいあるんだろう。握っても余るから10cmはあるかな。」

指先でブーツのヒールを撫でながら独り言を呟く太郎の姿を見下ろしつつ、何を考えているのだろうと怪訝に思う彩だったが、突然、、、

「キャぁっ!」

物音ひとつしない空間に大きな悲鳴が響き渡った。彩がバランスを失ってその場に崩れ落ち、両手・両膝を地面について四つん這いの姿勢になってしまったのだ。
何が起きたのか?彩にはまるで分らなかった。

独り言を呟きながら指先でブーツのヒールを擦っていた太郎の手が、そのまま両脚のヒールを握ったところまでは見えていた。
その後、突然足首を捻りそうになるくらいの凄い勢いで踵の下が左右に開くように引っ張られ、足の踏ん張りが効かずにバランスを崩してその場に倒れこんだ。
あまりにも不意に、経験したこと無いような足の動きを強制的にさせられたので、視線は宙を泳ぎ、崩れ落ちた身体を、両手・両膝を地面につくことで支えるのがやっとだった。

あんなことが起こりうるとしたら、ヒールを握ったまま私の脚を強引に左右へ大きく開くことくらいしか考えられない。
細長いヒールのみに体重を乗せたさっきの立ち姿で、ヒールだけを一方的に動かされれば、他に身体を支える術など残されていないから、ヒールの動きに脚も身体も付いていけずに倒れてしまう。
ということは、彼は今、意図的にそれをやって私をこうやって転ばせたということか?

地面に這いつくばったまま、漸く考えがそこまで至った時、這いつくばる自分の背後からにじり寄る高校生の気配を感じ、彩は更なる恐怖に怯えた。



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